土地を売りたい人のための完全ガイド|売却手順と高く売るコツ

公開日: 2025/10/27

土地売却を成功させるための全体像

土地を売却したいと考えているものの、「何から始めればいいのか分からない」「手続きが複雑そうで不安」と感じる方は多いでしょう。土地売却には、相場調査から不動産業者の選定、査定、媒介契約、売却活動、契約、引渡しまで、複数のステップがあります。

この記事では、土地売却の7つのステップを時系列で解説し、各段階で必要な書類や注意点を具体的に提示します。国土交通省国税庁などの公的機関の情報を元に、安全に土地を売却するための実務的なガイドを提供します。

境界確定や測量、譲渡所得税の理解が不可欠であることを理解し、適切な準備を進めましょう。

この記事のポイント

  • 土地売却は「相場調査→業者選定→査定→媒介契約→売却活動→契約→引渡し」の7ステップで進める
  • 境界確定測量(費用35-80万円)は法的義務ではないが、トラブル防止のため実施を強く推奨
  • 相続登記は2024年4月から義務化(3年以内に未登記だと10万円以下の過料)
  • 譲渡所得税は所有期間5年超か否かで税率が約2倍異なる(長期20.315%、短期39.63%)

土地売却の7つのステップ

土地売却の流れを7つのステップに分けて解説します。各ステップで必要な書類と期間の目安を明記しますので、次に何をすればよいか明確に把握できます。

ステップ1: 相場調査と価格の目安を把握

まず、自分の土地がどのくらいの価格で売れるか、相場を把握しましょう。

調査方法:

相場を把握することで、査定額が妥当かどうか判断できるようになります。

ステップ2: 不動産業者の選定と比較

土地売却を依頼する不動産業者を選定します。業者選びは売却成功の鍵を握る重要なステップです。

選定基準:

  • 土地売却の実績が豊富か
  • 地域に詳しいか(地元の業者は有利)
  • 対応が丁寧で信頼できるか
  • 免許番号を確認(宅地建物取引業の免許を持っているか)

複数社(2-3社)に査定を依頼し、比較検討することをおすすめします。

ステップ3: 査定依頼と査定額の検討

不動産業者に査定を依頼し、売却価格の目安を把握します。

査定の種類:

  • 机上査定: データのみで査定(所要時間:数日)
  • 訪問査定: 現地調査を行い詳細に査定(所要時間:1-2週間)

査定額は業者によって異なるため、複数社の査定額を比較し、その根拠を確認しましょう。高すぎる査定額は「契約を取るための釣り」の可能性があるため注意が必要です。

ステップ4: 媒介契約の締結(専属専任・専任・一般)

不動産業者と媒介契約を締結します。媒介契約には3種類あり、それぞれメリット・デメリットがあります。

契約種類 特徴 メリット デメリット
専属専任媒介 1社のみ、自己発見取引不可 積極的な販売活動、週1回以上の報告義務 自分で買主を見つけても手数料発生
専任媒介 1社のみ、自己発見取引可 積極的な販売活動、2週間に1回以上の報告義務 1社に依存
一般媒介 複数社可 幅広く買主を探せる 業者の販売意欲が低い可能性

土地の売却しやすさや、自分の状況に応じて選択しましょう。

ステップ5: 売却活動と内覧対応

不動産業者が売却活動を開始します。土地の場合、内覧というよりは現地案内になります。

売却活動の内容:

  • 不動産ポータルサイトへの掲載
  • レインズ(不動産流通機構)への登録
  • チラシ・広告の作成
  • 購入希望者への現地案内

売却期間は平均3-6ヶ月ですが、立地や価格設定により大きく異なります。早期売却を目指す場合は、価格設定と業者選定が重要です。

ステップ6: 売買契約の締結

買主が見つかったら、売買契約を締結します。

契約時に必要な書類:

  • 登記済権利証(または登記識別情報)
  • 実印・印鑑証明書(3ヶ月以内)
  • 測量図・境界確認書(測量済みの場合)
  • 固定資産税の納税通知書

契約時に手付金(売買価格の10%程度)を受け取ります。契約書には、引渡し時期、契約不適合責任の範囲などを明記します。

ステップ7: 決済と引渡し

契約から約1ヶ月後、決済と引渡しを行います。

決済時の流れ:

  1. 買主が残代金を支払い
  2. 所有権移転登記の手続き
  3. 土地の引渡し(鍵がある場合は鍵の引渡し)
  4. 固定資産税の清算

決済が完了すれば、土地売却は完了です。

媒介契約の種類と選び方

媒介契約は売却活動の方針を決める重要な契約です。3種類の違いを理解し、自分の状況に合った契約を選びましょう。

専属専任媒介契約

特徴: 1社のみに依頼、自己発見取引不可
メリット: 業者が最も積極的に販売活動を行う、週1回以上の報告義務、契約後5日以内にレインズ登録
デメリット: 自分で買主を見つけても業者に仲介手数料を支払う必要がある

専任媒介契約

特徴: 1社のみに依頼、自己発見取引可
メリット: 業者が積極的に販売活動、2週間に1回以上の報告義務、契約後7日以内にレインズ登録
デメリット: 1社に依存するため、業者選びを慎重に行う必要がある

一般媒介契約

特徴: 複数社に同時依頼可
メリット: 幅広いネットワークで買主を探せる、業者間で競争が生まれる
デメリット: 業者の販売意欲が低くなる可能性、報告義務なし、レインズ登録任意

選び方のポイント:

  • 売りやすい土地(駅近、整形地)→ 一般媒介も検討
  • 売りにくい土地(郊外、変形地)→ 専属専任・専任媒介で業者に注力してもらう

境界確定測量の重要性と費用

土地売却で最もトラブルになりやすいのが境界問題です。境界が不明確なまま売却すると、買主と隣地所有者との間でトラブルが発生し、売主が契約不適合責任を問われる可能性があります。

境界確定測量とは

境界確定測量とは、隣接地所有者と官公署(道路・水路の管理者)の立会いのもと、境界を確定し、測量図を作成することです。

流れ:

  1. 土地家屋調査士に依頼
  2. 隣接地所有者・官公署に立会い依頼
  3. 境界標の設置
  4. 測量図・境界確認書の作成

測量費用の目安(35-80万円)

測量費用は土地の広さや形状、隣接地の数によって異なります。

土地の広さ 費用の目安
100㎡未満 35-50万円
100-200㎡ 50-65万円
200㎡以上 65-80万円以上

測量には数カ月かかる場合もあるため、売却を急ぐ場合は早めに着手しましょう。

測量を怠った場合のリスク

境界未確定のまま売却すると、以下のリスクがあります。

  • 買主と隣地所有者との間でトラブルが発生
  • 売主が契約不適合責任を問われ、損害賠償請求される可能性
  • 売買契約が解除されるリスク

測量費用は売主負担が一般的ですが、安全に売却するための必要経費と考えましょう。

土地売却のリスクと注意点

土地売却にはいくつかのリスクがあります。事前に理解し、対策を講じることが重要です。

相続登記の義務化(2024年4月~)

2024年4月から相続登記が義務化されました。相続発生から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が課されます。

相続した土地を売却する場合は、まず名義変更(相続登記)を行う必要があります。相続登記は司法書士に依頼するのが一般的で、費用は5-10万円程度です。

地下埋設物・土壌汚染の調査

売却後に地下埋設物(旧建物の基礎・廃材等)や土壌汚染が発覚すると、売主が契約不適合責任を負います。

対策:

  • 地盤調査・土壌汚染調査を事前に実施
  • 売買契約書で免責特約を設ける(「現状有姿」での売却)

特に、過去に工場や給油所があった土地は、土壌汚染の可能性が高いため、調査を強く推奨します。

国土利用計画法の届出義務

一定面積以上の土地取引には、国土利用計画法による事後届出義務があります。

区域 面積
市街化区域 2,000㎡以上
都市計画区域 5,000㎡以上
その他の区域 10,000㎡以上

届出期限は契約締結後2週間以内です。違反すると6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が課される可能性があります。

譲渡所得税の計算と特別控除

土地売却で利益が出た場合、譲渡所得税と住民税が課税されます。税金の計算方法と軽減措置を理解し、売却時期を検討しましょう。

譲渡所得税の基本的な計算方法

計算式:
譲渡所得 = 譲渡価格 - (取得費 + 譲渡費用)

  • 取得費: 購入代金、購入時の諸費用(仲介手数料、登記費用等)
  • 譲渡費用: 売却時の諸費用(仲介手数料、測量費、解体費等)

取得費が不明な場合は、概算取得費(譲渡価格の5%)を使用できます。

長期・短期の税率の違い

譲渡所得税の税率は、所有期間によって大きく異なります。

所有期間 税率
5年超(長期) 所得税15.315% + 住民税5% = 20.315%
5年以下(短期) 所得税30.63% + 住民税9% = 39.63%

※復興特別所得税(2.1%)を含む

所有期間は、譲渡した年の1月1日時点で判定します。例えば、2020年2月に取得し、2025年3月に譲渡した場合、2025年1月1日時点では所有期間4年11ヶ月のため「短期」となります。

3,000万円特別控除の活用

居住用財産(自宅)を売却する場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例があります。

適用要件:

  • 自己の居住用財産であること
  • 居住しなくなってから3年以内の譲渡
  • 過去2年以内に同特例を受けていないこと

土地のみの売却でも、建物を取り壊してから1年以内に売買契約を締結すれば適用される場合があります。詳細は税理士にご確認ください。

まとめ:土地を高く、安全に売るために

土地売却は、相場調査→業者選定→査定→媒介契約→売却活動→契約→引渡しという7つのステップで進めます。各ステップで必要な書類を準備し、期限を守ることが重要です。

境界確定測量は法的義務ではありませんが、トラブル防止のため実施を強く推奨します。費用は35-80万円、期間は数カ月かかるため、早期に着手しましょう。

譲渡所得税は所有期間5年超か否かで税率が約2倍異なります。相続登記も2024年4月から義務化されているため、相続した土地を売却する場合は名義変更を忘れずに行いましょう。

専門家(不動産業者、土地家屋調査士、税理士)に早期相談し、安全に土地売却を進めてください。

よくある質問

Q1土地を売却する際、測量は必須ですか?

A1法的な義務ではありませんが、買主保護とトラブル防止のため実施を強く推奨します。境界未確定のまま売却すると、売却後に境界トラブルが発生し、売主が契約不適合責任を問われる可能性があります。測量費用は35-80万円程度、期間は数カ月かかるため、売却を急ぐ場合は早めに土地家屋調査士に依頼しましょう。

Q2相続した土地を売る場合、名義変更は必要ですか?

A2相続登記(名義変更)が必須です。2024年4月から相続登記が義務化され、相続発生から3年以内に未登記だと10万円以下の過料が課されます。相続登記は司法書士に依頼するのが一般的で、費用は5-10万円程度です。名義変更を完了してから、土地の売却手続きを進めてください。

Q3一括査定サイトは利用すべきですか?

A3一括査定サイトは、複数社への査定依頼が効率的にできるメリットがあります。一方で、営業電話が多数かかるデメリットもあります。信頼できる不動産業者を2-3社選び、直接依頼する方法も検討しましょう。地元の実績豊富な業者を選ぶことが、売却成功の鍵を握ります。

Q4土地売却にかかる期間はどのくらいですか?

A4平均3-6ヶ月です。ただし、境界確定測量に数カ月かかる場合や、買主が見つからない場合はさらに長期化します。立地条件(駅からの距離、周辺環境)や価格設定が期間に大きく影響します。早期売却を目指す場合は、適正価格の設定と、実績豊富な不動産業者の選定が重要です。

Q5売却後に地下埋設物が見つかったらどうなりますか?

A5売主が契約不適合責任を負い、修補費用の負担や契約解除を求められる可能性があります。特に、過去に建物があった土地や、工場・給油所があった土地は、地下埋設物や土壌汚染のリスクが高いです。事前に地盤調査・土壌汚染調査を実施するか、売買契約書で免責特約(「現状有姿」での売却)を設けることが重要です。専門家に相談しましょう。