土地を売りたい時の相談先を状況別に選ぶ基本
土地の売却を考えている方の中には、「どこに相談すればいいか分からない」「信頼できる相談先を見つけたい」と感じている方は少なくありません。
この記事では、土地売却時の相談先の選び方、不動産会社・専門家の役割、無料相談窓口の活用方法を、国土交通省や日本弁護士連合会の公式情報を元に解説します。
状況に応じた最適な相談先が分かり、信頼できる専門家を見つけられるようになります。
この記事のポイント
- 土地売却時の相談先は状況により異なる(通常の売却なら不動産会社、専門的問題があれば各専門家)
- 不動産仲介会社・税理士・司法書士・土地家屋調査士・弁護士の5つの相談先がある
- 不動産会社は査定価格だけで判断せず、複数社の査定を比較し根拠を確認
- 媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)により売却活動の自由度が異なる
- 無料相談窓口(自治体、宅建協会、国民生活センター)も活用可能
主な相談先とそれぞれの役割
土地売却時の主な相談先は、以下の5つです。それぞれの役割と相談すべきタイミングを解説します。
不動産仲介会社(売却実務全般)
不動産仲介会社は、土地売却の実務全般を担当します。
役割:
- 土地の査定
- 販売活動(広告、物件紹介)
- 買主との交渉
- 売買契約書の作成
- 決済・引渡しの立会い
相談すべきタイミング: 売却を検討し始めた段階で、まず査定を依頼
税理士(譲渡所得税・確定申告)
税理士は、土地売却時の税金に関する相談を担当します。
役割:
- 譲渡所得税の計算
- 特別控除の適用判定(居住用財産の3000万円控除、相続空き家の3000万円特例等)
- 確定申告の代行
相談すべきタイミング: 売却前に税金の試算を依頼し、売却後の確定申告時期
譲渡所得税とは、土地を売却して得た利益に課税される税金です。所有期間5年超が長期譲渡所得(税率20.315%)、5年以下が短期譲渡所得(税率39.63%)となります。
司法書士(登記手続き)
司法書士は、土地の登記手続きを担当します。
役割:
- 所有権移転登記
- 相続登記(相続した土地の場合)
- 抵当権抹消登記(住宅ローンが残っている場合)
相談すべきタイミング: 売買契約後、決済・引渡し前
土地家屋調査士(境界確定・測量)
土地家屋調査士は、境界確定と測量を担当します。
役割:
- 境界確定測量(隣地所有者と立ち会い、境界を確定)
- 地積測量図作成
- 分筆登記(土地を分割する場合)
相談すべきタイミング: 境界が不明、測量図が古い・ない場合は売却前に依頼
費用は30万円~80万円程度が相場です。
弁護士(相続トラブル・境界紛争)
弁護士は、法律問題が発生した場合の相談を担当します。
役割:
- 相続トラブル(共有名義の解消、遺産分割協議)
- 境界紛争の法的対応
- 契約トラブルの解決
相談すべきタイミング: 相続人間でトラブルがある、隣地との境界で紛争が発生した場合
| 相談先 | 主な役割 | 相談タイミング | 費用目安 | 
|---|---|---|---|
| 不動産仲介会社 | 査定、販売活動、契約 | 売却検討段階 | 仲介手数料(売却価格×3%+6万円+消費税) | 
| 税理士 | 譲渡所得税計算、確定申告 | 売却前・売却後 | 確定申告5万円~ | 
| 司法書士 | 登記手続き | 売買契約後 | 登記5万円~ | 
| 土地家屋調査士 | 境界確定、測量 | 売却前 | 測量30万円~80万円 | 
| 弁護士 | 相続・境界トラブル | トラブル発生時 | 初回相談無料~、依頼時は別途 | 
不動産仲介会社の選び方と比較ポイント
不動産会社選びは、土地売却成功の鍵となります。以下の3つのポイントを比較してください。
地元密着型vs大手不動産会社の違い
地元密着型:
- メリット: 地域の売買事例に精通、地元の買主を抱える、小回りが利く
- デメリット: 広告力が限られる、全国ネットワークがない
大手不動産会社:
- メリット: 広告力、全国ネットワーク、ブランド力、安心感
- デメリット: 担当者の異動が多い、地域特有の事情に疎い場合がある
どちらが良いかは土地の立地や特性により異なります。地元の買主が多い場合は地元密着型、広範囲から買主を探したい場合は大手が有利です。
査定価格だけで判断しない理由
査定価格が最も高い不動産会社を選ぶのは危険です。「高値つかみ」のリスクがあります。
高値つかみとは: 契約を取るために相場より高い査定価格を提示し、契約後に「買主が見つからない」として値下げを要求する手法です。
対策:
- 複数社(3-5社)の査定を比較
- 査定価格の根拠を確認(近隣の売買事例、土地の条件等)
- 査定書の詳細を確認
査定価格が相場より大幅に高い場合は、根拠を詳しく確認してください。
媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)
媒介契約には3種類あり、複数社への依頼可否や契約期間が異なります。
| 媒介契約の種類 | 複数社への依頼 | 自己発見取引 | 契約期間 | 活動報告義務 | 
|---|---|---|---|---|
| 専属専任媒介 | 不可(1社のみ) | 不可 | 3ヶ月 | 1週間に1回以上 | 
| 専任媒介 | 不可(1社のみ) | 可 | 3ヶ月 | 2週間に1回以上 | 
| 一般媒介 | 可(複数社) | 可 | 制限なし | 義務なし | 
自己発見取引: 売主が自分で買主を見つけた場合に、不動産会社を通さずに直接取引すること
選び方のポイント:
- 専属専任・専任: 1社に集中して販売活動を依頼、活動報告が頻繁で安心
- 一般: 複数社に依頼し、最も良い条件を提示した買主を選べる
一般的には、専任媒介が多く採用されます。
国土交通省の宅地建物取引業者検索システムで、不動産会社の免許番号と行政処分歴を確認することを推奨します。
専門家への相談が必要な5つのケース
以下のケースでは、不動産会社だけでなく専門家への相談が必要です。
ケース1:譲渡所得税の特別控除を適用したい
土地売却時には譲渡所得税が課税されますが、特別控除を適用できる場合があります。
主な特別控除:
- 居住用財産の3000万円控除
- 相続空き家の3000万円特例
- 収用等の5000万円特別控除
特別控除の要件は厳密で、適用可否の判定には専門知識が必要です。日本税理士会連合会で税理士を検索し、売却前に相談してください。
確定申告の代行費用は5万円~が目安です。
ケース2:境界が未確定・測量図がない
境界が未確定、測量図が古い・ない場合は、土地家屋調査士に依頼してください。
境界確定測量とは: 隣地所有者と立ち会い、土地の境界を確定させる測量です。境界標を設置し、地積測量図を作成します。
費用: 30万円~80万円程度(土地の形状、隣地の数により異なる)
境界が確定していない土地は、買主が見つかりにくく、売却価格も下がる傾向があります。売却前に境界確定測量を行うことを推奨します。
境界紛争が発生した場合は、日本弁護士連合会に相談してください。
ケース3:相続した土地で共有名義・未登記
相続した土地で共有名義、相続登記が未了の場合は、司法書士に相談してください。
相続登記: 相続により取得した土地の所有権を、相続人名義に変更する登記手続きです。2024年4月から相続登記が義務化されており、相続から3年以内に登記しないと過料が課される可能性があります。
共有名義の土地: 複数の相続人で共有している土地は、全員の同意がないと売却できません。共有者間でトラブルがある場合は、弁護士に相談し、共有物分割請求等の法的手続きを検討してください。
司法書士の登記費用は5万円~が目安です。
無料で利用できる相談窓口一覧
費用をかけずに相談できる公的窓口を活用してください。
自治体の不動産相談窓口
市区町村の多くは、空き家・空き地相談窓口を設置しています。所有者不明土地、長期放置土地など、困難なケースでも相談できます。
国土交通省の所有者不明土地・空き地等の低未利用土地に関する相談窓口で、各自治体の相談窓口を確認できます。
宅建協会のハトマークサイト110番
全国宅地建物取引業協会連合会は、消費者向けの無料相談窓口「ハトマークサイト110番」を運営しています。
相談内容:
- 不動産会社とのトラブル
- 売却に関する一般的な質問
- 媒介契約の内容確認
不動産取引の専門家が対応してくれるため、初めての相談先として活用できます。
国民生活センター・消費生活センター
国民生活センター・消費生活センターでは、以下の相談を受け付けています。
- 悪質業者の被害相談
- 契約トラブル
- 不当な請求
消費者ホットライン(188)に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。
まとめ:相談先を賢く選んで土地売却を成功させる
土地売却時の相談先は、状況により異なります。通常の売却なら不動産会社、専門的問題があれば各専門家に相談してください。
複数の不動産会社に査定を依頼し、根拠と対応を比較することが重要です。媒介契約の種類を理解し、自分に合った契約を選びましょう。
次のアクションとして、以下を推奨します。
- 状況を整理し、必要な相談先をリストアップ
- 複数の不動産会社に査定を依頼(3-5社)
- 無料相談窓口を活用して基礎知識を得る
- 国土交通省の宅建業者検索システムで不動産会社の信頼性を確認
焦らず、納得できる相談先を見つけることが、土地売却成功の鍵です。適切な相談先との連携により、スムーズに土地を売却しましょう。
