不動産取引の消費税|課税・非課税の違いを正しく理解する
不動産の売買や賃貸を検討している方にとって、「どの費用に消費税がかかるのか」「土地と建物で扱いが違うのか」という疑問は、資金計画に直結する重要なポイントです。
この記事では、不動産取引における消費税の課税対象・非課税取引の違い、個人間売買と事業者売買での扱いの違い、仲介手数料や登記費用などの諸費用の消費税を、国税庁の公式情報を元に解説します。
不動産取引で実際に支払う税額を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 土地の売買・貸付は消費税非課税、建物の売買は課税が原則(執筆時点2025年、税率10%)
 - 個人が自宅を売る場合(事業でない)は建物も非課税だが、事業者が売る場合は建物に消費税がかかる
 - 仲介手数料、司法書士報酬、住宅ローン事務手数料は課税、登録免許税・印紙税は非課税(税金には消費税がかからない)
 - 売買契約書では建物価格と土地価格を分けて表示し、建物価格×10%が消費税額となる
 - 2023年10月開始のインボイス制度により免税事業者の扱いが変わっているため、最新の税制を確認する必要がある
 
土地は非課税・建物は課税の基本ルール
土地の売買・貸付は非課税
国税庁によると、土地の譲渡・貸付は消費税法により非課税取引とされています。これは、土地が「資本の移転」とみなされ、消費行為に該当しないためです。
非課税となる取引:
- 土地の売買
 - 土地の貸付(1ヶ月未満の短期貸付を除く)
 - 借地権の設定・譲渡
 
土地を1,000万円で購入する場合、消費税はかかりません。
建物の売買は課税が原則
一方、建物の売買は消費税の課税対象です。建物は「消費される財産」とみなされるため、事業者が売る場合は消費税がかかります。
計算例(建物価格2,000万円の場合):
- 消費税: 2,000万円 × 10% = 200万円
 - 支払総額: 2,200万円
 
執筆時点(2025年)の消費税率は10%です。国土交通省によると、2019年10月に8%から10%に引き上げられました。
個人間売買と事業者売買の違い
個人が自宅を売る場合(事業でない)
国税庁によると、個人が自宅を売る場合(事業として行っていない)は、建物も非課税となります。
これは、消費税が「事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡」に課税されるためです。個人が自宅を売る行為は事業に該当しないため、建物に消費税はかかりません。
例: 個人Aさんが自宅(土地1,000万円・建物1,500万円)を個人Bさんに売却
- 土地: 非課税
 - 建物: 非課税(事業でないため)
 - 消費税: 0円
 
事業者が売る場合(課税事業者)
不動産会社や投資家など、事業として不動産を売買する場合は、建物に消費税がかかります。
課税事業者の判定: 国税庁によると、基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超える事業者は課税事業者となります。
例: 不動産会社が新築マンション(土地1,000万円・建物2,000万円)を販売
- 土地: 1,000万円(非課税)
 - 建物: 2,000万円 + 消費税200万円 = 2,200万円
 - 支払総額: 3,200万円
 
諸費用の消費税|課税・非課税を整理
不動産取引では、物件価格以外に仲介手数料・登記費用・ローン関連費用などの諸費用がかかります。これらの消費税の扱いを整理します。
仲介手数料(課税)
国税庁によると、仲介手数料は課税対象です。土地の売買自体は非課税でも、仲介という「サービス」に対する対価には消費税がかかります。
計算例(物件価格3,000万円の場合):
- 仲介手数料: (3,000万円 × 3% + 6万円)+ 消費税10% = 105.6万円
 
司法書士報酬(課税)
登記手続きを司法書士に依頼する場合の報酬は課税対象です。登記という「サービス」に対する対価のためです。
目安: 5-10万円 + 消費税10% = 5.5-11万円
住宅ローン事務手数料(課税)
住宅ローンを組む際の事務手数料は課税対象です。金融機関により定額型(3-5万円+消費税)または定率型(借入額×2.2%)があります。
例(借入3,000万円、定率型2.2%の場合):
- 事務手数料: 3,000万円 × 2.2% = 66万円(消費税込)
 
登録免許税・印紙税(非課税)
登録免許税・印紙税は「税金」であり、税金には消費税がかからないため非課税です。
登録免許税(所有権移転登記):
- 土地: 固定資産税評価額 × 2%(2025年3月31日まで1.5%に軽減)
 - 建物(中古): 固定資産税評価額 × 2%
 
印紙税:
- 売買契約書: 1,000万円超5,000万円以下で1万円(2027年3月31日まで軽減措置)
 
不動産取引の消費税|具体的な計算例
新築マンション購入の場合(事業者売買)
前提条件:
- 物件価格: 土地1,000万円 + 建物2,500万円 = 3,500万円
 - 仲介手数料: なし(売主直売)
 - 司法書士報酬: 10万円
 - 住宅ローン事務手数料: 借入3,000万円 × 2.2% = 66万円
 
消費税の内訳:
- 建物: 2,500万円 × 10% = 250万円
 - 司法書士報酬: 10万円 × 10% = 1万円(報酬に含まれる)
 - 住宅ローン事務手数料: 66万円(消費税込)
 - 消費税合計: 約250万円
 
支払総額: 3,500万円 + 250万円(建物消費税) + 10万円(司法書士) + 66万円(事務手数料) + 登録免許税等 = 約3,850万円
中古住宅購入の場合(個人間売買)
前提条件:
- 物件価格: 土地800万円 + 建物1,200万円 = 2,000万円
 - 仲介手数料: (2,000万円 × 3% + 6万円) = 66万円
 - 司法書士報酬: 8万円
 
消費税の内訳:
- 建物: 0円(個人間売買のため非課税)
 - 仲介手数料: 66万円 × 10% = 6.6万円(手数料に含まれる)
 - 司法書士報酬: 8万円 × 10% = 0.8万円(報酬に含まれる)
 - 消費税合計: 約7.4万円
 
支払総額: 2,000万円 + 66万円(仲介手数料込) + 8万円(司法書士込) + 登録免許税等 = 約2,100万円
個人間売買の場合、建物の消費税がかからないため、事業者売買より有利となる場合があります。
不動産取引で消費税を抑える方法
個人間売買を検討する
中古住宅の場合、個人が売主の物件を選ぶと建物の消費税がかかりません。不動産会社が買い取って再販する物件(リノベーション物件等)は事業者売買となり建物に消費税がかかるため、個人売主の物件の方が有利となる場合があります。
土地と建物の価格配分を確認する
売買契約書では、土地価格と建物価格を分けて表示します。建物価格が高いと消費税額が増えるため、価格配分が適正か確認することが重要です。
ただし、不当に土地価格を高く設定すると、税務署から指摘を受けるリスクがあります。固定資産税評価額の比率を参考に適正な配分を行うべきです。
消費税還付を受けられるケース
事業用不動産を購入する場合、課税事業者であれば支払った消費税の還付を受けられる場合があります。詳細は税理士に相談することを推奨します。
インボイス制度と不動産取引
2023年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が開始されました。国税庁によると、課税事業者が発行する適格請求書で仕入税額控除を受ける制度です。
不動産取引への影響:
- 免税事業者(課税売上高1,000万円以下)からの仕入れは仕入税額控除を受けられない
 - 仲介手数料・司法書士報酬等で適格請求書の発行を求められる場合がある
 
免税事業者から物件を購入する場合、消費税の取り扱いが変わる可能性があるため、事前に税理士へ相談することを推奨します。
まとめ|不動産取引の消費税を正しく理解する
不動産取引では、土地は非課税・建物は課税が原則ですが、個人間売買の場合は建物も非課税となります。仲介手数料や司法書士報酬などの諸費用には消費税がかかるため、物件価格だけでなく諸費用も含めた総額で資金計画を立てることが重要です。
執筆時点(2025年)の消費税率は10%ですが、税制は改正される可能性があるため、最新の情報を確認してください。消費税の計算や税務申告に不安がある場合は、税理士に相談することを推奨します。
信頼できる不動産会社や税理士に相談しながら、正確な資金計画を立てましょう。
