土地の測量費用とは|なぜ測量が必要か
土地の売却や分筆、境界確定で「測量費用はいくらかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。
この記事では、測量の種類(現況測量・境界確定測量・地積測量)ごとの費用相場、費用が変動する要因、費用を抑える方法まで、国土交通省や土地家屋調査士の専門情報を元に解説します。
初めて測量を依頼される方でも、適切な測量の種類と必要な資金を正確に把握できるようになります。
この記事のポイント
- 測量の種類は3つ(現況測量・境界確定測量・地積測量)で費用相場が異なる(10-120万円)
- 測量費用は土地面積、隣接地数、立会いの種類(民民・官民)により大きく変動する
- 複数業者からの見積もり取得と地籍調査の活用で費用を抑えられる
- 測量は国家資格者(土地家屋調査士・測量士)のみが行える業務で、無資格者による測量は違法
- 土地売買時は売主が負担するのが一般的で、譲渡費用として確定申告で控除できる場合がある
測量が必要な理由
土地の測量が必要となる主な理由は、境界トラブルの防止と法的手続きの要件です。
土地の売買時には、売主が買主に対して境界を明示する義務があります。境界が不明確なまま売買すると、隣地所有者とのトラブルや契約解除のリスクがあります。
また、分筆登記や地積更正登記を行う際は、地積測量図の添付が法律で義務付けられています。相続で土地を複数人で分ける場合も、公平な分割のために測量が必要となります。
測量は国家資格者(土地家屋調査士・測量士)のみが行える業務です。測量法により、無資格者による測量は違法とされています。
測量の3つの種類と費用相場
測量の種類により目的と費用が大きく異なります。適切な測量を選ぶことで、不要な費用を避けることができます。
現況測量(10-20万円)
現況測量は、土地の現況をそのまま測定する簡易測量です。隣地所有者の立会いは不要で、短期間(1-2週間)で完了します。
費用相場: 10-20万円
用途: 建築計画の検討、概算面積の把握、現況図の作成等。ただし、法的効力は限定的で、土地売買時の境界明示には使えません。
境界確定測量(35-80万円)
境界確定測量は、隣地所有者立会いのもと境界を確定させる測量です。土地売買時に必須となる測量で、境界確認書を作成します。
費用相場: 35-80万円
用途: 土地売買、境界紛争の解決、境界標の設置等。隣地所有者全員の立会いと境界確認書への署名押印が必要です。
費用は民民立会い(隣接地がすべて民有地)より、官民立会い(道路・水路等との境界確定)の方が20-30万円程度高額になります(土地家屋調査士実務調査)。役所との調整に時間と手間がかかるためです。
地積測量(60-120万円)
地積測量は、土地の面積を正確に測量し、登記に反映させる測量です。分筆登記や地積更正登記時に必要となります。
費用相場: 60-120万円
用途: 分筆登記(1つの土地を複数に分ける)、地積更正登記(登記面積と実測面積が異なる場合の訂正)等。不動産登記法により地積測量図の添付が義務付けられています。
| 測量の種類 | 費用相場 | 隣地立会い | 法的効力 | 用途 |
|---|---|---|---|---|
| 現況測量 | 10-20万円 | 不要 | 限定的 | 建築計画、概算把握 |
| 境界確定測量 | 35-80万円 | 必要 | 高い | 土地売買、境界確定 |
| 地積測量 | 60-120万円 | 必要 | 非常に高い | 分筆登記、地積更正 |
測量費用が変動する5つの要因
測量費用は一律ではなく、以下の要因により大きく変動します。
①土地の面積と形状
土地が広いほど、また不整形地(三角形・旗竿地等)ほど測量の手間が増え、費用が高額になります。
例: 100㎡の整形地は40万円、300㎡の不整形地は80万円等
②隣接地の数と立会いの種類
隣接地が多いほど、立会い調整のコストが増加します。また、民民立会い(隣接地がすべて民有地)より、官民立会い(道路・水路等との境界確定)の方が費用が高額です。
役所との調整は時間がかかり、道路管理課や河川管理課等の複数部署との協議が必要な場合もあります。
例: 民民立会い4筆は40万円、官民立会い含む6筆は70万円等
③境界標の有無と復元の必要性
境界標(コンクリート杭・金属標等)が設置されていれば測量がスムーズですが、境界標が紛失している場合は復元作業が必要となり、追加費用(5-10万円程度)がかかります。
④立地条件(都市部・地方)
都市部は人件費が高く、地方は安価な傾向があります。また、アクセスが困難な土地(山林・傾斜地等)は追加費用が発生する場合があります。
⑤測量の難易度
隣地所有者との調整が困難な場合(連絡が取れない、境界について意見が対立している等)や、古い測量資料しか存在しない場合は、費用と期間が増加します。
測量費用を抑える5つの方法
測量費用は高額ですが、以下の方法で費用を抑えることができます。
①複数業者からの見積もり取得
3社以上の土地家屋調査士から見積もりを取得し、費用と内容を比較します。見積もり時には以下を確認しましょう。
- 費用の内訳が明確か(測量費、立会い費、資料調査費等)
- 測量の種類が適切か(現況測量で十分なのに境界確定測量を提案されていないか)
- 追加費用の可能性が説明されているか(境界標の復元、官民立会い等)
同じ条件でも10-20%の差が出る場合があります(実務上の調査)。ただし、安すぎる業者は品質リスクがあるため、価格と実績のバランスを重視してください。
②地籍調査の結果を活用
国土交通省が推進する地籍調査が実施済みの地域では、地籍調査成果図を活用することで、境界確定測量の費用を抑えられます。
地籍調査実施済みかどうかは、市区町村の都市計画課または資産税課に問い合わせることで確認できます。ただし、全国の進捗率は令和4年度時点で約52%(最新の公式データ)にとどまっています。
③測量時期の選定
土地取引が活発な春・秋の繁忙期を避けることで、費用を抑えられる場合があります。また、天候が安定している時期(梅雨・積雪期を避ける)を選ぶと、測量がスムーズに進みます。
④事前準備
以下の準備を行うことで、測量をスムーズに進められます。
- 境界標の位置を事前に確認(紛失していないか)
- 隣地所有者との調整(連絡先を把握、立会い日程を調整)
- 法務局で公図・地積測量図を事前に取得
⑤確定申告での控除
土地売却時の測量費用は、譲渡費用として確定申告で控除できる場合があります。国税庁によると、不動産取得税や測量費は取得費または譲渡費用に含まれるとされています。
税理士に相談し、適切に控除を受けることで、実質的な負担を軽減できます。
信頼できる土地家屋調査士の選び方
土地家屋調査士を選ぶ際には、以下のポイントを確認しましょう。
①国家資格の確認
土地家屋調査士は測量法と土地家屋調査士法に基づく国家資格者です。日本土地家屋調査士会連合会のサイトで、資格者の検索が可能です。
②実績と専門性
境界確定測量の経験が豊富か、地域の土地事情に詳しいかを確認します。特に、官民立会いの経験がある調査士は、役所との調整に慣れており、スムーズに進められます。
③見積もりの透明性
見積もり時に費用の内訳を明確に提示しているか、追加費用の可能性を説明しているかを確認します。不明瞭な見積もりは後からトラブルになるリスクがあります。
④地元の評判
地元で長く営業している土地家屋調査士は、地域の土地事情や役所の手続きに精通しています。複数の調査士に相談し、対応の丁寧さや説明の分かりやすさも判断材料にしましょう。
土地の測量費用まとめ|次のアクション
土地の測量費用は、測量の種類(現況測量10-20万円、境界確定測量35-80万円、地積測量60-120万円)と条件(面積・隣接地数・立会い種別)により大きく変動します。
費用を抑えるには、複数業者からの見積もり取得、地籍調査の活用、事前準備が重要です。また、土地売却時の測量費用は譲渡費用として確定申告で控除できる場合があります。
次のアクションとして、①日本土地家屋調査士会連合会のサイトで専門家検索、②3社以上の土地家屋調査士に見積もり依頼、③市区町村で地籍調査の実施状況を確認することをおすすめします。信頼できる専門家と連携しながら、適切な測量を進めましょう。
