固定資産税と都市計画税の基本を理解する
不動産を所有すると、毎年「固定資産税」と「都市計画税」を納付することになります。「固定資産税と都市計画税の違いがわからない」「年間いくら支払うのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、固定資産税と都市計画税の違い、計算方法、軽減措置、支払い時期を総務省・国土交通省の公式情報を元に解説します。
不動産を所有または購入予定の方が、年間のランニングコストを正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 固定資産税は全国一律で課税(標準税率1.4%)、都市計画税は市街化区域のみに課税(上限税率0.3%)
- 税額は「課税標準額 × 税率」で計算され、固定資産税評価額をベースに住宅用地の特例を適用
- 住宅用地の特例により、小規模住宅用地(200㎡以下)は固定資産税が1/6、都市計画税が1/3に軽減
- 新築住宅の軽減措置(戸建て3年・マンション5年)終了後は税額が約2倍に上昇
- 課税ミスが97%の市町村で発生しており、納税通知書の確認と還付請求が重要
固定資産税と都市計画税の違い【比較表で整理】
固定資産税と都市計画税は、どちらも不動産の所有者に課税される地方税ですが、課税対象・税率・使途が異なります。
| 項目 | 固定資産税 | 都市計画税 | 
|---|---|---|
| 課税対象 | 全国すべての土地・建物 | 市街化区域内の土地・建物のみ | 
| 税率 | 標準税率1.4% | 上限税率0.3%(自治体により異なる) | 
| 税収の使途 | 一般財源(自治体の自由裁量) | 目的税(都市計画事業・土地区画整理事業) | 
| 課税団体 | 全国1,719市町村 | 639市町村 | 
課税対象の違い(全国 vs 市街化区域)
固定資産税は、全国すべての土地・建物に課税される国の基幹税です。総務省調査によると、税収規模は年間9.29兆円で、市町村税の41.4%を占めます。
一方、都市計画税は、都市計画法で定める「市街化区域」内の不動産のみに課税される目的税です。市街化区域とは「すでに市街地を形成している区域及び概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」を指します。市街化区域外(市街化調整区域・非線引き区域等)の不動産は都市計画税がかかりません。
税率の違い(1.4% vs 0.3%)
固定資産税の標準税率は1.4%です。自治体が条例で変更することもできますが、多くの自治体は1.4%を採用しています。
都市計画税の税率は上限0.3%で、自治体により異なります。東京23区では0.3%、他の自治体では0.2%等のケースもあります。お住まいの地域の税率は、市区町村の公式サイトまたは納税通知書で確認してください。
合計すると、市街化区域内の不動産では「固定資産税1.4% + 都市計画税0.3% = 約1.7%」の税率となります。
税収の使い道の違い
固定資産税は一般財源で、自治体が道路・学校・福祉等の幅広い事業に自由に使用できます。
都市計画税は目的税で、都市計画事業(道路・公園・下水道整備等)や土地区画整理事業に特化して使用されます。(出典: 国土交通省|土地の保有に係る税制)
税額の計算方法と固定資産税評価額
固定資産税と都市計画税の税額は、以下の計算式で算出されます。
税額 = 課税標準額 × 税率
固定資産税評価額とは(時価の約70%)
固定資産税評価額は、総務大臣が定める固定資産評価基準に基づき市町村が決定する評価額です。時価の約70%が目安とされています。
固定資産税評価額は3年ごとに見直されます(「評価替え」)。令和6年度(2024年度)が基準年度で、次回は令和9年度(2027年度)です。
課税標準額の算出方法
課税標準額は、固定資産税評価額をベースに住宅用地の特例等を適用した後の金額です。
重要: 評価額 ≠ 課税標準額です。住宅用地の特例により、課税標準額は評価額より大幅に低くなります。
計算式と具体例
具体例: 評価額3,000万円の土地200㎡、建物1,500万円のケース
| 項目 | 評価額 | 課税標準額 | 固定資産税(1.4%) | 都市計画税(0.3%) | 
|---|---|---|---|---|
| 土地(200㎡) | 3,000万円 | 500万円(1/6) | 7万円 | 4.5万円(3,000万円×1/3×0.3%) | 
| 建物 | 1,500万円 | 1,500万円 | 21万円 | 4.5万円 | 
| 合計 | - | - | 28万円 | 9万円 | 
年間税額: 28万円 + 9万円 = 37万円
(出典: 東京都主税局|固定資産税・都市計画税)
住宅用地と新築住宅の軽減措置
住宅用地と新築住宅には、大幅な軽減措置が用意されています。
小規模住宅用地の特例(200㎡以下は1/6)
住宅用地のうち200㎡以下の部分は「小規模住宅用地」として、以下の軽減が適用されます。
- 固定資産税: 課税標準額が評価額の 1/6
- 都市計画税: 課税標準額が評価額の 1/3
一般住宅用地の特例(200㎡超は1/3)
住宅用地のうち200㎡超の部分は「一般住宅用地」として、以下の軽減が適用されます。
- 固定資産税: 課税標準額が評価額の 1/3
- 都市計画税: 課税標準額が評価額の 2/3
新築住宅の軽減措置(3年または5年間)
令和8年3月31日までに新築された住宅については、120㎡までの部分の固定資産税が以下の期間にわたり 1/2 に軽減されます。
- 戸建て住宅: 3年間
- マンション等(3階建以上の耐火・準耐火建築物): 5年間
重要: 軽減期間終了後は、建物部分の固定資産税が約2倍に上昇します。資金繰りに注意が必要です。
(出典: 三井のリハウス|2025年(令和7年)度税金の手引き)
支払い時期と方法、評価額の見直し
納税通知書の送付時期(4-6月)
毎年4-6月(自治体により異なる)に、市区町村から納税通知書が送付されます。納税通知書には、評価額・課税標準額・税額が記載されています。
支払い回数と期限(年4回)
固定資産税・都市計画税は、年4回に分けて納付します。一般的な納期は以下の通りです(自治体により異なります)。
- 第1期: 4月末
- 第2期: 7月末
- 第3期: 12月末
- 第4期: 翌年2月末
年4回の分割払いまたは第1期での一括払いを選択できます。
支払い方法
以下の方法で納付できます。
- 口座振替
- 窓口払い(銀行・郵便局・市区町村窓口)
- コンビニ払い
- クレジットカード
- スマホ決済(PayPay等)
対応方法は自治体により異なるため、納税通知書で確認してください。
評価替えのタイミング(3年ごと)
固定資産税評価額は3年ごとに見直されます(評価替え)。令和3年・令和6年・令和9年…が基準年度です。地価変動が評価額に反映されます。
よくあるトラブルと注意点
課税ミスの実態(97%の市町村で発生)
総務省調査によると、97%の市町村で固定資産税の課税ミスが発生しています。年間還付額は約70億円に上ります。
課税ミスの主な原因は、住宅用地の特例の適用漏れです。本来1/6に軽減されるべき土地が、軽減されずに課税されているケースが多数あります。
過払いの確認方法と還付請求
納税通知書の「評価額」と「課税標準額」を確認してください。
- 小規模住宅用地(200㎡以下): 課税標準額が評価額の1/6になっているか
- 一般住宅用地(200㎡超): 課税標準額が評価額の1/3になっているか
課税ミスがあれば、市区町村の固定資産税課に還付請求できます。法律上の時効は5年です。
固定資産評価審査委員会への審査申出
評価額自体に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会への審査申出ができます。
重要: 申出期限は納税通知書交付から 3ヶ月以内 です。期限を過ぎると権利を失います。
(出典: 意外と多い課税ミス、「固定資産税」で損しないための方法)
まとめ:固定資産税と都市計画税を正しく理解し、適切に納税する
固定資産税は全国一律で課税(標準税率1.4%)され、都市計画税は市街化区域のみに課税(上限税率0.3%)されます。税率は合計で約1.7%です。
税額は「課税標準額 × 税率」で計算され、住宅用地の特例(小規模住宅用地1/6、一般住宅用地1/3)や新築住宅の軽減措置(戸建て3年・マンション5年)を活用すれば、税負担を大幅に軽減できます。
納税通知書で評価額・課税標準額を確認し、課税ミスがあれば還付請求を検討しましょう。不明点は市区町村の固定資産税課に相談することをおすすめします。
