固定資産税は永遠に支払う?負担を軽減・終わらせる方法を解説

公開日: 2025/11/4

固定資産税は永遠に支払うのか?

「固定資産税は永遠に支払わなければならないのか」と不安に感じている不動産所有者の方は少なくありません。毎年1月1日時点の所有者に課税される固定資産税は、所有し続ける限り支払う義務があり、一見すると「永遠に続く」ように感じられます。

この記事では、固定資産税の仕組み、永続性の理由、負担を軽減・終わらせる方法を、総務省・国土交通省等の公式情報を元に解説します。売却・相続土地国庫帰属制度・住宅用地特例等の選択肢を知ることで、冷静な判断ができるようになります。

この記事のポイント

  • 固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税され、所有し続ける限り支払う義務がある
  • 住宅用地の特例(課税標準額1/6)を活用することで負担を大幅に軽減できる
  • 売却・相続土地国庫帰属制度・寄付等により所有権を手放すことで支払いを終わらせることができる
  • 固定資産税は地方自治体の重要な財源であり、道路・学校・福祉等の公共サービスに使われている
  • どうしても支払えない場合は自治体の納税相談窓口に早めに相談することが重要

固定資産税の仕組みと永続性

固定資産税は、毎年1月1日時点の土地・家屋・償却資産の所有者に課税される地方税(市町村税)です。総務省によると、令和5年度の固定資産税収が9.8兆円で市町村税の約41%を占めており、地方自治体の最も重要な財源となっています。

毎年1月1日時点の所有者に課税

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者(登記簿または固定資産課税台帳に記載された者)に課税されます。所有し続ける限り、毎年支払う義務があります。

所有権を手放さない限り永続する

固定資産税は、所有権を手放さない限り永続します。売却・相続土地国庫帰属制度・寄付等により所有権を移転することで、支払いを終わらせることができます。

固定資産税の負担を軽減する方法

固定資産税の負担を軽減する方法を説明します。

住宅用地の特例(課税標準額1/6)

住宅用地の場合、固定資産税・都市計画税が軽減される特例措置があります。

区分 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地(200㎡以下) 課税標準額×1/6 課税標準額×1/3
一般住宅用地(200㎡超) 課税標準額×1/3 課税標準額×2/3

(出典: 総務省

更地と住宅用地では税負担が大きく異なります。例えば、固定資産税評価額が1,200万円の200㎡の土地の場合、更地では年間約16.8万円(1,200万円×1.4%)ですが、住宅用地では年間約2.8万円(1,200万円×1/6×1.4%)となります。

この特例は居住用建物が建つ土地が対象で、更地は適用されません。

新築住宅の減額措置

新築住宅の場合、一定期間固定資産税が減額される措置があります。

  • 一般住宅: 新築後3年間、固定資産税が1/2に減額(床面積120㎡まで)
  • 中高層耐火建築物(3階建以上): 新築後5年間、固定資産税が1/2に減額
  • 長期優良住宅: 新築後5年間(中高層耐火は7年間)、固定資産税が1/2に減額

ただし、適用要件(床面積50-280㎡、居住用部分が1/2以上等)を満たす必要があります。

評価額の見直し請求

固定資産税評価額が周辺と比べて高すぎる場合、固定資産評価審査委員会に審査の申し出ができます。評価額が誤っている場合は、過去に遡って還付される可能性があります。

申し出期間は納税通知書を受け取った日から3ヶ月以内です。詳細は市町村の固定資産税担当課にご確認ください。

固定資産税の支払いを終わらせる方法

所有権を手放すことで、固定資産税の支払いを終わらせることができます。

不動産の売却

最も一般的な方法は、不動産を売却して所有権を移転することです。売却後の1月2日以降に所有権移転登記が完了すれば、翌年度から固定資産税の支払い義務はなくなります。

ただし、1月1日時点の所有者に課税されるため、売却のタイミングには注意が必要です。

相続土地国庫帰属制度

2023年4月に施行された相続土地国庫帰属制度では、相続または遺贈で取得した土地を国に返還できます。

ただし、以下の要件を満たす必要があり、10年分の管理費相当額(20-80万円程度)の負担金を納付する必要があります。

  • 建物がない
  • 担保権(抵当権等)がない
  • 境界が明確
  • 土壌汚染がない
  • 訴訟の対象になっていない

要件が厳しく、簡単に国に返せるわけではないため、事前に法務局に相談してください。

自治体・法人への寄付

自治体や公益法人等に寄付することで、所有権を手放すことができます。ただし、自治体は公共目的に使用できる土地以外は受け取らないケースが多く、寄付を断られる可能性があります。

寄付を検討する場合は、事前に自治体の管財課や公益法人に相談してください。

固定資産税が使われる用途

固定資産税は地方自治体の重要な財源であり、以下のような公共サービスに使われています。

  • 道路・公園の整備: 生活インフラの維持・改善
  • 学校教育: 小中学校の運営・教員の給与
  • 福祉サービス: 高齢者福祉・子育て支援
  • 消防・救急: 市民の安全確保
  • ごみ処理: 清掃事業・リサイクル

固定資産税は地域社会を支える重要な税金であり、所有者として負担することで地域の発展に貢献しています。

支払えない場合の対処法

どうしても固定資産税を支払えない場合の対処法を説明します。

納税相談窓口に早めに相談

支払いが困難な場合は、自治体の納税相談窓口に早めに相談してください。分納(分割払い)や徴収猶予(一定期間支払いを猶予)等の措置が受けられる可能性があります。

放置すると延滞金が発生し、最悪の場合は差し押さえに至るため、早めの相談が重要です。

分納・徴収猶予の制度

一括での支払いが困難な場合、分納(分割払い)や徴収猶予(災害・病気・事業不振等の理由で一定期間支払いを猶予)の制度があります。

適用要件は自治体により異なるため、納税相談窓口にご相談ください。

売却・相続土地国庫帰属制度の検討

固定資産税の負担が重く、今後も所有し続ける予定がない場合は、売却や相続土地国庫帰属制度の利用を検討してください。

所有権を手放すことで、固定資産税の支払いを終わらせることができます。

まとめ

固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に課税され、所有し続ける限り支払う義務があります。所有権を手放さない限り「永遠に支払う」ことになりますが、住宅用地の特例(課税標準額1/6)を活用することで負担を大幅に軽減できます。

売却・相続土地国庫帰属制度・寄付等により所有権を移転することで、支払いを終わらせることができます。どうしても支払えない場合は、自治体の納税相談窓口に早めに相談してください。

固定資産税は地方自治体の重要な財源であり、道路・学校・福祉等の公共サービスに使われています。所有者として負担することで、地域社会の発展に貢献しています。

よくある質問

Q1固定資産税は何年間支払えば終わりますか?

A1固定資産税に支払期限はありません。所有し続ける限り、毎年1月1日時点の所有者に課税され続けます。支払いを終わらせるには、売却・相続土地国庫帰属制度・寄付等により所有権を手放す必要があります。所有権を移転した翌年度から、固定資産税の支払い義務はなくなります。

Q2住宅用地の特例で税負担はどれくらい軽減されますか?

A2小規模住宅用地(200㎡以下)の場合、固定資産税の課税標準額が1/6、都市計画税が1/3になります。例えば、固定資産税評価額が1,200万円の200㎡の土地の場合、更地では年間約16.8万円(1,200万円×1.4%)ですが、住宅用地では年間約2.8万円(1,200万円×1/6×1.4%)となります。ただし、この特例は居住用建物が建つ土地が対象で、更地は適用されません。

Q3相続土地国庫帰属制度は誰でも利用できますか?

A3相続または遺贈で取得した土地が対象です。建物がない、担保権がない、境界が明確等の要件を満たし、10年分の管理費相当額(20-80万円程度)の負担金を納付する必要があります。2023年4月に施行された制度ですが、要件が厳しく、簡単に返還できるわけではありません。事前に法務局に相談し、要件を満たしているか確認してください。

Q4固定資産税が支払えない場合はどうすればいいですか?

A4自治体の納税相談窓口に早めに相談してください。分納(分割払い)や徴収猶予(一定期間支払いを猶予)等の措置が受けられる可能性があります。放置すると延滞金が発生し、最悪の場合は差し押さえに至るため、早めの相談が重要です。災害・病気・事業不振等の理由がある場合は、徴収猶予が認められる可能性があります。

Q5固定資産税は何に使われているのですか?

A5固定資産税は地方自治体の重要な財源であり、道路・公園の整備、学校教育、高齢者福祉・子育て支援、消防・救急、ごみ処理等の公共サービスに使われています。令和5年度の固定資産税収が9.8兆円で市町村税の約41%を占めており、地域社会を支える重要な税金です。所有者として負担することで、地域の発展に貢献しています。