太陽光発電の固定資産税は課税される?住宅用と事業用の違い
太陽光発電を設置する際、「固定資産税がかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、太陽光発電の固定資産税の仕組み、住宅用と事業用の違い、償却資産税の申告方法、減免措置を、総務省・資源エネルギー庁の公式情報を元に解説します。
太陽光発電の設置を検討中または既に設置済みの方にとって、税金の負担を正確に理解し、適切な申告ができるようになります。
この記事のポイント
- 住宅用(10kW未満・余剰売電)は原則非課税、事業用(10kW以上・全量売電)は償却資産税の対象
- 屋根置き型は償却資産税の対象外、屋根一体型は家屋として固定資産税の評価に含まれる
- 事業用の償却資産税は評価額の1.4%で、初年度約12.6万円(1000万円の設備の場合)
- 再生可能エネルギー設備として3年間、課税標準額が2/3に軽減される特例あり(2025年度末まで)
固定資産税の基礎知識|家屋・土地・償却資産の3種類
固定資産税は、土地・家屋・償却資産の3つに課税される地方税です。総務省によると、毎年1月1日時点の所有者に対して課税されます。
家屋:建物本体と一体化した設備
家屋とは、建物本体と構造上一体化した設備を指します。太陽光発電の場合、屋根一体型(屋根材と一体化したパネル)は家屋として評価されます。
償却資産税とは
償却資産税は、事業用の減価償却資産(機械・装置等)に課される固定資産税です。評価額の1.4%を毎年課税されます。
太陽光発電の場合、10kW以上の事業用設備が償却資産税の対象となります。
住宅用(10kW未満)の太陽光発電は課税される?
住宅用太陽光発電(10kW未満・余剰売電)は、原則として償却資産税の対象外です。ただし設置方法によって扱いが異なります。
屋根置き型は償却資産税の対象外
屋根の上に架台を設置してパネルを載せる「屋根置き型」は、建物と構造上分離しているため、償却資産税の対象外です。
屋根一体型は家屋として固定資産税の評価に含まれる
屋根材と一体化した「屋根一体型」は、家屋の一部として固定資産税の評価に含まれます。ただし、増額は軽微(数千円~数万円程度)であることが多いです。
例外:店舗兼住宅・賃貸住宅の場合
店舗兼住宅や賃貸住宅に設置した10kW未満の太陽光発電は、事業用とみなされ、償却資産税の対象となる場合があります。自治体の税務課に確認することをおすすめします。
事業用(10kW以上)の太陽光発電は償却資産税の対象
事業用太陽光発電(10kW以上・全量売電)は、償却資産税の対象となります。設置翌年の1月末までに償却資産申告書を提出する必要があります。
償却資産税の計算方法
償却資産税の評価額は、取得価額から減価償却を行い、以下の計算式で算出されます。
評価額 = 取得価額 × 残存率
税額 = 評価額 × 1.4%
太陽光発電設備の耐用年数は17年、減価率は初年度0.936(6.4%減価)、2年目以降0.873(12.7%減価)です。
具体例:1000万円の設備の場合
取得価額1000万円、初年度の計算例:
- 初年度評価額 = 1000万円 × 0.936 = 936万円
- 初年度税額 = 936万円 × 1.4% = 約13.1万円
2年目以降も減価償却が進み、評価額・税額は徐々に減少します。
申告期限:設置翌年1月末まで
償却資産申告書は、設置した翌年の1月末までに市区町村の税務課に提出する必要があります。申告を怠ると、過料が課される場合があります。
課税特例・減免措置|3年間は2/3に軽減
再生可能エネルギー設備として、新規取得後3年間、課税標準額が2/3に軽減される措置があります(2025年度末まで)。
適用要件(2025年度末まで)
総務省の公式情報によると、以下の要件を満たす必要があります。
- 固定価格買取制度(FIT)の認定を受けている
- 2025年3月31日までに取得した設備
- 自家消費型の場合、取得価額が1000万円以上
軽減後の税額
1000万円の設備、初年度の場合:
- 評価額 = 1000万円 × 0.936 = 936万円
- 課税標準額 = 936万円 × 2/3 = 624万円
- 税額 = 624万円 × 1.4% = 約8.7万円(通常の約2/3)
3年間で合計約13万円の軽減効果があります。
申告手続きの流れと注意点
申告に必要な書類
償却資産申告書の提出には、以下の書類が必要です。
- 償却資産申告書(市区町村の税務課で入手)
- 種類別明細書(太陽光発電設備の詳細)
- 設置費用の領収書・契約書(取得価額の証明)
- FIT認定通知書(課税特例を適用する場合)
申告を忘れた場合のペナルティ
償却資産申告を怠ると、地方税法により過料が課される場合があります。また、課税特例の適用を受けられなくなる可能性もあります。
設置後は、必ず翌年1月末までに申告することを忘れないようにしましょう。
自治体による扱いの違い
自治体によって、太陽光発電の課税の扱いが異なる場合があります。特に以下のケースでは、事前に自治体の税務課に確認することをおすすめします。
- 店舗兼住宅や賃貸住宅に10kW未満を設置する場合
- 屋根一体型の家屋評価額を知りたい場合
- 中古設備を購入した場合
よくある誤解と正しい理解
誤解1:「太陽光は必ず非課税」
正しくは、住宅用(10kW未満・余剰売電)の屋根置き型は非課税ですが、事業用(10kW以上・全量売電)は償却資産税の対象です。
誤解2:「申告しなくてもバレない」
電力会社への売電申請、FIT認定等の情報から、自治体が設置を把握する場合があります。申告を怠ると、過料が課される可能性があります。
誤解3:「課税特例は自動適用される」
課税特例は、申告時に適用を申請する必要があります。申告書に特例適用の記載がない場合、通常の税率が適用されます。
まとめ|太陽光発電の固定資産税は設置形態・規模で決まる
太陽光発電の固定資産税は、設置形態(屋根置き型・屋根一体型)、発電規模(10kW未満・10kW以上)、売電方式(余剰売電・全量売電)によって扱いが異なります。
住宅用(10kW未満・余剰売電)の屋根置き型は原則非課税、事業用(10kW以上・全量売電)は償却資産税の対象となります。
事業用の場合、設置翌年1月末までに償却資産申告書を提出し、課税特例の適用を申請することで、3年間で約13万円の軽減が可能です。
自治体の税務課に事前に確認し、適切な申告を行うことが重要です。
