固定資産税が免除される条件とは?減免制度を徹底解説

公開日: 2025/11/11

固定資産税が免除される条件とは?

固定資産税の負担が大きいと感じている方の中には、「免除や減免の制度があるのではないか」と考える方は少なくありません。しかし、固定資産税の「完全免除(非課税)」と「減免」は異なる制度です。

この記事では、固定資産税が免除される条件、減免制度の仕組み、申請方法を、総務省や各市区町村の公式情報を元に解説します。

完全免除は公共用地・宗教法人等の限定的なケースで、一般の住宅所有者が対象となるのは減免制度です。減免の要件や申請方法を正確に把握することで、税負担を軽減できる可能性があります。

この記事のポイント

  • 固定資産税の「完全免除(非課税)」は公共用地・宗教法人等の限定的なケース
  • 一般住宅所有者が対象となるのは「減免」制度(災害・生活保護等で一部軽減)
  • 住宅用地の特例(1/6、1/3)は免除ではなく軽減
  • 減免は災害・生活保護・障害者等の要件を満たす必要があり、申請が必須
  • 市区町村により制度が異なるため、自治体の税務課に確認が必要

完全免除(非課税)の条件

法律で定められた非課税(国・公益法人・宗教法人)

地方税法第348条により、以下の財産は固定資産税が非課税となります。

  • 国・地方公共団体が所有する公共用財産(道路、公園、庁舎等)
  • 宗教法人が専ら宗教の用に供する境内建物・境内地(寺院、神社等)
  • 公益法人が公益事業の用に供する財産(学校法人の校舎、社会福祉法人の施設等)

これらは法律で定められた非課税であり、一般の住宅所有者は対象外です。

免税点による非課税(土地30万円未満、建物20万円未満)

地方税法第351条により、課税標準額が以下の金額未満の場合は課税されません(免税点)。

資産の種類 免税点
土地 30万円未満
建物 20万円未満
償却資産 150万円未満

免税点は市区町村内の同一人が所有する資産の合計額で判定されます。例えば、土地2筆(各15万円)を所有する場合、合計30万円で免税点未満となり課税されません。

ただし、一般的な住宅の場合、課税標準額が免税点未満となることはほとんどありません。

減免が受けられるケース

災害による減免

地方税法第367条に基づき、災害(火災・風水害・震災等)により被災した場合、固定資産税が減免される場合があります。

大阪市の減免例:

被害程度 減免割合
全壊・全焼 全額免除
半壊・半焼 50%減免
床上浸水(1m以上) 50%減免
床上浸水(1m未満) 25%減免

減免を受けるには、被災証明書等を添えて市区町村の税務課に申請が必要です。自動的に減免されるわけではない点に注意してください。

生活保護受給者の減免

生活保護を受給している場合、固定資産税が減免される市区町村が多いです。ただし、自動的に減免されるわけではなく、申請が必要です。

減免の要件(市区町村により異なる):

  • 生活扶助を受けている
  • 世帯全員が生活保護を受給している
  • 所有する不動産が居住用である

詳細は市区町村の税務課にお問い合わせください。

障害者・高齢者等の減免

一部の市区町村では、障害者や高齢者に対して固定資産税の減免制度を設けています。ただし、制度の有無・要件は市区町村により大きく異なります。

一般的な要件(例):

  • 身体障害者手帳1-3級を保有
  • 世帯の所得が一定額以下
  • 所有する不動産が唯一の居住用である

制度がない市区町村もあるため、必ず自治体の税務課に確認してください。

住宅用地の特例(免除ではなく軽減)

小規模住宅用地の特例(1/6)

住宅の敷地は課税標準が軽減される特例があります。ただし、これは「免除」ではなく「軽減」です。

総務省によると、小規模住宅用地(200㎡まで)は課税標準が1/6に軽減されます。

計算例:

  • 固定資産税評価額: 3,000万円
  • 課税標準額: 3,000万円 × 1/6 = 500万円
  • 税額: 500万円 × 1.4%(標準税率) = 7万円

特例がない場合の税額: 3,000万円 × 1.4% = 42万円

軽減効果は大きいですが、税額がゼロになるわけではありません。

一般住宅用地の特例(1/3)

200㎡を超える部分の住宅用地は、課税標準が1/3に軽減されます。

住宅用地の区分 面積 課税標準の軽減
小規模住宅用地 200㎡まで 1/6に軽減
一般住宅用地 200㎡超の部分 1/3に軽減

住宅用地の特例は自動的に適用されるため、申請は不要です。

新築住宅の減額(免除ではなく軽減)

新築住宅(床面積50㎡以上280㎡以下)は、3年間(長期優良住宅は5年間)、家屋の税額が1/2に減額されます。

これも「免除」ではなく「軽減」であり、税額がゼロになるわけではありません。

減免の申請方法

申請窓口と必要書類

固定資産税の減免を受けるには、市区町村の税務課(または資産税課)に申請が必要です。

一般的な必要書類:

  • 固定資産税減免申請書(市区町村の窓口またはウェブサイトで入手)
  • 減免事由を証明する書類(被災証明書、生活保護受給証明書、障害者手帳等)
  • 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)

必要書類は市区町村により異なるため、事前に窓口またはウェブサイトで確認してください。

申請期限と注意点

減免申請の期限は市区町村により異なりますが、一般的には納期限まで(または納期限の〇日前まで)です。

申請期限の例:

  • 災害減免: 被災後速やかに(納期限まで)
  • 生活保護: 生活保護開始後速やかに
  • その他: 納期限の7-14日前まで

申請が遅れると減免が受けられない場合があるため、早めに申請してください。

市区町村により制度が異なる点

固定資産税の減免制度は、地方税法第367条に基づき、各市区町村が条例で定めます。そのため、制度の有無・要件・減免割合は市区町村により大きく異なります。

例:

  • A市: 障害者減免あり(身体障害者手帳1-3級、所得制限あり)
  • B市: 障害者減免なし
  • C市: 高齢者減免あり(75歳以上、所得制限あり)

必ず居住地の市区町村の税務課に確認してください。

まとめ

固定資産税の「完全免除(非課税)」は、公共用地・宗教法人・公益法人等の限定的なケースで、一般の住宅所有者はほぼ対象外です。

一般住宅所有者が対象となるのは「減免」制度で、災害・生活保護・障害者等の要件を満たす場合に一部軽減されます。ただし、減免は自動的に適用されるわけではなく、申請が必須です。

住宅用地の特例(1/6、1/3)や新築住宅の減額は、「免除」ではなく「軽減」であり、税額がゼロになるわけではありません。

固定資産税の負担が大きいと感じる場合は、以下を検討してください:

  1. 減免制度の要件を満たすか確認(市区町村の税務課に問い合わせ)
  2. 固定資産税評価額が適切か確認(評価額が不適切と感じる場合は、固定資産評価審査委員会に審査申出可能)
  3. 住宅用地の特例や新築減額が適用されているか確認

不明点があれば、市区町村の税務課に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1住宅用地の特例は「免除」ですか?

A1いいえ、免除ではなく「軽減」です。住宅の敷地は課税標準が1/6(200㎡まで)または1/3(200㎡超部分)に軽減されますが、税額がゼロになるわけではありません。例えば、評価額3,000万円の土地(200㎡以下)の場合、課税標準は500万円(3,000万円 × 1/6)となり、税額は7万円程度(500万円 × 1.4%)です。軽減効果は大きいですが、完全免除ではない点に注意してください。

Q2固定資産税が高すぎると感じた場合、減免申請できますか?

A2単に「高い」という理由では減免されません。減免は災害・生活保護・障害者等の要件を満たす必要があります。固定資産税評価額が不適切と感じる場合は、減免ではなく、固定資産評価審査委員会に審査申出を行う制度があります。審査申出は納税通知書を受け取った日から3ヶ月以内に市区町村の固定資産評価審査委員会に提出します。詳細は市区町村の税務課にお問い合わせください。

Q3減免申請はどこに提出すればよいですか?

A3市区町村の税務課(または資産税課)に提出します。自治体により申請書の様式や必要書類が異なるため、事前に窓口またはウェブサイトで確認してください。一般的な必要書類は、減免申請書、減免事由を証明する書類(被災証明書・生活保護受給証明書・障害者手帳等)、本人確認書類です。申請期限は納期限まで(または納期限の〇日前まで)が多いため、早めに申請してください。

Q4災害で被災した場合、自動的に減免されますか?

A4いいえ、自動的には減免されません。必ず減免申請が必要です。被災証明書等を添えて、納期限までに(または自治体が定める期限までに)市区町村の税務課に申請してください。減免割合は被害程度により異なり、例えば大阪市では全壊・全焼は全額免除、半壊・半焼は50%減免、床上浸水(1m以上)は50%減免です。申請が遅れると減免が受けられない場合があるため、被災後速やかに申請してください。