個人事業主の住宅ローン控除とは?適用条件と確定申告の方法を解説

公開日: 2025/11/11

個人事業主の住宅ローン控除とは

住宅購入を検討している・購入した個人事業主やフリーランスの方にとって、「住宅ローン控除が使えるのか」「サラリーマンと条件が違うのか」と不安を感じることは少なくありません。

この記事では、個人事業主の住宅ローン控除の適用条件、控除額の計算方法、確定申告の手順、サラリーマンとの違いを、国税庁の公式情報を元に解説します。

初めて住宅ローン控除を利用する個人事業主の方でも、確定申告での手続き方法を正確に把握できるようになります。

この記事のポイント

  • 個人事業主も住宅ローン控除を受けられる、年末ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税(一部翌年の住民税)から控除
  • 適用条件は合計所得金額2000万円以下(売上ではなく所得)、自己居住用、床面積50㎡以上(居住用部分が1/2以上)、借入期間10年以上等
  • サラリーマンと異なり毎年確定申告が必要(年末調整不可)、事業所得が赤字の場合は控除しきれない可能性がある
  • 事業用併用住宅の場合、居住用部分の床面積が1/2以上必要、事業用部分は控除対象外
  • 確定申告では住宅借入金等特別控除額の計算明細書・登記事項証明書・売買契約書・借入金残高証明書を添付

住宅ローン控除の基本と適用条件

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用して住宅を取得した場合、年末ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税(一部翌年の住民税)から控除する制度です。

個人事業主の適用条件

個人事業主が住宅ローン控除を受けるための主な条件は以下の通りです。

  • 合計所得金額2000万円以下(令和4年以降の入居の場合):売上ではなく所得(収入から経費を引いた金額)が基準
  • 自己居住用:取得後6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること
  • 床面積50㎡以上:居住用部分が床面積の1/2以上必要(事業用併用住宅の場合)
  • 借入期間10年以上:金融機関からの借入期間が10年以上であること
  • 築年数・耐震基準を満たす:新築または一定の耐震基準を満たす中古住宅

合計所得金額の計算

合計所得金額とは、給与所得・事業所得・不動産所得等の合計です。個人事業主の場合、事業所得(売上-経費)が該当します。売上が2000万円を超えていても、経費を引いた所得が2000万円以下であれば適用対象です。

事業用併用住宅の扱い

自宅の一部を事業所(事務所・店舗等)として使用する事業用併用住宅の場合、居住用部分が床面積の1/2以上必要です。事業用部分は控除対象外となり、居住用部分の床面積割合に応じて按分計算します。

控除額の計算と控除期間

住宅ローン控除の控除額は、年末ローン残高と住宅の性能により異なります。

控除額の計算式

控除額は以下の式で計算します。

控除額 = 年末ローン残高 × 0.7%

ただし、控除上限額は住宅の性能・購入時期により異なります。

住宅の種類 年末ローン残高上限 最大控除額(年間) 控除期間
認定住宅(長期優良住宅・低炭素住宅等) 5000万円 35万円 13年間
ZEH水準省エネ住宅 4500万円 31.5万円 13年間
省エネ基準適合住宅 4000万円 28万円 13年間
その他の住宅 3000万円 21万円 10年間

(出典: 国税庁、2025年時点)

控除しきれない場合の繰越

所得税から控除しきれない場合、翌年の住民税から控除できます(上限あり)。ただし、事業所得が赤字の場合、所得税額が0円となるため、控除を受けられません。

事業用併用住宅の按分計算

事業用併用住宅の場合、居住用部分の床面積割合に応じて控除額を按分します。

:

  • 床面積100㎡のうち、居住用60㎡、事業用40㎡の場合
  • 居住用部分の割合 = 60㎡ / 100㎡ = 60%
  • 控除額 = (年末ローン残高 × 0.7%)× 60%

サラリーマンとの違い:確定申告が毎年必要

個人事業主とサラリーマンの住宅ローン控除には、手続き上の重要な違いがあります。

年末調整不可・毎年確定申告が必要

サラリーマンの場合、1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整で手続きができます。一方、個人事業主は年末調整を受けられないため、毎年確定申告で住宅ローン控除を申請する必要があります。

赤字の場合の影響

個人事業主の事業所得が赤字の場合、所得税額が0円となるため、住宅ローン控除を受けられません。事業所得が黒字であることが控除を受ける前提となります。

フラット35の審査基準

住宅ローン審査においても、個人事業主とサラリーマンでは基準が異なります。フラット35(住宅金融支援機構)の場合、個人事業主の審査は直近1期分の申告所得で判断されるため、民間金融機関(3期連続黒字が目安)より基準が柔軟です。

確定申告の手順と必要書類

個人事業主が住宅ローン控除を受けるための確定申告の手順を解説します。

1年目の確定申告

1年目は以下の書類を確定申告書に添付します。

  • 確定申告書(第一表・第二表)
  • 住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 登記事項証明書(法務局で取得)
  • 売買契約書または請負契約書のコピー
  • 借入金残高証明書(金融機関から送付)

2年目以降の確定申告

2年目以降は、借入金残高証明書のみで手続きが可能です。住宅借入金等特別控除額の計算明細書は税務署から送付される場合もあります。

事業用併用住宅の注意点

事業用併用住宅の場合、居住用部分の床面積割合を明記する必要があります。住宅借入金等特別控除額の計算明細書に「居住用部分の床面積割合」を記入してください。

まとめ:個人事業主も住宅ローン控除を活用しよう

個人事業主も住宅ローン控除を受けられます。年末ローン残高の0.7%を最大13年間、所得税(一部翌年の住民税)から控除できます。適用条件は合計所得金額2000万円以下、自己居住用、床面積50㎡以上(居住用部分が1/2以上)、借入期間10年以上等です。

サラリーマンと異なり、毎年確定申告が必要で、事業所得が赤字の場合は控除を受けられません。事業用併用住宅の場合、居住用部分の床面積割合に応じて按分計算します。

確定申告の手順や必要書類に不安がある場合は、税理士に相談することで、適切な控除を受けられます。住宅ローン控除を活用して、税負担を軽減しましょう。

よくある質問

Q1事業用併用住宅で住宅ローン控除は受けられますか?

A1はい、受けられます。ただし、居住用部分が床面積の1/2以上必要です。事業用部分は控除対象外となり、居住用部分の床面積割合に応じて按分計算します。例えば、床面積100㎡のうち居住用60㎡、事業用40㎡の場合、居住用部分の割合60%を控除額に乗じます。確定申告時に居住用部分の床面積割合を明記してください。

Q2赤字でも住宅ローン控除は受けられますか?

A2いいえ、受けられません。住宅ローン控除は所得税から控除する制度ですが、事業所得が赤字の場合、所得税額が0円となるため、控除を受けられません。控除を受けるためには、事業所得が黒字であることが前提です。ただし、給与所得等の他の所得がある場合、合算した所得が黒字であれば控除を受けられます。

Q3個人事業主は2年目以降も確定申告が必要ですか?

A3はい、必要です。サラリーマンは1年目のみ確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で手続きできますが、個人事業主は年末調整を受けられないため、毎年確定申告で住宅ローン控除を申請する必要があります。2年目以降は借入金残高証明書のみで手続きが可能です。

Q4合計所得金額2000万円の基準は売上ですか?

A4いいえ、売上ではなく所得(収入から経費を引いた金額)が基準です。個人事業主の場合、事業所得(売上-経費)が該当します。売上が2000万円を超えていても、経費を引いた所得が2000万円以下であれば適用対象です。給与所得・不動産所得等がある場合は、それらを合算した合計所得金額で判断します。

Q5フラット35の審査は個人事業主に不利ですか?

A5フラット35(住宅金融支援機構)の場合、個人事業主の審査は直近1期分の申告所得で判断されるため、民間金融機関(3期連続黒字が目安)より基準が柔軟です。ただし、申告所得が低い場合は借入可能額が少なくなります。確定申告で適切に経費を計上しつつ、十分な所得を確保することが重要です。