土地売却の税金はいくら?計算方法と節税対策の基礎知識

公開日: 2025/11/4

土地売却にかかる税金の全体像

マンションや戸建てと異なり、土地のみの売却では「建物がない分シンプルでは?」と思われがちですが、実際には譲渡所得税・住民税という大きな税負担が発生します。

土地を売却した際に発生する主な税金は以下の通りです。

税金の種類 概要 税率・金額
譲渡所得税 売却益(譲渡所得)に課される所得税 長期15.315%、短期30.63%
住民税 売却益に課される地方税 長期5%、短期9%
印紙税 売買契約書に貼付する税金 売却価格により1万円〜6万円(軽減措置適用時)

最も大きな負担となるのが譲渡所得税と住民税です。両者を合わせた税率は、所有期間5年超の長期譲渡で20.315%、5年以下の短期譲渡で39.63%となり、所有期間により税率が約2倍異なる点が最大の特徴です。

国税庁の公式情報によると、この税率には2037年まで課税される復興特別所得税(所得税の2.1%)が既に含まれています。

確定申告は売却翌年の2月16日〜3月15日が期限となり、これを怠ると無申告加算税や延滞税が課されるだけでなく、後述する特例措置も使えなくなるリスクがあります。

この記事のポイント

  • 土地売却の税金は譲渡所得税と住民税で、長期譲渡20.315%、短期譲渡39.63%と所有期間5年で税率が約2倍異なる
  • 所有期間は売却年1月1日時点で判定するため、実質6年保有が安全(例:2019年2月購入→2024年12月売却でも5年以下扱い)
  • 取得費が不明な場合は概算取得費(売却額の5%)で税負担が大幅増、相続時の書類保存が重要
  • 確定申告は売却翌年2/16-3/15が期限で、無申告は重いペナルティ、特例措置利用にも申告が必須

譲渡所得の計算方法と税率

譲渡所得の計算式

土地売却の税金を正確に把握するには、まず譲渡所得を計算する必要があります。譲渡所得とは、売却によって得た利益のことで、以下の計算式で算出されます。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

  • 売却価格: 土地を売った金額(売買契約書に記載の金額)
  • 取得費: 土地を購入した際の価格と購入時にかかった費用(購入価格、仲介手数料、登記費用、測量費等)
  • 譲渡費用: 売却時にかかった費用(仲介手数料、印紙税、測量費、境界確定費用等)

例えば、3,000万円で売却した土地の取得費が1,500万円、譲渡費用が100万円の場合、譲渡所得は1,400万円(= 3,000万円 - 1,500万円 - 100万円)となります。

長期譲渡所得と短期譲渡所得の違い

譲渡所得に課される税率は、土地の所有期間によって大きく異なります。

区分 所有期間 税率 内訳
長期譲渡所得 5年超 20.315% 所得税15.315% + 住民税5%
短期譲渡所得 5年以下 39.63% 所得税30.63% + 住民税9%

(出典: 国税庁

短期譲渡の税率39.63%は長期譲渡の約2倍となるため、できる限り長期譲渡の条件を満たして売却することが節税の基本となります。

所有期間の判定方法(売却年1月1日時点)

所有期間の判定には注意が必要です。売却した日ではなく、売却した年の1月1日時点で5年を超えているかで判定されます。

具体例:

  • 2019年2月1日に購入
  • 2024年12月1日に売却

一見すると約5年10ヶ月保有しているように見えますが、判定基準日は2024年1月1日となります。この時点では所有期間が4年11ヶ月となるため、**短期譲渡所得(税率39.63%)**の扱いとなります。

長期譲渡として認められるには、2025年1月以降に売却する必要があります。このように、実質的には6年保有が確実な判定基準となるため、売却時期の見極めが非常に重要です。

なお、税率に含まれる復興特別所得税(所得税の2.1%)は、東日本大震災の復興財源として2037年まで課税されます。

取得費と譲渡費用の範囲

取得費に含まれるもの(購入価格、登記費用等)

取得費とは、土地を取得した際にかかった費用の総額です。購入価格だけでなく、以下の費用も含まれます。

  • 土地の購入代金
  • 購入時の仲介手数料
  • 登記費用(登録免許税、司法書士報酬)
  • 測量費
  • 造成費用
  • 土地改良費

購入時の領収書や契約書を保管しておくことで、これらの費用を取得費として計上でき、譲渡所得を減らすことができます。

譲渡費用に含まれるもの(仲介手数料、測量費等)

譲渡費用とは、土地を売却するために直接かかった費用です。以下が該当します。

  • 売却時の仲介手数料
  • 印紙税
  • 測量費
  • 境界確定費用
  • 建物の解体費用(売却のために解体した場合)
  • 売主が負担した登記費用

一方、売却後の引っ越し費用や、売却とは無関係な修繕費等は譲渡費用に含まれません。

取得費が不明な場合の概算取得費(売却額の5%)

相続した土地や、古い購入で契約書を紛失した場合など、取得費が不明なケースがあります。この場合、概算取得費として売却価格の5%を取得費とすることができます。

具体例:

  • 売却価格: 3,000万円
  • 概算取得費: 150万円(3,000万円 × 5%)
  • 譲渡費用: 100万円
  • 譲渡所得: 2,750万円

実際の購入価格が1,500万円だった場合と比べると、概算取得費では譲渡所得が2,750万円となり、1,350万円も多く計算されてしまいます。長期譲渡所得(税率20.315%)で計算すると、税額の差は約274万円にもなります。

国税庁の規定により概算取得費は認められていますが、できる限り実際の購入時書類を探し出すか、相続の場合は被相続人の取得時期・取得費を調査することが重要です。

手取り額シミュレーション(具体例)

実際に土地を売却した場合、手元にいくら残るのかをシミュレーションしてみましょう。

前提条件:

  • 売却価格: 3,000万円
  • 取得費: 1,500万円
  • 譲渡費用: 100万円
  • 譲渡所得: 1,400万円

長期譲渡所得の場合(税率20.315%)

  • 譲渡所得税: 1,400万円 × 15.315% = 約214万円
  • 住民税: 1,400万円 × 5% = 70万円
  • 税額合計: 約284万円
  • 手取り額: 約2,716万円(3,000万円 - 100万円(譲渡費用) - 284万円(税金))

短期譲渡所得の場合(税率39.63%)

  • 譲渡所得税: 1,400万円 × 30.63% = 約429万円
  • 住民税: 1,400万円 × 9% = 126万円
  • 税額合計: 約555万円
  • 手取り額: 約2,445万円(3,000万円 - 100万円(譲渡費用) - 555万円(税金))

所有期間5年の違いだけで、手取り額に約270万円の差が生じます。これが、売却時期を慎重に見極める必要がある理由です。

取得費不明で概算取得費を使う場合

  • 売却価格: 3,000万円
  • 概算取得費: 150万円(3,000万円 × 5%)
  • 譲渡費用: 100万円
  • 譲渡所得: 2,750万円

長期譲渡所得(税率20.315%)の場合:

  • 税額合計: 約559万円
  • 手取り額: 約2,341万円

取得費が実額(1,500万円)の場合と比べて、税額が約275万円も増加します。相続した土地の場合、被相続人の購入書類を徹底的に探すべき理由がここにあります。

節税に使える特例措置と注意点

3,000万円特別控除(居住用財産限定)

居住用財産(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。ただし、土地のみの売却では原則として適用されません

適用される可能性があるケース:

  • 居住用建物を解体後、1年以内に売買契約を締結
  • 解体から売買契約までの間、その土地を貸駐車場等に使用していない
  • 居住しなくなってから3年以内の売却

これらの条件を満たす場合は適用可能なケースもありますが、詳細は税理士に確認することをおすすめします。

10年超所有の軽減税率

居住用財産を10年超所有していた場合、3,000万円特別控除と併用して軽減税率が適用されます。

  • 譲渡所得6,000万円以下の部分: 税率14.21%(所得税10.21% + 住民税4%)
  • 譲渡所得6,000万円超の部分: 税率20.315%

土地のみの場合は原則適用されませんが、建物付きで売却する場合は大幅な節税が期待できます。

相続税の取得費加算特例

相続した土地を相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります。

これにより譲渡所得が減少し、譲渡所得税・住民税の負担を軽減できます。適用には確定申告が必須で、相続税の申告書控えや計算明細書等が必要となります。

特例措置の適用には確定申告が必須

どの特例措置を使う場合でも、確定申告をしなければ適用されません。申告を忘れると特例が使えなくなり、本来払わなくてよい税金を納める羽目になります。売却翌年の2月16日〜3月15日の期限を厳守しましょう。

確定申告の流れと期限

申告期限(売却翌年2/16-3/15)

土地を売却した場合、売却した年の翌年2月16日〜3月15日に確定申告を行う必要があります。

例えば、2025年中に土地を売却した場合、2026年2月16日〜3月15日が申告期限となります。

必要書類(譲渡所得内訳書、売買契約書等)

確定申告時に必要な主な書類は以下の通りです。

  • 確定申告書(第一表、第二表、第三表)
  • 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
  • 売買契約書(売却時・購入時の両方)
  • 仲介手数料等の領収書
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 特例措置を使う場合は追加書類(住民票、戸籍の附票等)

e-Tax(電子申告)を利用すれば、自宅からオンラインで申告することも可能です。国税庁の確定申告特集で詳細な手順を確認できます。

無申告のペナルティ(無申告加算税、延滞税)

確定申告を怠った場合、以下のペナルティが課されます。

  • 無申告加算税: 本税の15〜20%
  • 延滞税: 年率約7〜14%(納期限の翌日から納付日まで)

さらに、前述の3,000万円特別控除等の特例措置も一切使えなくなります。結果として、本来払わなくてよい数十万円〜数百万円の税金を納めることになるリスクがあります。

税理士に依頼する場合、報酬は5万円〜15万円程度が相場です。複雑なケースや特例措置の適用を検討する場合は、専門家への相談を強くおすすめします。

まとめ:土地売却の税金は早めの計画が重要

土地売却にかかる税金は、譲渡所得税と住民税で構成され、長期譲渡(所有期間5年超)で20.315%、短期譲渡(所有期間5年以下)で39.63%と、所有期間により税率が約2倍異なります。

所有期間は売却年1月1日時点で判定されるため、実質的には6年保有が安全な判断基準となります。取得費が不明な場合は概算取得費(売却額の5%)となり、税負担が大幅に増えるため、相続の際は購入時の書類を必ず保管しておきましょう。

確定申告は売却翌年の2月16日〜3月15日が期限で、無申告には重いペナルティが課されます。特例措置を活用する場合も確定申告が必須です。手取り額を正確に把握し、売却時期の見極めと早めの準備を行うことが、税金で損をしないための鉄則です。

税理士への相談も検討しながら、無理のない資金計画を立てましょう。

よくある質問

Q1所有期間5年の判定はいつ時点で行いますか?

A1売却年の1月1日時点で判定します。例えば2019年2月に購入し2024年12月に売却した場合、2024年1月1日時点では所有期間5年未満となるため短期譲渡(税率39.63%)が適用されます。長期譲渡(税率20.315%)にするには、2025年1月以降の売却が必要です。実質的には6年保有が確実な基準となるため、売却時期の見極めが重要です。

Q2取得費が分からない場合はどうすればいいですか?

A2概算取得費として売却額の5%を使用できます。ただし実際の購入価格より大幅に低くなることが多く、譲渡所得が増えて税負担が重くなります。例えば3,000万円で売却した場合、概算取得費は150万円ですが、実際の購入価格が1,500万円なら税額の差は約274万円にもなります。相続の場合は被相続人の購入書類を徹底的に探すことをおすすめします。

Q3土地のみの売却でも3,000万円特別控除は使えますか?

A3原則として適用されません。3,000万円特別控除は居住用建物付き財産が対象です。ただし、居住用建物を解体後1年以内に売買契約を締結し、かつ解体から契約までの間に貸駐車場等に使用していない場合は、適用可能なケースもあります。詳細な要件は複雑なため、税理士に確認することをおすすめします。

Q4確定申告を忘れたらどうなりますか?

A4無申告加算税(本税の15-20%)と延滞税(年率約7〜14%)が課されます。さらに3,000万円特別控除等の特例措置も一切使えなくなり、税負担が大幅に増えます。例えば本来の税額が200万円だった場合、ペナルティで230万円〜240万円に増える可能性があります。売却翌年2月16日〜3月15日の期限を必ず守りましょう。

Q5相続した土地の所有期間はいつから計算しますか?

A5被相続人(亡くなった方)が取得した日から計算します。例えば親が1990年に購入した土地を2025年に相続し、同年中に売却した場合でも、所有期間は35年となり長期譲渡所得(税率20.315%)が適用されます。相続税を支払った場合は、相続開始日から3年10ヶ月以内の売却で相続税の取得費加算特例も使えます。