土地を売る際の税金【2025年】種類・計算・節税策

公開日: 2025/11/6

土地を売る際にかかる税金の基本

土地売却を検討する際、「どんな税金がいくらかかるのか」「売却後の手取り額はどれくらいか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地売却時にかかる税金の種類、譲渡所得税の計算方法、節税策、確定申告の手続きを、国税庁・国土交通省の公式情報を元に解説します。

土地売却が初めての方でも、税金の仕組みを正確に把握し、手取り額を予測できるようになります。

この記事のポイント

  • 土地売却時の税金は「譲渡所得税・住民税」が主で、売却価格ではなく「譲渡所得(売却価格−取得費−譲渡費用)」に課税される
  • 所有期間5年以下は短期譲渡所得(税率約39.63%)、5年超は長期譲渡所得(税率約20.315%)と、税率が約2倍違う
  • 所有期間5年の判定は「売却した年の1月1日時点」で行うため、実質5年10ヶ月保有していても短期譲渡所得になるケースがある
  • 居住用財産の3000万円特別控除を活用すれば、大幅に節税可能(マイホームを売却する場合)
  • 取得費が不明な場合は「譲渡価額の5%」を概算取得費とするが、税負担が大幅に増えるため購入時の契約書保管が重要

土地売却時に発生する税金は、主に「譲渡所得税・住民税」です。国税庁の公式サイトによると、これらは売却価格そのものではなく、「譲渡所得(売却価格−取得費−譲渡費用)」に対して課税されます。

譲渡所得がプラスの場合のみ税金がかかり、譲渡損失(マイナス)の場合は課税されません。ただし、譲渡損失の場合でも、確定申告は必要です。

その他、印紙税(売買契約書)、登録免許税(抵当権抹消)も少額ながら発生します。

税金の種類 内容 課税対象
譲渡所得税 国税 譲渡所得(売却価格−取得費−譲渡費用)
住民税 地方税 譲渡所得
印紙税 売買契約書に貼付 契約書の記載金額に応じて数千円〜数万円
登録免許税 抵当権抹消登記 不動産1個につき1,000円

(出典: 国税庁国土交通省

譲渡所得税の計算方法(3ステップ)

譲渡所得税の計算は、以下の3ステップで行います。

ステップ1: 譲渡所得の算出

譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額です。

計算式:
譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用

  • 取得費: 土地を購入した際の価格と購入時にかかった諸費用(仲介手数料、登記費用等)の合計
  • 譲渡費用: 土地を売却するためにかかった費用(仲介手数料、測量費、印紙税等)

国税庁の公式サイトによると、取得費が不明な場合は「譲渡価額の5%」を概算取得費として使用できますが、これを使うと実際の取得費より低くなり、譲渡所得が大幅に増加して税負担が重くなります。購入時の売買契約書や領収書を探すことが重要です。

ステップ2: 特別控除の適用

譲渡所得から特別控除を差し引きます。代表的なのは「居住用財産の3000万円特別控除」です。

国税庁の公式サイトによると、マイホームを売却した際、譲渡所得から最大3000万円を控除できます。ただし、以下の要件を満たす必要があります。

  • 自己の居住用財産であること
  • 過去2年以内に同特例を使っていないこと
  • 売主と買主が親族等の特別な関係でないこと

更地の土地を売却する場合、原則として3000万円控除は使えませんが、建物取り壊し後1年以内・駐車場等の貸付けをしていない場合は適用可能です。

ステップ3: 税率の適用

特別控除を適用した後の譲渡所得に、税率を掛けて税額を算出します。税率は所有期間により異なります(後述)。

短期譲渡所得と長期譲渡所得の違い

土地の所有期間により、税率が大きく異なります。

所有期間5年の判定方法

国税庁の公式サイトによると、所有期間5年の判定は「売却した年の1月1日時点」で行います。

例えば、2019年2月1日に購入して2024年12月31日に売却した場合、実質約5年11ヶ月保有していても、2024年1月1日時点では5年未満のため短期譲渡所得となります。この点を見落とすと、予想以上の税負担が発生するリスクがあります。

税率の比較(短期39.63% vs 長期20.315%)

所有期間 所得税 住民税 復興特別所得税 合計税率
5年以下(短期) 30% 9% 0.63% 39.63%
5年超(長期) 15% 5% 0.315% 20.315%

(出典: 国税庁

短期譲渡所得の税率は約39.63%、長期譲渡所得は約20.315%と、約2倍の差があります。所有期間5年超まで待つことで、大幅な節税が可能です。

復興特別所得税の加算

2037年まで復興特別所得税(所得税額×2.1%)が加算されます。このため、総税率は表面税率(短期39%、長期20%)より若干高くなります。

計算例:土地売却時の税額シミュレーション

具体的な計算例を3パターン提示します。

前提条件:

  • 購入価格: 3000万円
  • 売却価格: 5000万円
  • 譲渡費用: 200万円(仲介手数料、測量費等)
  • 譲渡所得 = 5000万円 − 3000万円 − 200万円 = 1800万円

ケース1: 短期譲渡所得の場合

所有期間5年以下で売却した場合、税率は39.63%です。

  • 譲渡所得税: 1800万円 × 30% = 540万円
  • 復興特別所得税: 540万円 × 2.1% = 11.34万円
  • 住民税: 1800万円 × 9% = 162万円
  • 合計: 約713万円

ケース2: 長期譲渡所得の場合

所有期間5年超で売却した場合、税率は20.315%です。

  • 譲渡所得税: 1800万円 × 15% = 270万円
  • 復興特別所得税: 270万円 × 2.1% = 5.67万円
  • 住民税: 1800万円 × 5% = 90万円
  • 合計: 約366万円

所有期間5年超まで待つことで、約347万円(713万円 − 366万円)の節税効果があります。

ケース3: 3000万円控除を適用した場合

居住用財産の3000万円特別控除を適用した場合(マイホームを売却する場合のみ)、譲渡所得から3000万円を控除できます。

  • 譲渡所得: 1800万円
  • 特別控除: 3000万円
  • 課税対象: 0円(1800万円 < 3000万円)
  • 合計: 0円

譲渡所得が3000万円以下の場合、税額はゼロになります。ただし、確定申告は必須です。

土地売却時の節税対策

節税策を3つ提示します。

所有期間5年超まで待つ

所有期間5年超まで待つことで、税率が約半分(39.63% → 20.315%)になります。売却を急ぐ必要がない場合、5年超まで待つことを検討してください。

ただし、所有期間5年の判定は「売却した年の1月1日時点」のため、実質5年10ヶ月程度の保有が必要になる場合があります。

3000万円特別控除の活用(居住用財産のみ)

マイホームを売却する場合、居住用財産の3000万円特別控除を活用することで、譲渡所得から最大3000万円を控除できます。

適用要件は以下の通りです。

  • 自己の居住用財産であること
  • 過去2年以内に同特例を使っていないこと
  • 売主と買主が親族等の特別な関係でないこと
  • 建物取り壊し後1年以内・駐車場等の貸付けをしていない場合(更地の場合)

更地の土地のみを売却する場合、原則として適用できませんが、上記要件を満たせば適用可能です。

取得費の証明書類を保管する

購入時の売買契約書・領収書を保管し、取得費を正確に計上することで、譲渡所得を抑えられます。

取得費が不明な場合は「譲渡価額の5%」を概算取得費として使用しますが、これを使うと税負担が大幅に増えます。

例えば、5000万円で売却した場合、概算取得費は250万円(5000万円 × 5%)です。実際の取得費が3000万円だった場合、概算取得費を使うと譲渡所得が2750万円増加(3000万円 − 250万円)し、税額が約550万円増加(2750万円 × 20.315%)します。

確定申告の手続きと注意点

土地売却の翌年2月16日〜3月15日に確定申告が必要です。

申告期限(翌年2月16日〜3月15日)

国税庁の公式サイトによると、土地を売却した年の翌年2月16日〜3月15日が申告期限です。期限内に申告しないと、無申告加算税(本来の税額の15-20%)と延滞税が課されます。

必要書類

確定申告に必要な書類は以下の通りです。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 売買契約書の写し
  • 取得費・譲渡費用の領収書
  • 本人確認書類(マイナンバーカード等)
  • 居住用財産の3000万円控除を適用する場合、住民票の写し等

税額ゼロでも申告は必須

特別控除を適用して税額がゼロになる場合でも、確定申告は必須です。確定申告しないと特例が適用されず、後日追徴課税・延滞税が発生するリスクがあります。

複雑なケース(取得費不明、複数特例の併用等)は、税理士への相談を推奨します。

まとめ:土地売却時の税金を正しく理解して節税しよう

土地売却時の税金は、譲渡所得(売却価格−取得費−譲渡費用)に対して課税されます。所有期間5年以下は短期譲渡所得(税率約39.63%)、5年超は長期譲渡所得(税率約20.315%)と、税率が約2倍違うため、所有期間5年超まで待つことで大幅な節税が可能です。

居住用財産の3000万円特別控除を活用すれば、譲渡所得が3000万円以下の場合は税額がゼロになります。取得費が不明な場合は概算取得費(譲渡価額の5%)を使用しますが、税負担が大幅に増えるため、購入時の契約書・領収書を保管することが重要です。

確定申告は翌年2月16日〜3月15日が期限で、税額がゼロでも申告は必須です。複雑なケースは税理士に相談し、最適な選択をしてください。無理のない売却計画を立て、手取り額を正確に把握しましょう。

よくある質問

Q1土地を売却したら必ず税金がかかりますか?

A1譲渡所得(売却価格−取得費−譲渡費用)がプラスの場合のみ課税されます。譲渡損失(マイナス)の場合は税金はかかりません。ただし、譲渡損失の場合でも確定申告は必要です。申告しないと無申告加算税・延滞税が課されるリスクがあります。譲渡所得がゼロでも、特別控除を適用する場合は確定申告が必須です。

Q2取得費が分からない場合、どうすればいいですか?

A2概算取得費(譲渡価額の5%)を使用できます。ただし、実際の取得費より低くなり、譲渡所得が大幅に増加して税負担が重くなります。例えば5000万円で売却した場合、概算取得費は250万円ですが、実際の取得費が3000万円だった場合、税額が約550万円増加します。購入時の契約書や領収書を探すことが重要です。法務局で登記簿を取得し、購入時期を確認する方法もあります。

Q3所有期間5年の判定はいつ時点で行いますか?

A3売却した年の1月1日時点で判定します。例えば2019年2月1日に購入して2024年12月31日に売却した場合、実質約5年11ヶ月保有していても、2024年1月1日時点では5年未満のため短期譲渡所得(税率約39.63%)となります。長期譲渡所得(税率約20.315%)にするには、2025年1月1日以降に売却する必要があります。この点を見落とすと、予想以上の税負担が発生します。

Q4更地の土地を売却しても3000万円控除は使えますか?

A4原則として使えません。3000万円控除は居住用財産(マイホーム+土地)が対象です。ただし、建物取り壊し後1年以内・駐車場等の貸付けをしていない場合は適用可能です。建物を取り壊して更地にした後、すぐに売却すれば控除を受けられる場合があります。詳細は国税庁の公式サイトまたは税理士にご確認ください。

Q5確定申告を忘れるとどうなりますか?

A5無申告加算税(本来の税額の15-20%)と延滞税が課されます。例えば本来の税額が300万円の場合、無申告加算税が45-60万円加算されます。特別控除を適用する場合、申告しないと控除が受けられず、本来の税額を納めることになります。税額がゼロでも確定申告は必須です。申告期限は翌年2月16日〜3月15日です。期限内に必ず申告してください。