土地の名義変更手続きガイド|相続・売買・贈与別に解説

公開日: 2025/10/27

土地の名義変更とは

土地の名義変更(所有権移転登記)は、所有者が変わったことを法務局の登記簿に記録する手続きです。相続・売買・贈与の3パターンがあり、それぞれ必要書類・費用・期限が異なります。

この記事では、土地の名義変更の基本的な流れ、3パターン別の必要書類、費用の目安、自分で手続きする場合と司法書士に依頼する場合の比較を、法務省法務局の公式情報を元に解説します。

2024年4月施行の相続登記義務化により、相続の場合は3年以内の登記が法的義務となりました。放置すると10万円以下の過料の対象となるため、早めの対応が重要です。

この記事のポイント

  • 土地の名義変更は相続・売買・贈与の3パターンがあり、登録免許税・必要書類・期限が異なる
  • 2024年4月から相続登記が義務化され、相続から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象
  • 登録免許税は固定資産税評価額 × 税率(相続0.4%、売買2%、贈与2%)で計算
  • 司法書士報酬は5-10万円が相場だが、自己申請も可能
  • 過去の相続も義務化の対象で、2027年3月31日までに登記が必要

相続・売買・贈与の3パターン比較

土地の名義変更は、取得原因によって手続きが異なります。3パターンの違いを表で比較しました。

項目 相続 売買 贈与
登録免許税 固定資産税評価額の0.4% 固定資産税評価額の2%(土地は2026年3月末まで1.5%に軽減) 固定資産税評価額の2%
必要書類 戸籍謄本、遺産分割協議書、相続関係説明図 売買契約書、登記識別情報 贈与契約書、登記識別情報
登記期限 相続から3年以内(2024年4月施行、過料10万円以下) なし なし
その他の税金 相続税(基礎控除あり) なし(売主に譲渡所得税) 贈与税(年間110万円超の部分に課税)

(出典: 法務局

相続による名義変更

相続による名義変更は、法務省によると、2024年4月1日から義務化されました。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記が必要で、正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象となります。

過去の相続(2024年3月31日以前)も対象で、2027年3月31日までに登記する必要があります。

相続登記に必要な書類は、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)、相続人全員の戸籍謄本、遺産分割協議書(相続人全員の実印押印)、相続人全員の印鑑証明書、相続関係説明図等です。

売買による名義変更

売買による名義変更は、売買契約の成立後、速やかに登記申請することが一般的です。登記期限はありませんが、登記をしないと第三者に所有権を主張できません(民法177条)。

売買登記に必要な書類は、売買契約書、登記識別情報(旧・権利証)、固定資産税評価証明書、住民票等です。

贈与による名義変更

贈与による名義変更も登記期限はありませんが、登記をしないと第三者に所有権を主張できません。贈与税は年間110万円を超える部分に課税され、税率は10~55%(累進課税)です。

土地の評価額が高額な場合は贈与税も高額になるため、国税庁の相続時精算課税制度の活用や、相続まで待つ選択肢も検討すべきです。

土地の名義変更の基本的な流れ

名義変更の基本的な流れは以下の4ステップです。

ステップ1: 必要書類の準備

法務局によると、共通書類として以下が必要です。

  • 登記識別情報(旧・登記済権利証)
  • 固定資産税評価証明書(市区町村役場で入手、有効期限3ヶ月以内)
  • 住民票(市区町村役場で入手、有効期限3ヶ月以内)

パターン別の追加書類は前述の表を参照してください。

ステップ2: 登記申請書の作成

登記申請書は法務局の公式サイトからダウンロードできます。記載事項は、不動産の所在地・地番、登記の目的(所有権移転)、原因(相続・売買・贈与)、権利者(新所有者)・義務者(旧所有者)の氏名・住所等です。

ステップ3: 法務局への申請

登記申請書と必要書類、登録免許税の収入印紙を法務局に提出します。郵送または窓口持参が可能です。オンライン申請も可能ですが、添付書類は郵送または持参が必要です。

ステップ4: 登記完了

申請から1-2週間で登記が完了します。登記識別情報通知(12桁の英数字)が交付されます。この情報は次回の名義変更時に必要なため、大切に保管してください。

名義変更にかかる費用の目安

登録免許税の計算方法

登録免許税は「固定資産税評価額 × 税率」で計算します。税率は以下の通りです。

パターン 税率 軽減措置
相続 0.4% 2025年3月末まで、一定の条件(土地の評価額100万円以下等)で免税措置あり
売買 2% 土地の登録免許税は2026年3月末まで1.5%に軽減
贈与 2% なし

(出典: 三井のリハウス

例えば、固定資産税評価額が2,000万円の土地を相続する場合、登録免許税は2,000万円 × 0.4% = 8万円です。

司法書士報酬の相場

司法書士報酬は案件の複雑さにより変動しますが、5-10万円が相場です。相続の場合、相続人が多い、遺産分割協議が複雑等の理由で10万円を超える場合もあります。

自己申請も可能ですが、相続関係が複雑な場合は専門家依頼を推奨します。

自分で手続きする場合と司法書士に依頼する場合

自分で手続きするメリット・デメリット

メリット:

  • 司法書士報酬(5-10万円)を節約できる
  • 法定相続・相続人が少ない場合は手続きが比較的簡単

デメリット:

  • 書類作成・法務局訪問の手間がかかる
  • 書類不備で申請が却下される可能性がある
  • 遺産分割協議が難航している場合は時間がかかる

司法書士に依頼するメリット・デメリット

メリット:

  • 書類作成の確実性が高い
  • 法務局との調整を任せられる
  • トラブル防止(書類不備、記載ミス等)

デメリット:

  • 報酬5-10万円が必要

法務局の無料相談(事前予約制)を活用することで、自己申請のハードルを下げることも可能です。

名義変更を放置するリスク

相続登記義務化(2024年4月施行)

法務局によると、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記が必要で、正当な理由なく期限を過ぎると10万円以下の過料の対象となります。

過去の相続(2024年3月31日以前)も対象で、2027年3月31日までに登記する必要があります。

遺産分割協議が整わない場合は、相続人申告登記制度を利用することで、自分が相続人であることを法務局に申告するだけで義務を履行したとみなされます。遺産分割協議が整った後に正式な相続登記を行います。

今後の制度改正(2026年以降)

法務局によると、2026年4月1日から住所・氏名変更登記も義務化される予定です。住所・氏名変更日から2年以内に登記が必要で、正当な理由なく期限を過ぎると5万円以下の過料の対象となります。

その他のリスク

名義変更を放置すると、以下のリスクがあります。

  • 土地の売却・担保設定ができない(登記がないと所有権を主張できない)
  • 相続人が死亡してさらに相続が発生し、手続きが複雑化する
  • 固定資産税の請求先が不明確になり、相続人全員に請求が及ぶ可能性がある

まとめ

土地の名義変更は相続・売買・贈与で手続きが異なり、登録免許税・必要書類・期限も変わります。

相続の場合は2024年4月から3年以内の登記が義務化され、放置すると10万円以下の過料の対象となります。過去の相続も対象で、2027年3月31日までに登記が必要です。

自己申請も可能ですが、相続関係が複雑な場合や遺産分割協議が難航している場合は、司法書士への依頼を推奨します。法務局の無料相談を活用しながら、早めに手続きを進めましょう。

よくある質問

Q1名義変更をしないとどうなりますか?

A1相続の場合、2024年4月以降は3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象となります。さらに土地の売却・担保設定ができず、固定資産税の請求先が不明確になり相続人全員に請求が及ぶリスクもあります。相続人が死亡してさらに相続が発生すると、手続きが複雑化します。

Q2登録免許税の軽減措置はありますか?

A2相続登記は2025年3月末まで、一定の条件(土地の評価額100万円以下等)で免税措置があります。売買の場合、土地の登録免許税は2026年3月末まで1.5%に軽減(本則2%)されています。自治体により異なる場合があるため、法務局や市区町村役場に確認することをおすすめします。

Q3遺産分割協議が整わない場合はどうすればいいですか?

A32024年4月開始の相続人申告登記制度を利用すれば、自分が相続人であることを法務局に申告するだけで義務を履行したとみなされます。遺産分割協議が整った後に正式な相続登記を行います。相続人全員の合意が難しい場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

Q4贈与による名義変更で贈与税はいくらかかりますか?

A4贈与税は年間110万円を超える部分に課税され、税率は10~55%(累進課税)です。土地の評価額が高額な場合は贈与税も高額になるため、相続時精算課税制度の活用や、相続まで待つ選択肢も検討すべきです。詳細は税務署や税理士に相談してください。