土地を貸すメリット・デメリット|契約・相場・税金を解説

公開日: 2025/11/11

土地を貸すとは?借地権の基本を理解する

未活用の土地を持っているけれど、売却はしたくない。そんなときに「土地を貸す」という選択肢があります。土地を貸すことで、売却せずに安定した賃料収入を得ることができます。

ただし、土地を貸すには「借地権」という法律上の権利が関係し、特に普通借地権では地主からの解約が極めて困難というリスクがあります。契約前に仕組みを正しく理解することが重要です。

この記事では、国土交通省法務省の公式情報を元に、土地を貸す際のメリット・デメリット、契約の種類、賃料相場、注意点を解説します。

この記事のポイント

  • 土地を貸すとは、借地人が土地上に建物を建てる契約で、借地権が発生する
  • 普通借地権は30年以上・更新あり・地主からの解約が極めて困難
  • 定期借地権は50年以上・更新なし・期間満了で確実に返還されるため地主に有利
  • 賃料相場は土地価格の2-3%程度(一般定期借地権)だが、立地・用途により異なる
  • 不動産所得として確定申告が必要

普通借地権と定期借地権の違い

土地を貸すには、大きく分けて「普通借地権」と「定期借地権」の2つの契約方法があります。この2つは、期間満了後に土地が返還されるかどうかという根本的な違いがあります。

普通借地権:30年以上・更新あり・返還困難

普通借地権は、借地借家法に基づく借地権の原則形態です。

普通借地権の特徴:

項目 内容
契約期間 30年以上
更新 期間満了時に自動更新される
地主からの解約 「正当事由」が必要で極めて困難
賃料相場 土地価格の1-2%程度

普通借地権の最大の特徴は、地主からの解約が極めて困難という点です。期間満了時に更新を拒絶するには「正当事由」(地主・借地人双方の土地使用の必要性、賃貸借の従前の経過、土地の利用状況等を総合考慮)が必要で、立退料を支払っても認められないことが多いのです。

借地人の同意なしに土地を返してもらうことはほぼ不可能です。

定期借地権の3つの種類(一般・事業用・建物譲渡特約付)

定期借地権は、1992年の借地借家法改正で創設された借地権です。期間満了時に更新がなく、確実に土地が返還されるため、地主が土地を貸しやすくなりました。

定期借地権の3つの種類:

種類 存続期間 用途 契約方式 賃料相場
一般定期借地権 50年以上 住宅・商業問わず 書面(公正証書推奨) 土地価格の2-3%
事業用定期借地権 10年以上50年未満 事業用建物のみ 公正証書必須 土地価格の6%
建物譲渡特約付借地権 30年以上 制限なし 書面 土地価格の2-3%

一般定期借地権は、存続期間50年以上で、住宅・商業問わず利用できます。契約は書面(公正証書等)で行います。期間満了時に更新がなく、確実に土地が返還されます。

事業用定期借地権は、存続期間10年以上50年未満で、事業用建物のみに利用できます。契約は公正証書が必須です。コンビニ・飲食店等の事業用建物に多く利用されます。

建物譲渡特約付借地権は、存続期間30年以上で、契約時に「30年経過後に建物を地主に譲渡する」という特約を付けます。建物譲渡により借地権が消滅します。

土地を貸すメリット・デメリット

土地を貸すことには、メリットとデメリットの両面があります。公平に比較して、自分に合った選択かどうか判断しましょう。

メリット:安定収入・売却せず保有・相続対策

土地を貸すメリットは以下の通りです。

メリット:

  • 安定的な賃料収入が得られる: 月々の賃料収入で固定資産税をカバーでき、余剰は家計に充てられる(ただし空室・滞納リスクはある)
  • 売却せずに土地を保有し続けられる: 将来的に土地価格が上がる可能性がある場合、売却せずに保有できる
  • 住宅用地の場合は固定資産税が1/6に軽減される: 住宅用地の特例により、固定資産税評価額×1/6、都市計画税評価額×1/3に軽減
  • 相続時に賃貸中の土地は評価額が下がる可能性がある: 借地権が設定されている土地は、相続税評価額が借地権割合分だけ下がる

デメリット:普通借地権のリスク・返還困難・収益性低い

土地を貸すデメリットは以下の通りです。

デメリット:

  • 普通借地権は借地人保護が強く、地主からの解約は極めて困難: 一度貸すと、借地人の同意なしに土地を返してもらうことはほぼ不可能
  • 定期借地権でも50年以上の長期契約になる: 一般定期借地権は最低50年、事業用定期借地権でも10-50年の長期契約
  • 収益性が低い: 賃料相場は土地価格の2-3%程度で、売却して現金化し運用する方が収益性が高い場合がある
  • 不動産所得として確定申告が必要で税負担が発生する: 年間20万円超の場合は確定申告が必要(給与所得者の場合)

メリット・デメリットを公平に比較し、将来的に土地を自分や子供が使う可能性がある場合は定期借地権、長期的に土地を手放す予定がない場合のみ普通借地権を検討しましょう。

土地を貸すときの賃料相場

賃料相場は借地権の種類・立地・用途により大きく異なります。一律の相場はなく、幅を持たせて考える必要があります。

借地権の種類別・賃料の目安

賃料相場の目安は以下の通りです。

借地権の種類 賃料相場(土地価格の〇%) 計算例(土地価格3,000万円)
一般定期借地権(50年以上) 2-3% 年間60-90万円(月5-7.5万円)
事業用定期借地権(10-50年未満) 6% 年間180万円(月15万円)
普通借地権 1-2% 年間30-60万円(月2.5-5万円)

固定資産税の3-5倍という計算方法もあります。固定資産税が年間10万円の土地なら、賃料は年間30-50万円(月2.5-4.2万円)が目安です。

賃料相場の決定要因(立地・用途・インフラ)

賃料相場は以下の要因で大きく変わります。

賃料相場の決定要因:

  • 立地: 駅近・都市部は高い、郊外・地方は低い
  • 用途地域: 商業地域は高い、住宅地域は低い
  • インフラ整備状況: 上下水道・ガスが整備されていれば高い
  • 周辺の賃料事例: 同じエリアの賃料相場を参考にする

賃料を決める際は、不動産鑑定士や不動産業者に相談し、周辺の賃料事例を調査することをおすすめします。

土地を貸すときの契約上の注意点

土地を貸す際は、土地賃貸借契約書に重要事項を明記し、トラブルを予防することが重要です。

契約書に記載すべき重要事項

土地賃貸借契約書には以下の事項を明記しましょう。

契約書に記載すべき重要事項:

  • 存続期間: 普通借地権は30年以上、一般定期借地権は50年以上等、法律上の要件を満たす期間を明記
  • 賃料額と改定方法: 固定方式(〇年ごとに〇%値上げ)、物価スライド方式(消費者物価指数に連動)等を明記
  • 更新・解約条件: 定期借地権は「更新なし」と明記、普通借地権は「正当事由が必要」と明記
  • 建築制限: 用途(住宅・商業等)、構造(木造・鉄筋等)、階数(2階建てまで等)の制限を明記
  • 契約終了時の建物取り扱い: 定期借地権は「建物撤去義務」、普通借地権は「買取請求権あり」等を明記

契約書に明記していない事項は、後のトラブルの原因になります。弁護士に相談し、契約書の内容を精査することをおすすめします。

トラブル予防策(公正証書・弁護士相談)

土地賃貸借契約は長期にわたるため、トラブル予防策を講じることが重要です。

トラブル予防策:

  • 公正証書での契約: 定期借地権の場合は公正証書が推奨(事業用定期借地権は必須)。公正証書にすることで、契約の法的効力が確実になり、後のトラブルを防げる
  • 弁護士への相談: 契約書の内容を弁護士に確認してもらい、法的に不備がないか精査する
  • 不動産管理会社への委託: 賃料の徴収・建物の管理を不動産管理会社に委託することで、地主の手間を減らせる

普通借地権の場合は、一度貸すと返還が極めて困難なため、特に慎重に検討しましょう。

土地を貸したときの税金(不動産所得・確定申告)

土地を貸すと不動産所得として確定申告が必要です。税務申告を怠ると、無申告加算税・延滞税が課されます。

不動産所得の計算方法

不動産所得の計算式は以下の通りです。

不動産所得 = 総収入金額(賃料)- 必要経費

必要経費の例:

  • 固定資産税・都市計画税
  • 土地の修繕費(土地整備費等)
  • 減価償却費(建物がある場合)
  • 不動産管理会社への管理委託費
  • 借入金利息(土地購入のための借入金がある場合)

確定申告義務と必要経費

国税庁の説明によると、年間20万円超の不動産所得がある場合は確定申告が必要です(給与所得者の場合)。

20万円以下でも住民税申告は必要です。無申告の場合、無申告加算税・延滞税が課されます。

固定資産税・都市計画税の軽減:

住宅用地の場合、固定資産税は評価額×1/6、都市計画税は評価額×1/3に軽減される特例があります。土地所有者(地主)に課されますが、不動産所得の必要経費として計上できます。

税務申告の詳細は税理士に相談することをおすすめします。

まとめ:土地を貸す前に知っておくべきこと

土地を貸すことで、売却せずに安定した賃料収入を得られますが、普通借地権は地主からの解約が極めて困難というリスクがあります。

普通借地権と定期借地権の違いを明確に理解し、特に普通借地権は一度貸すと借地人の同意なしに土地を返してもらうことはほぼ不可能という点に注意しましょう。定期借地権なら期間満了で確実に返還されますが、50年以上の長期契約になります。

賃料相場は土地価格の2-3%程度(一般定期借地権)ですが、立地・用途により幅があります。契約書には存続期間・賃料改定・更新解約条件等を明記し、定期借地権の場合は公正証書での契約が推奨されます。

不動産所得として確定申告が必要です。不明点があれば、弁護士・税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1普通借地権で貸した土地を返してもらうことはできますか?

A1極めて困難です。地主からの更新拒絶・解約には「正当事由」(地主・借地人双方の土地使用の必要性、賃貸借の従前の経過、土地の利用状況等を総合考慮)が必要で、立退料を支払っても認められないことが多いです。借地人の同意なしに土地を返してもらうことはほぼ不可能です。将来的に土地を使う予定がある場合は、普通借地権ではなく定期借地権で貸すことを強くおすすめします。

Q2定期借地権と普通借地権、どちらで貸すべきですか?

A2定期借地権がおすすめです。期間満了で確実に土地が返還されるため、将来的に土地を自分や子供が使う可能性がある場合に適しています。普通借地権は借地人保護が強く、返還が極めて困難なため、よほどの理由がない限り避けるべきです。定期借地権でも50年以上の長期契約になるため、慎重に検討しましょう。

Q3土地を貸した場合、固定資産税は誰が払いますか?

A3土地所有者(地主)が払います。借地人ではありません。ただし、住宅用地の場合は固定資産税評価額×1/6、都市計画税評価額×1/3に軽減される特例があります。固定資産税は不動産所得の必要経費として計上できるため、確定申告時に税負担を減らせます。

Q4賃料は途中で値上げできますか?

A4契約書に賃料改定条項を記載していれば可能です。物価スライド方式(消費者物価指数に連動)、固定方式(〇年ごとに〇%値上げ)等があります。契約書に明記していない場合、地主・借地人双方の合意が必要で、一方的な値上げはできません。契約時に賃料改定条項を必ず明記しておくことをおすすめします。

Q5土地を貸す際、契約書は公正証書にすべきですか?

A5定期借地権の場合は公正証書が推奨されます(事業用定期借地権は必須)。公正証書にすることで、契約の法的効力が確実になり、後のトラブルを防げます。普通借地権の場合は書面でも可能ですが、公正証書にする方が安全です。公正証書の作成費用は数万円程度で、公証役場で手続きできます。