土地売却の税金完全解説!譲渡所得税の計算方法と節税対策

公開日: 2025/10/27

土地売却でかかる税金の全体像

土地の売却を検討する際、「税金がどれくらいかかるのか」「手元にいくら残るのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地売却時にかかる譲渡所得税の計算方法、長期・短期の税率差、節税に使える特例制度、確定申告の手順を、国税庁の公式情報を元に解説します。

初めて土地を売却する方でも、税金の仕組みを正しく理解し、適切な対策を取ることができるようになります。

この記事のポイント

  • 土地売却時の主な税金は譲渡所得税・住民税・復興特別所得税で、税率は所有期間により約20% or 約40%
  • 譲渡所得は「売却価格-取得費-譲渡費用」で計算し、取得費不明時は売却価格の5%ルールが適用される(税額が高くなる)
  • 所有期間の判定は売却年の1月1日時点で5年超か否かで決まり、計算ミスにより高税率が適用されるリスクがある
  • 3000万円特別控除は居住用財産(マイホーム)のみ適用可能で、相続した空き地や投資用土地では使えない
  • 確定申告は売却翌年2-3月が期限で、無申告時は無申告加算税・延滞税が追加される

譲渡所得税の計算方法を徹底解説

譲渡所得の基本計算式(売却価格-取得費-譲渡費用)

譲渡所得税は、土地を売却した際の利益(譲渡所得)に対して課される税金です。国税庁の公式サイトによると、譲渡所得の計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 売却価格 - 取得費 - 譲渡費用

この譲渡所得に対して、所得税・住民税・復興特別所得税が課されます。

取得費に含められる費用の具体例

取得費とは、土地を購入した際にかかった費用の合計です。以下の費用が取得費に含まれます。

  • 土地の購入代金
  • 仲介手数料
  • 測量費
  • 造成費
  • 登記費用(司法書士報酬、登録免許税)
  • 不動産取得税
  • 印紙税

これらの費用を正確に計上することで、譲渡所得を圧縮し、税額を抑えることができます。

譲渡費用に含められる費用の具体例

譲渡費用とは、土地を売却した際にかかった費用です。以下の費用が譲渡費用に含まれます。

  • 仲介手数料
  • 測量費
  • 建物の解体費
  • 契約書の印紙税
  • 立退料(借地権の売却時)

これらの費用も譲渡所得から控除できるため、領収書を保管しておくことが重要です。

取得費が不明な場合の5%ルールと代替手段

相続した土地や古い土地の場合、購入時の資料が残っていないことがあります。この場合、「概算取得費(5%ルール)」が適用され、売却価格の5%を取得費とみなします。

5%ルールのデメリット:

例えば、売却価格3,000万円の場合、取得費は150万円(3,000万円×5%)となり、譲渡所得が大幅に増えます。

  • 売却価格: 3,000万円
  • 取得費(5%ルール): 150万円
  • 譲渡費用: 100万円
  • 譲渡所得: 2,750万円

円満相続税理士法人の記事によると、5%ルールを避ける代替手段として、以下の方法があります。

  • 市街地価格指数: 購入時期の地価データから取得費を推定
  • 抵当権の設定額: 登記簿謄本の抵当権額から購入価格を推定
  • 購入時の預金通帳: 金融機関から取引履歴を取得

これらの資料を使って取得費を証明できれば、5%ルールを避けられます。相続土地の売却を検討している方は、購入時の資料を探すことから始めましょう。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率差に注意

所有期間の判定方法(売却年1月1日時点で5年超か)

譲渡所得税の税率は、所有期間により「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に分かれます。国税庁の公式サイトによると、判定基準は以下の通りです。

所有期間の判定基準: 売却年の1月1日時点で5年超か否か

例:

  • 2019年4月取得 → 2025年6月売却
  • 2025年1月1日時点では所有期間5年9ヶ月
  • 判定: 短期譲渡所得(5年以下)

このように、実際の所有期間が5年を超えていても、売却年の1月1日時点で5年以下なら短期譲渡所得となります。計算ミスにより高税率が適用されるリスクがあるため、売却時期の調整が重要です。

長期譲渡所得の税率20.315%

売却年の1月1日時点で所有期間5年超の場合、長期譲渡所得として以下の税率が適用されます。

税目 税率
所得税 15%
住民税 5%
復興特別所得税 0.315%(所得税×2.1%)
合計 20.315%

短期譲渡所得の税率39.63%

売却年の1月1日時点で所有期間5年以下の場合、短期譲渡所得として以下の税率が適用されます。

税目 税率
所得税 30%
住民税 9%
復興特別所得税 0.63%(所得税×2.1%)
合計 39.63%

税率が約2倍異なるため、所有期間5年の境界をまたぐ場合は、売却時期を調整することで税額を大幅に削減できます。

土地売却で使える節税対策と特例制度

3000万円特別控除の適用要件(居住用財産)

国税庁の公式サイトによると、3000万円特別控除は居住用財産(マイホーム)を売却した場合に譲渡所得から最大3000万円を控除できる特例です。

適用要件:

  • 自分が住んでいた家とその敷地であること
  • 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却先が親子・夫婦等の特別な関係でないこと

重要な注意点:

3000万円特別控除は居住用財産のみ適用可能で、以下の場合は適用できません。

  • 相続した空き地
  • 投資用の土地
  • 別荘の敷地

相続した空き地や投資用土地では使えないことを誤解している方が多いため、注意が必要です。

相続空き家特例(1981年5月31日以前の建物等)

相続した空き家(建物付き土地)を売却する場合、一定の要件を満たせば最大3000万円を控除できる「相続空き家特例」があります。

適用要件:

  • 1981年5月31日以前に建築された建物であること
  • 被相続人が居住していた家屋であること
  • 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 耐震基準を満たすこと(または更地にして売却すること)

この特例は要件が厳格で、1981年6月1日以降の建物は適用対象外です。また、耐震基準を満たさない場合は建物を解体して更地にする必要があります。

その他の特例制度(軽減税率等)

所有期間10年超の居住用財産を売却する場合、3000万円特別控除と併用して軽減税率の特例が適用できます。

  • 6,000万円以下の部分: 所得税10%+住民税4%+復興税0.21% = 14.21%
  • 6,000万円超の部分: 所得税15%+住民税5%+復興税0.315% = 20.315%

これらの特例を活用することで、税額を大幅に削減できる可能性がありますが、適用要件が複雑なため、税理士への相談を推奨します。

譲渡所得税の計算シミュレーション(具体例)

ケース1: 長期所有の相続土地(取得費明確)

条件:

  • 売却価格: 3,000万円
  • 取得費: 2,000万円(相続時の評価額)
  • 譲渡費用: 100万円(仲介手数料・測量費)
  • 所有期間: 長期(5年超)

計算:

  • 譲渡所得: 3,000万円 - 2,000万円 - 100万円 = 900万円
  • 税額: 900万円 × 20.315% = 約183万円

ケース2: 取得費不明の土地(5%ルール適用)

条件:

  • 売却価格: 3,000万円
  • 取得費: 150万円(売却価格の5%)
  • 譲渡費用: 100万円
  • 所有期間: 長期(5年超)

計算:

  • 譲渡所得: 3,000万円 - 150万円 - 100万円 = 2,750万円
  • 税額: 2,750万円 × 20.315% = 約559万円

5%ルール適用時の税額増:

559万円 - 183万円 = 376万円の税額増

取得費が不明だと税額が大幅に増えるため、購入時の資料を探すことが重要です。

ケース3: 短期所有の投資用土地

条件:

  • 売却価格: 3,000万円
  • 取得費: 2,000万円
  • 譲渡費用: 100万円
  • 所有期間: 短期(5年以下)

計算:

  • 譲渡所得: 900万円
  • 税額: 900万円 × 39.63% = 約357万円

短期所有時の税額増:

357万円 - 183万円 = 174万円の税額増

所有期間5年の境界をまたぐ場合は、売却時期を数ヶ月調整するだけで税額を大幅に削減できます。

確定申告の手順と注意点

確定申告の時期と期限(売却翌年2-3月)

土地を売却した場合、給与所得者でも確定申告が必須です。国税庁の確定申告特集によると、申告期限は以下の通りです。

申告期限: 売却翌年の2月16日~3月15日

例:

  • 2025年に土地を売却 → 2026年2月16日~3月15日に申告

必要書類チェックリスト

確定申告時に必要な書類は以下の通りです。

  • 売買契約書(売却時)
  • 売買契約書(購入時、取得費の証明)
  • 仲介手数料・測量費等の領収書(譲渡費用の証明)
  • 登記簿謄本
  • 特例適用のための書類(住民票、耐震基準適合証明書等)

取得費不明の場合でも、市街地価格指数や抵当権設定額の資料を添付することで、5%ルールを避けられる可能性があります。

税理士に相談すべきタイミング

以下のケースでは、税理士への相談を推奨します。

  • 取得費が不明で5%ルールが適用される
  • 特例(3000万円特別控除、相続空き家特例等)の適用を検討している
  • 複雑なケース(共有名義、相続後の即時売却等)
  • 無申告で期限を過ぎてしまった

税理士への相談費用は数万円~10万円程度ですが、節税効果により費用を上回るメリットが得られる場合があります。

まとめ:土地売却の税金は事前準備と専門家相談が鍵

土地売却時の税金は、譲渡所得(売却価格-取得費-譲渡費用)に対して、所有期間5年の境界で税率が約20% or 約40%と2倍変わります。

取得費が不明な場合は売却価格の5%ルールが適用され、税額が大幅に増えるため、購入時の資料を探すことが重要です。また、3000万円特別控除は居住用財産のみ適用可能で、相続した空き地や投資用土地では使えない点に注意が必要です。

確定申告は売却翌年2-3月が期限で、無申告時は無申告加算税・延滞税が追加されます。事前に取得費資料を整理し、売却タイミングを検討し、必要に応じて税理士に相談することで、節税効果が大きく変わります。

次のアクションとして、取得費資料の確認、国土交通省の土地総合情報システムでの相場確認、税理士への相談予約をおすすめします。

よくある質問

Q1土地を相続してすぐ売却する場合、税金はかかりますか?

A1相続直後でも譲渡所得税は発生します。ただし、相続税の取得費加算特例(相続税申告期限から3年以内の売却)により、支払った相続税の一部を取得費に加算して譲渡所得を圧縮できます。この特例を活用することで税額を大幅に削減できる可能性があるため、相続後の売却を検討している方は税理士への相談を推奨します。

Q2土地売却の税金は分割払いできますか?

A2原則として確定申告時に一括納付が必要です。ただし、納税額が多額で一括納付が困難な場合、税務署に申請して延納(分割払い)が認められるケースがあります。延納期間中は利子税が発生するため注意が必要です。延納を希望する場合は、確定申告と同時に延納申請書を提出してください。

Q3土地を売却した年の住民税はいつ払いますか?

A3譲渡所得に対する住民税は、売却翌年の確定申告後、さらに翌年(売却の翌々年)6月から4回に分けて納付します。例:2025年売却→2026年2-3月に確定申告→2026年6月・8月・10月・2027年1月に住民税納付。所得税とは納付時期がずれるため、資金準備が必要です。

Q4共有名義の土地を売却した場合、税金はどう計算しますか?

A4各共有者の持分割合に応じて譲渡所得を按分し、それぞれが確定申告を行います。例:持分1/2ずつの共有土地で譲渡所得1000万円なら、各自500万円ずつ申告。3000万円特別控除等の特例も各自が適用可能(要件を満たす場合)です。共有者それぞれが申告義務を負うため、事前に費用負担・税額負担を話し合っておくことが重要です。

Q5土地売却後に確定申告を忘れた場合、どうなりますか?

A5無申告加算税(本税の15-20%)と延滞税が追加で課されます。悪質と判断されれば重加算税(本税の40%)の可能性もあります。気づいた時点で速やかに期限後申告を行い、税務署に相談することで加算税が軽減されるケースがあります。売却後は必ず確定申告期限を確認し、忘れずに申告してください。