不動産売買の仲介手数料はいくら?計算方法と値引き交渉

公開日: 2025/10/26

不動産売買の仲介手数料とは?成功報酬の仕組み

不動産の売買を検討する際、「仲介手数料はいくらかかるのか」「高いと感じるが妥当なのか」と疑問に思う方は少なくありません。

この記事では、不動産売買の仲介手数料の法定上限、計算方法、値引き交渉のポイントを、国土交通省の公式情報を元に解説します。仲介手数料の仕組みを正しく理解し、適正な費用で不動産取引ができるようになります。

この記事のポイント

  • 仲介手数料は成功報酬で、成約しない限り発生しない
  • 法定上限はあるが下限はない(400万円超は売買価格×3%+6万円+消費税)
  • 仲介手数料無料・半額サービスは両手仲介やコスト削減が仕組み
  • 値引き交渉は媒介契約前が最適なタイミング
  • 専任媒介契約を結ぶ場合、値引き交渉の余地がある

仲介手数料は成功報酬

仲介手数料とは、不動産売買の成約時に不動産会社に支払う成功報酬です。国土交通省の公式サイトによると、成約しない限り発生しないため、物件を探している段階や内見のみの段階では支払う必要はありません。

仲介手数料は宅地建物取引業法で上限額が定められていますが、下限はありません。つまり、上限いっぱいまで支払う義務はなく、値引き交渉も可能です。ただし、上限を超える請求は違法です。

また、仲介手数料には消費税が課税されます(2025年時点で10%)。仲介サービスへの対価として課税対象となるためです。

仲介手数料の法定上限と計算方法

仲介手数料の法定上限は、物件価格に応じて段階的に設定されています。

段階的な料率(200万円以下・200-400万円・400万円超)

国土交通省の公式情報によると、仲介手数料の法定上限は以下の通りです。

物件価格 料率
200万円以下の部分 5% + 消費税
200万円超〜400万円以下の部分 4% + 消費税
400万円超の部分 3% + 消費税

(出典: 国土交通省

例えば、物件価格3000万円の場合、段階的に計算すると以下のようになります。

  • 200万円以下の部分: 200万円 × 5% = 10万円
  • 200万円超〜400万円の部分: 200万円 × 4% = 8万円
  • 400万円超の部分: 2600万円 × 3% = 78万円
  • 合計: 10万円 + 8万円 + 78万円 = 96万円
  • 消費税込: 96万円 × 1.1 = 105.6万円

速算式「売買価格×3%+6万円+消費税」

毎回段階的に計算するのは面倒なので、400万円超の物件の場合は以下の速算式を使えます。

速算式: (売買価格 × 3% + 6万円)× 1.1(消費税込)

この速算式を使うと、物件価格3000万円の場合は以下のように計算できます。

(3000万円 × 3% + 6万円)× 1.1 = 105.6万円

速算式は段階的な料率計算を省略した簡易版で、結果は同じになります。

売買価格別の仲介手数料早見表

以下は、主要な価格帯での仲介手数料の上限額(消費税込)です。

物件価格 仲介手数料上限(消費税込)
1000万円 39.6万円
2000万円 72.6万円
3000万円 105.6万円
4000万円 138.6万円
5000万円 171.6万円

(出典: 国土交通省の料率を元に計算)

2024年7月改正(800万円以下の特例)

2024年7月改正により、800万円以下の物件の仲介手数料上限が**33万円(税込)**に引き上げられました。従来は段階的な料率計算で最大19.8万円程度でしたが、空き家問題への対応として「低廉な空き家等の特例」が導入されました。

これにより、不動産会社が低価格の空き家の仲介をしやすくなり、空き家流通の促進が期待されています。

仲介手数料無料・半額サービスの仕組みと注意点

最近、「仲介手数料無料」「半額」を謳う不動産会社が増えています。なぜ無料・半額にできるのか、仕組みと注意点を解説します。

両手仲介で手数料無料になる理由

仲介手数料無料・半額の最も一般的な仕組みは両手仲介です。

両手仲介とは、不動産会社が売主・買主の両方を仲介し、双方から仲介手数料を受け取ることです。例えば、物件価格3000万円の場合、売主から105.6万円、買主から105.6万円を受け取り、合計211.2万円の収入になります。

このため、買主から手数料を取らなくても(または半額にしても)、売主から手数料を受け取れるため、無料・半額が可能になります。

両手仲介は法的には問題ありませんが、売主・買主双方の利益を同時に代表するため、利益相反のリスクがあります。例えば、売主は高く売りたい、買主は安く買いたい、という相反する利益を同時に調整する難しさがあります。

ただし、両手仲介自体を禁止する法律はなく、多くの不動産会社が行っています。

売主が不動産会社・広告費削減のケース

他にも以下のケースで仲介手数料無料・半額が可能になります。

  • 売主が不動産会社の場合: 自社物件を売る場合、仲介が不要なので手数料がかからない
  • コスト削減: 広告費・人件費を抑え、その分を買主に還元

無料サービスの注意点(別名目請求、サービス品質)

仲介手数料無料・半額サービスには以下の注意点があります。

  • 別名目での請求: 「仲介手数料無料」でも、書類作成費・事務手数料・コンサルティング費等の別名目で請求される事例があります。契約前に総費用を確認し、追加費用の有無を書面で確認しましょう。
  • サービス品質の差: 仲介手数料が主な収入源のため、無料・半額にすると販売活動の優先度が下がる可能性があります。広告費をかけない、内見対応が少ない等のリスクがあります。

無料・半額サービスを利用する場合は、サービス内容を事前に確認することが重要です。

仲介手数料の値引き交渉はできる?タイミングと注意点

仲介手数料は法定上限があるだけで下限はないため、値引き交渉は可能です。ただし、タイミングと交渉方法が重要です。

値引き交渉の最適なタイミング(媒介契約前)

値引き交渉の最適なタイミングは媒介契約前です。成約後や媒介契約後は交渉が困難です。

媒介契約とは、不動産の売却・購入を不動産会社に依頼する際の契約です。この契約を結ぶ前に、「仲介手数料を〇%値引きしてほしい」「専任媒介契約を結ぶ代わりに手数料を半額にしてほしい」等の交渉を行いましょう。

専任媒介契約との関係

専任媒介契約を結ぶ場合、他の不動産会社に依頼できない代わりに、値引き交渉の余地があります。不動産会社としても、専任媒介契約で確実に仲介できるメリットがあるため、手数料を値引きしてでも契約を取りたいと考えることがあります。

また、住み替えの場合、売却と購入の両方を同じ不動産会社に依頼することで、値引き交渉がしやすくなります。

過度な値引き要求のリスク

仲介手数料は不動産会社の主な収入源です。過度な値引き要求は、以下のリスクがあります。

  • 優先度を下げられる: 広告費をかけない、内見対応が少ない等、販売活動の優先度が下がる
  • 後回しにされる: 他の物件を優先される

バランスのとれた交渉を心がけましょう。例えば、「専任媒介契約を結ぶので10%値引きしてほしい」等の代替案を提示すると、交渉が成立しやすくなります。

媒介契約の種類による違い

媒介契約には、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約の3種類があります。契約形態により、値引き交渉の余地や不動産会社の販売活動の熱意が異なります。

契約種類 複数社に依頼 自己発見取引 値引き交渉の余地 不動産会社の熱意
専属専任媒介 ✕(1社のみ) ✕(禁止) 高い
専任媒介 ✕(1社のみ) ○(可能) 高い
一般媒介 ○(複数社) ○(可能) 低い

専属専任・専任媒介は1社のみに依頼するため、不動産会社の熱意が高く、値引き交渉の余地があります。ただし、専属専任媒介は自己発見取引(自分で買主を見つけること)も禁止されています。

一般媒介は複数社に依頼できますが、各社の熱意が下がるため、値引き交渉は難しい傾向です。

契約形態により不動産会社の販売活動の優先度が異なるため、自分の状況に合った契約を選びましょう。

まとめ:仲介手数料は上限あり・下限なし

不動産売買の仲介手数料は、法定上限(400万円超は売買価格×3%+6万円+消費税)がありますが、下限はありません。上限いっぱいまで支払う義務はなく、値引き交渉も可能です。

仲介手数料無料・半額サービスは、両手仲介やコスト削減が仕組みです。利用する場合は、別名目請求やサービス品質に注意し、契約前に総費用を確認しましょう。

値引き交渉は媒介契約前が最適で、専任媒介契約を結ぶ代わりに手数料を値引きする等の代替案を提示すると交渉が成立しやすくなります。ただし、過度な値引き要求は販売活動の優先度を下げられるリスクがあるため、バランスのとれた交渉を心がけましょう。

複数の不動産会社に査定を依頼し、手数料・サービス内容を比較することをおすすめします。

よくある質問

Q1仲介手数料は必ず上限額を支払う必要がありますか?

A1いいえ。法定上限はあくまで「上限」であり、下限はありません。値引き交渉は可能ですが、不動産会社の主な収入源であるため、過度な要求は後回しにされるリスクがあります。媒介契約前が交渉の最適なタイミングです。専任媒介契約を結ぶ代わりに手数料を値引きする等の代替案を提示すると、交渉が成立しやすくなります。

Q2両手仲介は違法ではないのですか?

A2法的には問題ありません。ただし、売主・買主双方の利益を同時に代表するため、利益相反のリスクがあります。例えば、売主は高く売りたい、買主は安く買いたい、という相反する利益を同時に調整する難しさがあります。片手仲介(一方のみを仲介)の方がリスクは少ないですが、両手仲介自体を禁止する法律はありません。

Q3仲介手数料無料サービスで別名目(書類作成費等)を請求されることはありますか?

A3はい、事例があります。「仲介手数料無料」でも書類作成費・事務手数料・コンサルティング費等の別名目で請求される場合があります。契約前に総費用を確認し、追加費用の有無を書面で確認することをおすすめします。また、サービス品質(広告費をかけない、内見対応が少ない等)にも注意が必要です。

Q42024年7月改正で800万円以下の物件の仲介手数料が変わったと聞きました。

A4はい。低廉な空き家等の特例として、800万円以下の物件の仲介手数料上限が33万円(税込)に引き上げられました。従来は段階的な料率計算で最大19.8万円程度でしたが、空き家問題への対応として導入されました。これにより、不動産会社が低価格の空き家の仲介をしやすくなり、空き家流通の促進が期待されています。

Q5専任媒介契約と一般媒介契約、どちらが手数料を安くできますか?

A5専任媒介契約の方が値引き交渉の余地があります。1社のみに依頼する代わりに、手数料の値引きや住み替え物件の購入も依頼する等の交渉が可能です。一般媒介は複数社に依頼できますが、各社の熱意が下がるため値引き交渉は難しい傾向です。契約形態により不動産会社の販売活動の優先度が異なるため、自分の状況に合った契約を選びましょう。