土地売買にかかる税金の全体像
土地の売買を検討する際、「税金がどれくらいかかるのか」「どんな種類の税金を払うのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、土地売買にかかる税金を買主・売主それぞれの立場から整理し、税額の計算方法、軽減措置の活用方法を、国税庁や法務省の公式情報を元に解説します。
税金の全体像を理解することで、現実的な資金計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- 買主は不動産取得税・登録免許税・印紙税を負担する
- 売主は譲渡所得税・住民税・印紙税を負担する
- 譲渡所得税は所有期間5年以下で39.63%、5年超で20.315%と大きく異なる
- 3000万円特別控除や10年超所有軽減税率等の特例で節税が可能
- 事前に税額をシミュレーションし、税理士に相談することが重要
買主が負担する税金
土地を購入する際、買主には複数の税金が発生します。それぞれの税金の内容と計算方法を理解しましょう。
不動産取得税(宅地評価額×1/2×3%)
不動産取得税は、土地を取得した際に都道府県に納める税金です。
税率: 固定資産税評価額 × 3%(2027年3月31日まで)
軽減措置: 宅地の場合、固定資産税評価額の1/2に軽減される特例があります(2027年3月31日まで)。
計算式:
不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 1/2 × 3%
例:
- 固定資産税評価額2000万円の宅地: 2000万円 × 1/2 × 3% = 30万円
不動産取得税は、土地取得後数ヶ月〜半年後に都道府県税事務所から納税通知書が送付されます。納付期限は通知書に記載されています。
さらに、住宅用地の場合は一定面積まで減額される特例もあります。詳細は都道府県税事務所にご確認ください。
登録免許税(評価額の1.5-2.0%)
登録免許税は、土地の所有権移転登記を行う際に法務局に納める税金です。
税率:
- 売買: 固定資産税評価額 × 2.0%(本則)
- 売買(軽減措置): 固定資産税評価額 × 1.5%(2026年3月31日まで)
計算式:
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 1.5%(軽減時)
例:
- 固定資産税評価額2000万円の土地: 2000万円 × 1.5% = 30万円
登録免許税は、登記申請時に法務局で納付します。司法書士に依頼する場合は、司法書士報酬と一緒に預けるのが一般的です。
印紙税(契約金額により変動)
印紙税は、売買契約書に貼付する収入印紙の金額です。契約金額により税額が変動します。
主な税額:
| 契約金額 | 印紙税額 | 軽減税額(2027年3月31日まで) | 
|---|---|---|
| 500万円超-1000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 | 
| 1000万円超-5000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 | 
| 5000万円超-1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 | 
| 1億円超-5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 | 
売買契約書は通常2通作成し、売主・買主それぞれが1通ずつ保管します。印紙税は各自が負担するのが一般的です。
売主が負担する税金
土地を売却する際、売主には譲渡所得税・住民税・印紙税が発生します。特に譲渡所得税は金額が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。
譲渡所得税・住民税(短期39.63%・長期20.315%)
譲渡所得税・住民税は、土地を売却して利益(譲渡所得)が出た場合に課税されます。
譲渡所得の計算式:
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
- 譲渡価額: 土地の売却価格
- 取得費: 土地の購入価格、仲介手数料、登記費用等
- 譲渡費用: 売却時の仲介手数料、測量費、解体費等
譲渡所得がマイナス(損失)の場合、譲渡所得税は発生しません。
所有期間による税率の違い
譲渡所得税・住民税の税率は、土地の所有期間により大きく異なります。
| 区分 | 所有期間 | 税率(所得税・住民税・復興特別所得税の合計) | 
|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%) | 
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%) | 
所有期間は、土地を取得した日から売却した年の1月1日までの期間で計算します。例えば、2020年7月に取得した土地を2025年12月に売却した場合、2025年1月1日時点で所有期間は4年となり、短期譲渡所得となります。
長期保有の方が税率が約半分になるため、売却時期を検討する際の重要なポイントです。
印紙税
売主も売買契約書に印紙税を負担します。税額は買主と同じで、契約金額により変動します。
譲渡所得税の計算方法
譲渡所得税の計算は、譲渡所得を正確に算出することが第一歩です。
譲渡所得の計算式
譲渡所得は、以下の式で計算します。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用
取得費・譲渡費用に含まれるもの
取得費に含まれるもの:
- 土地の購入価格
- 購入時の仲介手数料
- 購入時の登記費用(登録免許税、司法書士報酬)
- 購入時の測量費
- 造成費用
取得費が不明な場合は、譲渡価額の5%を概算取得費として計算できます。ただし、実際の取得費が5%を超える場合は、領収書・契約書等で証明すれば有利になります。
譲渡費用に含まれるもの:
- 売却時の仲介手数料
- 売却時の測量費
- 売却のための建物解体費
- 売却時の広告費
- 立退料
具体的な計算例
ケース: 3000万円で購入した土地を5000万円で売却、所有期間6年(長期譲渡所得)
計算:
- 譲渡価額: 5000万円
- 取得費: 3000万円(購入価格)+ 100万円(購入時諸費用)= 3100万円
- 譲渡費用: 150万円(売却時仲介手数料)+ 50万円(測量費)= 200万円
- 譲渡所得: 5000万円 - 3100万円 - 200万円 = 1700万円
- 税額: 1700万円 × 20.315% = 約345万円
このケースでは、約345万円の譲渡所得税・住民税が発生します。
土地売却の軽減措置と特例
譲渡所得税には、要件を満たせば適用できる特例があります。これらを活用することで、大幅に税額を抑えることができます。
3000万円特別控除(居住用財産)
マイホームの敷地を売却する場合、譲渡所得から最大3000万円を控除できる特例があります。
適用要件:
- 自分が住んでいる(または住んでいた)家屋とその敷地を売却
- 家屋を取り壊した場合は、取り壊しから1年以内に売却契約を締結し、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
- 売却した年の前年・前々年にこの特例を受けていない
効果: 譲渡所得が3000万円以下の場合、譲渡所得税は0円になります。
例: 譲渡所得2000万円の場合、3000万円特別控除を適用すると課税所得は0円となり、税金はかかりません。
10年超所有軽減税率(居住用財産)
マイホームの敷地を、所有期間10年超で売却する場合、3000万円特別控除と併用できる軽減税率が適用されます。
税率:
- 6000万円以下の部分: 14.21%(所得税10%+住民税4%+復興特別所得税0.21%)
- 6000万円超の部分: 20.315%(長期譲渡所得の税率)
例: 譲渡所得5000万円、所有期間12年の場合、3000万円特別控除を適用すると課税所得は2000万円。税額は2000万円 × 14.21% = 約284万円(通常の長期譲渡所得税率なら約406万円)。
相続空き家の特例
相続した空き家の敷地を売却する場合、一定の要件を満たせば3000万円特別控除が適用できます。
適用要件:
- 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)
- 相続開始直前まで被相続人が一人で居住
- 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却
- 売却価格が1億円以下
- 家屋を耐震改修または取り壊して売却
この特例は2027年12月31日までの時限措置です。相続した空き家の売却を検討している方は、早めの対応が推奨されます。
土地購入時の軽減措置
買主にも、軽減措置が用意されています。
住宅用地の不動産取得税軽減
住宅用地を取得する場合、一定の要件を満たせば不動産取得税が減額されます。
軽減内容: 土地の評価額から一定額を控除できます。控除額は都道府県により異なりますが、一般的には以下のいずれか高い方が適用されます。
- 45,000円
- 土地1㎡あたりの評価額 × 1/2 × 住宅床面積の2倍(最大200㎡) × 3%
詳細は都道府県税事務所にご確認ください。
登録免許税の軽減措置
土地の所有権移転登記の登録免許税は、2026年3月31日まで軽減税率が適用されます。
- 本則: 2.0%
- 軽減税率: 1.5%
軽減措置の適用により、評価額2000万円の土地の場合、10万円の節税になります。
まとめ:土地売買の税金は事前シミュレーションが重要
土地の売買には、買主・売主それぞれに税金が発生し、総額は数十万円〜数百万円に及びます。
買主は不動産取得税、登録免許税、印紙税を負担します。宅地の評価額軽減(1/2)や登録免許税の軽減税率(1.5%)を活用することで、税額を抑えることができます。
売主は譲渡所得税・住民税、印紙税を負担します。特に譲渡所得税は、所有期間5年以下で39.63%、5年超で20.315%と税率が大きく異なります。3000万円特別控除や10年超所有軽減税率等の特例を活用することで、大幅に税額を抑えることが可能です。
土地の売買を検討する際は、事前に税額をシミュレーションし、必要に応じて税理士に相談することが重要です。軽減措置の適用要件を満たすよう、売却時期や方法を計画的に進めましょう。
不動産取引に精通した税理士や不動産会社に相談しながら、適切な税務処理を行ってください。
