不動産取得税のシミュレーション|計算方法と軽減措置を解説

公開日: 2025/11/4

不動産取得税の計算方法とシミュレーションの基本

不動産を購入する際、「不動産取得税がいくらかかるか」「軽減措置は適用されるか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、不動産取得税の計算方法を新築・中古・土地それぞれのケース別に解説し、具体的な金額例とシミュレーション方法を紹介します。総務省国土交通省の公式情報を元に、正確な計算方法と軽減措置の適用条件を提示します。

なお、検索では「シュミレーション」とお調べの方が多いですが、正しい表記は「シミュレーション」です。本記事では正しい表記を使用しつつ、実際の計算方法を分かりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 不動産取得税は「課税標準(固定資産税評価額)× 税率」で計算され、住宅3%、非住宅4%が税率
  • 新築住宅は評価額から1,200万円控除(認定長期優良住宅は1,300万円)の軽減措置があり、適用条件は床面積50〜240㎡
  • 中古住宅は築年数に応じた控除額が適用され、平成9年4月以降は1,200万円控除
  • 宅地は評価額を1/2にできる特例があり(2027年3月末まで)、土地の税額を大幅に軽減
  • 納付は取得後6ヶ月〜1年程度で都道府県から納税通知書が届いてから行う

新築住宅の不動産取得税シミュレーション

新築住宅を購入する場合、固定資産税評価額から一定額を控除する軽減措置が適用されます。

計算式と軽減措置

新築住宅の不動産取得税は以下の計算式で求めます。

計算式:
(固定資産税評価額 - 1,200万円)× 3%

固定資産税評価額は、市区町村が決定する不動産の評価額で、市場価格(購入価格)の約7割が目安です。例えば、購入価格3,000万円のマンションの場合、評価額は約2,100万円となります。

新築住宅の軽減措置の適用条件

項目 内容
控除額 評価額から1,200万円控除(認定長期優良住宅は1,300万円)
適用条件 床面積50〜240㎡
適用期限 なし(2025年現在も継続)

(出典: 国土交通省

新築マンション(3,000万円)の計算例

  • 購入価格: 3,000万円
  • 固定資産税評価額: 2,100万円(購入価格の約7割)
  • 計算: (2,100万円 - 1,200万円) × 3% = 27万円

新築戸建て(5,000万円)の計算例

  • 購入価格: 5,000万円
  • 固定資産税評価額: 3,500万円(購入価格の約7割)
  • 計算: (3,500万円 - 1,200万円) × 3% = 69万円

認定長期優良住宅の場合

認定長期優良住宅は、耐震性・省エネ性等の基準を満たす住宅で、控除額が1,300万円に優遇されます。

  • 購入価格: 5,000万円
  • 固定資産税評価額: 3,500万円
  • 計算: (3,500万円 - 1,300万円) × 3% = 66万円

認定長期優良住宅なら、通常より3万円税額が軽減されます。

中古住宅の不動産取得税シミュレーション

中古住宅の場合、新築時期により控除額が異なります。

築年数別の控除額一覧

新築時期 控除額
平成9年4月以降 1,200万円
平成元年4月〜平成9年3月 1,000万円
昭和60年7月〜平成元年3月 450万円
昭和56年7月〜昭和60年6月 420万円
昭和56年6月以前 耐震基準適合証明が必要

(出典: 国土交通省

中古マンション(2,000万円、築15年)の計算例

  • 購入価格: 2,000万円
  • 固定資産税評価額: 1,400万円(購入価格の約7割)
  • 新築時期: 平成22年(2010年)→ 平成9年4月以降
  • 控除額: 1,200万円
  • 計算: (1,400万円 - 1,200万円) × 3% = 6万円

中古住宅の適用条件

中古住宅の軽減措置を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 床面積: 50〜240㎡
  • 用途: 自己居住用または賃貸用
  • 耐震基準: 昭和56年以前の物件は耐震基準適合証明が必要

昭和56年6月以前に建築された物件は、旧耐震基準のため、軽減措置を受けるには耐震基準適合証明書または既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書が必要です。

土地の不動産取得税シミュレーション

土地を取得する場合、宅地の1/2特例により税額が大幅に軽減されます。

宅地の1/2特例とは

宅地の固定資産税評価額を1/2にできる特例で、2027年3月末までの時限措置です。

計算式:
固定資産税評価額 × 1/2 × 3%

土地(3,000万円)の計算例

  • 購入価格: 3,000万円
  • 固定資産税評価額: 2,100万円(購入価格の約7割)
  • 計算: 2,100万円 × 1/2 × 3% = 31.5万円

住宅用土地のさらなる軽減措置

住宅用土地で一定の要件を満たす場合、さらに以下の軽減措置が適用される場合があります。

  • 新築住宅用土地: 住宅が建つ前または同時に土地を取得し、3年以内に住宅を新築する場合
  • 中古住宅用土地: 中古住宅と同時に土地を取得する場合

軽減額の計算方法は複雑なため、都道府県の税事務所に確認することをおすすめします。

2027年3月末までの時限措置に注意

宅地の1/2特例は2027年3月末までの時限措置です。2027年4月以降に取得する場合、この特例が適用されない可能性があるため、取得時期に注意が必要です。

固定資産税評価額と市場価格の違い

不動産取得税の計算で重要なのが、固定資産税評価額と市場価格(購入価格)の違いです。

評価額は市場価格の約7割

固定資産税評価額は、市区町村が決定する不動産の評価額で、市場価格の約7割が目安です。

購入価格 固定資産税評価額(目安)
3,000万円 2,100万円(7割)
5,000万円 3,500万円(7割)
1億円 7,000万円(7割)

「購入価格 × 税率」で計算すると実態と大きく乖離するため、必ず固定資産税評価額を基準に計算してください。

評価額の調べ方

既存物件の場合、固定資産税評価額は以下の方法で確認できます。

  • 固定資産税課税明細書: 毎年5月頃に市区町村から送付される書類に記載
  • 市区町村の固定資産税課: 窓口で閲覧申請が可能(手数料300円程度)
  • 不動産会社に確認: 売買契約時に不動産会社が評価額を提示する場合が多い

新築の場合は評価額が確定していないため、類似物件の評価額から推定するか、市区町村の固定資産税課に相談してください。

不動産取得税の納付時期と手続き

不動産取得税の納付は、取得後すぐではなく、一定期間経過してから行います。

納税通知書はいつ届くか

都道府県から納税通知書が届くのは、取得後6ヶ月〜1年程度です。通知書に記載された期限までに納付します。

タイミング 内容
取得時 登記手続き完了
取得後6ヶ月〜1年 都道府県から納税通知書が届く
通知書到着後 記載された期限(通常30日以内)までに納付

「取得後すぐに納付」ではないため、資金準備のタイミングに注意が必要です。

軽減措置の申請方法

軽減措置は自動適用ではなく、取得後に都道府県の税事務所へ申請が必要です。

申請手順:

  1. 不動産取得後、都道府県の税事務所に連絡
  2. 軽減措置の適用申請書を提出
  3. 必要書類(登記事項証明書、住民票等)を添付
  4. 申請期限は都道府県により異なるため、取得後速やかに問い合わせる

申請を忘れると、軽減措置が適用されず、本来より高い税額を納付することになります。必ず取得後速やかに申請してください。

登録免許税との違い

不動産取得に関わる税金として、登録免許税と混同しやすいため、違いを整理します。

項目 登録免許税 不動産取得税
納付時期 登記時 取得後6ヶ月〜1年
納付先 法務局(国税) 都道府県(地方税)
課税基準 固定資産税評価額 固定資産税評価額
税率 土地・建物により異なる(0.3-2%) 住宅3%、非住宅4%

登録免許税は登記時に法務局に納付し、不動産取得税は納税通知書が届いてから都道府県に納付します。タイミングと納付先が異なる点に注意してください。

不動産取得税シミュレーションのまとめ

不動産取得税は「固定資産税評価額(市場価格の約7割)× 税率 - 軽減額」で計算されます。

新築・中古・土地でそれぞれ軽減措置が異なるため、自分の物件がどの要件を満たすか確認が必要です。

  • 新築住宅: 評価額から1,200万円控除(認定長期優良住宅は1,300万円)、床面積50〜240㎡
  • 中古住宅: 築年数に応じた控除額、平成9年4月以降は1,200万円控除、床面積50〜240㎡
  • 宅地: 評価額を1/2にできる特例(2027年3月末まで)

東京都主税局などの公式計算ツールを活用すれば、より正確な税額を試算できます。納付は取得後6ヶ月〜1年後なので、早めに資金計画に組み込むことが重要です。

軽減措置の適用には申請が必要なため、取得後速やかに都道府県の税事務所に問い合わせることをおすすめします。

よくある質問

Q1不動産取得税はいつ払うのですか?

A1取得後6ヶ月〜1年程度で都道府県から納税通知書が届き、通知書に記載された期限(通常30日以内)までに納付します。登記完了直後に支払うわけではないため、資金準備のタイミングに注意が必要です。納税通知書が届くまでの期間は都道府県により異なるため、取得後に税事務所に問い合わせることをおすすめします。

Q2固定資産税評価額はどこで確認できますか?

A2既存物件の場合は、毎年5月頃に市区町村から送付される固定資産税課税明細書で確認できます。新築の場合は評価額が未確定のため、市区町村の固定資産税課で類似物件の評価額を参考に推定するか、不動産会社に相談してください。窓口での閲覧申請も可能で、手数料は300円程度です。

Q3軽減措置は自動的に適用されますか?

A3自動適用ではありません。取得後、都道府県の税事務所に軽減措置の適用申請が必要です。申請には登記事項証明書、住民票等の書類が必要で、申請期限は都道府県により異なります。申請を忘れると、軽減措置が適用されず本来より高い税額を納付することになるため、取得後速やかに問い合わせることをおすすめします。

Q4登録免許税と不動産取得税の違いは何ですか?

A4登録免許税は登記時に法務局に納付する国税で、不動産取得税は取得後に都道府県から納税通知書が届いてから納付する地方税です。タイミング(登記時 vs 取得後6ヶ月〜1年)、納付先(法務局 vs 都道府県)、課税基準がそれぞれ異なります。どちらも固定資産税評価額を基準としますが、税率と納付時期が異なる点に注意してください。

Q5購入価格で税額を計算してはいけないのですか?

A5不動産取得税の課税標準は固定資産税評価額であり、購入価格(市場価格)ではありません。評価額は市場価格の約7割が目安です。例えば、3,000万円で購入した物件の評価額は約2,100万円となります。購入価格で計算すると実際より高い税額になるため、必ず固定資産税評価額を基準に計算してください。