住宅ローンのボーナス払いはやめた方がいい?
住宅ローンを組む際に「ボーナス払いを利用すれば月々の返済額が減る」と勧められ、利用すべきか迷っている方は多いのではないでしょうか。
この記事では、住宅ローンのボーナス払いのメリット・デメリット、総返済額への影響、利用すべきケース・避けるべきケースを、三井住友銀行・三菱UFJ銀行などの公式情報と厚生労働省のデータを元に解説します。
自分の雇用形態やライフプランを考慮し、ボーナス払いが適しているか判断できるようになります。
この記事のポイント
- ボーナス払いは月々の返済額を軽減できるが、ボーナスは法的支給義務がなく業績や評価で変動するリスクがある
- 元金の減りが遅くなるため、総返済額が月払いのみより増加する可能性がある
- 途中変更には再審査と手数料(数千円〜数万円)が必要で、承認されない場合もある
- 公務員・大企業正社員など安定した収入がある場合でも、繰り上げ返済の方が柔軟性が高い
- 迷う場合は月払いのみで契約し、余裕があるときに繰り上げ返済する方法を推奨
住宅ローンのボーナス払いとは?仕組みと基本
ボーナス払い併用の仕組み
ボーナス払い併用とは、月々の返済に加えて年2回(通常6月・12月)にまとまった金額を返済する方式です。三井住友銀行によると、月々の返済額を抑えられる一方、年2回のボーナス時に大きな支払いが発生する特性があります。
例えば、借入3,000万円・35年返済・金利1.0%の場合、月払いのみだと月約8.5万円ですが、ボーナス払いを併用すると月5万円・ボーナス時30万円といった形になります。
ボーナス払いの上限割合
三菱UFJ銀行の公式サイトによると、ボーナス払いの割合は総返済額の40-50%が上限とされています。金融機関により異なりますが、50%を超える設定は一般的に認められません。
この上限は、ボーナスが不安定な収入であることを金融機関も認識しているためです。
ボーナス払いのメリット3点
月々の返済負担が軽減される
ボーナス払いの最大のメリットは、月々の返済額を抑えられる点です。家計の圧迫を回避でき、日々の生活費に余裕が生まれます。
特に、子育て世帯など月々の支出が多い家庭では、月払いを減らすことで家計管理がしやすくなる場合があります。
借入可能額が増える可能性
月々の返済額が減ることで、返済比率(年間返済額÷年収×100)が低く見えます。金融機関の審査では返済比率が重視されるため、月払いのみより借入可能額が増える可能性があります。
ただし、これは見かけ上の効果であり、ボーナス減額リスクを考慮すると推奨できません。
返済比率が低く見える
三井住友銀行によると、月払いが減るため返済比率が低く見えることで、金融機関の審査が通りやすくなる場合があります。
しかし、実際には年2回のボーナス払いがあるため、家計への負担は変わりません。
ボーナス払いのデメリット5点
ボーナスは法的に支給義務がない
厚生労働省大阪労働局によると、ボーナスは法的に支給義務がなく、業績悪化・転職・リストラで減額または不支給になるリスクがあります。
20-35年という住宅ローンの長期間で、ボーナスが安定的に支給される保証はありません。中小企業では業績により大きく変動する場合が多く、リスクは高まります。
長期間使途が固定される
ボーナス払いを選択すると、20-35年の長期間にわたりボーナスの使途が固定されます。教育費・医療費・介護費用など、予期しないライフイベントへの対応が困難になるリスクがあります。
特に、子どもの進学や親の介護など、まとまった支出が必要な時期にボーナスを自由に使えないことは大きな制約となります。
総返済額が増加する可能性
ボーナス払いは年2回しか元金が減らないため、月払いのみより元金の減りが遅く、利息負担が増える傾向にあります。北國銀行の解説によると、ボーナス払いの割合を高めると総返済額が増加する理由は、元金の減少が遅れるためです。
具体的な金額は次のセクションで解説します。
途中変更には再審査と手数料が必要
SUUMOによると、ボーナス払いから月払いのみへの変更には再審査が必要で、三井住友銀行では5,500円などの手数料がかかります。
返済能力の再評価が行われ、審査に通らない可能性もあります。ボーナスが減った時に変更できないリスクを考慮する必要があります。
ボーナス減額時の家計への打撃が大きい
ボーナス払いの割合を高めすぎると(上限は40-50%)、ボーナス減額時の家計への打撃が大きくなります。例えば、ボーナス時30万円の返済が必要な場合、ボーナスが50万円から30万円に減額されると、手元に残るのはわずかとなります。
貯蓄を切り崩す、生活水準を下げるなどの対応が必要になるリスクがあります。
返済シミュレーション:月払いのみ vs ボーナス併用
具体的な数値での比較
借入3,000万円・35年返済・金利1.0%の条件で、月払いのみとボーナス併用を比較します。カーディフ生命のシミュレーションを参考にした試算例です。
| 返済方式 | 月々の返済額 | ボーナス時返済額 | 総返済額 |
|---|---|---|---|
| 月払いのみ | 約8.5万円 | 0円 | 約3,557万円 |
| ボーナス併用(30%) | 約6.0万円 | 約25万円(年2回) | 約3,570万円 |
| ボーナス併用(50%) | 約4.3万円 | 約42万円(年2回) | 約3,585万円 |
※試算例であり、実際の金額は金融機関により異なります。
総返済額の差
上記の試算では、月払いのみと比較して、ボーナス併用(50%)の場合で総返済額が約28万円増加しています。これは元金の減りが遅いため、利息負担が増えるためです。
長期的には月払いのみの方が有利となる傾向があります。
ボーナス払いを利用すべきケース・避けるべきケース
利用推奨ケース
以下のケースでは、ボーナス払いの利用を検討できる可能性があります。
- 公務員: ボーナスが比較的安定している
- 大企業正社員: 業績が安定している大手企業の正社員
- 短期間での完済予定: 5-10年程度で完済予定で、ボーナスの変動リスクが低い
ただし、三井住友銀行でも、繰り上げ返済という柔軟な代替手段が推奨されています。公務員でも20-35年の長期間で制度改正のリスクがあるため、慎重な判断が必要です。
利用非推奨ケース
以下のケースでは、ボーナス払いの利用は避けるべきです。
- 中小企業勤務: 業績によりボーナスが大きく変動するリスクが高い
- 転職予定者: 転職先でボーナスが支給されない可能性がある
- 自営業者: ボーナスという概念がなく、収入が不安定
- 教育費等の支出予定: 子どもの進学など、まとまった支出が予想される
SUUMOによると、ボーナスに余裕があるときだけ繰り上げ返済する方が、使途の柔軟性が高く推奨されます。
ボーナス払いから月払いのみへ変更する方法
変更時の手続き
ボーナス払いから月払いのみへの変更には、金融機関への申請が必要です。SUUMOによると、以下の手続きが必要になります。
- 金融機関に変更を申請
- 返済能力の再審査を受ける
- 手数料を支払う(三井住友銀行は5,500円)
- 承認後、新しい返済計画で契約
手数料と再審査
変更時には数千円〜数万円の手数料がかかり、金融機関により異なります。また、返済能力の再評価が行われるため、収入が減少している場合は承認されない可能性もあります。
ボーナスが減った時に変更できないリスクを考慮し、最初から月払いのみで契約する方が安全です。
ボーナスが減った場合の対処法
ボーナス払いを利用中にボーナスが減額された場合、以下の対処法があります。
- 繰り上げ返済の一時停止: ボーナス払い以外の繰り上げ返済を一時停止し、資金を確保
- 返済条件の見直し: 金融機関に返済期間の延長を相談(審査が必要)
- 貯蓄の切り崩し: 緊急時の貯蓄を使って対応
いずれの場合も、早期に金融機関へ相談することが重要です。
まとめ:ボーナス払いは慎重に判断を
住宅ローンのボーナス払いは、月々の返済負担を軽減できる一方、ボーナスの不安定性や総返済額増加のデメリットがあります。
自分の雇用形態・勤務先の安定性・ライフプランを考慮し、慎重に判断することが重要です。迷う場合は月払いのみで契約し、余裕があるときに繰り上げ返済する柔軟な方法を推奨します。
信頼できる金融機関や住宅ローンアドバイザーに相談しながら、無理のない返済計画を立てましょう。
