住宅ローン収入合算とは?妻の審査内容を徹底解説

公開日: 2025/11/11

住宅ローンの収入合算とは

住宅ローンの借入を検討する際、単独では希望額に届かない場合、配偶者の収入を合算することで借入可能額を増やすことができます。これを収入合算と呼びます。

収入合算には「連帯債務型」と「連帯保証型」の2つの方式があり、審査内容や税制上のメリットが大きく異なります。この記事では、特に妻の収入を合算する際の審査内容に焦点を当て、雇用形態別の注意点や必要書類を詳しく解説します。

住宅金融支援機構(フラット35)や金融機関の公式情報を元に、審査のポイントを正確にお伝えします。

この記事のポイント

  • 収入合算には連帯債務型と連帯保証型の2種類があり、税制上のメリット(住宅ローン控除・団信)が異なる
  • 妻の収入合算時は、合算可能な範囲(民間銀行は収入の50%まで、フラット35は全額)と信用情報(借金・延滞履歴)が審査対象
  • 雇用形態別の審査難易度は、正社員>契約社員>派遣社員>パートの順で厳しくなる
  • 産休・育休中でも育児休暇取扱通知書を提出し、復帰後の収入見込みが確認できれば合算可能な場合が多い
  • 妻の転職・離職リスクを考慮し、単独収入でも返済可能な余裕を持った借入額を設定することが重要

連帯債務型と連帯保証型の違い

収入合算を行う際、まず理解すべきは連帯債務型と連帯保証型の違いです。

項目 連帯債務型 連帯保証型
債務者 夫婦が共同で債務者 一方が債務者、もう一方が保証人
住宅ローン控除 双方が適用可能 債務者のみ適用
団信加入 双方が加入可能 債務者のみ加入
返済義務 双方が同等の返済義務 双方が同等の返済義務
対応金融機関 フラット35、一部民間銀行 多くの民間銀行

(出典: 住宅金融支援機構

連帯債務型の特徴とメリット

連帯債務型では、夫婦が共同で債務者となり、双方が住宅ローン控除・団信加入の対象となります。

例えば、借入額3000万円を夫1500万円・妻1500万円で負担する場合、それぞれが自分の負担分に応じて住宅ローン控除を受けられます。これにより、税制上のメリットが大きいのが特徴です。

ただし、連帯債務型を採用している金融機関は限られており、フラット35や一部の民間銀行(りそな銀行等)に限定されます。

連帯保証型の特徴とデメリット

連帯保証型では、一方が債務者、もう一方が保証人となります。保証人は住宅ローン控除・団信の対象外となるため、税制上のメリットは債務者のみとなります。

返済義務は連帯債務型と同様に双方が負いますが、税制面では不利になるため、できれば連帯債務型を選びたいところです。ただし、多くの民間銀行では連帯保証型のみの対応となっています。

住宅ローン控除への影響

SUUMOの解説によると、連帯債務型では双方が住宅ローン控除を受けられるため、年間数十万円の節税効果が期待できます。

一方、連帯保証型では保証人は控除を受けられないため、妻の収入が高い場合は税制上のメリットが大きく減少します。

妻の収入を合算する際の審査内容

妻の収入を合算する際、金融機関は以下の点を審査します。

合算可能な収入の範囲

合算可能な収入の範囲は、金融機関により異なります。

  • 民間銀行: 収入合算者(妻)の年収の50%まで
  • フラット35: 収入合算者の年収を全額合算可能

例えば、夫の年収が500万円、妻の年収が300万円の場合、民間銀行では500万円+150万円=650万円、フラット35では500万円+300万円=800万円として審査されます。

フラット35の公式情報によると、全額合算が可能な点が民間銀行との大きな違いです。

返済比率の審査

金融機関は、年収に占める年間返済額の割合(返済比率)を重視します。一般的に、返済比率は35%以内が審査の目安とされています。

例えば、年収650万円(夫500万円+妻150万円)の場合、年間返済額の上限は650万円×35%=227.5万円となり、月々の返済額は約19万円が目安となります。

信用情報のチェック

妻の収入を合算する場合、妻の信用情報(過去の借金・延滞履歴)も審査対象となります。

不動産会社の解説によると、過去6ヶ月以内の延滞がある場合、審査でマイナス評価となります。借金があっても返済が正常であれば審査に通る可能性はありますが、返済比率(年収の35%以内)に影響します。

妻に借金や延滞履歴がある場合は、完済または残債を減らしておくことが望ましいです。

必要書類

収入合算時には、以下の書類が必要になります。

  • 源泉徴収票(直近1-2年分)
  • 課税証明書(市区町村で取得)
  • 雇用契約書(派遣・契約社員の場合)
  • 健康保険証
  • 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード等)
  • 育児休暇取扱通知書(産休・育休中の場合)

金融機関により必要書類が異なるため、事前に確認しましょう。

妻の雇用形態別の審査ポイント

妻の雇用形態によって、審査の難易度や条件が異なります。

正社員・契約社員の場合

正社員は最も審査が通りやすく、安定収入とみなされます。勤続年数が2年以上あれば、ほとんどの金融機関で問題なく収入合算が可能です。

契約社員の場合は、更新回数や残存契約期間が重視されます。複数回更新されており、今後も更新が見込まれる場合は、正社員に準じて扱われることが多いです。

派遣社員の場合

派遣社員の場合、勤続年数が2年以上あることが目安とされています。

ファイナンシャルフィールドの解説によると、SBI新生銀行では年収200万円以上・勤続2年以上が条件、イオン銀行では勤続6ヶ月以上でも可能とされています。

金融機関により条件が大きく異なるため、複数社に相談することをおすすめします。

パート・アルバイトの場合

パート・アルバイトの場合、年収・勤続年数の条件が最も厳しくなります。

一般的に、年収200万円以上・勤続2年以上が目安とされていますが、金融機関によっては年収100万円台でも相談可能な場合があります。

イオン銀行など、パート・派遣社員に比較的柔軟な金融機関もありますので、諦めずに複数社に相談しましょう。

産休・育休中の場合

産休・育休中でも、育児休暇取扱通知書を提出し、復帰後の収入見込みが確認できれば収入合算が可能な場合が多いです。

金融機関により扱いが異なりますが、復帰予定日や職場復帰の確約を明示する必要があります。育休明けの復帰が確実であることを証明できる書類(会社からの通知書等)を用意しましょう。

収入合算時の注意点とリスク

収入合算には、いくつかの注意点とリスクがあります。

妻の転職・離職リスク

収入合算後、妻が転職・離職した場合、単独収入での返済が困難になる可能性があります。

出産・育児・介護等のライフイベントにより、妻の収入が減少または無収入になるケースは少なくありません。このため、単独収入でも返済可能な余裕を持った借入額を設定することが重要です。

返済計画の見直し

妻の収入が減少した場合、金融機関へのリスケジュール相談(返済期間の延長、返済額の減額等)が必要になる場合があります。

早めに金融機関に相談し、返済計画を見直すことで、延滞を防ぐことができます。

借り換え時の制約

収入合算後は、借り換えが制約される場合があります。当初の金融機関と長期的な関係になる可能性があるため、金利や条件を慎重に比較しましょう。

まとめ:収入合算は慎重な判断を

収入合算は、借入可能額を増やせる有効な手段ですが、妻の雇用形態・信用情報・ライフプランを総合的に考慮する必要があります。

連帯債務型と連帯保証型の違いを理解し、税制上のメリット(住宅ローン控除・団信)を最大化できる方式を選びましょう。また、金融機関ごとに条件が異なるため、複数の金融機関に相談することをおすすめします。

将来の収入変化(出産・育児・転職等)に備え、単独収入でも返済可能な余裕を持った借入額を設定することが、長期的な住宅ローン返済の成功につながります。

信頼できる金融機関やファイナンシャルプランナーに相談しながら、無理のない返済計画を立てましょう。

よくある質問

Q1パート・派遣社員でも収入合算は可能ですか?

A1可能ですが、金融機関により条件が異なります。一般的に年収200万円以上・勤続2年以上が目安とされています。イオン銀行など、勤続6ヶ月以上でも可能な金融機関もあります。派遣社員の場合、SBI新生銀行では年収200万円以上・勤続2年以上が条件です。パート・派遣社員に比較的柔軟な金融機関を複数社に相談することをおすすめします。

Q2産休・育休中でも収入合算できますか?

A2育児休暇取扱通知書を提出し、復帰後の収入見込みが確認できれば可能な場合が多いです。金融機関により扱いが異なりますが、復帰予定日や職場復帰の確約を明示する必要があります。会社からの通知書や復帰確認書類を用意し、金融機関に相談しましょう。育休明けの復帰が確実であることを証明できることが重要です。

Q3妻に過去の借金があると審査に落ちますか?

A3過去6ヶ月以内の延滞がある場合、審査でマイナス評価となります。借金があっても返済が正常であれば審査に通る可能性はありますが、返済比率(年収の35%以内)に影響します。借金の残債が多い場合、借入可能額が減少する可能性があります。完済または残債を減らしておくことが望ましいです。審査前に信用情報を確認し、問題があれば改善しておきましょう。

Q4収入合算後、妻が離職したらどうなりますか?

A4離職しても返済義務は継続します。単独収入での返済が困難な場合、金融機関へのリスケジュール相談(返済期間の延長、返済額の減額等)を検討する必要があります。延滞を防ぐため、早めに金融機関に相談することが重要です。将来の収入変化を見据え、単独収入でも返済可能な余裕を持った借入額を設定することをおすすめします。

Q5連帯保証型では妻は住宅ローン控除を受けられませんか?

A5連帯保証型では保証人は住宅ローン控除の対象外です。控除を受けるには連帯債務型を選ぶ必要があります。ただし、連帯債務型では妻も団信加入が求められ、健康状態によっては加入できない場合もあります。税制メリットと保険のバランスを考慮し、フラット35や連帯債務型を採用している民間銀行(りそな銀行等)に相談することをおすすめします。