宗教法人は固定資産税が非課税?条件と範囲を解説

公開日: 2025/11/11

宗教法人は固定資産税が非課税?条件と範囲を解説

宗教法人の関係者や宗教法人の税制に関心がある方にとって、「固定資産税が非課税になる条件」「どの範囲まで非課税か」という疑問は重要です。

この記事では、宗教法人の固定資産税が非課税になる条件と範囲を、地方税法第348条の規定や自治体の公式情報を元に解説します。「全て非課税」という誤解を正し、非課税の範囲と課税対象の境界線を明確にします。

この記事のポイント

  • 宗教法人の固定資産税は「専らその本来の用に供する」境内地・境内建物のみ非課税
  • 収益事業用(有料駐車場、賃貸住宅、葬儀場等)は課税対象
  • 非課税の具体例:本堂・拝殿・墓地・参拝者用駐車場(無料・適正規模)
  • 課税対象の具体例:一般向け有料駐車場・賃貸住宅・商業施設
  • 非課税の適用を受けるには自治体への申請と現地調査が必要

宗教法人の固定資産税は非課税?基本を理解する

「宗教法人は全て非課税」という誤解がありますが、実際には①宗教活動専用の土地・建物は非課税、②収益事業用(駐車場、賃貸等)は課税、という区別があります。

地方税法第348条第2項第3号により「専らその本来の用に供する」ことが非課税の要件です。「専ら」とは宗教活動に専用的に使用されていることを意味し、収益目的の使用は対象外となります。

固定資産税だけでなく都市計画税も同様に非課税です。

固定資産税が非課税になる条件

地方税法第348条の規定

地方税法第348条第2項第3号の条文により、「宗教法人法第3条に規定する境内建物及び境内地で専らその本来の用に供するもの」が非課税の根拠となります。

境内地とは宗教法人法第3条に規定される宗教活動のために使用される土地で、本堂・拝殿の敷地、庭園、参拝者用駐車場等を指します。境内建物とは宗教活動のために使用される建物で、本堂、拝殿、庫裏(くり)、社務所等を指します。

「専らその本来の用に供する」の意味

「専ら」とは宗教活動に専用的に使用されていることを意味します。宗教活動と収益事業が混在する場合は非課税と認められません。税理士法人はるかの解説によると、「専ら」の判断基準は、①使用目的が宗教活動か収益事業か、②使用頻度が専用的か、③収益が発生しているか、という点です。

PROnetの判例紹介によると、管理人室が「本来の用」に専ら供されていると判断され非課税と認められたケースもあります。裁判所の判断基準として、宗教活動に専用的に使用されているかが重視されています。

非課税となる具体例と課税対象の具体例

非課税の具体例:本堂・拝殿・墓地・参拝者用駐車場

宗教法人専門行政書士の解説によると、非課税となる具体例として以下が挙げられます:

  • 本堂、拝殿、庫裏(くり)、社務所
  • 墓地(永代使用料・管理料の有無を問わず非課税)
  • 参拝者用駐車場(無料・適正規模)

墓地は永代使用料・管理料の有無を問わず非課税です。宗教法人法第3条に規定される境内地として、宗教活動に専ら供されているためであり、料金徴収の有無は非課税要件に影響しません。

課税対象の具体例:有料駐車場・賃貸住宅・葬儀場

一方、課税対象として以下が挙げられます:

  • 一般向け有料駐車場
  • 賃貸住宅
  • 商業施設
  • 葬儀場(営利目的の場合)

リビンマガジンBizの解説によると、参拝者向け駐車場(無料)は非課税ですが、一般向け有料駐車場は課税という明確な境界線があります。

収益事業の扱いと非課税の境界線

宗教活動と収益事業が混在する場合

宗教活動と収益事業が混在する場合、収益事業部分は課税対象となります(按分計算)。例えば、1階が本堂、2階が賃貸住宅の場合、1階は非課税、2階は課税です。

駐車場の非課税要件(信者向け・無料・適正規模)

駐車場の非課税要件として、信者向け・無料・適正規模の3点を満たす必要があります。一般向け有料駐車場は明確に課税対象です。適正規模は境内地の広さや参拝者数に応じて自治体が判断します。

賃貸住宅・葬儀場等の収益事業も課税対象です。公益性と収益性のバランスを保つため、収益事業には通常の固定資産税が課される点を理解しておきましょう。

非課税申請の手続きと注意点

自治体への申請と現地調査

非課税の適用を受けるには、自治体への申請と現地調査が必要です。岡崎市の公式見解によると、宗教法人を設立した場合、非課税申告書を市区町村の税務課に提出します。

自治体が現地調査を行い、宗教活動専用であることを確認した上で非課税が適用されます。

申請時期と必要書類

申請時期は宗教法人設立後速やかに(自治体により異なる)です。必要書類として、宗教法人の登記事項証明書、境内地・境内建物の図面等が求められます。

申請を怠ると課税される可能性があるため注意が必要です。遡及適用の可否は自治体により異なるため、設立後速やかに申請することが推奨されます。

まとめ:宗教法人の固定資産税の仕組み

宗教法人の固定資産税は「専らその本来の用に供する」境内地・境内建物のみ非課税で、収益事業用は課税対象です。非課税の具体例(本堂・拝殿・墓地・参拝者用駐車場)と課税対象(有料駐車場・賃貸住宅)を区別することが重要です。

非課税の適用を受けるには自治体への申請と現地調査が必要です。公益性と収益性のバランスを保つため、収益事業には通常の税金が課される仕組みとなっています。

不明点があれば専門家(税理士・行政書士)への相談をおすすめします。

よくある質問

Q1墓地の永代使用料や管理料を徴収している場合、固定資産税は課税されますか?

A1墓地は永代使用料・管理料の有無を問わず非課税です。宗教法人法第3条に規定される境内地として、宗教活動に専ら供されているためであり、料金徴収の有無は非課税要件に影響しません。ただし、墓地以外の収益事業(賃貸住宅、有料駐車場等)は課税対象となります。

Q2参拝者用駐車場は非課税ですが、どの範囲まで認められますか?

A2信者向け・無料・適正規模の3点を満たす必要があります。一般向け有料駐車場は収益事業として課税対象です。適正規模は境内地の広さや参拝者数に応じて自治体が判断します。参拝者向けであっても有料の場合は課税される可能性が高いため、自治体に確認することをおすすめします。

Q3宗教法人が賃貸住宅を経営している場合、固定資産税はどうなりますか?

A3賃貸住宅は収益事業のため、通常の固定資産税が課されます。宗教活動専用ではなく営利目的の使用であるため、非課税の要件「専らその本来の用に供する」を満たしません。1階が本堂、2階が賃貸住宅の場合、1階は非課税、2階は課税という按分計算が行われます。

Q4都市計画税も非課税になりますか?

A4固定資産税と同様、宗教法人の境内地・境内建物は都市計画税も非課税です。都市計画税は固定資産税と一緒に徴収される税金(税率0.3%以下)で、同じ非課税要件が適用されます。収益事業用の土地・建物は都市計画税も課税対象となります。

Q5非課税申請を忘れた場合、遡って非課税にできますか?

A5自治体により扱いが異なりますが、基本的には申請が必要です。申請を忘れると課税される可能性があります。遡及適用の可否は自治体に確認してください。宗教法人設立後速やかに非課税申告書を市区町村の税務課に提出することが推奨されます。