償却資産税と固定資産税の関係を理解する
「償却資産税」と「固定資産税」の違いが分からない、という疑問を持つ方は少なくありません。特に事業を営んでいる方や開業予定の方にとって、この2つの関係性を理解することは重要です。
この記事では、償却資産税と固定資産税の違い、対象資産、計算方法、申告手続きを、総務省・東京都主税局の公式情報を元に解説します。
初めて償却資産税の申告義務を知った方でも、何を申告すべきか、どのように計算するかを正確に理解できるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税は土地・家屋・償却資産の3つに課税され、償却資産税は固定資産税の一種
- 償却資産税は事業用資産(機械、器具、備品等)のみが対象で、個人の住宅所有者には無関係
- 免税点は150万円未満(課税なし、ただし申告義務は残る)
- 税率は1.4%(標準税率)、申告期限は毎年1月末
- 土地・家屋は役所が評価するが、償却資産は事業者が自己申告する点が大きな違い
固定資産税と償却資産税の違い
固定資産税と償却資産税は「全く別の税金」ではなく、固定資産税の一部として償却資産税が存在します。
固定資産税は土地・家屋・償却資産の3つに課税
総務省の定義によると、固定資産税は以下の3つを課税客体とします:
- 土地:宅地、田畑、山林等
- 家屋:住宅、店舗、工場等の建物
- 償却資産:土地・家屋以外の事業用資産(機械、器具、備品等)
償却資産税は、この3つ目の「償却資産」に対する課税です。
償却資産税は固定資産税の一種
償却資産税は固定資産税の一部であり、「償却資産に対する固定資産税」と表現するのが正確です。個人の住宅所有者には無関係で、事業者(法人・個人事業主)のみが申告・納税義務を負います。
| 項目 | 土地・家屋 | 償却資産 |
|---|---|---|
| 課税対象 | 土地、建物 | 事業用機械、器具、備品等 |
| 評価方法 | 役所が評価 | 事業者が自己申告 |
| 対象者 | 全所有者(個人・法人) | 事業者のみ |
| 申告時期 | 申告不要 | 毎年1月末 |
償却資産税の定義と対象
償却資産税は、土地・家屋以外の事業用資産に課税される市町村税です。
償却資産とは何か?
東京都主税局の定義によると、償却資産とは「土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、減価償却額または減価償却費が法人税法または所得税法の規定による所得の計算上、損金または必要な経費に算入されるもの」です。
簡単に言うと、事業で使う減価償却できる資産が対象です。
対象資産の具体例
以下が償却資産の代表例です:
第1種(構築物):
- 駐車場設備(アスファルト舗装、フェンス等)
- 看板、広告塔
- 門、塀、外灯
第2種(機械・装置):
- 製造業の機械設備
- 太陽光発電設備(事業用)
- 受変電設備
第3種(車両・運搬具):
- フォークリフト、台車
- ※自動車税・軽自動車税の対象車両は除外
第4種(工具・器具・備品):
- パソコン、プリンター
- エアコン、冷蔵庫(事業用)
- 応接セット、キャビネット
- レジスター、陳列棚
対象外となる資産
以下の資産は償却資産税の対象外です:
- 土地・家屋(別途、土地・家屋の固定資産税が課税)
- 自動車税・軽自動車税の対象車両(乗用車、軽自動車等)
- 無形固定資産(ソフトウェア、特許権等)
- 繰延資産(創立費、開業費等)
- 少額減価償却資産の特例を適用した資産(青色申告の中小企業者が30万円未満の資産を一括経費化した場合)
- 生物(牛、馬、果樹等)
(出典: 償却資産税とは?固定資産税との違いや具体例をわかりやすく解説)
償却資産税の税額計算方法
償却資産税の税額は、以下の計算式で求めます。
計算式と免税点
計算式: 課税標準額(評価額の合計)× 税率1.4%(標準税率)
免税点: 課税標準額が150万円未満の場合、課税されません。ただし、申告義務は残ります。
評価額の計算方法
評価額は、取得価額から減価償却を行って算出します。ただし、国税(法人税・所得税)と地方税(固定資産税)では減価償却の計算方法が異なります。
評価額の計算式: 取得価額 × 減価率 × 経過年数
減価率は資産の種類・耐用年数により異なり、総務省令で定められています。
計算例(パソコン20万円を3年前に取得)
- 取得価額: 20万円
- 耐用年数: 4年(パソコンの場合)
- 減価率: 0.438(4年の定額法減価率)
- 評価額(3年経過): 20万円 × (1 - 0.438 × 3) = 20万円 × 0.186 = 3.72万円
他の資産と合わせて課税標準額が150万円以上になれば、1.4%の税率で課税されます。
(参考: 償却資産税とは何か?固定資産税との違いや申告の流れについて解説)
申告手続きの流れ
償却資産税は事業者が自己申告する必要があります。
申告期限と申告先
- 申告期限: 毎年1月31日
- 申告先: 資産が所在する市区町村
毎年1月1日時点で所有している償却資産を、1月31日までに申告します。
必要書類と記入内容
必要書類:
- 償却資産申告書(市区町村から送付、またはサイトからダウンロード)
- 種類別明細書(資産ごとの詳細を記載)
記入内容:
- 資産の種類(構築物、機械、器具等)
- 資産の名称(パソコン、エアコン等)
- 取得年月
- 取得価額
- 耐用年数
電子申告(eLTAX)の活用
eLTAX(エルタックス)を利用すれば、オンラインで申告できます。複数の市区町村に資産がある場合でも、一括で申告可能です。
申告漏れのペナルティと注意点
申告を怠ると、ペナルティが科されることがあります。
申告しないとどうなるか?
地方税法第386条により、正当な理由なく申告しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、申告漏れが発覚した場合、過去5年分まで遡って課税されることがあります。
よくある申告漏れのケース
- テナント内装工事(電気・給排水設備、造作等)
- 駐車場設備(アスファルト舗装、フェンス、外灯等)
- 事務所のエアコン・パソコン(個人の住宅用と誤解)
- 太陽光発電設備(事業用は申告対象)
これらの資産は申告対象であり、漏れがないよう注意が必要です。
少額減価償却資産の特例との関係
青色申告の中小企業者が30万円未満の資産を取得し、「少額減価償却資産の特例」を適用した場合、その資産は償却資産税の申告対象外となります。
この特例を活用すれば、国税(法人税・所得税)で全額を経費計上しつつ、償却資産税の負担を回避できます。
(参考: 償却資産税とは?いつ払う?固定資産税との違いや計算方法を解説)
まとめ:償却資産税は固定資産税の一種、事業者は申告必須
償却資産税は固定資産税の一種であり、土地・家屋以外の事業用資産に課税されます。個人の住宅所有者には無関係ですが、事業者(法人・個人事業主)は毎年1月31日までに申告する必要があります。
免税点は150万円未満(課税なし)ですが、申告義務は残ります。申告漏れがあると過料が科される可能性があるため、対象資産を正確に把握し、期限内に申告してください。
詳細は各市区町村の公式サイトで確認し、不明点は税理士に相談することをおすすめします。電子申告(eLTAX)を活用すれば、手続きが簡便になります。
