土地担保ローンとは?仕組み・金利・メリットとデメリット

公開日: 2025/11/4

土地を担保にしたローンは低金利で高額融資が可能な金融商品

所有している土地を活用して資金調達を考える際、「土地担保ローンとは何か」「住宅ローンとどう違うのか」と疑問に感じる方は少なくありません。

この記事では、土地担保ローンの仕組み、メリット・デメリット、審査基準、手続きの流れを金融庁法務省の公式情報を元に解説します。

事業資金や自宅建築費用を借りたい方が、判断材料を十分に得られるようになります。

この記事のポイント

  • 土地担保ローンは抵当権を設定して資金調達する金融商品で、金利は1〜10%程度
  • 融資限度額は評価額の60〜80%が目安で、資金使途が原則自由
  • 返済不能時に土地が競売にかけられる担保喪失リスクがある
  • 抵当権設定登記には登録免許税と司法書士報酬(合計で数十万円)がかかる

土地を担保にしたローンとは:資金調達の仕組みと利用場面

土地担保ローンは、所有している土地に抵当権を設定して資金を借りる金融商品です。抵当権とは、債務者が返済不能になった場合に、債権者が担保不動産を競売にかけて優先的に弁済を受けられる権利です(民法第369条)。

住宅ローンとの違い

住宅ローンは資金使途が「自宅取得」に限定されますが、土地担保ローンは資金使途が原則自由です。事業資金、自宅建築費用、相続対策等、幅広い目的で利用できます。

主な利用場面

  • 事業資金の調達(店舗開業、設備投資等)
  • 自宅建築費用の調達
  • 土地活用(アパート建築、駐車場整備等)
  • 相続税の納税資金

土地担保ローンのメリット:低金利・高額融資・資金使途の自由

土地担保ローンには3つの主なメリットがあります。

無担保ローンより低金利(1〜10%程度)

無担保ローン(カードローン等)の金利は10〜15%ですが、土地担保ローンは1〜10%程度です。担保があることで、金融機関は貸し倒れリスクを抑えられるため、低金利で融資できます。

SBIエステートファイナンスによると、2025年3月時点の金利は固定2.99〜14.80%、変動2.99〜11.80%です。銀行系は1〜8%、ノンバンク系は2〜10%が目安です。

評価額の60〜80%まで借入可能

融資限度額は土地評価額の60〜80%が目安です。評価額3,000万円の土地なら、1,800万〜2,400万円の借入が可能です。

評価額は路線価(国税庁が毎年公表、公示地価の約80%)や実勢価格を参考に算定されます。

資金使途が原則自由(事業資金・建築費用等)

住宅ローンは資金使途が「自宅取得」に限定されますが、土地担保ローンは原則自由です。事業資金、建築費用、借入の借り換え等、幅広い用途に利用できます。

土地担保ローンのデメリット・リスク:担保喪失と諸費用負担

低金利・高額融資のメリットがある一方で、重大なリスクもあります。

返済不能時に土地が競売にかけられるリスク

最大のリスクは、返済不能時に土地が競売で売却され、所有権を失うことです。りそなグループによると、無担保ローンは財産全般から回収されますが、土地担保ローンは特定の担保不動産が優先的に処分されます。

競売の流れ

  1. 返済延滞が続く
  2. 債権者が裁判所に競売申し立て
  3. 土地が競売で売却される
  4. 売却代金で債務を弁済
  5. 残債があれば引き続き返済義務

抵当権設定登記の諸費用(登録免許税・司法書士報酬)

抵当権を設定するには、法務省の不動産登記制度に基づき登記が必要です。

費用項目 金額 内容
登録免許税 債権額の0.4% 住宅取得なら軽減措置で0.1%
司法書士報酬 3万〜10万円 登記手続きの代行費用

例えば、2,000万円借りる場合、登録免許税8万円(2,000万円×0.4%)+司法書士報酬5万円=合計13万円が必要です。

審査に時間がかかる(1〜2週間程度)

無担保ローンは即日〜数日で融資実行されますが、土地担保ローンは土地の評価に時間がかかるため、申し込みから融資実行まで2〜4週間程度必要です。

審査基準と融資限度額の決まり方

融資限度額は土地の評価額だけでなく、申込者の属性も考慮されます。

土地の評価方法(路線価・公示地価・実勢価格)

金融機関は以下の指標を参考に土地を評価します。

評価指標 内容 水準
路線価 国税庁が毎年公表 公示地価の約80%
公示地価 国土交通省が毎年公表 標準的な取引価格
実勢価格 実際の取引価格 地域・タイミングで変動

掛目(評価額の70〜80%が融資限度額)

融資限度額は「評価額×掛目(70〜80%)」で決定されます。掛目は価格変動リスクへの備えです。

計算例

  • 路線価ベースの評価額: 3,000万円
  • 掛目: 70%
  • 融資限度額: 3,000万円×70% = 2,100万円

申込者の収入・信用情報・他社借入状況

土地の評価額が高くても、申込者の返済能力が低ければ融資は減額されます。

審査項目

  • 年収・勤続年数
  • 信用情報(過去の延滞履歴等)
  • 他社借入状況(返済比率)

「評価額=借入可能額」ではない点に注意が必要です。

土地担保ローンの手続きの流れと必要書類

申し込みから融資実行までの流れを解説します。

ステップ1:金融機関への申し込みと仮審査

金融機関に申し込み、仮審査を受けます。必要書類は以下の通りです。

本人確認書類

  • 運転免許証・パスポート等

収入証明書類

  • 源泉徴収票、確定申告書等(直近2〜3年分)

土地関連書類

  • 登記簿謄本(法務局で取得)
  • 公図(法務局で取得)
  • 固定資産税評価証明書(市区町村で取得)

ステップ2:土地の評価と本審査

金融機関が土地を評価し、本審査を行います。評価には現地調査が含まれることもあります。期間は1〜2週間程度です。

ステップ3:抵当権設定登記と融資実行

本審査通過後、契約を締結し、抵当権設定登記を行います。登記完了後、融資が実行されます。

特殊なケース

  • 相続した土地: 相続登記(所有権移転登記)が完了していることが前提
  • 親の土地: 親が土地所有者として抵当権設定に同意し、連帯保証人になる必要がある

住宅ローンとの違い:金利・資金使途・審査基準を比較

住宅ローンと土地担保ローンの違いを表で整理します。

項目 住宅ローン 土地担保ローン
金利 0.4〜1.3% 1〜10%
資金使途 自宅取得のみ 原則自由
融資限度額 物件価格の80〜100% 評価額の60〜80%
審査基準 厳格(年収・勤続年数) 比較的柔軟
諸費用 低い 高い(登録免許税等)

(出典: SBIエステートファイナンス

金利は住宅ローンの方が低いですが、資金使途の自由度は土地担保ローンの方が高いです。両者のトレードオフを理解し、自分の目的に合った商品を選ぶことが重要です。

まとめ:土地担保ローンを利用する前に検討すべきこと

土地担保ローンは低金利・高額融資のメリットがある一方で、返済不能時に土地を失う重大なリスクがあります。

金融庁も、担保に依存しない融資の検討を促しており、代替手段(事業ローン・無担保ローン)との比較も推奨しています。

利用を検討する際は、返済計画を慎重に立て、FP(ファイナンシャルプランナー)や弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

信頼できる金融機関に相談しながら、無理のない資金調達計画を立てましょう。

よくある質問

Q1親の土地を担保にして自分が借りることはできますか?

A1可能ですが、親が土地所有者として抵当権設定に同意し、連帯保証人になる必要があります。親の意思確認書類や同意書が必須で、後日トラブルにならないよう慎重に手続きすべきです。金融機関によっては、親の収入証明書類も求められることがあります。

Q2相続した土地を担保にする際の注意点は?

A2相続登記(所有権移転登記)が完了していることが前提です。未登記の場合は相続登記を先に行う必要があります。登記費用(登録免許税0.4%、司法書士報酬5〜10万円)が別途発生します。相続人が複数いる場合は、全員の同意が必要なケースもあるため、事前に確認してください。

Q3根抵当権と通常の抵当権の違いは何ですか?

A3根抵当権は極度額の範囲内で何度でも借入・返済を繰り返せる抵当権です。通常の抵当権は借入ごとに設定が必要ですが、根抵当権は反復利用可能で、事業資金の調達に便利です。極度額を3,000万円に設定すれば、その範囲内で自由に借入・返済できます。

Q4土地担保ローンの金利は今後どうなりますか?

A42025年時点で銀行系1〜8%、ノンバンク系2〜10%です。日銀の政策金利や市場金利の動向に影響されるため、変動金利の場合は定期的な見直しが必要です。固定金利も選択可能で、金利上昇リスクを回避したい場合は固定金利を検討してください。

Q5融資実行までどのくらいの期間がかかりますか?

A5申し込みから融資実行まで通常2〜4週間程度です。土地の評価・本審査に1〜2週間、契約・抵当権設定登記に1週間程度かかります。急ぎの場合は金融機関に相談してください。ノンバンク系は銀行系より審査が早い傾向にあります。