不動産の評価額とは│4つの評価額の違いを理解する
不動産の評価額について、「いくつもの評価額があって混乱する」「どれが正しい評価額なのか」と疑問に感じる方は少なくありません。
この記事では、不動産の4つの評価額(実勢価格、公示地価、路線価、固定資産税評価額)の違い、用途別の使い分け、調べ方を、国土交通省や国税庁の公式情報を元に解説します。
目的に応じて適切な評価額を使い分けられるようになります。
この記事のポイント
- 不動産には4つの評価額(実勢価格、公示地価、路線価、固定資産税評価額)があり、目的により使い分ける
- 実勢価格は実際の売買価格、公示地価は国が定める基準、路線価は相続税・贈与税の計算、固定資産税評価額は固定資産税の計算に使用
- 4つの評価額の目安比率は、公示地価を100とすると、実勢価格110-120、路線価80、固定資産税評価額70
- 評価額は国土交通省・国税庁の公式サイトで無料で調べられる
- 売却時は実勢価格、相続・贈与時は路線価、固定資産税計算時は固定資産税評価額を使用する
不動産の評価額とは
不動産の評価額は、目的により異なる基準で算定されます。
4つの評価額が存在する理由
不動産には4つの評価額があります。それぞれ異なる目的で使用されます。
| 評価額 | 目的 | 算定主体 | 
|---|---|---|
| 実勢価格 | 実際の売買 | 市場(買主・売主) | 
| 公示地価 | 土地取引の指標 | 国土交通省 | 
| 路線価 | 相続税・贈与税の計算 | 国税庁 | 
| 固定資産税評価額 | 固定資産税の計算 | 市区町村 | 
4つの評価額が存在する理由は、評価の目的が異なるためです。実勢価格は市場での売買価格を反映し、公示地価は公的な土地取引の指標、路線価は相続税・贈与税の計算、固定資産税評価額は固定資産税の計算に使用されます。
4つの評価額の目安比率
4つの評価額の目安比率は、公示地価を100とすると以下の通りです。
| 評価額 | 比率 | 
|---|---|
| 実勢価格 | 110-120 | 
| 公示地価 | 100 | 
| 路線価 | 80 | 
| 固定資産税評価額 | 70 | 
これらはあくまで目安です。実勢価格は市場の需給により大きく変動します。
実勢価格│実際の売買価格
実勢価格は、実際に不動産が売買される際の価格です。
実勢価格の特徴
実勢価格は市場での需給により決まります。以下の要因で変動します。
- 立地条件(駅からの距離、周辺環境)
- 物件の状態(築年数、設備、管理状況)
- 市場動向(需要・供給のバランス)
- 売主・買主の事情(急いで売りたい、高くても買いたい等)
実勢価格は公示地価の**110-120%**程度が目安ですが、立地や物件の状態により大きく異なります。
実勢価格の調べ方
実勢価格は以下の方法で調べられます。
- 国土交通省「土地総合情報システム」: 実際の不動産取引価格を検索できる(国土交通省)
- 不動産ポータルサイト: 同じエリアの類似物件の販売価格を確認
- 不動産会社の査定: 複数の不動産会社に査定を依頼
国土交通省の土地総合情報システムでは、実際の取引事例を検索でき、地域・物件種別ごとの相場を把握できます。
実勢価格を使う場面
実勢価格は以下の場面で使用します。
- 不動産売却: 売却価格の目安として
- 不動産購入: 購入価格の妥当性判断として
- 住宅ローン審査: 金融機関が担保価値を評価する際に参考にする
公示地価│国が定める土地取引の指標
公示地価は、国土交通省が毎年公表する標準地の価格です。
公示地価の特徴
公示地価は、国土交通省の土地鑑定委員会が、全国の標準地(約26,000地点)の価格を毎年1月1日時点で評価し、3月に公表します。
公示地価の目的は以下の通りです。
- 一般の土地取引の指標
- 公共事業用地の取得価格の算定基準
- 固定資産税評価額・相続税評価額(路線価)の基準
公示地価は1㎡あたりの価格で表示されます。
公示地価の調べ方
公示地価は国土交通省の公式サイトで無料で調べられます。
「標準地・基準地検索システム」を使い、住所または地図から標準地を検索できます。
公示地価を使う場面
公示地価は以下の場面で使用します。
- 土地取引の参考: 売買価格の妥当性を判断する際の目安
- 公共事業用地の買収: 国や自治体が用地を取得する際の基準
- 不動産鑑定評価: 不動産鑑定士が評価する際の基準
路線価│相続税・贈与税の計算基準
路線価は、国税庁が相続税・贈与税の計算のために定める評価額です。
路線価の特徴
路線価は、国税庁が毎年公表する、道路に面する土地の1㎡あたりの価格です。毎年1月1日時点で評価し、7月に公表します。
路線価は公示地価の**約80%**に設定されています。これは、相続税・贈与税の負担を軽減するための配慮です。
路線価の調べ方
路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で無料で調べられます。
住所または地図から該当する道路の路線価を確認できます。路線価図には「300D」のように数値とアルファベットが記載されており、数値は1㎡あたりの価格(千円単位)、アルファベットは借地権割合を示します。
路線価を使う場面
路線価は以下の場面で使用します。
- 相続税の計算: 相続した土地の評価額を算定
- 贈与税の計算: 贈与を受けた土地の評価額を算定
- 相続税対策: 土地の評価額を把握し、対策を検討
相続税の計算では、路線価×土地面積×補正率で土地の評価額を算定します。
固定資産税評価額│固定資産税の計算基準
固定資産税評価額は、市区町村が固定資産税を計算するために定める評価額です。
固定資産税評価額の特徴
固定資産税評価額は、市区町村が3年ごとに評価替えを行い、固定資産税・都市計画税の課税標準として使用します。
固定資産税評価額は公示地価の**約70%**に設定されています。
土地だけでなく、建物にも固定資産税評価額があります。建物の評価額は、再建築価格方式で算定されます(新築時の建築費を基準に、経年減点補正率を乗じて算定)。
固定資産税評価額の調べ方
固定資産税評価額は以下の方法で調べられます。
- 納税通知書: 毎年4-5月に市区町村から送付される納税通知書に記載
- 固定資産評価証明書: 市区町村の窓口で取得(手数料300-400円)
- 固定資産課税台帳の閲覧: 市区町村の窓口で閲覧(本人または代理人のみ)
固定資産税評価額を使う場面
固定資産税評価額は以下の場面で使用します。
- 固定資産税の計算: 固定資産税・都市計画税の課税標準
- 登録免許税の計算: 不動産登記時の登録免許税の計算基準
- 不動産取得税の計算: 不動産を取得した際の不動産取得税の計算基準
固定資産税は「固定資産税評価額×税率(標準税率1.4%)」で計算されます(総務省)。
4つの評価額の使い分け
目的に応じて適切な評価額を使い分けることが重要です。
売却・購入時
実勢価格を使用します。市場での実際の売買価格を参考にすることで、適正な価格で取引できます。
複数の不動産会社に査定を依頼し、国土交通省の土地総合情報システムで取引事例を確認することで、相場を把握できます。
相続・贈与時
路線価を使用します。相続税・贈与税の計算では、国税庁が公表する路線価を基準に土地の評価額を算定します。
路線価は公示地価の約80%のため、実勢価格よりも低く評価される傾向があります。
固定資産税計算時
固定資産税評価額を使用します。固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税の計算では、市区町村が定める固定資産税評価額を使用します。
固定資産税評価額は公示地価の約70%のため、他の評価額よりも低く設定されています。
公共事業用地の買収時
公示地価を使用します。国や自治体が公共事業用地を取得する際の基準として、公示地価を参考にします。
まとめ
不動産には4つの評価額(実勢価格、公示地価、路線価、固定資産税評価額)があり、目的により使い分けます。実勢価格は実際の売買価格、公示地価は国が定める基準、路線価は相続税・贈与税の計算、固定資産税評価額は固定資産税の計算に使用します。
4つの評価額の目安比率は、公示地価を100とすると、実勢価格110-120、路線価80、固定資産税評価額70です。評価額は国土交通省・国税庁の公式サイトで無料で調べられます。
売却時は実勢価格、相続・贈与時は路線価、固定資産税計算時は固定資産税評価額を使用することで、目的に応じた適切な評価ができます。不動産取引や税金計算の際は、それぞれの評価額の違いを理解し、正しく使い分けましょう。
