悪徳不動産会社を見分けるには
不動産取引を検討する際、「悪徳不動産会社のリストはないか」と探す方は少なくありません。しかし、特定の会社名を公開したリストは存在せず、自分で見分ける力が必要です。
この記事では、悪徳不動産会社の典型的な手口、見分け方のポイント、トラブル時の相談先を、国土交通省・国民生活センターの公式情報を元に解説します。
法的根拠に基づく判断基準を理解し、信頼できる不動産会社を選べるようになります。
この記事のポイント
- 悪徳不動産会社の公開リストは存在しないが、国土交通省の行政処分情報で処分歴を確認できる
 - 典型的な手口は誇大広告、囲い込み、重要事項説明の不足、強引な契約誘導
 - 宅建業免許番号、更新回数、口コミ、行政処分歴で信頼性を判断できる
 - トラブル時は宅建協会、国民生活センター、弁護士に相談可能
 - 複数社を比較し、契約書を慎重に確認することが重要
 
悪徳不動産会社の典型的な5つの手口
悪徳不動産会社の典型的な手口を理解することで、事前にリスクを回避できます。
誇大広告・虚偽の情報提供
「駅徒歩5分」と広告に記載しながら実際は徒歩15分、「日当たり良好」と記載しながら実際は北向き等、虚偽の情報を提供するケースがあります。
宅地建物取引業法第32条により、著しく事実に相違する表示または実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示をすることは禁止されています。違反した場合、業務停止命令や免許取消の対象となります。
囲い込み(両手仲介の強要)
売主と買主の両方から仲介手数料を得るため、他社からの購入希望者を拒否する「囲い込み」が問題となっています。売主にとっては売却機会の損失、買主にとっては選択肢の制限につながります。
囲い込みは法律で明確に禁止されていませんが、業界の自主規制違反とされます。2025年以降、宅建業法施行規則の改正により指示処分の対象となります。
重要事項説明の不足・省略
宅地建物取引業法第35条により、重要事項説明が義務付けられています。しかし、説明を省略したり、不利な情報を隠したりする悪徳業者が存在します。
重要事項説明書には、物件の権利関係、法令上の制限、契約解除の条件等が記載されます。説明を受ける時間を十分に確保し、不明点は質問しましょう。
強引な契約誘導・クーリングオフ妨害
「今日契約しないと他の人に売れる」等の理由で強引に契約を迫るケースがあります。また、クーリングオフ(契約解除)の権利を説明しない業者もいます。
宅地建物取引業法第37条の2により、クーリングオフの説明義務があります。説明を受けていない場合、クーリングオフ期間(8日間)が開始しません。
手付金・申込金の不正取得
契約前に手付金や申込金を要求し、契約が成立しなかった場合でも返金しないケースがあります。
申込金は原則として返金されるべきものであり、返金しない場合は不当です。契約前の金銭授受は慎重に判断しましょう。
信頼できる不動産会社の見分け方
信頼できる不動産会社を見分けるポイントは以下の通りです。
宅建業免許番号を確認
すべての不動産会社は、国土交通大臣または都道府県知事から宅地建物取引業の免許を受けています。免許番号は、会社の看板、名刺、ホームページに記載されています。
免許番号の形式は以下の通りです。
- 国土交通大臣免許: 国土交通大臣(○)第○○○○○号
 - 都道府県知事免許: ○○県知事(○)第○○○○○号
 
カッコ内の数字は更新回数を示し、数字が大きいほど長く営業していることを意味します(5年ごとに更新)。
行政処分歴を確認
国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで、過去の行政処分歴を確認できます。
業務停止命令、指示処分、免許取消等の処分歴がある場合、注意が必要です。ただし、処分後に改善している可能性もあるため、処分内容と時期を確認しましょう。
宅建協会への加盟状況
全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)または不動産流通経営協会(FRK)への加盟状況を確認しましょう。加盟している業者は、業界の自主規制を遵守する姿勢があると言えます。
加盟業者は、ハトマーク(全宅連)またはウサギマーク(FRK)を掲示しています。
口コミ・評判を確認
インターネット上の口コミ・評判を参考にすることも有効です。ただし、口コミは主観的な意見であり、競合他社による誹謗中傷の可能性もあるため、複数の情報源を比較しましょう。
Googleマップのレビュー、不動産ポータルサイトの口コミ等を確認できます。
対応の丁寧さ・透明性
実際に問い合わせた際の対応の丁寧さ、質問への回答の明確さ、契約条件の透明性を確認しましょう。
- 質問に丁寧に回答: 専門用語を平易に説明してくれるか
 - 不利な情報も開示: デメリットも正直に説明するか
 - 契約を急がせない: 十分な検討時間を与えてくれるか
 
これらのポイントを総合的に判断し、信頼できる業者を選びましょう。
トラブル時の相談先
不動産取引でトラブルが発生した場合、以下の相談先があります。
宅地建物取引業協会の相談窓口
全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)または不動産流通経営協会(FRK)の相談窓口で、無料相談を受けられます。
加盟業者によるトラブルの場合、業界団体が調査・指導を行う場合があります。
国民生活センター・消費生活センター
国民生活センターまたは各地の消費生活センターで、不動産取引のトラブル相談を受けられます。
消費者ホットライン(188)に電話すると、最寄りの消費生活センターを案内してもらえます。
法テラス・弁護士
法的なトラブル(契約不履行、損害賠償請求等)の場合、法テラスまたは弁護士に相談しましょう。
法テラスでは、資力が一定以下の場合、無料法律相談を受けられます。弁護士への相談は、初回30分5,000円程度が一般的です(2025年時点の一般的な相場)。
都道府県の宅建業担当部署
都道府県知事免許の業者によるトラブルの場合、都道府県の宅建業担当部署に相談できます。行政処分の対象となる違反行為があれば、調査・指導が行われます。
国土交通大臣免許の業者の場合は、各地方整備局の建政部に相談します。
契約前に確認すべき5つのポイント
契約前に以下のポイントを確認することで、トラブルを未然に防げます。
重要事項説明書を熟読
重要事項説明書には、物件の権利関係、法令上の制限、契約解除の条件等が記載されています。宅地建物取引士の記名・押印があることを確認し、不明点は質問しましょう。
説明を受ける時間を十分に確保し、契約を急がされる場合は注意が必要です。
契約書の内容を確認
契約書の記載内容(物件の表示、売買代金、支払時期、引渡時期、契約解除の条件等)を一字一句確認しましょう。口頭での約束は後で証明できないため、すべて書面に記載してもらうことが重要です。
手付金の額・返金条件を確認
手付金の額(一般的には売買代金の5-10%)、返金条件(契約解除時の扱い)を確認しましょう。手付金を支払う前に、契約解除の条件を明確にすることが重要です。
仲介手数料の額を確認
仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法で以下のように定められています。
| 売買代金 | 仲介手数料の上限 | 
|---|---|
| 200万円以下 | 売買代金の5%+消費税 | 
| 200万円超〜400万円以下 | 売買代金の4%+2万円+消費税 | 
| 400万円超 | 売買代金の3%+6万円+消費税 | 
(出典: 宅地建物取引業法)
上限を超える仲介手数料を請求された場合は、違法です。
クーリングオフの説明を受ける
宅地建物取引業法により、一定の条件下でクーリングオフ(契約解除)が可能です。クーリングオフの条件(契約場所、期間等)、手続き方法を必ず説明してもらいましょう。
クーリングオフの説明を受けていない場合、クーリングオフ期間(8日間)が開始しません。
まとめ:複数社を比較し慎重に判断する
悪徳不動産会社の公開リストは存在しませんが、宅建業免許番号、行政処分歴、口コミ、対応の丁寧さで信頼性を判断できます。
典型的な手口(誇大広告、囲い込み、重要事項説明の不足、強引な契約誘導、手付金の不正取得)を理解し、リスクを回避しましょう。
契約前に重要事項説明書・契約書を熟読し、手付金の返金条件、仲介手数料の額、クーリングオフの説明を確認することが重要です。トラブル時は宅建協会、国民生活センター、弁護士に相談しましょう。
次のアクションとして、①複数の不動産会社に問い合わせ、②行政処分歴を確認、③重要事項説明書を慎重に確認することを進めましょう。信頼できる業者を選ぶことで、安心して不動産取引を進められます。
