土地を売りたい時の相談先は?状況別の選び方

公開日: 2025/10/31

土地を売りたい時の相談先を状況別に選ぶ基本

土地の売却を考えている方の中には、「どこに相談すればいいか分からない」「信頼できる相談先を見つけたい」と感じている方は少なくありません。

この記事では、土地売却時の相談先の選び方、不動産会社・専門家の役割、無料相談窓口の活用方法を、国土交通省日本弁護士連合会の公式情報を元に解説します。

状況に応じた最適な相談先が分かり、信頼できる専門家を見つけられるようになります。

この記事のポイント

  • 土地売却時の相談先は状況により異なる(通常の売却なら不動産会社、専門的問題があれば各専門家)
  • 不動産仲介会社・税理士・司法書士・土地家屋調査士・弁護士の5つの相談先がある
  • 不動産会社は査定価格だけで判断せず、複数社の査定を比較し根拠を確認
  • 媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)により売却活動の自由度が異なる
  • 無料相談窓口(自治体、宅建協会、国民生活センター)も活用可能

主な相談先とそれぞれの役割

土地売却時の主な相談先は、以下の5つです。それぞれの役割と相談すべきタイミングを解説します。

不動産仲介会社(売却実務全般)

不動産仲介会社は、土地売却の実務全般を担当します。

役割:

  • 土地の査定
  • 販売活動(広告、物件紹介)
  • 買主との交渉
  • 売買契約書の作成
  • 決済・引渡しの立会い

相談すべきタイミング: 売却を検討し始めた段階で、まず査定を依頼

税理士(譲渡所得税・確定申告)

税理士は、土地売却時の税金に関する相談を担当します。

役割:

  • 譲渡所得税の計算
  • 特別控除の適用判定(居住用財産の3000万円控除、相続空き家の3000万円特例等)
  • 確定申告の代行

相談すべきタイミング: 売却前に税金の試算を依頼し、売却後の確定申告時期

譲渡所得税とは、土地を売却して得た利益に課税される税金です。所有期間5年超が長期譲渡所得(税率20.315%)、5年以下が短期譲渡所得(税率39.63%)となります。

司法書士(登記手続き)

司法書士は、土地の登記手続きを担当します。

役割:

  • 所有権移転登記
  • 相続登記(相続した土地の場合)
  • 抵当権抹消登記(住宅ローンが残っている場合)

相談すべきタイミング: 売買契約後、決済・引渡し前

土地家屋調査士(境界確定・測量)

土地家屋調査士は、境界確定と測量を担当します。

役割:

  • 境界確定測量(隣地所有者と立ち会い、境界を確定)
  • 地積測量図作成
  • 分筆登記(土地を分割する場合)

相談すべきタイミング: 境界が不明、測量図が古い・ない場合は売却前に依頼

費用は30万円~80万円程度が相場です。

弁護士(相続トラブル・境界紛争)

弁護士は、法律問題が発生した場合の相談を担当します。

役割:

  • 相続トラブル(共有名義の解消、遺産分割協議)
  • 境界紛争の法的対応
  • 契約トラブルの解決

相談すべきタイミング: 相続人間でトラブルがある、隣地との境界で紛争が発生した場合

相談先 主な役割 相談タイミング 費用目安
不動産仲介会社 査定、販売活動、契約 売却検討段階 仲介手数料(売却価格×3%+6万円+消費税)
税理士 譲渡所得税計算、確定申告 売却前・売却後 確定申告5万円~
司法書士 登記手続き 売買契約後 登記5万円~
土地家屋調査士 境界確定、測量 売却前 測量30万円~80万円
弁護士 相続・境界トラブル トラブル発生時 初回相談無料~、依頼時は別途

不動産仲介会社の選び方と比較ポイント

不動産会社選びは、土地売却成功の鍵となります。以下の3つのポイントを比較してください。

地元密着型vs大手不動産会社の違い

地元密着型:

  • メリット: 地域の売買事例に精通、地元の買主を抱える、小回りが利く
  • デメリット: 広告力が限られる、全国ネットワークがない

大手不動産会社:

  • メリット: 広告力、全国ネットワーク、ブランド力、安心感
  • デメリット: 担当者の異動が多い、地域特有の事情に疎い場合がある

どちらが良いかは土地の立地や特性により異なります。地元の買主が多い場合は地元密着型、広範囲から買主を探したい場合は大手が有利です。

査定価格だけで判断しない理由

査定価格が最も高い不動産会社を選ぶのは危険です。「高値つかみ」のリスクがあります。

高値つかみとは: 契約を取るために相場より高い査定価格を提示し、契約後に「買主が見つからない」として値下げを要求する手法です。

対策:

  • 複数社(3-5社)の査定を比較
  • 査定価格の根拠を確認(近隣の売買事例、土地の条件等)
  • 査定書の詳細を確認

査定価格が相場より大幅に高い場合は、根拠を詳しく確認してください。

媒介契約の種類(専属専任・専任・一般)

媒介契約には3種類あり、複数社への依頼可否や契約期間が異なります。

媒介契約の種類 複数社への依頼 自己発見取引 契約期間 活動報告義務
専属専任媒介 不可(1社のみ) 不可 3ヶ月 1週間に1回以上
専任媒介 不可(1社のみ) 3ヶ月 2週間に1回以上
一般媒介 可(複数社) 制限なし 義務なし

自己発見取引: 売主が自分で買主を見つけた場合に、不動産会社を通さずに直接取引すること

選び方のポイント:

  • 専属専任・専任: 1社に集中して販売活動を依頼、活動報告が頻繁で安心
  • 一般: 複数社に依頼し、最も良い条件を提示した買主を選べる

一般的には、専任媒介が多く採用されます。

国土交通省の宅地建物取引業者検索システムで、不動産会社の免許番号と行政処分歴を確認することを推奨します。

専門家への相談が必要な5つのケース

以下のケースでは、不動産会社だけでなく専門家への相談が必要です。

ケース1:譲渡所得税の特別控除を適用したい

土地売却時には譲渡所得税が課税されますが、特別控除を適用できる場合があります。

主な特別控除:

  • 居住用財産の3000万円控除
  • 相続空き家の3000万円特例
  • 収用等の5000万円特別控除

特別控除の要件は厳密で、適用可否の判定には専門知識が必要です。日本税理士会連合会で税理士を検索し、売却前に相談してください。

確定申告の代行費用は5万円~が目安です。

ケース2:境界が未確定・測量図がない

境界が未確定、測量図が古い・ない場合は、土地家屋調査士に依頼してください。

境界確定測量とは: 隣地所有者と立ち会い、土地の境界を確定させる測量です。境界標を設置し、地積測量図を作成します。

費用: 30万円~80万円程度(土地の形状、隣地の数により異なる)

境界が確定していない土地は、買主が見つかりにくく、売却価格も下がる傾向があります。売却前に境界確定測量を行うことを推奨します。

境界紛争が発生した場合は、日本弁護士連合会に相談してください。

ケース3:相続した土地で共有名義・未登記

相続した土地で共有名義、相続登記が未了の場合は、司法書士に相談してください。

相続登記: 相続により取得した土地の所有権を、相続人名義に変更する登記手続きです。2024年4月から相続登記が義務化されており、相続から3年以内に登記しないと過料が課される可能性があります。

共有名義の土地: 複数の相続人で共有している土地は、全員の同意がないと売却できません。共有者間でトラブルがある場合は、弁護士に相談し、共有物分割請求等の法的手続きを検討してください。

司法書士の登記費用は5万円~が目安です。

無料で利用できる相談窓口一覧

費用をかけずに相談できる公的窓口を活用してください。

自治体の不動産相談窓口

市区町村の多くは、空き家・空き地相談窓口を設置しています。所有者不明土地、長期放置土地など、困難なケースでも相談できます。

国土交通省の所有者不明土地・空き地等の低未利用土地に関する相談窓口で、各自治体の相談窓口を確認できます。

宅建協会のハトマークサイト110番

全国宅地建物取引業協会連合会は、消費者向けの無料相談窓口「ハトマークサイト110番」を運営しています。

相談内容:

  • 不動産会社とのトラブル
  • 売却に関する一般的な質問
  • 媒介契約の内容確認

不動産取引の専門家が対応してくれるため、初めての相談先として活用できます。

国民生活センター・消費生活センター

国民生活センター・消費生活センターでは、以下の相談を受け付けています。

  • 悪質業者の被害相談
  • 契約トラブル
  • 不当な請求

消費者ホットライン(188)に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。

まとめ:相談先を賢く選んで土地売却を成功させる

土地売却時の相談先は、状況により異なります。通常の売却なら不動産会社、専門的問題があれば各専門家に相談してください。

複数の不動産会社に査定を依頼し、根拠と対応を比較することが重要です。媒介契約の種類を理解し、自分に合った契約を選びましょう。

次のアクションとして、以下を推奨します。

  • 状況を整理し、必要な相談先をリストアップ
  • 複数の不動産会社に査定を依頼(3-5社)
  • 無料相談窓口を活用して基礎知識を得る
  • 国土交通省の宅建業者検索システムで不動産会社の信頼性を確認

焦らず、納得できる相談先を見つけることが、土地売却成功の鍵です。適切な相談先との連携により、スムーズに土地を売却しましょう。

よくある質問

Q1土地を売りたい時、最初にどこに相談すべきですか?

A1通常の売却なら不動産仲介会社に査定を依頼してください(複数社推奨)。境界未確定・相続未登記など権利関係が複雑な場合は、まず司法書士・土地家屋調査士に相談してください。税金の特別控除を検討する場合は税理士へ。判断に迷ったら、自治体や全国宅地建物取引業協会連合会の無料相談窓口を活用してください。

Q2複数の不動産会社に同時に相談しても良いですか?

A2一般媒介契約なら複数社への依頼が可能です。専任・専属専任媒介は1社のみに依頼する契約です。査定段階では複数社(3-5社)に依頼し、査定価格の根拠と対応を比較することを推奨します。査定だけなら無料で、媒介契約を結ばなくても問題ありません。査定価格だけで判断せず、根拠を確認してください。

Q3相談にはどのくらい費用がかかりますか?

A3不動産会社の査定は無料です(媒介契約を結ばなくてもOK)。税理士・司法書士・弁護士は初回相談が無料の場合が多いです。実際の業務依頼時に報酬が発生します。費用目安は、税理士の確定申告5万円~、司法書士の登記5万円~、土地家屋調査士の測量30万円~80万円です。無料相談窓口(自治体、宅建協会、国民生活センター)も活用してください。

Q4悪質な不動産会社の見分け方は?

A4①国土交通省の宅地建物取引業者検索システムで免許番号と行政処分歴を確認してください。②査定価格が相場より大幅に高い(高値つかみの可能性)。③専属専任媒介を強引に勧める。④重要事項説明を省略・簡略化。⑤仲介手数料の上限(売却価格×3%+6万円+消費税)を超える請求。不審な点があれば、宅建協会や消費生活センターに相談してください。