不動産の評価額とは?4つの評価額の違いと使い分け

公開日: 2025/10/26

不動産の評価額とは│4つの評価額の違いを理解する

不動産の評価額について、「いくつもの評価額があって混乱する」「どれが正しい評価額なのか」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産の4つの評価額(実勢価格、公示地価、路線価、固定資産税評価額)の違い、用途別の使い分け、調べ方を、国土交通省国税庁の公式情報を元に解説します。

目的に応じて適切な評価額を使い分けられるようになります。

この記事のポイント

  • 不動産には4つの評価額(実勢価格、公示地価、路線価、固定資産税評価額)があり、目的により使い分ける
  • 実勢価格は実際の売買価格、公示地価は国が定める基準、路線価は相続税・贈与税の計算、固定資産税評価額は固定資産税の計算に使用
  • 4つの評価額の目安比率は、公示地価を100とすると、実勢価格110-120、路線価80、固定資産税評価額70
  • 評価額は国土交通省・国税庁の公式サイトで無料で調べられる
  • 売却時は実勢価格、相続・贈与時は路線価、固定資産税計算時は固定資産税評価額を使用する

不動産の評価額とは

不動産の評価額は、目的により異なる基準で算定されます。

4つの評価額が存在する理由

不動産には4つの評価額があります。それぞれ異なる目的で使用されます。

評価額 目的 算定主体
実勢価格 実際の売買 市場(買主・売主)
公示地価 土地取引の指標 国土交通省
路線価 相続税・贈与税の計算 国税庁
固定資産税評価額 固定資産税の計算 市区町村

4つの評価額が存在する理由は、評価の目的が異なるためです。実勢価格は市場での売買価格を反映し、公示地価は公的な土地取引の指標、路線価は相続税・贈与税の計算、固定資産税評価額は固定資産税の計算に使用されます。

4つの評価額の目安比率

4つの評価額の目安比率は、公示地価を100とすると以下の通りです。

評価額 比率
実勢価格 110-120
公示地価 100
路線価 80
固定資産税評価額 70

これらはあくまで目安です。実勢価格は市場の需給により大きく変動します。

実勢価格│実際の売買価格

実勢価格は、実際に不動産が売買される際の価格です。

実勢価格の特徴

実勢価格は市場での需給により決まります。以下の要因で変動します。

  • 立地条件(駅からの距離、周辺環境)
  • 物件の状態(築年数、設備、管理状況)
  • 市場動向(需要・供給のバランス)
  • 売主・買主の事情(急いで売りたい、高くても買いたい等)

実勢価格は公示地価の**110-120%**程度が目安ですが、立地や物件の状態により大きく異なります。

実勢価格の調べ方

実勢価格は以下の方法で調べられます。

  1. 国土交通省「土地総合情報システム」: 実際の不動産取引価格を検索できる(国土交通省
  2. 不動産ポータルサイト: 同じエリアの類似物件の販売価格を確認
  3. 不動産会社の査定: 複数の不動産会社に査定を依頼

国土交通省の土地総合情報システムでは、実際の取引事例を検索でき、地域・物件種別ごとの相場を把握できます。

実勢価格を使う場面

実勢価格は以下の場面で使用します。

  • 不動産売却: 売却価格の目安として
  • 不動産購入: 購入価格の妥当性判断として
  • 住宅ローン審査: 金融機関が担保価値を評価する際に参考にする

公示地価│国が定める土地取引の指標

公示地価は、国土交通省が毎年公表する標準地の価格です。

公示地価の特徴

公示地価は、国土交通省の土地鑑定委員会が、全国の標準地(約26,000地点)の価格を毎年1月1日時点で評価し、3月に公表します。

公示地価の目的は以下の通りです。

  • 一般の土地取引の指標
  • 公共事業用地の取得価格の算定基準
  • 固定資産税評価額・相続税評価額(路線価)の基準

公示地価は1㎡あたりの価格で表示されます。

公示地価の調べ方

公示地価は国土交通省の公式サイトで無料で調べられます。

「標準地・基準地検索システム」を使い、住所または地図から標準地を検索できます。

公示地価を使う場面

公示地価は以下の場面で使用します。

  • 土地取引の参考: 売買価格の妥当性を判断する際の目安
  • 公共事業用地の買収: 国や自治体が用地を取得する際の基準
  • 不動産鑑定評価: 不動産鑑定士が評価する際の基準

路線価│相続税・贈与税の計算基準

路線価は、国税庁が相続税・贈与税の計算のために定める評価額です。

路線価の特徴

路線価は、国税庁が毎年公表する、道路に面する土地の1㎡あたりの価格です。毎年1月1日時点で評価し、7月に公表します。

路線価は公示地価の**約80%**に設定されています。これは、相続税・贈与税の負担を軽減するための配慮です。

路線価の調べ方

路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で無料で調べられます。

住所または地図から該当する道路の路線価を確認できます。路線価図には「300D」のように数値とアルファベットが記載されており、数値は1㎡あたりの価格(千円単位)、アルファベットは借地権割合を示します。

路線価を使う場面

路線価は以下の場面で使用します。

  • 相続税の計算: 相続した土地の評価額を算定
  • 贈与税の計算: 贈与を受けた土地の評価額を算定
  • 相続税対策: 土地の評価額を把握し、対策を検討

相続税の計算では、路線価×土地面積×補正率で土地の評価額を算定します。

固定資産税評価額│固定資産税の計算基準

固定資産税評価額は、市区町村が固定資産税を計算するために定める評価額です。

固定資産税評価額の特徴

固定資産税評価額は、市区町村が3年ごとに評価替えを行い、固定資産税・都市計画税の課税標準として使用します。

固定資産税評価額は公示地価の**約70%**に設定されています。

土地だけでなく、建物にも固定資産税評価額があります。建物の評価額は、再建築価格方式で算定されます(新築時の建築費を基準に、経年減点補正率を乗じて算定)。

固定資産税評価額の調べ方

固定資産税評価額は以下の方法で調べられます。

  1. 納税通知書: 毎年4-5月に市区町村から送付される納税通知書に記載
  2. 固定資産評価証明書: 市区町村の窓口で取得(手数料300-400円)
  3. 固定資産課税台帳の閲覧: 市区町村の窓口で閲覧(本人または代理人のみ)

固定資産税評価額を使う場面

固定資産税評価額は以下の場面で使用します。

  • 固定資産税の計算: 固定資産税・都市計画税の課税標準
  • 登録免許税の計算: 不動産登記時の登録免許税の計算基準
  • 不動産取得税の計算: 不動産を取得した際の不動産取得税の計算基準

固定資産税は「固定資産税評価額×税率(標準税率1.4%)」で計算されます(総務省)。

4つの評価額の使い分け

目的に応じて適切な評価額を使い分けることが重要です。

売却・購入時

実勢価格を使用します。市場での実際の売買価格を参考にすることで、適正な価格で取引できます。

複数の不動産会社に査定を依頼し、国土交通省の土地総合情報システムで取引事例を確認することで、相場を把握できます。

相続・贈与時

路線価を使用します。相続税・贈与税の計算では、国税庁が公表する路線価を基準に土地の評価額を算定します。

路線価は公示地価の約80%のため、実勢価格よりも低く評価される傾向があります。

固定資産税計算時

固定資産税評価額を使用します。固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税の計算では、市区町村が定める固定資産税評価額を使用します。

固定資産税評価額は公示地価の約70%のため、他の評価額よりも低く設定されています。

公共事業用地の買収時

公示地価を使用します。国や自治体が公共事業用地を取得する際の基準として、公示地価を参考にします。

まとめ

不動産には4つの評価額(実勢価格、公示地価、路線価、固定資産税評価額)があり、目的により使い分けます。実勢価格は実際の売買価格、公示地価は国が定める基準、路線価は相続税・贈与税の計算、固定資産税評価額は固定資産税の計算に使用します。

4つの評価額の目安比率は、公示地価を100とすると、実勢価格110-120、路線価80、固定資産税評価額70です。評価額は国土交通省・国税庁の公式サイトで無料で調べられます。

売却時は実勢価格、相続・贈与時は路線価、固定資産税計算時は固定資産税評価額を使用することで、目的に応じた適切な評価ができます。不動産取引や税金計算の際は、それぞれの評価額の違いを理解し、正しく使い分けましょう。

よくある質問

Q1不動産の評価額はいくつありますか?

A14つあります。実勢価格(実際の売買価格)、公示地価(国が定める基準)、路線価(相続税・贈与税の計算)、固定資産税評価額(固定資産税の計算)です。それぞれ目的が異なり、公示地価を100とすると、実勢価格110-120、路線価80、固定資産税評価額70が目安です。目的に応じて適切な評価額を使い分けることが重要です。

Q2不動産を売却する際はどの評価額を使いますか?

A2実勢価格を使います。実勢価格は市場での実際の売買価格で、立地条件、物件の状態、市場動向により変動します。国土交通省の土地総合情報システムで実際の取引事例を確認したり、複数の不動産会社に査定を依頼したりすることで、適正な売却価格を把握できます。公示地価や路線価は参考にはなりますが、実際の売買価格とは異なります。

Q3相続税の計算にはどの評価額を使いますか?

A3路線価を使います。路線価は国税庁が毎年7月に公表する、道路に面する土地の1㎡あたりの価格です。公示地価の約80%に設定されており、相続税・贈与税の負担を軽減するための配慮がされています。路線価は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で無料で調べられます。相続税の計算では、路線価×土地面積×補正率で土地の評価額を算定します。

Q4固定資産税評価額はどこで確認できますか?

A43つの方法で確認できます。1. 納税通知書(毎年4-5月に市区町村から送付)、2. 固定資産評価証明書(市区町村の窓口で取得、手数料300-400円)、3. 固定資産課税台帳の閲覧(市区町村の窓口、本人または代理人のみ)。固定資産税評価額は公示地価の約70%に設定されており、固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税の計算に使用されます。