土地登記とは?手続きの流れと必要書類、費用を徹底解説

公開日: 2025/10/30

土地登記とは?役割と法的効力

土地の売買・相続・贈与を控えた方の中には、「土地登記とは何か」「なぜ必要なのか」と疑問に感じる方が少なくありません。

この記事では、土地登記の基本概念、登記簿の構成、場面別の手続き、費用、自分で登記できるかの判断基準を、法務省・法務局・国税庁の公式情報をもとに解説します。

初めて土地の登記手続きをする方でも、必要な手続きと費用を正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 土地登記は土地の所在・面積・所有者などを登記簿に記録し公示する制度で、権利関係を第三者に対抗するために必要
  • 登記簿は表題部(物理的情報)と権利部(甲区:所有権、乙区:所有権以外の権利)に分かれる
  • 2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内の登記が必要、違反すると10万円以下の過料
  • 登録免許税(売買2.0%、相続0.4%)と司法書士報酬(5-15万円程度)がかかり、費用の内訳を理解することが重要

土地登記とは?その役割と法的効力

法務省によると、土地登記(不動産登記)とは、土地や建物の所在・面積・所有者などの情報を登記簿に記録し、公示する制度です。

土地登記の役割

土地登記には以下の役割があります。

  • 権利関係の明確化: 誰がその土地を所有しているか、どんな権利(抵当権など)が設定されているかを明確にする
  • 取引の安全: 登記簿を閲覧することで、買主は安心して土地を購入できる
  • 第三者対抗要件: 所有権移転を登記することで、第三者に対して「この土地は私のものだ」と主張できる

登記の法的効力(第三者対抗要件)

SBI新生銀行によると、土地の所有権を第三者に対抗するためには登記が必要です。

たとえば、AさんがBさんから土地を購入したが登記していなかった場合、BさんがCさんにも同じ土地を売却し、Cさんが先に登記すると、Cさんが優先されます(二重譲渡のリスク)。

相続登記の義務化(2024年4月〜)

法務局によると、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

過去の相続(施行前の相続)にも遡及適用され、2027年3月31日までの猶予期間があります。相続した土地を放置している方は、早めに手続きを進めましょう。

登記簿の構成:表題部と権利部(甲区・乙区)

法務省によると、登記簿は表題部と権利部に分かれ、権利部はさらに甲区と乙区に分かれます。

表題部(物理的情報)

表題部には、土地の物理的情報が記録されます。

  • 所在(住所)
  • 地番
  • 地目(宅地・田・畑など)
  • 地積(面積)

表題部の登記は、土地家屋調査士が担当します。

権利部甲区(所有権に関する登記)

権利部甲区には、所有権に関する情報が記録されます。

  • 所有者の氏名・住所
  • 所有権移転の原因(売買・相続・贈与など)
  • 所有権移転の日付

甲区を見ることで、誰がいつ、どんな理由で所有者になったかが分かります。

権利部乙区(所有権以外の権利)

権利部乙区には、所有権以外の権利が記録されます。

  • 抵当権(住宅ローンの担保)
  • 地上権
  • 地役権

住宅ローンを組むと、金融機関が抵当権を設定するため、乙区に記録されます。ローンを完済すると、抵当権を抹消する登記を行います。

登記簿は誰でも閲覧可能

登記簿は法務局で誰でも閲覧・取得できます(登記事項証明書の取得:窓口600円、オンライン480円)。不動産の権利関係を確認したい場合は、法務局で登記簿を取得しましょう。

場面別の土地登記手続きと必要書類

土地登記は、売買・相続・贈与など、場面によって必要書類が異なります。法務局の情報をもとに、場面別の手続きを整理します。

売買による所有権移転登記

売買で土地を取得した場合に必要な書類は以下の通りです。

項目 内容
登記原因証明情報 売買契約書
登記識別情報 権利証(売主から提供)
印鑑証明書 売主・買主の印鑑証明書
固定資産評価証明書 登録免許税の計算に使用
住民票 買主の住民票

売買の場合、登録免許税は2.0%(軽減措置適用で1.5%、令和8年3月31日まで)です。

相続登記(2024年4月義務化)

法務局によると、相続登記は2024年4月1日から義務化されました。必要書類は以下の通りです。

項目 内容
被相続人の戸籍謄本 出生から死亡まで
相続人全員の戸籍謄本 相続人を確定するため
遺産分割協議書 相続人全員で協議した場合
印鑑証明書 相続人全員の印鑑証明書
固定資産評価証明書 登録免許税の計算に使用

相続登記の登録免許税は0.4%です。相続を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

過去の相続にも遡及適用され、2027年3月31日までの猶予期間がありますので、早めに手続きを進めましょう。

贈与による所有権移転登記

贈与で土地を取得した場合に必要な書類は以下の通りです。

項目 内容
贈与契約書 贈与の事実を証明
登記識別情報 権利証(贈与者から提供)
印鑑証明書 贈与者・受贈者の印鑑証明書
固定資産評価証明書 登録免許税の計算に使用
住民票 受贈者の住民票

贈与の場合、登録免許税は2.0%です。

土地登記の費用:登録免許税と司法書士報酬

土地登記の費用は、登録免許税(法定)と司法書士報酬(相場)に分かれます。費用の内訳を明確に理解しましょう。

登録免許税の計算方法と税率

国税庁によると、登録免許税は以下の計算式で算出されます。

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 税率

固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税の納税通知書で確認できます。税率は以下の通りです。

登記の種類 税率 備考
売買(土地) 2.0% 軽減措置適用で1.5%(令和8年3月31日まで)
相続 0.4%
贈与 2.0%

(出典: 国税庁

登録免許税の軽減措置(時限措置)

土地の売買による所有権移転登記の税率軽減(2.0%→1.5%)は、令和8年(2026年)3月31日までの時限措置です。この期間内に売買・登記を完了すると、税負担が0.5%分軽減されます。

司法書士報酬の相場

名義変更相談センターによると、2025年時点の司法書士報酬の相場は以下の通りです。

登記の種類 報酬相場
所有権移転(売買) 5-10万円
相続登記 4-10万円

報酬はケースにより変動します(共有名義、遺産分割未了、抵当権設定が絡む場合は高額になる傾向)。複数の司法書士事務所に見積もりを依頼し、報酬の明確性と実績を比較しましょう。

費用の内訳を明確化

登録免許税(法定)と司法書士報酬(相場)を明確に区別して理解することが重要です。たとえば、固定資産税評価額1,000万円の土地を相続する場合、登録免許税4万円(0.4%)+ 司法書士報酬5-10万円 = 合計9-14万円程度です。

自分で登記できるか?専門家依頼の判断基準

SBI新生銀行によると、法的には自分で登記することは可能ですが、ケースにより難易度が異なります。

自分で登記するメリット・デメリット

メリット:

  • 司法書士報酬(5-10万円程度)を節約できる

デメリット:

  • 書類作成・法務局への申請に時間と手間がかかる
  • 複雑なケースでは誤りがあると補正や却下のリスクがある
  • 登記の誤りが後々のトラブルにつながる可能性がある

専門家依頼が必要なケース

以下のケースでは、司法書士に依頼することを強く推奨します。

  • 共有名義: 相続人が複数いて共有名義にする場合
  • 遺産分割協議未了: 相続人間で協議がまとまっていない場合
  • 抵当権設定が絡む売買: 住宅ローンを組む場合、金融機関が抵当権を設定するため、司法書士の関与が必須
  • 境界未確定: 土地の境界が確定していない場合、測量が必要(土地家屋調査士に依頼)

司法書士の選び方

司法書士を選ぶ際は、以下の点を確認しましょう。

  • 報酬の明確性: 見積もり時に費用の内訳を明確に説明してくれるか
  • 実績: 相続登記や所有権移転登記の実績が豊富か
  • 説明の丁寧さ: 手続きの流れや必要書類を分かりやすく説明してくれるか

複数の司法書士事務所に相談し、信頼できる専門家を選びましょう。

まとめ:土地登記の基礎と手続きのポイント

土地登記は、土地の所在・面積・所有者などを登記簿に記録し公示する制度で、権利関係を第三者に対抗するために必要です。登記簿は表題部(物理的情報)と権利部(甲区:所有権、乙区:所有権以外の権利)に分かれます。

場面別の手続き(売買・相続・贈与)と必要書類、費用(登録免許税:売買2.0%、相続0.4% + 司法書士報酬:5-15万円程度)を理解し、2024年4月施行の相続登記義務化により3年以内の登記が必要であることを把握しましょう。

自分で登記できる簡単なケース(単独名義の相続、共有なし、遺産分割協議済み等)と、専門家依頼が必要な複雑なケース(共有名義、遺産分割未了、抵当権設定等)を見極め、個別相談は司法書士に依頼することをおすすめします。

土地登記について不明点がある場合は、最寄りの法務局または司法書士に相談しましょう。

よくある質問

Q1登記しないとどうなりますか?

A1所有権を第三者に対抗できません(二重譲渡された場合に先に登記した者が優先)。2024年4月施行の相続登記義務化により、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。売却・担保設定もできないため、必ず登記すべきです。

Q2登記簿謄本はどこで取得できますか?

A2全国の法務局で取得可能です(窓口・郵送・オンライン)。オンライン請求が最も安く(登記事項証明書480円、窓口600円)、自宅で申請して郵送で受け取れます。登記番号または不動産の所在・地番が必要です。法務局のホームページから申請できます。

Q3相続登記の期限はいつまでですか?

A32024年4月1日施行の相続登記義務化により、相続を知った日から3年以内に登記が必要です。過去の相続(施行前の相続)も対象で、2027年3月31日までの猶予期間があります。違反すると10万円以下の過料が科される可能性があります。早めに手続きを進めましょう。

Q4登録免許税の軽減措置はいつまでですか?

A4土地の売買による所有権移転登記の税率軽減(2.0%→1.5%)は令和8年(2026年)3月31日までの時限措置です。恒久的な制度ではないため、この期間内に売買・登記を完了すると税負担が0.5%分軽減されます。

Q5司法書士に依頼せず自分で登記できますか?

A5法的には可能です。簡単なケース(単独名義の相続、共有なし、遺産分割協議済み等)なら自分で申請できます。ただし書類作成・法務局への申請に時間と手間がかかり、誤りがあると補正や却下のリスクがあります。複雑なケース(共有名義、遺産分割未了、抵当権設定等)は司法書士に依頼すべきです。