固定資産税の免税点とは?課税されない基準を解説
小規模な土地・建物を所有している方の中には、「固定資産税がかからない基準があると聞いたが、自分の物件は対象なのか」と疑問に感じている方がいらっしゃいます。固定資産税には「免税点」という制度があり、一定額未満なら非課税となります。
この記事では、固定資産税の免税点の仕組み、金額基準、判定方法、軽減措置との違いを総務省等の公式情報を元に解説します。
読者の皆様が、自分の物件が課税対象かどうかを正確に判定できるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税の免税点は、課税標準額が土地30万円、建物20万円、償却資産150万円未満なら非課税となる制度
- 免税点は「課税標準額」で判定し、「評価額」ではない点に注意(住宅用地特例等の軽減措置適用後の額)
- 免税点を1円でも超えると全額課税され、段階的減免はない
- 複数物件所有時は同一市区町村内で合算して判定、複数市区町村にまたがる場合は各自治体ごとに判定
- 免税点と軽減措置(住宅用地特例等)は別物で、両者を併用することが可能
固定資産税の免税点とは何か
固定資産税の免税点は、地方税法第351条で規定されている制度で、課税標準額が一定額未満なら固定資産税が非課税となる基準です。
免税点の法的根拠と制度趣旨
免税点は、地方税法第351条で以下のように規定されています。
「固定資産税は、同一人が同一市町村の区域内において所有する土地、家屋又は償却資産に対して課する固定資産税の課税標準となるべき額が、それぞれ次に掲げる金額未満の場合においては、課することができない」
- 土地:30万円
- 家屋(建物):20万円
- 償却資産:150万円
この制度の趣旨は、小規模な固定資産に対する課税事務の効率化です。課税標準額が少額の場合、徴税コストが税収を上回る可能性があるため、一定額未満は非課税としています。
免税点と非課税の違い
免税点と「非課税」は異なる概念です。
免税点は、課税標準額が一定額未満なら非課税となる基準額(地方税法第351条)です。金額により判定されます。
非課税は、公共用財産(道路・公園・学校等)や宗教法人の境内地等、特定用途の不動産を恒久的に非課税とする制度(地方税法第348条)です。用途により判定されます。
両者は異なる制度であり、混同しないよう注意が必要です。
免税点の金額基準と判定のルール
免税点の金額基準と、具体的な判定方法を解説します。
土地・建物・償却資産の免税点
地方税法第351条で規定された免税点は以下の通りです。
| 資産種別 | 免税点(課税標準額) |
|---|---|
| 土地 | 30万円未満 |
| 建物(家屋) | 20万円未満 |
| 償却資産 | 150万円未満 |
重要: 免税点は「課税標準額」で判定します。「評価額」ではありません。
- 評価額: 固定資産評価基準(総務大臣告示)に基づき市区町村が決定する固定資産の価格
- 課税標準額: 評価額から住宅用地特例等の軽減措置を適用後の額(固定資産税を計算する基礎となる金額)
免税点判定は、軽減措置適用後の課税標準額で行います。
同一市区町村内での合算ルール
免税点判定は、同一人が同一市区町村内に所有する土地・家屋・償却資産それぞれの課税標準額を合算して行います。
例:
- A市に土地(課税標準額20万円)と土地(課税標準額15万円)を所有
- 合計35万円 → 免税点(30万円)超過 → 課税
複数市区町村にまたがる場合は、各市区町村ごとに判定します。
例:
- A市に土地(課税標準額20万円)、B市に土地(課税標準額15万円)を所有
- A市:20万円 → 免税点未満 → 非課税
- B市:15万円 → 免税点未満 → 非課税
免税点超過時の全額課税
免税点を1円でも超えると、課税標準額全額に税率(標準1.4%)を乗じた額が課税されます。段階的減免はありません。
例:
- 課税標準額29万円の土地 → 免税点未満 → 非課税
- 課税標準額30万1円の土地 → 免税点超過 → 30万1円×1.4% = 4,201円の課税
免税点ギリギリのケースでは、評価額の変動に注意が必要です。
免税点と軽減措置の違い
免税点と軽減措置(住宅用地特例・新築住宅減額等)は別の制度です。両者の違いを正確に理解することが重要です。
住宅用地特例との関係
免税点は「ゼロか満額課税か」の基準です。課税標準額が一定額未満なら非課税、超えたら全額課税となります。
軽減措置は「税額を減らす」制度です。住宅用地特例(地方税法第349条の3の2)は、住宅の敷地として利用されている土地の課税標準額を軽減する制度で、以下のように課税標準額が減額されます。
| 区分 | 課税標準額 |
|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下) | 評価額の1/6 |
| 一般住宅用地(200㎡超) | 評価額の1/3 |
重要: 免税点判定は、住宅用地特例適用後の課税標準額で行います。
例:
- 評価額180万円の小規模住宅用地
- 住宅用地特例適用: 180万円×1/6 = 30万円(課税標準額)
- 免税点判定: 30万円 → 免税点(30万円)ちょうど → 課税
課税標準額と評価額の違い
免税点判定で最も混同しやすいのが、課税標準額と評価額の違いです。
評価額は、固定資産評価基準(総務大臣告示)に基づき市区町村が決定する固定資産の価格で、3年ごとに評価替えが行われます(次回2027年度)。
課税標準額は、評価額から住宅用地特例等の軽減措置を適用後の額です。固定資産税は課税標準額×税率(標準1.4%)で計算されます。
免税点判定は必ず課税標準額で行い、評価額では判定しません。
免税点未満かどうかの判定例
具体的な数値例で、免税点の判定方法を解説します。
ケース1:評価額200万円の土地(住宅用地)
前提:
- 評価額: 200万円
- 用途: 小規模住宅用地(200㎡以下)
- 軽減措置: 住宅用地特例(評価額の1/6)
計算:
- 住宅用地特例適用: 200万円×1/6 = 33.3万円(課税標準額)
- 免税点判定: 33.3万円 > 30万円(免税点) → 課税
- 税額: 33.3万円×1.4% = 4,662円
ケース2:評価額150万円の土地(住宅用地)
前提:
- 評価額: 150万円
- 用途: 小規模住宅用地(200㎡以下)
- 軽減措置: 住宅用地特例(評価額の1/6)
計算:
- 住宅用地特例適用: 150万円×1/6 = 25万円(課税標準額)
- 免税点判定: 25万円 < 30万円(免税点) → 非課税
- 税額: 0円
ケース3:複数物件所有時の合算判定
前提:
- A市に土地(課税標準額20万円)と土地(課税標準額15万円)を所有
計算:
- 同一市区町村内で合算: 20万円 + 15万円 = 35万円
- 免税点判定: 35万円 > 30万円(免税点) → 課税
- 税額: 35万円×1.4% = 4,900円
これらの例から、免税点判定は軽減措置適用後の課税標準額で行うこと、複数物件は同一市区町村内で合算することが分かります。
免税点に関する注意点とよくある誤解
免税点制度を理解する上で、以下の注意点を押さえておきましょう。
評価額の変動リスク
「免税点未満だから永久に非課税」と考えるのは危険です。
評価額は3年ごとの評価替えで見直されます(次回2027年度)。地価上昇や周辺開発等により評価額が上昇すると、課税標準額も上昇し、翌年度から課税対象となる可能性があります。
例:
- 2024年度: 評価額120万円 → 課税標準額20万円 → 非課税
- 2027年度評価替え: 評価額180万円 → 課税標準額30万円 → 課税
継続的な確認が必要です。
市区町村による運用差
地方税法第351条但し書きでは、「市区町村の条例で免税点未満でも課税可能」と規定されています。
実際にはほとんどの市区町村で免税点制度を採用していますが、一部自治体では異なる運用がある可能性があります。詳細は市区町村の税務課に確認してください。
個別相談の必要性
免税点判定は、個別具体的な状況(評価額・軽減措置の適用・複数物件の有無等)により異なります。
個別具体的な判定は、税理士法第52条の業務独占に該当するため、市区町村税務課または税理士への相談が必須です。本記事は一般的な情報提供であり、個別のケースには適用されない場合があります。
まとめ:固定資産税の免税点を正しく理解しよう
固定資産税の免税点は、課税標準額が土地30万円、建物20万円、償却資産150万円未満なら非課税となる制度です。
免税点判定は、評価額ではなく、住宅用地特例等の軽減措置を適用後の課税標準額で行います。免税点を1円でも超えると全額課税され、段階的減免はありません。
評価額は3年ごとの評価替えで変動するため、継続的な確認が必要です。複数物件所有時は同一市区町村内で合算、複数市区町村にまたがる場合は各自治体ごとに判定されます。
詳細は市区町村税務課または税理士へ相談してください。
