不動産所得とは?基本的な仕組みを理解する
不動産投資を始めた、または検討している方の多くが、「不動産所得の計算方法が分からない」「どこまで経費にできるのか」と不安に感じています。
この記事では、不動産所得の計算方法、必要経費として認められる項目、青色申告のメリットを、国税庁の公式情報を元に解説します。
確定申告の流れと注意点を理解することで、適切に申告できるようになります。
この記事のポイント
- 不動産所得 = 総収入金額(家賃収入、礼金、更新料等) - 必要経費(減価償却費、管理費、修繕費、固定資産税等)
- 必要経費として認められる主要項目: 減価償却費、管理費、修繕費、固定資産税、損害保険料、借入金利息(元本返済は不可)
- 青色申告特別控除は事業的規模(5棟10室以上)で複式簿記・e-Tax利用なら65万円、複式簿記のみなら55万円、事業的規模未満なら10万円
- サラリーマンの副業で不動産所得が年間20万円超(2025年12月1日から95万円超)なら確定申告が必要
- 不動産所得の赤字は給与所得等の黒字と損益通算でき、青色申告なら損失を3年間繰り越し可能
不動産所得の計算式と総収入金額に含まれるもの
国税庁によると、不動産所得は以下の式で計算します。
不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費
不動産所得は総合課税(累進税率5-45%)が適用され、給与所得等と合算して税額が決まります。
総収入金額に含まれるもの
総収入金額には、以下が含まれます。
- 家賃収入: 毎月の賃料
- 礼金: 契約時に受け取る礼金(返還義務のないもの)
- 更新料: 契約更新時の更新料
- 共益費・管理費: 入居者から受け取る共益費・管理費
- 駐車場収入: 駐車場の賃貸収入
注意: 敷金・保証金は預り金であり、返還義務があるため総収入金額に含まれません。ただし、退去時に原状回復費用として差し引いた金額は収入となります。
必要経費として認められる項目
国税庁によると、必要経費とは「収入を得るために直接要した費用」です。家事費(私的な支出)との区分が明確なもののみ計上できます。
減価償却費
建物の取得費を法定耐用年数に応じて分割し、毎年経費計上します。
| 構造 | 法定耐用年数 | 
|---|---|
| 鉄筋コンクリート造(RC造) | 47年 | 
| 木造 | 22年 | 
(出典: 国税庁)
注意: 土地の購入費は減価償却できません。建物部分のみが対象です。
管理費・修繕費
- 管理費: 管理会社への管理委託費、共用部分の管理費
- 修繕費: 原状回復費用(壁紙張り替え、水漏れ修理等)
注意: 修繕費と資本的支出(リノベーション等、物件価値を高める費用)の区分が重要です。資本的支出は減価償却で処理する必要があります。
固定資産税・損害保険料・借入金利息
- 固定資産税: 物件にかかる固定資産税・都市計画税
- 損害保険料: 火災保険、地震保険
- 借入金利息: 住宅ローン・不動産投資ローンの利息部分(元本返済は経費にならない)
経費にできないもの
以下は必要経費に計上できません。
- 所得税・住民税: 税金の二重控除になるため不可
- 借入金の元本返済額: 経費になるのは利息部分のみ
- 土地の購入費: 減価償却不可(建物部分のみ可)
- 家事費: 私的な支出(家族旅行、個人の食費等)
青色申告のメリット:特別控除・損失繰越・専従者給与
青色申告には、白色申告にはない3つの大きなメリットがあります。
青色申告特別控除
国税庁によると、青色申告特別控除は以下の3段階に分かれます。
| 要件 | 控除額 | 
|---|---|
| 事業的規模(5棟10室以上) + 複式簿記 + e-Tax利用 | 65万円 | 
| 事業的規模(5棟10室以上) + 複式簿記 | 55万円 | 
| 事業的規模未満 | 10万円 | 
(出典: 国税庁)
事業的規模の判定(5棟10室基準)
国税庁によると、事業的規模は以下の基準で判定します。
- アパート10室以上
- 貸家5棟以上
- 駐車場50台以上(アパート1室 = 駐車場5台で換算)
この基準を満たさない場合、青色申告特別控除は最大10万円に制限されます。
損失の繰越(3年間)
不動産所得が赤字の場合、青色申告なら損失を3年間繰り越せます。翌年以降の黒字と相殺することで、税負担を軽減できます。
専従者給与の経費算入
青色申告なら、家族への専従者給与を必要経費に算入できます。白色申告では専従者控除(配偶者86万円、その他50万円)の定額控除のみです。
確定申告の流れと必要書類
不動産所得がある場合、確定申告が必要です。
確定申告が必要なケース
弥生株式会社によると、サラリーマンの副業で不動産所得が年間20万円超(2025年12月1日から95万円超)なら確定申告が必要です。
注意: 20万円以下(または95万円以下)でも、住民税の申告は必要です。
確定申告の流れ
- 必要書類の準備: 家賃収入の記録、経費の領収書、固定資産税の納税通知書、借入金の返済予定表等
- 収支内訳書の作成: 収入と経費を集計し、国税庁の収支内訳書(不動産所得用)に記入
- 確定申告書の提出: 2月16日〜3月15日に税務署へ提出(e-Taxも可)
損益通算とは
不動産所得の赤字を給与所得等の黒字と相殺する仕組みを「損益通算」といいます。確定申告で適用すると、源泉徴収された所得税の還付を受けられる場合があります。
まとめ:不動産所得は計算方法を理解し、適切に申告を
不動産所得は「総収入金額(家賃収入、礼金、更新料等) - 必要経費(減価償却費、管理費、修繕費、固定資産税、損害保険料、借入金利息等)」で計算します。
必要経費として認められる項目は多岐にわたりますが、所得税・住民税、借入金の元本返済額、土地の購入費、家事費は経費にできません。
青色申告のメリットは大きく、事業的規模(5棟10室以上)で複式簿記・e-Tax利用なら65万円の特別控除、損失の繰越(3年間)、専従者給与の経費算入が可能です。
サラリーマンの副業で不動産所得が年間20万円超(2025年12月1日から95万円超)なら確定申告が必要です。詳細は税理士・税務署に相談し、適切に申告しましょう。
