抵当権抹消登記の費用はいくら?自分でやる場合と司法書士依頼の比較

公開日: 2025/11/6

抵当権抹消登記とは何か、なぜ費用を知る必要があるのか

住宅ローンを完済すると、「抵当権抹消登記」という手続きが必要になります。この手続きを怠ると、登記簿に抵当権が残り続け、将来の売却や相続の際にトラブルの原因となる可能性があります。

この記事では、抵当権抹消登記の費用内訳、自分で行う場合と司法書士に依頼する場合の費用比較、手続きの流れと必要書類、期限や放置のリスクを、法務局や専門家の情報を元に解説します。

住宅ローン完済後に必要な手続きと費用を正確に把握し、スムーズに抵当権を抹消できるようになります。

この記事のポイント

  • 抵当権抹消登記の費用は、登録免許税(不動産1個につき1,000円)+司法書士報酬(1-2万円程度)が一般的
  • 自分で手続きすれば登録免許税のみ(1,000-2,000円程度)で済むが、書類作成と法務局への申請が必要
  • 司法書士に依頼すれば手間がかからないが、報酬(1-2万円)が追加でかかる
  • 抵当権抹消登記に法的な期限はないが、放置すると売却・相続時にトラブルの原因となる
  • 金融機関から受け取った書類には有効期限(3ヶ月)があるため、完済後早めの手続きが推奨される

抵当権抹消登記の費用内訳

抵当権抹消登記の費用は、「登録免許税」と「司法書士報酬」の2つに分けられます。

登録免許税(不動産1個につき1,000円)

登録免許税は、不動産登記の際に国に納める税金です。

税額:

  • 不動産1個につき1,000円
  • 土地と建物はそれぞれ1個としてカウント
  • 土地が複数の筆に分かれている場合、筆ごとに1,000円

計算例:

ケース 不動産の内訳 登録免許税
一戸建て(土地1筆・建物1個) 土地1個 + 建物1個 2,000円
一戸建て(土地2筆・建物1個) 土地2個 + 建物1個 3,000円
マンション 敷地権(土地)1個 + 建物1個 2,000円
土地のみ(2筆) 土地2個 2,000円

納付方法:

  • 収入印紙を購入して申請書に貼付
  • 法務局で購入可能

司法書士報酬(1-2万円程度)

司法書士報酬は、司法書士に抵当権抹消登記を依頼した場合に支払う費用です。

報酬の相場:

  • 1-2万円程度(不動産の数により変動)
  • 一戸建て(土地1筆・建物1個): 1万円前後
  • 土地が複数筆ある場合: 1.5-2万円程度

報酬に含まれる内容:

  • 必要書類の確認と作成
  • 法務局への申請書提出
  • 登記完了後の書類受け取り

注意点:

  • 司法書士報酬は自由報酬(司法書士により金額が異なる)
  • 複数の司法書士に見積もりを依頼して比較することが推奨される

実費と報酬の合計額

合計費用の例:

手続き方法 登録免許税 司法書士報酬 合計
自分で手続き 2,000円 0円 2,000円
司法書士に依頼 2,000円 1-2万円 1.2-2.2万円

その他の実費:

  • 登記事項証明書(登記簿謄本)の取得: 600円/通(オンライン請求は500円)
  • 郵送費: 数百円程度

自分で行う場合と司法書士に依頼する場合の費用比較

抵当権抹消登記は、自分で行うか司法書士に依頼するかを選択できます。

自分で手続きする場合のメリット・デメリット

メリット:

  • 費用が安い: 登録免許税のみ(1,000-3,000円程度)
  • 司法書士報酬(1-2万円)が不要

デメリット:

  • 書類作成が必要: 登記申請書を自分で作成
  • 法務局への申請: 窓口に出向くか郵送で申請(平日のみ)
  • 手間と時間がかかる: 書類の不備があると再提出が必要

向いている人:

  • 費用を抑えたい
  • 平日に法務局に行く時間がある
  • 書類作成に抵抗がない

司法書士に依頼する場合のメリット・デメリット

メリット:

  • 手間がかからない: 書類作成・申請を全て任せられる
  • 確実に手続きが完了: 書類の不備によるトラブルを回避
  • 時間を節約: 平日に法務局に行く必要がない

デメリット:

  • 司法書士報酬がかかる: 1-2万円程度

向いている人:

  • 手間を省きたい
  • 平日に法務局に行く時間がない
  • 確実に手続きを完了させたい

どちらを選ぶべきか

費用重視: 自分で手続き(登録免許税のみ、1,000-3,000円)

手間重視: 司法書士に依頼(合計1.2-2.2万円)

一般的な選択:

住宅ローン完済後、金融機関が提携する司法書士を紹介されることが多く、多くの人は司法書士に依頼しています。ただし、費用を抑えたい場合は自分で手続きすることも十分可能です。

抵当権抹消登記の手続きの流れ

抵当権抹消登記の手続きは、以下の流れで進みます。

必要書類の入手と確認

金融機関から受け取る書類:

住宅ローン完済後、金融機関から以下の書類が送付されます。

  1. 登記識別情報通知または登記済証(抵当権設定時の権利証)
  2. 登記原因証明情報(解除証書・弁済証書)
  3. 委任状(金融機関が登記申請を委任する書面)
  4. 資格証明書(金融機関の代表者事項証明書、3ヶ月以内のもの)

注意点:

  • 資格証明書(代表者事項証明書)には**有効期限(発行日から3ヶ月)**がある
  • 期限を過ぎると再取得が必要(金融機関に再発行依頼)

自分で用意する書類:

  • 登記申請書: 法務局のウェブサイトからひな形をダウンロード可能
  • 収入印紙: 登録免許税分(不動産1個につき1,000円)

法務局への申請方法(窓口・郵送・オンライン)

申請方法:

  1. 窓口申請

    • 不動産の所在地を管轄する法務局に出向く
    • 平日8:30-17:15(法務局により異なる)
    • その場で書類の不備を指摘してもらえる
  2. 郵送申請

    • 管轄法務局に書類を郵送
    • 書留郵便または簡易書留で送付
    • 書類に不備があると連絡が来て再提出が必要
  3. オンライン申請

    • 登記・供託オンライン申請システム(不動産登記申請)を利用
    • 電子証明書が必要
    • 手続きが複雑なため、一般的には窓口または郵送が推奨される

管轄法務局の確認方法:

法務局のウェブサイトで「管轄のご案内」を検索し、不動産の所在地を管轄する法務局を確認してください。

登記完了までの期間と確認方法

登記完了までの期間:

  • 1-2週間程度(法務局により異なる)
  • 申請時に「登記完了予定日」を教えてもらえる

登記完了の確認方法:

  1. 法務局から連絡: 登記完了後、法務局から連絡が来る(郵送または電話)
  2. 登記事項証明書の取得: 法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、抵当権が抹消されているか確認
  3. オンライン確認: 登記情報提供サービスで確認(有料、335円/通)

登記完了後に受け取る書類:

  • 登記完了証: 登記が完了したことを証明する書面
  • 登記識別情報通知: 登記名義人に通知される(抵当権抹消では通常発行されない)

抵当権抹消登記の期限と放置のリスク

抵当権抹消登記には法的な期限はありませんが、放置すると将来のトラブルの原因となります。

法的期限はないが早めの手続きが推奨される理由

法的期限:

抵当権抹消登記に法律で定められた期限はありません。住宅ローン完済後、いつでも手続きが可能です。

早めの手続きが推奨される理由:

  1. 金融機関の書類に有効期限がある: 資格証明書(代表者事項証明書)の有効期限は3ヶ月
  2. 金融機関の担当者が変わる: 完済から時間が経つと、金融機関の担当者が変わり、書類の再発行が困難になる場合がある
  3. 金融機関が合併・消滅: 金融機関が合併または消滅すると、手続きが複雑になる

推奨時期: 住宅ローン完済後、1-2ヶ月以内に手続きすることが推奨されます。

放置した場合のトラブル事例

トラブル事例:

  1. 不動産売却時に問題

    • 抵当権が残ったままでは買主が住宅ローンを組めない
    • 売却前に慌てて抵当権抹消登記をする必要がある
    • 金融機関の書類を紛失している場合、再発行に時間がかかる
  2. 相続時に手続きが複雑化

    • 所有者が死亡すると、相続人全員の同意が必要になる
    • 相続登記と抵当権抹消登記を同時に行う必要があり、手続きが煩雑
  3. 金融機関が合併・消滅

    • 金融機関が合併または消滅すると、書類の再発行が困難
    • 弁護士・司法書士に依頼して裁判所で手続きが必要になる場合がある
  4. 登記簿の信頼性低下

    • 抵当権が残ったままの登記簿は、第三者から見て不完全な状態
    • 融資・担保設定の際に不利になる可能性

完済後すぐに手続きすべき理由

まとめ:

  • 抵当権抹消登記は法的に義務ではないが、放置すると将来のトラブルの原因となる
  • 金融機関の書類(資格証明書)には有効期限(3ヶ月)がある
  • 完済後1-2ヶ月以内に手続きすることが推奨される
  • 自分で手続きする場合も司法書士に依頼する場合も、早めに着手すべき

まとめ

抵当権抹消登記の費用は、登録免許税(不動産1個につき1,000円)と司法書士報酬(1-2万円程度)の合計です。自分で手続きすれば登録免許税のみ(1,000-3,000円程度)で済みますが、書類作成と法務局への申請が必要です。司法書士に依頼すれば手間がかからず確実ですが、報酬(1-2万円)が追加でかかります。

抵当権抹消登記に法的な期限はありませんが、金融機関から受け取った書類には有効期限(3ヶ月)があるため、住宅ローン完済後1-2ヶ月以内に手続きすることが推奨されます。放置すると、不動産売却時・相続時にトラブルの原因となる可能性があります。

自分で手続きするか司法書士に依頼するかは、費用と手間を天秤にかけて判断してください。費用を抑えたい場合は自分で手続き、手間を省きたい場合は司法書士に依頼することが一般的です。

よくある質問

Q1抵当権抹消登記は自分でできますか?

A1はい、自分で手続きすることができます。法務局のウェブサイトから登記申請書のひな形をダウンロードし、金融機関から受け取った書類と一緒に管轄法務局に提出すれば完了します。費用は登録免許税のみ(不動産1個につき1,000円)で済みます。ただし、書類作成と法務局への申請(平日のみ)が必要なため、時間がない場合や手続きに不安がある場合は司法書士に依頼することが推奨されます。

Q2抵当権抹消登記をしないとどうなりますか?

A2法的には義務ではないため罰則はありませんが、放置すると将来のトラブルの原因となります。不動産を売却する際、抵当権が残ったままでは買主が住宅ローンを組めないため、売却前に慌てて手続きする必要があります。また、相続時には相続人全員の同意が必要になり手続きが複雑化します。金融機関の書類(資格証明書)には有効期限(3ヶ月)があるため、完済後1-2ヶ月以内に手続きすることが推奨されます。

Q3司法書士に依頼した場合の費用はいくらですか?

A3司法書士報酬は1-2万円程度が相場です。不動産の数により変動し、一戸建て(土地1筆・建物1個)で1万円前後、土地が複数筆ある場合は1.5-2万円程度です。登録免許税(不動産1個につき1,000円)は別途必要なため、合計で1.2-2.2万円程度かかります。司法書士報酬は自由報酬のため、複数の司法書士に見積もりを依頼して比較することが推奨されます。

Q4金融機関から受け取る書類の有効期限は?

A4資格証明書(金融機関の代表者事項証明書)には有効期限があり、発行日から3ヶ月以内に登記申請する必要があります。期限を過ぎると金融機関に再発行を依頼する必要があり、手間と時間がかかります。その他の書類(登記識別情報通知・登記原因証明情報・委任状)には有効期限はありませんが、紛失すると再発行が困難なため、完済後早めに手続きすることが推奨されます。