リフォーム一体型住宅ローンとは?
中古住宅の購入と同時にリフォームを検討している方にとって、「物件購入とリフォームの資金をどう調達すればいいのか」は大きな課題です。
この記事では、リフォーム一体型住宅ローンの仕組み、メリット・デメリット、通常のリフォームローンとの違いを、住宅金融支援機構・各金融機関の公式情報を元に解説します。
※本記事は2025年時点の情報です。
中古住宅購入とリフォームを同時に進める方が、最適な資金計画を立てられるようになります。
この記事のポイント
- リフォーム一体型住宅ローンは、物件購入費用とリフォーム費用を1本のローンで借りられる商品
- 通常のリフォームローンより金利が低く(年1-2%程度)、返済期間が長い(最長35年)ため月々の返済負担が軽い
- 物件購入前にリフォーム内容を確定する必要があり、見積もり取得や工事業者選定を同時進行で進める必要がある
- 住宅ローン控除の対象となり、年末ローン残高の0.7%が最長13年間控除されるメリットがある
- フラット35リノベなど国の制度を活用すると、金利引き下げや補助金を受けられる場合がある
リフォーム一体型住宅ローンとは
仕組みと特徴
リフォーム一体型住宅ローンとは、中古住宅の購入費用とリフォーム費用を1本のローンで借りられる金融商品です。通常の住宅ローンと同じ金利・返済期間で借りられるため、リフォームローンを別途組むより有利になる場合があります。
住宅金融支援機構のフラット35では、中古住宅購入と同時にリフォームを行う場合、リフォーム費用を含めた金額で融資を受けられます。
対象となるリフォーム内容
金融機関により異なりますが、以下のリフォームが対象となる場合が多いです。
- 耐震改修: 1981年以前の旧耐震基準の建物を現行基準に適合させる工事
- バリアフリー改修: 手すり設置、段差解消、トイレ・浴室改修等
- 省エネ改修: 断熱窓への交換、外壁断熱工事等
- 間取り変更: 壁の撤去・新設、水回り移動等
- 設備更新: キッチン・浴室・トイレ等の交換
一般的には100万円以上のリフォームが対象となりますが、金融機関により下限が異なります。
リフォーム一体型住宅ローンのメリット
金利が低い(年1-2%程度)
通常のリフォームローンの金利は年2-5%程度ですが、リフォーム一体型住宅ローンは住宅ローンと同じ金利が適用されるため、年1-2%程度と低くなります。
比較例:
- リフォーム一体型住宅ローン: 年1.5%(変動金利)
- 通常のリフォームローン: 年3.0%(変動金利)
リフォーム費用500万円を10年返済する場合、金利差により総返済額が数十万円変わる可能性があります。
返済期間が長い(最長35年)
通常のリフォームローンの返済期間は10-15年程度ですが、リフォーム一体型住宅ローンは最長35年と長いため、月々の返済負担を抑えられます。
返済例(リフォーム費用500万円、金利1.5%):
- 10年返済: 月約4.5万円
- 35年返済: 月約1.5万円
返済期間を長くすると総返済額は増えますが、月々の家計負担を軽減できます。
住宅ローン控除の対象
リフォーム一体型住宅ローンは住宅ローン控除の対象となります。国税庁によると、年末ローン残高の0.7%が最長13年間控除されるため、税負担を軽減できます。
控除例(年末ローン残高3,000万円):
- 控除額: 3,000万円 × 0.7% = 21万円/年
- 13年間で最大273万円の控除
通常のリフォームローンは住宅ローン控除の対象外となる場合が多いため、大きなメリットです。
資金管理がシンプル
物件購入とリフォームを別々のローンで組むと、返済日・金利・返済期間が異なり管理が複雑になります。リフォーム一体型住宅ローンは1本のローンで完結するため、資金管理がシンプルになります。
リフォーム一体型住宅ローンのデメリット
物件購入前にリフォーム内容を確定する必要がある
リフォーム一体型住宅ローンの最大のデメリットは、物件購入前にリフォーム内容・見積もりを確定する必要がある点です。通常、物件購入後にゆっくりリフォームを検討したい方には向きません。
必要な準備:
- 物件購入の申し込みと同時にリフォーム業者を選定
- リフォーム内容を決定し、詳細な見積もりを取得
- 住宅ローン申し込み時に見積もりを提出
スケジュールがタイトになるため、物件探しと並行してリフォーム業者の候補をリストアップしておくことが重要です。
審査が厳しくなる場合がある
リフォーム費用を含めると借入総額が増えるため、年収や返済比率の基準により審査が厳しくなる場合があります。
返済比率(年間返済額÷年収×100)は一般的に35%以下が目安ですが、リフォーム費用込みでこの基準を満たす必要があります。
リフォーム業者の選択肢が限られる場合がある
金融機関によっては、提携業者からの見積もりしか受け付けない場合があります。自由に業者を選べない場合は、複数社見積もりによる比較ができず、リフォーム費用が高くなるリスクがあります。
事前に金融機関へ業者選定の自由度を確認することが重要です。
通常のリフォームローンとの比較
| 項目 | リフォーム一体型住宅ローン | 通常のリフォームローン |
|---|---|---|
| 金利 | 年1-2%程度(住宅ローン金利) | 年2-5%程度 |
| 返済期間 | 最長35年 | 10-15年程度 |
| 借入限度額 | 物件価格+リフォーム費用の合計 | 500-1,000万円程度 |
| 住宅ローン控除 | 対象 | 対象外の場合が多い |
| 審査 | 物件購入前にリフォーム内容確定が必要 | 物件購入後でも申し込み可能 |
| 担保 | 購入物件を担保に設定 | 無担保の場合が多い |
リフォーム費用が高額(500万円以上)で、物件購入前にリフォーム内容を決められる場合は、リフォーム一体型住宅ローンが有利です。
一方、物件購入後にゆっくりリフォームを検討したい場合や、少額のリフォーム(100-300万円)の場合は、通常のリフォームローンの方が柔軟性が高くなります。
フラット35リノベなど国の制度を活用する
フラット35リノベとは
住宅金融支援機構のフラット35リノベは、中古住宅購入と同時に性能向上リフォームを行う場合、金利を一定期間引き下げる制度です。
金利引き下げ幅(住宅金融支援機構による):
- フラット35S(金利Aプラン): 当初10年間、年0.25%引き下げ
- フラット35S(金利Bプラン): 当初5年間、年0.25%引き下げ
対象となるリフォーム:
- 耐震改修(旧耐震基準の建物を現行基準に適合)
- 省エネ改修(断熱等性能等級4以上)
- バリアフリー改修(高齢者等配慮対策等級3以上)
補助金制度の活用
国や自治体の補助金制度を活用すると、リフォーム費用の一部を補助してもらえる場合があります。
主な補助金:
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業: 最大250万円
- こどもエコすまい支援事業: 最大60万円
- 各自治体の耐震改修補助: 自治体により異なる
※補助金の金額・要件は自治体により大きく異なります。お住まいの自治体の公式サイトでご確認ください。
補助金は申請期限・予算上限があるため、国土交通省や自治体の公式サイトで最新情報を確認することを推奨します。
リフォーム一体型住宅ローンを利用する際の注意点
スケジュール管理が重要
物件購入とリフォームを同時進行で進めるため、スケジュール管理が重要です。以下のタイムラインを目安にしてください。
- 物件探し開始: リフォーム業者の候補もリストアップ
- 物件申し込み: 同時にリフォーム業者へ現地調査を依頼
- 住宅ローン申し込み: リフォーム見積もりを添付
- 物件引き渡し: 引き渡し後すぐにリフォーム工事開始
- リフォーム完了: 入居
物件購入から入居までの期間が長くなるため、仮住まいの費用も考慮する必要があります。
見積もりの精度を高める
住宅ローン申し込み時に提出する見積もりは、できるだけ詳細なものを取得することが重要です。後からリフォーム内容を変更すると、追加融資が受けられない場合があります。
複数のリフォーム業者から見積もりを取り、比較検討することを推奨します。
金融機関の比較
リフォーム一体型住宅ローンは金融機関により条件が異なります。以下の点を比較してください。
- 金利(変動金利・固定金利)
- リフォーム費用の上限
- リフォーム業者選定の自由度
- 審査期間
- 諸費用(事務手数料、保証料等)
複数の金融機関に相談し、最も有利な条件を提示する金融機関を選びましょう。
まとめ
リフォーム一体型住宅ローンは、中古住宅購入とリフォームを同時に進める方にとって、金利・返済期間・住宅ローン控除の面で有利な選択肢です。
物件購入前にリフォーム内容を確定する必要があるため、スケジュール管理や業者選定が重要になります。フラット35リノベや補助金制度を活用することで、さらに負担を軽減できる可能性があります。
信頼できる不動産会社・リフォーム業者・金融機関に相談しながら、最適な資金計画を立てましょう。まずは物件探しと並行して、リフォーム業者の候補をリストアップすることから始めてください。
