土地の譲渡所得税を徹底解説!計算方法と軽減措置

公開日: 2025/10/26

土地の譲渡所得税とは?基本を理解する

土地の売却を検討する際、「税金がどれくらいかかるのか」と不安を感じる方は少なくありません。一般に「譲渡税」と呼ばれることもありますが、正式には「譲渡所得税」であり、所得税・住民税・復興特別所得税の総称です。

この記事では、土地の譲渡所得税の仕組み、計算方法、長期・短期の税率区分、軽減措置の活用方法を、国税庁の公式情報を元に解説します。

初めて土地を売却する方でも、税金の計算方法を正確に理解し、適切な申告ができるようになります。

この記事のポイント

  • 「譲渡税」は俗称で、正式には「譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別所得税)」
  • 譲渡所得 = 収入金額(売却価格)-(取得費+譲渡費用)で計算
  • 所有期間5年超は税率20.315%、5年以下は税率39.63%と大きく異なる
  • 所有期間の判定は「譲渡した年の1月1日時点」で行うため注意が必要
  • 居住用財産の3000万円控除や10年超所有軽減税率などの特例で税負担を軽減できる場合がある

土地の譲渡所得税の基礎知識

「譲渡税」は俗称、正式名称は「譲渡所得税」

一般に「譲渡税」と呼ばれることが多いですが、税法上の正式名称は「譲渡所得税」です。具体的には、以下の3つの税金の総称を指します。

  • 所得税: 国に納める税金
  • 住民税: 都道府県・市区町村に納める税金
  • 復興特別所得税: 東日本大震災の復興財源として2037年まで課税される税金(基準所得税額の2.1%、2024年時点)

これらを合わせて「譲渡所得税」と呼びます。この記事では正式名称に従い「譲渡所得税」として解説します。

分離課税の仕組み

土地・建物の譲渡所得は「分離課税」方式で税額を計算します。分離課税とは、給与所得や事業所得などの他の所得と合算せず、譲渡所得単独で税額を計算する方式です。

このため、土地を売却して利益が出ても、給与所得の税率には影響しません。逆に、他の所得が高くても譲渡所得の税率は一定です。

譲渡所得の計算方法を具体例で理解する

計算式:収入金額-(取得費+譲渡費用)

譲渡所得は以下の計算式で求めます。

譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)

それぞれの項目について詳しく見ていきましょう。

取得費の内訳と証明方法

取得費とは、土地を取得したときの購入代金や購入に要した費用のことです。国税庁の定義によると、以下が含まれます。

  • 購入代金(土地の購入価格)
  • 購入時の仲介手数料
  • 購入時の登記費用(登録免許税、司法書士報酬)
  • 購入時の測量費
  • 造成費用、改良費(土地の価値を高める支出)
  • 設備費(上下水道の引込み等)

取得費は購入時の売買契約書や領収書で証明します。

購入時の契約書がない場合:

契約書を紛失した場合や、相続・贈与で取得した場合など、取得費が分からないケースでは、租税特別措置法第31条の4により、売却価格の5%を「概算取得費」として使用できます。

ただし、概算取得費5%を使用すると、実際の取得費よりも低くなり、結果的に譲渡所得が大きくなって税負担が増える場合があります。まずは購入時の契約書や領収書を探す努力をすることをおすすめします。不動産会社や法務局で契約書のコピーを取得できる可能性もあります。

譲渡費用に含まれるもの・含まれないもの

譲渡費用とは、土地を売却するために直接かかった費用のことです。

含まれるもの:

  • 仲介手数料(不動産会社への報酬)
  • 売買契約書の印紙税
  • 測量費(売却のために行った測量)
  • 建物取壊し費用(売却のために建物を取り壊した場合)
  • 売却のための広告費
  • 立退料(借家人に支払った立退料)

含まれないもの:

  • 修繕費(日常的な維持管理費用)
  • 固定資産税
  • 抵当権抹消費用

譲渡費用として認められるのは、売却のために直接かかった費用のみです。日常的な維持管理費用は含まれません。

計算例

具体例で計算してみましょう(以下は例示のための仮定値です)。

  • 売却価格(収入金額): 5,000万円
  • 購入価格(取得費): 3,000万円
  • 購入時の仲介手数料・登記費用: 100万円
  • 売却時の仲介手数料: 150万円
  • 測量費: 50万円

譲渡所得 = 5,000万円 - (3,000万円 + 100万円 + 150万円 + 50万円) = 1,700万円

この1,700万円に対して譲渡所得税が課税されます。

長期・短期で大きく変わる税率

譲渡所得税の税率は、所有期間によって大きく異なります。

長期譲渡所得(所有期間5年超)の税率

所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、税率は以下の通りです。

  • 所得税: 15%
  • 復興特別所得税: 0.315%(所得税15%の2.1%)
  • 住民税: 5%
  • 合計: 20.315%

(出典: 国税庁

短期譲渡所得(所有期間5年以下)の税率

所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は以下の通りです。

  • 所得税: 30%
  • 復興特別所得税: 0.63%(所得税30%の2.1%)
  • 住民税: 9%
  • 合計: 39.63%

(出典: 国税庁

長期と短期では税率が約2倍も異なるため、売却のタイミングは慎重に検討する必要があります。

所有期間の判定は「譲渡した年の1月1日時点」

重要な注意点: 所有期間の判定は、実際に土地を所有していた期間ではなく、「譲渡した年の1月1日時点」で行います。

例えば、2019年3月1日に購入した土地を2024年5月1日に売却した場合:

  • 実際の所有期間: 5年2ヶ月
  • 判定基準日: 2024年1月1日
  • 2024年1月1日時点での所有期間: 4年10ヶ月 → 短期譲渡所得

このように、実際の所有期間が5年を超えていても、譲渡した年の1月1日時点で5年以下であれば短期譲渡所得として扱われ、税率39.63%が適用されます。

売却のタイミングを検討する際は、この判定基準を必ず確認しましょう。

税負担を軽減できる特例措置

居住用財産の3000万円特別控除

自己が居住していた家屋とその敷地を売却する場合、居住用財産の3000万円特別控除を適用できる場合があります。

主な要件:

  • 自己が居住していた家屋とその敷地であること
  • 住まなくなった日から3年以内の譲渡であること
  • 売却先が配偶者や直系血族(父母、祖父母、子、孫等)、兄弟姉妹でないこと
  • 過去2年以内にこの特例を受けていないこと

適用例:

譲渡所得が2,500万円の場合:

2,500万円 - 3,000万円 = 0円(マイナスの場合は0円)

→ 譲渡所得税はゼロ

重要な注意点: この特例は居住用財産(マイホーム)のみが対象です。以下は対象外となります。

  • 投資用土地
  • 別荘
  • 賃貸物件
  • 事業用の土地

これらの土地を売却する場合は、3000万円控除を適用できません。

10年超所有軽減税率

居住用財産を10年を超えて所有していた場合、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について軽減税率が適用されます。

  • 6,000万円以下の部分: 税率14.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%)
  • 6,000万円超の部分: 税率20.315%(長期譲渡所得の通常税率)

この特例は3000万円控除と併用できます。

特例を受けるための要件

これらの特例を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 確定申告を行うこと: 特例を適用する場合は、譲渡所得がゼロになる場合でも確定申告が必要
  • 必要書類を添付すること: 売買契約書のコピー、登記事項証明書等
  • 要件を満たすこと: 各特例の適用要件を満たしていることを証明する書類が必要

特例の適用可否や必要書類は、税務署または税理士に確認することをおすすめします。

確定申告の手順と必要書類

申告時期と申告方法

土地を売却した場合、確定申告が必要です。

  • 申告時期: 売却した翌年の2月16日〜3月15日
  • 申告方法: 税務署への提出、e-Tax(電子申告)、郵送

例えば、2024年中に売却した場合、2025年2月16日〜3月15日に申告します。

必要書類のリスト

確定申告に必要な書類は以下の通りです。

売却時の書類:

  • 売買契約書のコピー
  • 仲介手数料の領収書
  • 測量費・建物取壊し費用等の領収書

取得時の書類:

  • 購入時の売買契約書のコピー
  • 購入時の仲介手数料・登記費用の領収書

その他:

  • 登記事項証明書
  • 特例を適用する場合の添付書類(住民票、戸籍の附票等)

これらの書類を確定申告書と一緒に提出します。

納付方法と納付期限

所得税の納付:

  • 納付期限: 申告期限と同じ(3月15日)
  • 納付方法: 現金納付、振替納税、e-Tax、クレジットカード

住民税の納付:

  • 納付時期: 売却した翌年の6月以降
  • 納付方法: 市区町村から送付される納付書で分割納付(通常4回)

無申告のリスク

確定申告を怠ると、以下のペナルティが科されます。

  • 無申告加算税: 本来の税額の15%〜20%(自主的に申告した場合は5%)
  • 延滞税: 納付期限の翌日から年利最大14.6%
  • 重加算税: 意図的な隠蔽と判断された場合は最大40%

土地を売却した場合は、必ず期限内に確定申告を行いましょう。

まとめ:土地の譲渡所得税で損をしないために

土地の譲渡所得税は、①正式名称と税率区分の理解、②取得費の実額証明の重要性、③所有期間の判定(譲渡した年の1月1日時点)、④特例の適用要件確認、⑤確定申告の確実な実施という5つのポイントを押さえる必要があります。

特に、所有期間の判定方法や取得費の証明方法は誤解しやすい点です。売却を検討し始めた段階で、税理士に相談して税額の試算を依頼することをおすすめします。

確定申告を怠ると無申告加算税(15%〜20%)や延滞税(最大14.6%)が課されるリスクがあるため、期限内に必ず申告を行いましょう。適切な対応により、税負担を軽減できる可能性があります。

よくある質問

Q1譲渡所得税はいつ支払うのですか?

A1土地を売却した翌年の2月16日〜3月15日に確定申告を行い、所得税は原則として申告期限(3月15日)までに納付します。住民税は売却した翌年の6月以降に市区町村から納付書が送付され、通常4回に分けて納付します。例えば2024年中に売却した場合、2025年2月16日〜3月15日に申告し、所得税は2025年3月15日まで、住民税は2025年6月以降に分割納付となります。

Q2購入時の契約書が見つからない場合はどうすればいいですか?

A2購入時の契約書が見つからない場合、まず不動産会社や法務局で契約書のコピーを取得できないか確認してください。相続で取得した場合は、被相続人の書類を探してみましょう。どうしても証明できない場合は、租税特別措置法第31条の4により、売却価格の5%を「概算取得費」として使用できます。ただし、概算取得費5%を使用すると実際の取得費よりも低くなり、譲渡所得が大きくなって税負担が増える場合があるため、実額証明を優先すべきです。

Q3投資用の土地でも3000万円控除は使えますか?

A3使えません。3000万円控除は居住用財産(マイホーム)のみが対象です。投資用土地、別荘、賃貸物件、事業用の土地などは対象外となります。居住用財産として認められるには、自己が実際に居住していた家屋とその敷地であることが条件です。また、住まなくなった日から3年以内の譲渡であることも要件の一つです。投資目的で購入した土地は、この特例を適用できません。

Q4税理士に相談すべきタイミングはいつですか?

A4売却を検討し始めた段階で相談するのが理想的です。売却前に相談することで、①税額の試算(売却価格別のシミュレーション)、②特例適用の可否確認(居住用財産の3000万円控除、10年超所有軽減税率等)、③必要書類の準備(取得費の証明方法等)、④売却タイミングの検討(所有期間の判定、長期・短期の税率差)を事前に確認でき、申告ミスや納税額の過大申告を防げます。特に、譲渡所得が大きい場合や特例適用を検討する場合は、早期の相談を強く推奨します。