土地の名義変更を自分でする方法:手順・費用・必要書類

公開日: 2025/11/6

土地の名義変更とは?相続登記の義務化で必須の手続き

土地を相続・贈与・売買で取得した際、「司法書士費用を抑えて自分で名義変更できないか」と考える方は少なくありません。

この記事では、土地の名義変更を自分で行う手順、必要書類、費用、司法書士に依頼した場合との比較を、法務局・国税庁の公式情報を元に解説します。

自分で行える場合と専門家に依頼すべき場合を判断し、手続きの流れを正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 2024年4月から相続登記が義務化され、相続開始を知ってから3年以内に名義変更が必要(過料10万円以下)
  • 名義変更には相続・贈与・売買の3つのパターンがあり、必要書類が異なる
  • 自分で行う場合の費用は登録免許税(相続0.4%、贈与・売買2%)+書類取得費1-3万円
  • 司法書士報酬相場は5-15万円なので、自分で行えば節約可能
  • 単純なケースなら自分で可能だが、複雑なケースは専門家に依頼を推奨

名義変更の3つのパターンと必要書類

土地の名義変更(所有権移転登記)には、相続・贈与・売買の3つのパターンがあり、それぞれ必要書類が異なります。

相続による名義変更(必要書類:戸籍謄本、遺産分割協議書等)

相続による名義変更では、以下の書類が必要です。

書類 取得先 費用
戸籍謄本(被相続人の出生から死亡まで) 本籍地の市区町村 1通450円
住民票の除票(被相続人) 住所地の市区町村 1通300-400円
遺産分割協議書 相続人が作成 無料
相続人全員の印鑑証明書 住所地の市区町村 1通300-450円
固定資産税評価証明書 土地所在地の市区町村 1通300-400円
登記事項証明書 法務局 1通600円

贈与による名義変更(必要書類:贈与契約書等)

贈与による名義変更では、以下の書類が必要です。

  • 贈与契約書(贈与者・受贈者が作成)
  • 贈与者・受贈者の印鑑証明書
  • 贈与者・受贈者の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記事項証明書

売買による名義変更(必要書類:売買契約書等)

売買による名義変更では、以下の書類が必要です。

  • 売買契約書(売主・買主が作成)
  • 売主・買主の印鑑証明書
  • 売主・買主の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 登記事項証明書

全パターン共通: 登記事項証明書、固定資産税評価証明書は必須です。

相続による名義変更の手順(ステップ1: 書類準備)

相続の名義変更で最も重要なのは書類準備です。

戸籍謄本の取得(被相続人の出生から死亡まで)

戸籍謄本は本籍地の市区町村で取得します。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。

本籍地が複数回変わっている場合、それぞれの市区町村で取得する必要があります(郵送請求も可能)。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書は、相続人全員で遺産の分け方を合意し作成します。

遺産分割協議書には、以下の事項を記載します。

  • 被相続人の氏名・住所・死亡年月日
  • 相続人全員の氏名・住所
  • 遺産の内容(土地の地番・地目・地積)
  • 誰が何を相続するか
  • 相続人全員の署名・実印押印

相続人全員の印鑑証明書取得

相続人全員の印鑑証明書を取得します。遺産分割協議書に押印した実印と同じ印鑑の証明書が必要です。

固定資産税評価証明書の取得

固定資産税評価証明書は、土地所在地の市区町村で取得します。登録免許税の計算に必要です。

法務局での申請方法(ステップ2: 登記申請)

書類準備が完了したら、法務局で登記申請を行います。

登記申請書の作成

登記申請書を法務局の様式で作成します。法務局の公式サイトから様式をダウンロード可能です。

登記申請書には、以下の事項を記載します。

  • 登記の目的(所有権移転)
  • 原因(相続・贈与・売買)
  • 相続人(新しい所有者)の氏名・住所
  • 土地の地番・地目・地積
  • 登録免許税額

法務局への申請(窓口・郵送・オンライン)

申請方法は3通りあります。

申請方法 メリット デメリット
窓口 即日受付、その場で確認可能 平日日中のみ、法務局に行く必要
郵送 自宅から申請可能 書留で送付、不備があれば補正通知
オンライン 24時間申請可能 登記・供託オンライン申請システムの利用登録が必要

補正対応(不備があった場合)

登記申請書類に不備があれば、補正通知が届きます。平日に法務局に出向いて修正が必要です。

補正期限(通常1-2週間)内に対応しないと却下されます。却下された場合、再申請が必要(登録免許税は再納付)です。

登記識別情報通知の受け取り

登記完了後、登記識別情報通知(12桁の英数字)を受け取ります。旧制度の「権利証」に相当し、次回の登記で必要になります。

名義変更にかかる費用|登録免許税と実費

土地の名義変更にかかる費用は、登録免許税と書類取得費用です。

登録免許税の計算(相続0.4%、贈与・売買2%)

登録免許税は、国税庁の定める税率で計算します。

原因 税率 計算例(評価額1,000万円)
相続 0.4% 4万円
贈与 2% 20万円
売買 2% 20万円

特例: 2025年3月31日まで、評価額100万円以下の土地の相続登記は免税です。

必要書類の取得費用(戸籍謄本・印鑑証明書等)

書類取得費用は合計1-3万円程度です。

  • 戸籍謄本: 数通で2,000-5,000円
  • 印鑑証明書: 相続人数 × 300-450円
  • 住民票・固定資産税評価証明書等: 1,000-2,000円

司法書士報酬との比較(5-15万円)

司法書士に依頼した場合の報酬相場は5-15万円です。

原因 司法書士報酬相場
相続 5-15万円
贈与 5-12万円
売買 5-12万円

自分で行えば、司法書士報酬を節約できます。

自分でできるケースと専門家に依頼すべきケース

土地の名義変更を自分で行えるかは、ケースにより異なります。

自分でできるケース(単純な相続、共有者が少ない等)

以下のケースでは、自分で行うことが可能です。

  • 相続人が少数(2-3人)
  • 遺産分割協議がまとまっている
  • 文字の正確性を確認できる(渡辺・渡邊・渡邉、はしごだか等)
  • 平日に法務局に複数回(3-5回:相談・申請・補正・回収)訪問できる

専門家に依頼すべきケース(相続人が多数、遺産分割協議が複雑等)

以下のケースでは、専門家に依頼することを推奨します。

  • 相続人が多数(4人以上)
  • 遺産分割協議が複雑(相続人間で意見が対立)
  • 売買による名義変更(高額取引)
  • 物件調査が必要(私道部分・附随建物等)
  • 平日に法務局に行く時間がない

法務局への複数回訪問が必要(3-5回)

自分で名義変更を行う場合、法務局に複数回訪問する必要があります。

  1. 相談(登記申請書の書き方確認)
  2. 申請(書類提出)
  3. 補正(不備があった場合)
  4. 回収(登記識別情報通知の受け取り)

平日日中に訪問する必要があるため、時間の確保が重要です。

まとめ|自分で名義変更できるか判断し、必要なら専門家へ

土地の名義変更は自分で行うことで、司法書士報酬(5-15万円)を節約できます。相続登記は2024年4月から義務化され、3年以内に手続きが必要です。

必要書類の準備→法務局での申請→補正対応→登記識別情報通知受け取りの流れを理解し、単純なケースなら自分で可能です。ただし、複雑なケースは専門家に依頼を推奨します。

法務局の登記相談窓口(予約制)で無料相談が可能です。不安な場合は、司法書士に相談しながら進めることをおすすめします。

よくある質問

Q1相続登記の義務化とは何ですか?いつまでに手続きが必要ですか?

A12024年4月から相続登記が義務化されました。相続開始を知ってから3年以内に名義変更が必要で、違反すると過料10万円以下が科されます。2024年4月以前の相続も対象です。遺産分割協議が長引く場合は、相続人申告登記(新設制度)で期限を満たせます。

Q2登記申請書の書き方が難しいのですが、どこで相談できますか?

A2法務局の登記相談窓口で無料相談可能です(予約制)。登記申請書の様式は法務局の公式サイトからダウンロード可能です。文字の正確性(渡辺・渡邊・渡邉、はしごだか等)や地番の確認が重要です。不安な場合は司法書士への依頼を推奨します。

Q3売買による名義変更は自分でできますか?

A3理論上は可能ですが、高額取引のため専門家への依頼を推奨します。売買契約書の作成、登録免許税の計算(固定資産税評価額の2%)、売主・買主双方の書類確認が必要です。不備があると登記申請が却下され、取引が成立しないリスクがあります。

Q4登記申請が却下された場合、どうすればよいですか?

A4法務局から補正通知が届き、平日に法務局に出向いて不備を修正します。補正期限(通常1-2週間)内に対応しないと却下されます。却下された場合、再申請が必要で、登録免許税は再納付となります。文字の正確性や書類の不備が主な却下理由です。