固定資産税は日本だけ?海外の不動産税制度と比較

公開日: 2025/11/11

固定資産税は日本だけ?という誤解を解く

「固定資産税は日本だけの税金なのでは?」と疑問に感じている方は少なくありません。特に海外赴任を控えた方や、不動産の保有コストに負担を感じている方の中には、海外では固定資産税がないのではないかと考える方もいます。

この記事では、「固定資産税は日本だけ」という誤解を正し、米国・英国・ドイツ・フランス等の主要国でも不動産保有税が課されていることを、総務省・OECD等の公的統計を元に解説します。

各国の税率・評価方法・使途の違いを比較することで、日本の制度の特徴を正確に理解できるようになります。

この記事のポイント

  • 固定資産税(不動産保有税)はほぼすべての先進国で課税されており、日本だけの制度ではない
  • 米国は州・郡によって1-3%程度(時価ベース)、英国は住宅の価値帯別に定額課税、ドイツ・フランスも同様の制度あり
  • 日本の標準税率1.4%は比較的低く、評価額も時価の約70%に抑えられ、住宅用地は1/6に軽減される
  • 償却資産税(事業用の機械・設備等への課税)は日本特有の制度である

日本の固定資産税の仕組み

日本の固定資産税は、土地・建物等の不動産を所有する人が毎年納める地方税です。総務省によると、標準税率は1.4%で、市町村が課税します。

税率と評価方法

固定資産税の計算式は以下の通りです。

項目 内容
課税標準 固定資産税評価額(時価の約70%)
標準税率 1.4%
計算式 評価額 × 1.4%
評価替え 3年ごとに評価額を見直し

評価額は時価の約70%に設定されており、3年ごとに評価替えが行われます。このため、実際の税負担は時価ベースで計算する諸外国と比べて相対的に低くなる傾向があります。

住宅用地の特例措置

住宅用地には大幅な軽減措置があります。

  • 200㎡以下の部分: 課税標準額を評価額の1/6に軽減
  • 200㎡超の部分: 課税標準額を評価額の1/3に軽減

この特例により、居住用不動産の税負担は大きく抑えられています。

主要国の不動産税制度

固定資産税は日本だけの制度ではありません。ほとんどの先進国で類似の不動産保有税が課されています。

米国のProperty Tax

米国では、州・郡・市が独自にProperty Tax(財産税)を課税しています。

項目 内容
課税主体 州・郡・市(地方政府)
評価方法 時価ベース(市場価格)
税率 州・郡によって1-3%程度
具体例 ニュージャージー州1.89%、テキサス州1.81%、ルイジアナ州0.18%

(参考: 自治体国際化協会

米国のProperty Taxは、評価額が時価ベースであるため、日本の固定資産税よりも税額が高くなる傾向があります。また、税率は州・郡によって大きく異なり、高い地域では年間数百万円になることもあります。

英国のCouncil Tax

英国では、Council Tax(地方税)として住宅税が課税されます。

項目 内容
課税主体 地方自治体
評価方法 住宅の価値帯別(A-H)
税額 定額制(価値帯によって異なる)
納税義務者 居住者(所有者ではない)

英国のCouncil Taxは、日本の固定資産税と異なり、居住者が納税義務を負います。住宅の価値帯によって税額が決まるため、同じ価値帯の住宅なら税額は同じです。

ドイツのGrundsteuer

ドイツでは、Grundsteuer(不動産税)が土地・建物に課税されます。

項目 内容
課税主体 市町村
評価方法 評価額(連邦政府が決定)
税率 自治体が独自に決定

ドイツの制度は日本に似ており、市町村が税率を決定します。ただし、評価額の算定方法は連邦政府が統一的に定めています。

フランスのTaxe foncière

フランスでは、Taxe foncière(不動産所有税)が不動産所有者に課税されます。

項目 内容
課税主体 市町村
評価方法 評価額(cadastral value)
税率 評価額の約1%

フランスの不動産所有税は、評価額の約1%が目安ですが、自治体によって税率は異なります。

国際比較で見る日本の特徴

日本の固定資産税制度を主要国と比較すると、いくつかの特徴が浮き彫りになります。

税率の比較

各国の税率を比較すると、日本の標準税率1.4%は比較的低い水準にあります。

税率の目安 評価方法
日本 1.4% 時価の約70%
米国 1-3% 時価ベース
英国 定額制 価値帯別
ドイツ 自治体が決定 評価額
フランス 約1% 評価額

米国は時価ベースで評価するため、税率が高く見えますが、実際の税負担は地域によって大きく異なります。日本は評価額が時価の約70%に抑えられているため、実質的な負担は軽くなっています。

評価方法の違い

日本の固定資産税評価額は時価の約70%に設定されていますが、米国のProperty Taxは時価ベースで評価されます。このため、同じ市場価格の不動産でも、日本の方が税負担が軽くなる傾向があります。

また、日本では住宅用地の特例(1/6軽減)があるため、居住用不動産の税負担はさらに低くなります。

償却資産税は日本特有

日本には、土地・建物以外に「償却資産税」という制度があります。これは、事業用の機械・設備等に課税される税金で、標準税率は固定資産税と同じ1.4%です。

償却資産税は、多くの国では存在しない日本特有の制度です。米国・英国・ドイツ・フランスでは、不動産(土地・建物)のみが課税対象で、動産は対象外となっています。

まとめ:固定資産税は世界共通の制度

固定資産税は日本だけの制度ではなく、ほとんどの先進国で類似の不動産保有税が課されています。米国のProperty Tax、英国のCouncil Tax、ドイツのGrundsteuer、フランスのTaxe foncièreなど、名称や仕組みは異なりますが、不動産を所有することに対する課税は世界共通です。

日本の制度は、標準税率1.4%、評価額が時価の約70%、住宅用地の1/6軽減という特徴があり、国際的に見ても比較的負担が軽い設計となっています。

一方で、償却資産税(事業用資産への課税)は日本特有の制度であり、事業を営む方は注意が必要です。

海外赴任中でも、1月1日時点で不動産を所有していれば固定資産税の納税義務がありますので、口座振替等の自動支払いを設定しておくと安心です。

よくある質問

Q1固定資産税がない国はありますか?

A1完全に不動産保有税がない先進国はほとんどありません。ただし、シンガポール・香港等は税率が低い、または一部免除制度がある場合があります。例えば、シンガポールでは自宅用不動産に対する税率は比較的低く設定されており、一定の条件下で軽減措置が適用されます。香港でも居住用不動産には軽減税率が適用される場合があります。

Q2日本の固定資産税は他国と比べて高いですか?

A2いいえ、日本の固定資産税は国際的に見ても比較的負担が軽い設計です。標準税率1.4%は米国の1-3%と比べて低く、評価額も時価の約70%に抑えられています。さらに、住宅用地の特例で200㎡以下の部分は課税標準額が1/6に軽減されるため、実質的な税負担はさらに低くなります。米国のProperty Taxは時価ベースで評価されるため、税額が高くなる傾向があります。

Q3海外赴任中でも日本の固定資産税を払う必要がありますか?

A3はい、海外赴任中でも固定資産税の納税義務があります。固定資産税は1月1日時点で不動産を所有している人に課税されるため、海外に住んでいても課税対象となります。納付期限を逃さないよう、口座振替やクレジットカード払い等の自動支払いを設定しておくことをおすすめします。また、納税管理人を選任することで、代理で納税手続きを行ってもらうことも可能です。

Q4償却資産税は海外にもありますか?

A4いいえ、償却資産税は日本特有の制度です。償却資産税とは、事業用の機械・設備・器具・備品等に課税される税金で、標準税率は1.4%です。米国・英国・ドイツ・フランス等の多くの国では、不動産(土地・建物)のみが課税対象で、動産(機械・設備等)は対象外となっています。このため、日本で事業を営む場合は、固定資産税に加えて償却資産税の負担も考慮する必要があります。