固定資産税を払う理由とは?税の仕組みと使い道を解説

公開日: 2025/11/1

固定資産税を払う理由とは?税の仕組みを理解する

不動産を所有していると、毎年固定資産税の納税通知書が届きます。「なぜ固定資産税を払わなければならないのか」「税金はどこに使われているのか」と疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、固定資産税を払う法的根拠と税金の使途を、総務省の公式情報を元に解説します。

固定資産税の仕組みと意義を理解することで、納税の必要性を正しく把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 固定資産税は地方税法343条に基づき、毎年1月1日時点で不動産を所有する人に課される地方税
  • 標準税率は1.4%だが、市町村の条例で異なる税率を設定可能
  • 税金の使途は道路・上下水道・学校・消防・ゴミ処理等の公共サービス(普通税のため使途は定められていない)
  • 受益者負担の原則により、不動産所有者は公共サービスの恩恵を受けるため税負担する
  • 滞納すると延滞金が発生し、最終的に差し押さえのリスクがある

固定資産税を払う法的根拠

固定資産税は、日本国憲法第30条「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」に基づく法定納税義務です。

地方税法343条

固定資産税は地方税法343条で規定されており、以下の要件を満たす場合に課税されます。

  • 課税客体: 土地・家屋・償却資産(事業用の機械・設備等)
  • 納税義務者: 毎年1月1日時点で固定資産を所有する人(登記簿または固定資産課税台帳に記載された者)
  • 課税団体: 市町村(東京23区は都)
  • 標準税率: 1.4%(市町村の条例で異なる税率を設定可能)

(出典: 総務省 地方税制度|固定資産税

1月1日時点の所有者が納税義務を負う

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者(登記簿または固定資産課税台帳に記載された者)が納税義務を負います。年の途中で売却した場合でも、1月1日時点の所有者が1年分の固定資産税を納付する義務があります。

ただし、売買契約時に売主・買主間で日割り精算することが一般的です。

標準税率は1.4%だが市町村により異なる場合あり

固定資産税の標準税率は1.4%ですが、市町村は条例で異なる税率を設定できます。例えば、財政状況が厳しい市町村では1.5%以上に設定されている場合もあります。

自分の所有する不動産の税率は、固定資産税納税通知書または市町村のWebサイトで確認できます。

固定資産税を払う理由 - 受益者負担の原則

固定資産税を払う理由は、受益者負担の原則に基づいています。不動産を所有することで、道路・上下水道・学校・消防等の公共サービスの恩恵を受けるため、その価値に応じて税負担するという考え方です。

不動産所有者は公共サービスの恩恵を受ける

不動産を所有することで、以下の公共サービスの恩恵を受けています。

  • 道路・上下水道: 不動産へのアクセス、生活インフラ
  • 学校・図書館: 教育施設、文化施設
  • 消防・救急: 火災・救急対応
  • ゴミ処理・公園: 生活関連サービス
  • 街灯・防犯: 安全サービス

これらの公共サービスは、不動産の価値を維持・向上させる要因となっています。

固定資産の価値に応じた負担

固定資産税は、固定資産の価値(固定資産税評価額)に応じて課税されます。評価額が高い不動産ほど、公共サービスの恩恵を多く受けていると考えられるため、税負担も大きくなります。

計算式:

固定資産税 = 固定資産税評価額 × 税率(標準1.4%)

例:

  • 固定資産税評価額: 2,000万円
  • 税率: 1.4%

固定資産税 = 2,000万円 × 1.4% = 28万円

市町村の重要財源

固定資産税は市町村税収の41.4%を占める重要財源です(総務省 地方税制度)。市町村が公共サービスを提供するための主要な財源となっており、道路・学校・消防等の整備・運営に使われています。

固定資産税の使い道 - 税金はどこに使われている?

固定資産税は普通税であり、使途が定められていません。市町村が地域のニーズに応じて使途を決定します。

道路・上下水道等のインフラ整備

道路の建設・補修、上下水道の整備・維持管理に使われます。不動産へのアクセス向上や生活インフラの維持は、不動産の価値を直接的に高める要因です。

小中学校等の教育施設

小中学校の建設・維持管理、教職員の給与、教材費等に使われます。教育環境の整備は、子育て世帯にとって重要な居住地選択の要因となり、不動産の価値に影響します。

消防・救急等の安全サービス

消防署・消防車両の整備、救急対応に使われます。火災・救急対応の充実は、不動産の安全性を高める要因です。

ゴミ処理・公園管理等の生活関連サービス

ゴミ収集・処理、公園の整備・維持管理に使われます。生活環境の維持は、居住地としての快適性を高める要因です。

その他の公共サービス

街灯・防犯カメラの設置、図書館・公民館の運営、高齢者・障害者福祉等にも使われます。これらのサービスは、地域の安全性・利便性を高め、不動産の価値を維持・向上させる要因です。

固定資産税を払わないとどうなる?

固定資産税を払わないと、以下のリスクがあります。

延滞金が発生

納付期限を過ぎると、延滞金が発生します。延滞金の利率は年14.6%(納期限の翌日から1ヶ月以内は年7.3%、2025年時点)と高率です(地方税法附則第3条の2)。

計算例:

  • 固定資産税: 28万円
  • 延滞期間: 2ヶ月
  • 延滞金: 28万円 × 7.3% × 30日/365日 + 28万円 × 14.6% × 30日/365日 = 約2,657円 + 3,352円 = 約6,009円

督促状・催告書の送付

納付期限を過ぎると、市町村から督促状・催告書が送付されます。督促状に記載された期限までに納付しない場合、さらに催告書が送付されます。

最終的に差し押さえのリスク

督促・催告に応じない場合、最終的に財産(不動産・預金・給与等)が差し押さえられるリスクがあります。不動産が差し押さえられた場合、公売(競売)により強制的に売却されることもあります。

差し押さえの流れ:

  1. 督促状の送付(納期限から20日以内)
  2. 催告書の送付(複数回)
  3. 財産調査(預金・給与・不動産等)
  4. 差し押さえ(財産の強制徴収)
  5. 公売・換価(不動産の競売等)

納税義務は消滅しない

固定資産税の納税義務は、時効(5年)を迎えない限り消滅しません。差し押さえ・公売により強制徴収される可能性があるため、必ず納付する必要があります。

固定資産税の軽減措置

固定資産税には、以下の軽減措置があります。

住宅用地の特例

住宅用地(居住用建物の敷地)には、以下の特例が適用されます。

区分 課税標準額の軽減
小規模住宅用地(200㎡以下) 固定資産税評価額 × 1/6
一般住宅用地(200㎡超) 固定資産税評価額 × 1/3

(出典: 総務省 固定資産税の概要

例:

  • 土地面積: 150㎡(小規模住宅用地)
  • 固定資産税評価額: 3,000万円
  • 税率: 1.4%

課税標準額 = 3,000万円 × 1/6 = 500万円

固定資産税 = 500万円 × 1.4% = 7万円(軽減なしの場合42万円)

新築住宅の減額措置

新築住宅(床面積50㎡以上280㎡以下)は、一定期間(3年間、長期優良住宅は5年間)、固定資産税が1/2に減額されます。

耐震改修・バリアフリー改修の減額措置

耐震改修・バリアフリー改修を行った住宅は、一定期間、固定資産税が減額される場合があります。詳細は市町村にお問い合わせください。

固定資産税の納付方法

固定資産税の納付方法は以下の通りです。

納税通知書による納付

毎年4-6月に市町村から納税通知書が送付されます。納付期限(年4回払い、または一括払い)までに、以下の方法で納付できます。

  • 金融機関窓口: 納税通知書を持参
  • コンビニエンスストア: バーコード付き納付書
  • 口座振替: 事前に市町村に申込
  • クレジットカード: 市町村のWebサイト(手数料がかかる場合あり)
  • スマホ決済: PayPay、LINE Pay等(対応している市町村のみ)

口座振替がおすすめ

口座振替を利用すると、納付忘れを防げます。事前に市町村に申込が必要ですが、一度設定すれば毎年自動的に引き落とされます。

まとめ:固定資産税は公共サービスの対価

固定資産税は地方税法343条に基づき、毎年1月1日時点で不動産を所有する人に課される地方税です。標準税率は1.4%ですが、市町村により異なる場合があります。

税金の使途は道路・上下水道・学校・消防・ゴミ処理等の公共サービスであり、受益者負担の原則により、不動産所有者は公共サービスの恩恵を受けるため税負担します。

固定資産税を払わないと、延滞金が発生し、最終的に差し押さえのリスクがあります。納税義務は法律で定められており、公共サービスの維持・向上のために必要な財源です。

住宅用地の特例や新築住宅の減額措置等の軽減措置も活用しながら、納税義務を果たしましょう。

よくある質問

Q1固定資産税は何に使われていますか?

A1固定資産税は普通税であり、使途が定められていません。市町村が地域のニーズに応じて使途を決定しますが、主に道路・上下水道等のインフラ整備、小中学校等の教育施設、消防・救急等の安全サービス、ゴミ処理・公園管理等の生活関連サービスに使われます。市町村税収の41.4%を占める重要財源であり、公共サービスの維持・向上のために使われています。

Q2固定資産税を払わないとどうなりますか?

A2納付期限を過ぎると、延滞金(年14.6%、1ヶ月以内は年7.3%)が発生します。督促状・催告書が送付され、最終的に財産(不動産・預金・給与等)が差し押さえられるリスクがあります。不動産が差し押さえられた場合、公売(競売)により強制的に売却されることもあります。納税義務は時効(5年)を迎えない限り消滅しないため、必ず納付する必要があります。

Q3固定資産税の税率は全国一律ですか?

A3いいえ、標準税率は1.4%ですが、市町村は条例で異なる税率を設定できます。財政状況が厳しい市町村では1.5%以上に設定されている場合もあります。自分の所有する不動産の税率は、固定資産税納税通知書または市町村のWebサイトで確認できます。標準税率はあくまで目安であり、実際の税率は市町村により異なります。

Q4年の途中で不動産を売却した場合、固定資産税は誰が払いますか?

A4固定資産税は毎年1月1日時点の所有者が納税義務を負うため、年の途中で売却した場合でも、1月1日時点の所有者が1年分の固定資産税を納付する義務があります。ただし、売買契約時に売主・買主間で日割り精算することが一般的です。売買契約書に精算方法を明記し、引き渡し日以降の日割り分を買主が負担する形で調整します。

Q5固定資産税の軽減措置はありますか?

A5はい、住宅用地の特例(小規模住宅用地は課税標準額が1/6、一般住宅用地は1/3)、新築住宅の減額措置(3年間、長期優良住宅は5年間、固定資産税が1/2に減額)、耐震改修・バリアフリー改修の減額措置等があります。詳細は市町村のWebサイトまたは窓口でご確認ください。軽減措置を活用することで、税負担を抑えられる場合があります。