投資不動産ローンの金利相場を知ろう
不動産投資を始める際、「投資ローンの金利はどれくらいなのか」「住宅ローンと比べてなぜ高いのか」という疑問を持つ方は少なくありません。実際、投資不動産ローン(アパートローン)の金利は住宅ローンより高く設定されており、金融機関や物件の収益性によって大きく異なります。
この記事では、投資不動産ローンの金利相場(2025年時点)、住宅ローンとの違い、低金利で借りるための5つのポイントを解説します。金融庁の公式調査などのデータを元に、実務的な選択指針を提示します。
この記事のポイント
- 投資ローンの金利相場は変動金利2.5%程度、固定金利3-4%程度(2025年時点)
- 住宅ローン(0.5-2.0%)より高い理由は、家賃収入のリスクが給与収入より高いため
- 金利を下げる5つのポイント:物件選定、自己資金増額、属性強化、複数金融機関比較、交渉術
- 2024年3月のマイナス金利解除、7月の利上げにより金利上昇リスクに注意が必要
- ノンバンクは審査が甘いが金利が高い(3-6%、物件によっては7-15%)ため慎重に判断
投資ローンと住宅ローンの違い
投資不動産ローンと住宅ローンは、用途が異なるだけでなく、金利や審査基準も大きく異なります。
返済原資の違い(家賃収入 vs 給与収入)
最も大きな違いは、返済原資です。
- 投資ローン: 家賃収入を返済原資とする。空室リスクがあり、家賃収入が途絶えると返済が困難になる。
- 住宅ローン: 給与収入を返済原資とする。安定した給与収入が見込める場合、返済リスクが低い。
このリスクの違いが、金利差に反映されています。
審査基準の違い(物件収益性 vs 個人属性)
投資ローンは、個人の年収・勤続年数・勤務先などの属性に加え、物件の収益性・担保価値も審査されます。一方、住宅ローンは主に個人属性(返済能力)が重視されます。
| 項目 | 投資ローン | 住宅ローン |
|---|---|---|
| 返済原資 | 家賃収入 | 給与収入 |
| 審査基準 | 個人属性+物件収益性・担保価値 | 個人属性(年収・勤続年数等) |
| 金利相場 | 1.5-4.0% | 0.5-2.0% |
| 頭金 | 物件価格の1-3割 | 0-2割(フルローンも可) |
| 用途 | 投資用物件のみ | 自己居住用のみ |
(出典: HEDGE GUIDE)
金利差の理由(リスク評価の差)
投資ローンの金利が住宅ローンより高い理由は、リスク評価の差です。家賃収入は空室・家賃下落・滞納などのリスクがあり、給与収入より変動が大きいため、金融機関はスプレッド(上乗せ金利)を加算します。
重要な注意: 住宅ローンを投資用物件に不正利用すると、金銭消費貸借契約違反となり、一括返済を求められます。また、虚偽申告は詐欺罪に該当する可能性があります。金利差(住宅ローン0.5-2.0% vs 投資ローン1.5-4.0%)に惑わされないよう注意してください。
金利の決まり方と金融機関別の金利水準
投資ローンの金利はどのように決まるのでしょうか。
金利決定の仕組み(基準金利+スプレッド)
投資ローンの金利は、「基準金利+スプレッド」で決まります。
- 基準金利: 短期プライムレート(日本銀行の政策金利に連動)
- スプレッド: 金融機関のリスク評価に基づく上乗せ金利。物件の収益性、借主の属性、頭金の額などで変動。
スプレッドを縮小する方法は、後述の「低金利で借りるための5つのポイント」で詳しく解説します。
金融機関別の金利相場(メガバンク・地銀・ノンバンク)
INVASE(インベース)の2025年最新調査によると、金融機関別の金利相場は以下の通りです。
| 金融機関タイプ | 金利相場 | 特徴 |
|---|---|---|
| メガバンク | 1.0-2.0% | 審査が厳しいが低金利 |
| 地方銀行 | 1.5-4.0% | 地域・物件により幅がある |
| ネット銀行 | 1.5-2.5% | オンライン完結、審査が早い |
| ノンバンク | 2.5-4.5% | 審査が甘いが高金利(物件・属性で7-15%も) |
(出典: INVASE)
地方銀行の金利は、地域の競争環境や物件の立地により1.5-4.0%と幅があります。複数の地方銀行を比較することをおすすめします。
具体的な金融機関の金利例(モゲチェックより):
- 住信SBIネット銀行: 1.57%〜
- 西京銀行: 1.50-1.75%
- オリックス銀行: 2.30-3.675%
変動金利と固定金利の選択基準
投資ローンには変動金利と固定金利があります。
| 項目 | 変動金利 | 固定金利 |
|---|---|---|
| 金利水準(2025年) | 2.5%程度 | 3-4%程度 |
| メリット | 固定金利より低金利 | 金利上昇リスクなし、返済額確定 |
| デメリット | 金利上昇リスクあり | 変動金利より高金利 |
| 向いている人 | 金利上昇に耐えられる収支設計、短期保有 | リスク回避重視、長期保有 |
2024年3月にマイナス金利政策が解除され、7月には短期プライムレートが引き上げられました。金融庁の分析(2024年7月)でも、金利上昇環境下のリスク管理が重要視されています。変動金利で借りている場合、金利上昇により返済額が増加し、収支が悪化する可能性があるため注意が必要です。
低金利で借りるための5つのポイント
投資ローンの金利を下げるための具体的な方法を5つ紹介します。
1. 物件選定(収益性・担保価値の高い物件)
物件の収益性(表面利回り、実質利回り)と担保価値(立地、築年数、建物状態)が高いと、金融機関のリスクが下がるため、金利優遇を受けやすくなります。
- 高収益物件: 駅近、都市部、築浅、管理状態が良好
- 低収益物件: 郊外、築古、空室率が高い
物件選定の段階で、金融機関が評価しやすい物件を選ぶことが重要です。
2. 自己資金の増額(LTVを下げる)
頭金を物件価格の1-3割入れると、LTV(Loan To Value:物件の担保評価額に対する融資額の割合)が下がり、金融機関のリスクが軽減されます。その結果、金利優遇を受けやすくなります。
例えば、物件価格1億円で頭金2割(2000万円)を入れると、借入額は8000万円(LTV 80%)となります。頭金が多いほど、審査も有利になります。
3. 属性強化(年収・勤続年数・勤務先)
個人属性(年収・勤続年数・勤務先の信頼性)が高いと、金融機関は「返済能力が高い」と判断し、金利優遇を受けやすくなります。
- 高評価: 年収700万円以上、勤続年数3年以上、上場企業・公務員
- 低評価: 年収400万円未満、勤続年数1年未満、自営業・フリーランス
属性を強化するには、転職前にローンを組む、または年収アップ後に申し込むことが有効です。
4. 複数金融機関の比較(金利差1%で総支払額1,500万円差)
複数の金融機関に審査を申し込み、金利を比較することが重要です。金利差1%で、総支払額が約1,500万円変わる可能性があります(借入1億円、25年返済、元利均等返済、ボーナス払いなしで試算)。
例えば:
- 金利2%の場合: 総返済額 約1億2,700万円
- 金利3%の場合: 総返済額 約1億4,200万円
- 差額: 約1,500万円
最初に提示された金利で契約せず、必ず複数社を比較しましょう。
5. 金利交渉術(他行の提示金利を活用)
複数の金融機関から提示された金利を活用し、「A銀行では2.0%と言われたが、御行ではどうか」と交渉することで、金利を下げられる可能性があります。
金融機関は競合を意識しているため、他行の条件を提示することで、金利優遇の余地が生まれます。
金利上昇リスクと注意点
投資ローンを組む際は、金利上昇リスクや注意点を理解しておくことが重要です。
2024年以降の金利動向(マイナス金利解除、利上げ)
2024年3月にマイナス金利政策が解除され、7月には短期プライムレートが引き上げられました。金融庁の分析(2024年7月)でも、地方銀行の不動産業向け融資動向が注視されています。
変動金利で借りている場合、金利上昇により返済額が増加し、収支が悪化する可能性があります。金利上昇に耐えられる収支設計(家賃収入 > 返済額 + 経費)を事前に確認してください。
空室リスクと金利負担の二重苦
投資ローンは家賃収入を返済原資とするため、空室が発生すると返済が困難になります。金利が高い(1.5-4.0%)ほど、空室時の負担が大きくなります。
デットクロスとは、減価償却費が減少し、ローン元金返済が増えることで、会計上の利益は出るが手元資金が減少する状態です。金利が高いほど早期に発生しやすく、キャッシュフロー悪化のリスクがあります。一般的に、木造アパートでは築15-20年頃、金利3%以上の場合は早期に発生する可能性があります。投資計画時に長期シミュレーションを行い、デットクロスの時期を把握しておくことが重要です。
ノンバンクの高金利リスク(3-6%、物件によっては7-15%)
ノンバンク(信販会社、消費者金融系)は審査が甘いですが、金利が高い(3-6%、物件・属性によっては7-15%)ため、収益性が低下し、投資失敗のリスクが高まります。
まずはメガバンクや地方銀行での借入を検討し、審査落ちの場合の最終手段として考えるべきです。ノンバンクで借りる場合は、収益シミュレーションを厳密に行い、高金利でも収益が出るかを確認してください。
まとめ:投資ローンの金利は比較と交渉で下げられる
投資不動産ローンの金利は、住宅ローンより高い(2025年時点で変動金利2.5%程度、固定金利3-4%程度)ですが、物件選定・自己資金増額・複数金融機関比較・交渉で下げることが可能です。
金利差1%で総支払額が約1,500万円変わるため(借入1億円、25年返済の場合)、複数の金融機関に審査を申し込み、条件を比較することが重要です。2024年以降の金利上昇リスクや、空室リスクとの二重苦にも注意が必要です。
次のアクションとして、複数の金融機関(メガバンク、地方銀行、ネット銀行)に相談し、物件の収益性を精査してください。金利上昇に耐えられる収支設計を事前に確認し、無理のない投資計画を立てましょう。
