不動産所得とは?計算方法と確定申告を完全解説

公開日: 2025/10/27

不動産所得とは?基本的な仕組みを理解する

不動産投資を始めた、または検討している方の多くが、「不動産所得の計算方法が分からない」「どこまで経費にできるのか」と不安に感じています。

この記事では、不動産所得の計算方法、必要経費として認められる項目、青色申告のメリットを、国税庁の公式情報を元に解説します。

確定申告の流れと注意点を理解することで、適切に申告できるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産所得 = 総収入金額(家賃収入、礼金、更新料等) - 必要経費(減価償却費、管理費、修繕費、固定資産税等)
  • 必要経費として認められる主要項目: 減価償却費、管理費、修繕費、固定資産税、損害保険料、借入金利息(元本返済は不可)
  • 青色申告特別控除は事業的規模(5棟10室以上)で複式簿記・e-Tax利用なら65万円、複式簿記のみなら55万円、事業的規模未満なら10万円
  • サラリーマンの副業で不動産所得が年間20万円超(2025年12月1日から95万円超)なら確定申告が必要
  • 不動産所得の赤字は給与所得等の黒字と損益通算でき、青色申告なら損失を3年間繰り越し可能

不動産所得の計算式と総収入金額に含まれるもの

国税庁によると、不動産所得は以下の式で計算します。

不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費

不動産所得は総合課税(累進税率5-45%)が適用され、給与所得等と合算して税額が決まります。

総収入金額に含まれるもの

総収入金額には、以下が含まれます。

  • 家賃収入: 毎月の賃料
  • 礼金: 契約時に受け取る礼金(返還義務のないもの)
  • 更新料: 契約更新時の更新料
  • 共益費・管理費: 入居者から受け取る共益費・管理費
  • 駐車場収入: 駐車場の賃貸収入

注意: 敷金・保証金は預り金であり、返還義務があるため総収入金額に含まれません。ただし、退去時に原状回復費用として差し引いた金額は収入となります。

必要経費として認められる項目

国税庁によると、必要経費とは「収入を得るために直接要した費用」です。家事費(私的な支出)との区分が明確なもののみ計上できます。

減価償却費

建物の取得費を法定耐用年数に応じて分割し、毎年経費計上します。

構造 法定耐用年数
鉄筋コンクリート造(RC造) 47年
木造 22年

(出典: 国税庁

注意: 土地の購入費は減価償却できません。建物部分のみが対象です。

管理費・修繕費

  • 管理費: 管理会社への管理委託費、共用部分の管理費
  • 修繕費: 原状回復費用(壁紙張り替え、水漏れ修理等)

注意: 修繕費と資本的支出(リノベーション等、物件価値を高める費用)の区分が重要です。資本的支出は減価償却で処理する必要があります。

固定資産税・損害保険料・借入金利息

  • 固定資産税: 物件にかかる固定資産税・都市計画税
  • 損害保険料: 火災保険、地震保険
  • 借入金利息: 住宅ローン・不動産投資ローンの利息部分(元本返済は経費にならない)

経費にできないもの

以下は必要経費に計上できません。

  • 所得税・住民税: 税金の二重控除になるため不可
  • 借入金の元本返済額: 経費になるのは利息部分のみ
  • 土地の購入費: 減価償却不可(建物部分のみ可)
  • 家事費: 私的な支出(家族旅行、個人の食費等)

青色申告のメリット:特別控除・損失繰越・専従者給与

青色申告には、白色申告にはない3つの大きなメリットがあります。

青色申告特別控除

国税庁によると、青色申告特別控除は以下の3段階に分かれます。

要件 控除額
事業的規模(5棟10室以上) + 複式簿記 + e-Tax利用 65万円
事業的規模(5棟10室以上) + 複式簿記 55万円
事業的規模未満 10万円

(出典: 国税庁

事業的規模の判定(5棟10室基準)

国税庁によると、事業的規模は以下の基準で判定します。

  • アパート10室以上
  • 貸家5棟以上
  • 駐車場50台以上(アパート1室 = 駐車場5台で換算)

この基準を満たさない場合、青色申告特別控除は最大10万円に制限されます。

損失の繰越(3年間)

不動産所得が赤字の場合、青色申告なら損失を3年間繰り越せます。翌年以降の黒字と相殺することで、税負担を軽減できます。

専従者給与の経費算入

青色申告なら、家族への専従者給与を必要経費に算入できます。白色申告では専従者控除(配偶者86万円、その他50万円)の定額控除のみです。

確定申告の流れと必要書類

不動産所得がある場合、確定申告が必要です。

確定申告が必要なケース

弥生株式会社によると、サラリーマンの副業で不動産所得が年間20万円超(2025年12月1日から95万円超)なら確定申告が必要です。

注意: 20万円以下(または95万円以下)でも、住民税の申告は必要です。

確定申告の流れ

  1. 必要書類の準備: 家賃収入の記録、経費の領収書、固定資産税の納税通知書、借入金の返済予定表等
  2. 収支内訳書の作成: 収入と経費を集計し、国税庁の収支内訳書(不動産所得用)に記入
  3. 確定申告書の提出: 2月16日〜3月15日に税務署へ提出(e-Taxも可)

損益通算とは

不動産所得の赤字を給与所得等の黒字と相殺する仕組みを「損益通算」といいます。確定申告で適用すると、源泉徴収された所得税の還付を受けられる場合があります。

まとめ:不動産所得は計算方法を理解し、適切に申告を

不動産所得は「総収入金額(家賃収入、礼金、更新料等) - 必要経費(減価償却費、管理費、修繕費、固定資産税、損害保険料、借入金利息等)」で計算します。

必要経費として認められる項目は多岐にわたりますが、所得税・住民税、借入金の元本返済額、土地の購入費、家事費は経費にできません。

青色申告のメリットは大きく、事業的規模(5棟10室以上)で複式簿記・e-Tax利用なら65万円の特別控除、損失の繰越(3年間)、専従者給与の経費算入が可能です。

サラリーマンの副業で不動産所得が年間20万円超(2025年12月1日から95万円超)なら確定申告が必要です。詳細は税理士・税務署に相談し、適切に申告しましょう。

よくある質問

Q1サラリーマンでも不動産所得があれば確定申告が必要ですか?

A1不動産所得が年間20万円超(2025年12月1日から95万円超)なら確定申告が必要です。20万円以下(または95万円以下)でも、住民税の申告は必要です。給与所得と不動産所得を合算して税額が決まるため、確定申告で源泉徴収された所得税の還付を受けられる場合もあります。詳細は税務署にご確認ください。

Q2必要経費にできないものは何ですか?

A2所得税・住民税、借入金の元本返済額、土地の購入費(減価償却不可)、家事費(私的な支出)は経費にできません。借入金は利息部分のみが経費となり、元本返済は経費になりません。また、家事費との区分が不明確なもの(個人の食費、家族旅行等)は計上不可です。経費計上の可否に迷う場合は、税理士に相談してください。

Q3修繕費と資本的支出の違いは?

A3修繕費は原状回復費用(壁紙張り替え、水漏れ修理等)で全額経費計上可能です。資本的支出は物件価値を高める費用(フルリノベーション、設備の大規模改修等)で減価償却で処理します。区分が曖昧だと税務署から指摘を受けるリスクがあります。20万円未満の修繕は修繕費、20万円以上で価値向上を伴う場合は資本的支出と判断されることが多いです。

Q4損益通算とは何ですか?

A4不動産所得の赤字を給与所得等の黒字と相殺する仕組みです。例えば、給与所得500万円、不動産所得-100万円の場合、損益通算で課税所得は400万円となり、源泉徴収された所得税の一部が還付されます。青色申告なら損失を3年間繰り越せるため、翌年以降の黒字と相殺することも可能です。確定申告で適用します。