不動産取引価格を調べる方法:不動産情報ライブラリの使い方完全ガイド
不動産の売買を検討中で「周辺の取引相場を知りたい」「適正価格を確認したい」と思っているものの、どのように調べればよいか分からず困っていませんか。
この記事では、国土交通省が提供する不動産情報ライブラリ(旧:土地総合情報システム)の使い方、検索方法、データの注意点、公示地価・路線価との違いを詳しく解説します。
公的データを活用することで、不動産会社の査定前に周辺相場を把握し、適正な価格判断ができるようになります。
この記事のポイント
- 不動産情報ライブラリは2024年4月に運用開始され、旧「土地総合情報システム」の機能を引き継ぎ、約547万件の取引価格情報を提供
- 取引価格情報はアンケート調査(回答率約3割)に基づいており、全取引を網羅しているわけではなく、データの精度に限界がある
- 地区名までしか分からず、個人情報保護のため所在地を特定できないため、ピンポイントで価格を調べることはできない
- 公示地価(基準100%)・路線価(約80%)・実勢価格(約110-120%)は性質と用途が異なり、混同しないよう注意
- データ不足の地域・時期もあるため、他の情報源(不動産会社の査定、REINS等)と併用することが重要
土地総合情報システムから不動産情報ライブラリへの移行(2024年4月)
「土地総合情報システム」は、国土交通省が運営していた不動産取引価格情報の提供サイトでしたが、2024年3月末に廃止され、2024年4月から**「不動産情報ライブラリ」**に移行しました。
旧システムの検索意図で「土地総合情報システム 不動産取引価格情報検索」と検索する方が多いですが、現在は不動産情報ライブラリが正式名称です。この記事では、最新の不動産情報ライブラリの使い方を解説します。
制度の目的と背景
国土交通省の不動産取引価格情報提供制度によると、この制度は不動産取引の透明性を高め、適正な価格形成を促進することを目的としています。
2005年4月から運用が開始され、2025年3月末時点で約547万件の取引価格情報が蓄積されています。不動産取引の当事者(買主)に対してアンケート調査を実施し、実際の取引価格を集計・公表しています。
ただし、アンケートは任意であり、回答率は約3割程度です。そのため、全取引を網羅しているわけではなく、データの精度に限界がある点を理解した上で利用する必要があります。
不動産情報ライブラリの使い方(最新版)
不動産情報ライブラリの具体的な使い方を、ステップバイステップで解説します。
検索画面へのアクセス方法
不動産情報ライブラリ公式サイトにアクセスします。
トップページから「不動産取引価格情報検索」を選択し、検索画面に進みます。会員登録は不要で、誰でも無料で利用できます。
検索条件の設定(地域・時期・物件種別)
検索条件を以下の手順で設定します。
1. 地域の選択:
- 都道府県を選択
- 市区町村を選択
- 地区(町名)を選択(任意)
2. 時期の選択:
- 取引時期を四半期単位で選択(例:2024年第4四半期)
- 複数の時期を選択して比較することも可能
3. 物件種別の選択:
- 宅地(土地のみ)
- 宅地(土地と建物)
- 中古マンション等
- 農地
- 林地
例えば、「東京都世田谷区の中古マンションの2024年第4四半期の取引価格」を調べる場合、東京都→世田谷区→中古マンション等→2024年第4四半期を選択します。
検索結果の見方(平米単価・築年数・駅距離等)
検索結果は、以下の項目が表示されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取引価格 | 実際の取引価格(万円) |
| 面積 | 土地面積または専有面積(㎡) |
| 取引価格総額(平米単価) | ㎡あたりの単価(万円/㎡) |
| 間取り | マンションの場合の間取り(2LDK等) |
| 建築年 | 建物の建築年(西暦) |
| 最寄駅:名称 | 最寄駅の名称 |
| 最寄駅:距離(分) | 最寄駅からの徒歩距離(分) |
| 用途地域 | 都市計画法上の用途地域 |
注意点:
- 所在地は地区名(例:「世田谷区桜新町」)までしか表示されず、番地・住所は個人情報保護のため非公開
- 取引時期は四半期単位で表示され、具体的な取引月日は非公開
- データがない地域・時期は「該当データなし」と表示される
平米単価を比較することで、同じ地域内での価格相場を把握できます。築年数・駅距離を考慮して、自分の物件と条件が近い取引事例を参考にしましょう。
データの注意点とアンケート調査の精度
不動産情報ライブラリのデータは、アンケート調査に基づいており、いくつかの限界があります。正しく理解した上で利用することが重要です。
回答率と情報の限界
全日本不動産協会の解説によると、取引価格情報はアンケート調査(回答率約3割)に基づいており、以下の限界があります。
回答率の問題:
- アンケート回答率は約3割で、全取引の7割はデータに含まれていない
- 高額取引や特殊な条件の取引は回答率が低い傾向があり、データに偏りがある可能性
個人情報保護による制限:
- 所在地は地区名までしか分からず、番地・住所は非公開
- ピンポイントで特定の物件の価格を調べることはできない
データ不足リスク:
- 地方・郊外ではデータ数が少なく、相場を把握しにくい地域もある
- 最新の四半期データは、アンケート回収に時間がかかるため、数ヶ月遅れて公表される
「このデータだけで適正価格が分かる」との断定はできません。あくまで周辺相場の参考情報として活用し、不動産会社の査定や他の情報源と併用することが重要です。
地域・時期によるデータ不足
都市部(東京23区、大阪市中心部、名古屋市等)ではデータが豊富ですが、地方・郊外ではデータ数が少ない場合があります。
例えば、人口が少ない町村では、四半期あたりの取引件数が数件しかなく、相場を把握するには不十分な場合があります。データ不足の地域では、公示地価・路線価を参考にするか、不動産会社に査定を依頼する必要があります。
最新の四半期データは、アンケート回収・集計に2-3ヶ月かかるため、公表が遅れます。直近の相場を知りたい場合は、不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)の売出価格を参考にすることも有効です。
他の価格情報との違い
不動産の価格情報には、公示地価・路線価・実勢価格の3つがあり、それぞれ性質と用途が異なります。混同しないよう注意しましょう。
公示地価・路線価・実勢価格の比較
| 価格 | 基準 | 公表時期 | 用途 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 公示地価 | 100% | 毎年3月下旬 | 不動産取引の指標、公共事業用地の取得価格算定 | 国土交通省が調査 |
| 路線価(相続税) | 約80% | 毎年7月 | 相続税・贈与税の計算 | 国税庁が公表 |
| 路線価(固定資産税) | 約70% | 3年ごとに見直し | 固定資産税の計算 | 市区町村が公表 |
| 実勢価格 | 約110-120% | 取引ごと | 実際の売買価格 | 公示地価の1.1-1.2倍が目安 |
(出典: SUUMO 公示地価・路線価の違い)
公示地価とは:
- 国土交通省が毎年1月1日時点で調査し、3月下旬に発表する標準地の1㎡あたりの価格
- 不動産取引の指標や公共事業用地の取得価格算定に使用される
- 基準となる価格(100%)として扱われる
路線価とは:
- 道路に面した土地の1㎡あたりの価格
- 相続税路線価(国税庁、7月発表、公示地価の約80%)と固定資産税路線価(市区町村、公示地価の約70%)の2種類がある
- 相続税・贈与税・固定資産税の計算に使用される
実勢価格とは:
- 実際に取引された土地の価格
- 公示地価の約1.1-1.2倍が目安だが、立地・形状・前面道路等の条件により変動
- 都市部では公示地価の2倍以上になる場合もある
不動産情報ライブラリで提供される取引価格情報は、実勢価格に該当します。公示地価・路線価とは異なる性質の価格であることを理解しましょう。
用途別の使い分け
不動産取引の相場を知りたい場合:
- 不動産情報ライブラリの実勢価格(取引価格情報)を参照
- 公示地価の1.1-1.2倍を目安に概算することも可能
相続税・贈与税の計算をしたい場合:
- 国税庁の相続税路線価を参照
- 路線価×土地面積で評価額を計算
固定資産税の確認をしたい場合:
- 市区町村の固定資産税路線価を参照
- 固定資産税評価額は、固定資産税納税通知書で確認可能
それぞれの価格情報は用途が異なるため、目的に応じて使い分けることが重要です。
不動産情報ライブラリを使った実際の調べ方(ステップバイステップ)
具体例として、「東京都世田谷区桜新町の中古マンションの相場」を調べる手順を解説します。
ステップ1: 検索画面へアクセス
- 不動産情報ライブラリにアクセス
- 「不動産取引価格情報検索」を選択
ステップ2: 検索条件を設定
- 都道府県: 東京都
- 市区町村: 世田谷区
- 地区: 桜新町(任意)
- 物件種別: 中古マンション等
- 取引時期: 2024年第4四半期
ステップ3: 検索結果を確認
- 取引価格・面積・平米単価・間取り・築年数・駅距離を確認
- 自分の物件と条件が近い取引事例を複数ピックアップ
ステップ4: 相場を把握
- 平米単価の平均値を計算
- 築年数・駅距離による価格差を確認
- 自分の物件の条件(面積・築年数・駅距離)を考慮して、概算価格を算出
ステップ5: 他の情報源と照合
- 不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'S等)の売出価格と比較
- 不動産会社に査定を依頼し、相場の妥当性を確認
この手順により、周辺相場を客観的に把握し、不動産会社の査定価格が適正かどうかを判断できます。
まとめ:不動産情報ライブラリで周辺相場を把握しよう
不動産情報ライブラリ(旧:土地総合情報システム)は、国土交通省が提供する公的な不動産取引価格情報の検索サイトです。約547万件の取引データを無料で閲覧でき、周辺相場を把握する際に有用です。
ただし、アンケート調査(回答率約3割)に基づいており、全取引を網羅しているわけではなく、データの精度に限界があります。所在地は地区名までしか分からず、ピンポイントで価格を調べることはできません。
公示地価(基準100%)・路線価(約80%)・実勢価格(約110-120%)は性質と用途が異なるため、混同しないよう注意しましょう。不動産取引の相場を知りたい場合は、実勢価格(取引価格情報)を参照します。
次のアクションとして、①不動産情報ライブラリで周辺相場を確認、②不動産ポータルサイトの売出価格と比較、③不動産会社に査定を依頼することで、適正な価格判断ができます。公的データを活用し、納得のいく不動産取引を実現しましょう。
