不動産の囲い込みとは|売主が損する違法行為の実態と対策

公開日: 2025/11/4

不動産の囲い込みとは|売主が損をする違法行為

不動産を売却する際、「なかなか売れない」「問い合わせが少ない」と感じたら、もしかすると「囲い込み」の被害に遭っているかもしれません。

この記事では、不動産業界の悪質な商慣習である「囲い込み」の仕組み、売主が被る損失、見抜く方法、対策を、国土交通省のガイドラインや業界調査を元に解説します。

囲い込みを防ぎ、適正価格でスムーズに売却するための知識を身につけましょう。

この記事のポイント

  • 囲い込みは、売却依頼を受けた不動産会社が物件情報を隠し、自社で買主を見つけて両手仲介を狙う行為
  • 売主は売却期間の長期化、値下げ圧力、機会損失により数百万円の損失を被る可能性がある
  • レインズへの登録義務があるが、登録後に「商談中」と虚偽の情報で他社を排除する手口が多い
  • 囲い込みを防ぐには、レインズ登録証明書の確認、複数社への相談、一般媒介契約の活用が有効
  • 囲い込みは宅建業法違反(業務停止処分の可能性)で、国土交通省が監視を強化している

囲い込みの仕組みと実態

両手仲介を狙う不動産会社の思惑

囲い込みは、売却依頼を受けた不動産会社が、物件情報を他社に公開せず、自社で買主を見つけて「両手仲介」を狙う行為です(東洋経済オンライン調査)。

両手仲介: 売主・買主の両方から仲介手数料を受け取る仲介形態

: 物件価格3000万円の場合

  • 片手仲介(売主のみ): 仲介手数料 約105万円
  • 両手仲介(売主・買主): 仲介手数料 約210万円(2倍)

このように、両手仲介なら仲介手数料が2倍になるため、不動産会社は自社で買主を見つけることにインセンティブがあります。

レインズ登録義務の抜け穴

専属専任媒介契約・専任媒介契約では、不動産会社はレインズ(不動産流通標準情報システム)に物件を登録する義務があります(国土交通省ガイドライン)。

しかし、以下の手口でレインズ登録義務を形骸化させるケースがあります。

  • レインズに登録するが、他社からの問い合わせに「商談中」と虚偽の回答
  • 物件写真を掲載しない、情報を最小限にして魅力を削ぐ
  • 登録後すぐに「一時停止」に変更

これらの手口により、形式上はレインズに登録しているが、実質的に他社を排除する囲い込みが行われます。

「商談中」の嘘で他社を排除

他社が物件に興味を持って問い合わせても、「すでに商談中です」と虚偽の回答をして排除します。実際には商談が進んでおらず、自社で買主を見つけるまで時間稼ぎをしているケースが多いです。

AERA dot.の調査では、囲い込みが疑われる物件の実態が報告されています。

囲い込みで売主が被る損失

売却期間の長期化

囲い込みにより、物件情報が広く公開されないため、買主候補が限定され、売却期間が長期化します。通常なら3ヶ月で売れる物件が、6ヶ月以上かかるケースもあります。

値下げ圧力と機会損失

売却期間が長期化すると、不動産会社から「この価格では売れません。値下げしましょう」と圧力をかけられます。適正価格で売れる物件でも、囲い込みにより値下げを余儀なくされ、数百万円の機会損失が発生します。

: 適正価格3500万円の物件

  • 囲い込みなし: 3ヶ月で3500万円で売却
  • 囲い込みあり: 6ヶ月後に3200万円で売却(300万円の損失)

売却価格の低下(数百万円の損失)

囲い込みにより、最も高値で買ってくれる買主候補を逃し、売却価格が低下します。両手仲介を狙うために、適正な市場価格よりも低い価格で売却されるケースが多いです。

囲い込みを見抜く方法

レインズ登録証明書の確認

専属専任媒介契約・専任媒介契約を結んだ場合、不動産会社はレインズに登録後、登録証明書を交付する義務があります(国土交通省ガイドライン)。

レインズ登録証明書を受け取り、登録内容を確認しましょう。登録証明書に記載されたIDで、レインズの売主専用サイトから物件情報を閲覧できます。

他社経由での問い合わせテスト

知人や別の不動産会社を通じて、自分の物件に問い合わせをしてみましょう。「商談中」「売却済み」と虚偽の回答があれば、囲い込みの可能性が高いです。

売却活動報告の頻度と内容チェック

専属専任媒介契約では2週間に1回以上、専任媒介契約では1週間に1回以上、売却活動報告を受ける権利があります。

報告内容が曖昧(「引き続き営業中です」のみ)で、具体的な問い合わせ件数や内覧状況が示されない場合、囲い込みが疑われます。

囲い込みを防ぐ対策

複数の不動産会社に相談

媒介契約を結ぶ前に、複数の不動産会社に査定を依頼し、対応を比較しましょう。査定価格だけでなく、売却戦略、レインズ登録の説明、過去の実績を確認してください。

信頼できる不動産会社を選ぶことが、囲い込みを防ぐ第一歩です。

一般媒介契約の活用

一般媒介契約は、複数の不動産会社と同時に契約できる媒介形態です。レインズ登録義務はありませんが、複数社が競争して売却活動を行うため、囲い込みのリスクが低くなります。

一般媒介契約のメリット:

  • 複数社が競争して買主を探す
  • 囲い込みが困難
  • 売主の選択肢が広がる

一般媒介契約のデメリット:

  • 各社の売却活動が不透明になる可能性
  • レインズ登録義務がない(任意登録は可能)

レインズ登録の自己確認方法

レインズ登録証明書に記載されたIDで、売主専用サイトにログインし、物件情報を確認しましょう。

  • 登録内容が正確か(価格、面積、写真等)
  • ステータスが「公開中」になっているか
  • 「商談中」「一時停止」に変更されていないか

定期的に確認し、不審な変更があれば不動産会社に問い合わせてください。

囲い込みの法的位置づけと国の対応

宅建業法違反(業務停止処分の可能性)

囲い込みは、宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約に基づく義務)、第47条(誇大広告等の禁止)に違反する可能性があります。

国土交通省は、囲い込みを行った不動産会社に対して、業務停止処分や指導を行っています(国土交通省ガイドライン)。

国土交通省のガイドライン

国土交通省は、2016年に「不動産流通市場における情報整備のあり方研究会」で囲い込み問題を取り上げ、レインズの登録・公開ルールの厳格化を推進しています。

レインズのステータス管理を強化し、「商談中」の虚偽申告を防ぐ仕組みが導入されています。

業界団体の監視強化

不動産流通経営協会(FRK)などの業界団体も、囲い込み防止のためのガイドラインを策定し、会員企業の監視を強化しています。

悪質な囲い込みが発覚した場合、会員資格停止等の処分が下されるケースもあります。

まとめ:囲い込みを防ぎ適正価格で売却する方法

不動産の囲い込みは、売主に売却期間の長期化、値下げ圧力、機会損失をもたらし、数百万円の損失につながる悪質な商慣習です。

囲い込みを防ぐには、レインズ登録証明書の確認、複数の不動産会社への相談、一般媒介契約の活用が有効です。定期的にレインズの登録内容を自己確認し、不審な動きがあれば早期に対処しましょう。

信頼できる不動産会社を選び、売却活動の透明性を確保することが、適正価格でスムーズに売却するための鍵です。不動産売却を検討している方は、まず複数社に査定を依頼し、対応を比較してみましょう。

よくある質問

Q1囲い込みとは何ですか?

A1囲い込みは、売却依頼を受けた不動産会社が物件情報を他社に公開せず、自社で買主を見つけて両手仲介(売主・買主の両方から仲介手数料を受け取る)を狙う行為です。売主は売却期間の長期化、値下げ圧力、機会損失により数百万円の損失を被る可能性があります。宅建業法違反の可能性があり、国土交通省が監視を強化しています。

Q2囲い込みをされているか確認する方法は?

A2レインズ登録証明書を受け取り、売主専用サイトで登録内容を確認してください。ステータスが「商談中」「一時停止」に不自然に変更されていないか、物件情報が正確に掲載されているかをチェックします。また、知人や別の不動産会社を通じて自分の物件に問い合わせをし、「商談中」と虚偽の回答があれば囲い込みの可能性が高いです。

Q3囲い込みを防ぐにはどうすればいいですか?

A3複数の不動産会社に査定を依頼し、対応を比較して信頼できる会社を選ぶことが重要です。一般媒介契約を活用すれば、複数社が競争して売却活動を行うため、囲い込みのリスクが低くなります。また、レインズ登録証明書を受け取り、定期的に登録内容を自己確認することで、不審な動きを早期に発見できます。

Q4囲い込みは違法ですか?

A4囲い込みは宅地建物取引業法第34条の2(媒介契約に基づく義務)、第47条(誇大広告等の禁止)に違反する可能性があり、国土交通省は業務停止処分や指導を行っています。「商談中」と虚偽の回答をして他社を排除する行為は、法令違反として処分対象になります。悪質な囲い込みを発見した場合、国土交通省や都道府県の宅建業指導担当部署に通報することができます。

Q5一般媒介契約と専任媒介契約、どちらが良いですか?

A5囲い込みのリスクを避けたい場合は一般媒介契約が有効ですが、複数社の売却活動が不透明になる可能性があります。専任媒介契約は1社に専念して売却活動を任せられますが、囲い込みのリスクがあるため、信頼できる会社を選ぶことが重要です。レインズ登録義務があり、売却活動報告を受けられるため、透明性を確保しやすいです。どちらを選ぶかは、物件の状況や希望に応じて判断してください。