固定資産税の償却資産とは?土地・家屋との違い
固定資産税は土地・家屋だけでなく「償却資産」にもかかることをご存知でしょうか。
この記事では、償却資産の定義、申告が必要な具体例、申告義務と期限、免税点の仕組みを、総務省・国税庁の公式情報を元に解説します。
事業用の機械・器具・備品だけでなく、エアコンや太陽光発電、駐車場の舗装なども条件次第で償却資産に該当する場合があります。
この記事のポイント
- 固定資産税は土地・家屋・償却資産の3つに課税される
- 償却資産は事業用の機械・器具・備品など、減価償却費が損金・必要経費に算入されるもの
- 毎年1月31日までに市町村へ申告する義務がある(個人事業主も対象)
- 取得価額の合計が150万円未満なら免税点により課税されない(ただし申告義務は残る)
- エアコン・太陽光発電は、家屋か償却資産かの判断が分かれるため注意が必要
償却資産の申告が必要な具体例
償却資産は、事業用の機械・器具・備品が典型例です。家屋と償却資産の区別が分かりにくいケースもあります。
事業用の機械・器具・備品
以下のような事業用の資産が償却資産に該当します。
- 機械:製造装置、工作機械、印刷機など
- 器具・備品:パソコン、プリンター、厨房設備、看板、陳列ケース、応接セットなど
- 車両:事業用の自動車(ただし軽自動車税・自動車税との二重課税防止のため、実務では課税されないことが多い)
エアコン・太陽光発電(条件あり)
エアコン・太陽光発電は、設置条件により家屋か償却資産かの判断が分かれます。
エアコン:
- 建物所有者が家屋と一体で設置→家屋
- テナントが独自に設置→償却資産
太陽光発電:
- 建物所有者が家屋と一体で設置(10kW未満の自家消費用)→家屋
- テナント・事業用として設置(10kW以上の売電用等)→償却資産
駐車場の舗装・フェンス
駐車場の舗装(アスファルト・コンクリート)、フェンス、照明設備なども償却資産に該当します。
土地そのものは固定資産税(土地)の課税対象ですが、舗装・構築物は償却資産として別途課税されます。
償却資産の申告義務と期限(毎年1月31日まで)
償却資産の所有者は、毎年1月31日までに市町村長に申告する義務があります。
地方税法第383条による申告義務
地方税法第383条により、償却資産の所有者は毎年1月1日現在の償却資産の状況を、1月31日までに市町村長に申告する義務があります。
令和7年度(2025年度)の申告期限は、2025年1月31日です。
個人事業主も対象
申告義務は法人だけでなく、個人事業主も対象です。事業用の資産を所有している場合は、必ず申告してください。
申告を怠ると過料が科される可能性
申告を怠ると、地方税法により過料(罰金)が科される可能性があります。申告期限後の提出でも受け付けられますが、延滞金が発生する可能性があるため、早めに申告することを推奨します。
(出典: 東京都主税局)
免税点と課税の仕組み(150万円未満は課税されない)
取得価額の合計が150万円未満なら、免税点により固定資産税は課税されません。
免税点:150万円未満は課税されない
償却資産の課税標準額(評価額)が150万円未満の場合、固定資産税は課税されません。これは免税点と呼ばれる制度です。
ただし、免税点により課税されない場合でも、申告義務は免除されません。自治体によっては150万円未満の場合は申告不要とする運用もあるため、確認が必要です。
評価方法:旧定率法
償却資産の評価は、旧定率法により計算されます。取得価額に一定の減価率を乗じて毎年評価額を減少させ、最低評価額は取得価額の5%です。
例:取得価額100万円、耐用年数10年(減価率0.206)の機械
| 年度 | 計算式 | 評価額 |
|---|---|---|
| 1年目 | 100万円 × 0.794 | 79.4万円 |
| 2年目 | 79.4万円 × 0.794 | 63.0万円 |
| 3年目 | 63.0万円 × 0.794 | 50.0万円 |
| ... | ... | ... |
| 最終 | 取得価額 × 5% | 5.0万円 |
(出典: 総務省・固定資産評価基準第3章)
国税(所得税・法人税)との違い
国税(所得税・法人税)における減価償却資産と、地方税(固定資産税)の償却資産は、定義は似ていますが評価方法が異なります。
| 項目 | 国税(所得税・法人税) | 地方税(固定資産税) |
|---|---|---|
| 最低評価額 | 1円 | 取得価額の5% |
| 一括償却資産 (10-20万円) |
3年均等償却 | 通常の償却資産として扱う |
| 圧縮記帳 | 認められる | 認められない |
(出典: 国税庁)
家屋と償却資産の区別が分かりにくいケース
エアコン・太陽光発電・駐車場舗装など、家屋と償却資産の区別が分かりにくいケースがあります。
エアコン:建物所有者が設置なら家屋、テナントが設置なら償却資産
建物所有者が家屋と一体で設置した場合:
- 家屋として評価され、家屋の固定資産税に含まれる
- 償却資産の申告は不要
テナントが独自に設置した場合:
- 償却資産として扱われる
- テナントが申告する義務がある
太陽光発電:10kW未満の自家消費用なら家屋、10kW以上の売電用なら償却資産
10kW未満の自家消費用(住宅の屋根に設置):
- 家屋として評価される
- 償却資産の申告は不要
10kW以上の売電用(事業用):
- 償却資産として扱われる
- 申告が必要
駐車場舗装:償却資産
駐車場のアスファルト・コンクリート舗装は、償却資産として扱われます。土地そのものは固定資産税(土地)の課税対象ですが、舗装は別途償却資産として課税されます。
判断に迷う場合は、自治体の固定資産税課や税理士に相談することを推奨します。
(出典: 千葉市)
償却資産と減価償却の違い(国税と地方税)
国税(所得税・法人税)における減価償却資産と、地方税(固定資産税)の償却資産は、定義は似ていますが評価方法が異なります。
国税は最低評価額1円、地方税は5%
国税(所得税・法人税)の減価償却は、最低評価額が1円まで償却できます。
地方税(固定資産税)の償却資産は、最低評価額が取得価額の5%です。5%以下には評価されません。
一括償却資産(取得価額10-20万円)の扱いの違い
国税:
- 取得価額10-20万円の資産は、3年間で均等償却できる(一括償却資産の特例)
- 耐用年数に関わらず3年で償却
地方税:
- 一括償却資産の特例は適用されない
- 通常の償却資産として、耐用年数に基づき評価
圧縮記帳の扱いの違い
国税:
- 圧縮記帳が認められる(補助金を受けて資産を取得した場合等)
地方税:
- 圧縮記帳は認められない
- 取得価額を圧縮前の金額で評価
(出典: 国税庁)
まとめ:償却資産の申告義務を正しく理解しよう
固定資産税は土地・家屋だけでなく、事業用の機械・器具・備品(償却資産)にもかかります。
毎年1月31日までに市町村へ申告する義務があり(個人事業主も対象)、取得価額の合計が150万円未満なら免税点により課税されません。
エアコン・太陽光発電・駐車場舗装など、家屋と償却資産の区別が分かりにくい場合は、自治体の固定資産税課や税理士に相談することを推奨します。
