司法書士への相続登記費用の相場と内訳を解説

公開日: 2025/10/26

司法書士に相続登記を依頼する費用はいくら?

親が亡くなり不動産を相続した際、相続登記の手続きが必要ですが、「司法書士に依頼するといくらかかるのか」と不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、司法書士の相続登記費用の内訳、相場、自分で手続きする場合との比較を、法務省日本司法書士会連合会の公式情報を元に解説します(2025年時点の情報に基づく)。

2024年4月から相続登記が義務化されたため、早期の手続きが重要です。費用相場を理解し、適切な選択ができるようになります。

この記事のポイント

  • 司法書士の相続登記費用は総額10〜15万円が相場
  • 費用内訳は「報酬(5〜10万円)」「登録免許税(固定資産評価額の0.4%)」「書類取得費用(数千円)」
  • 2024年4月から相続登記が義務化(3年以内に登記しないと過料10万円)
  • 自分で手続きすると報酬部分(5〜10万円)を節約可能だが、手間と時間がかかる
  • 複数の司法書士に見積もりを依頼して比較することを推奨

司法書士の相続登記費用の内訳

司法書士に相続登記を依頼する場合、以下の費用が発生します。

報酬(5〜10万円)

司法書士の報酬は、相続登記の手続き代行費用です。一般的な司法書士事務所では5〜10万円程度が相場で、以下の要素により変動します。

  • 不動産の数(1件増えるごとに1〜2万円加算)
  • 相続人の数(多いほど書類が増え、費用が上がる)
  • 遺産分割協議書の作成(別途2〜5万円)
  • 戸籍謄本等の収集代行(別途1〜3万円)

日本司法書士会連合会によると、報酬は司法書士により異なるため、複数の司法書士に見積もりを依頼して比較することを推奨します。

登録免許税(固定資産評価額の0.4%)

登録免許税は、相続登記を申請する際に法務局に支払う税金です。固定資産評価額の0.4%が課税されます。

計算例:

  • 固定資産評価額2,000万円の不動産 → 2,000万円×0.4%=8万円
  • 固定資産評価額3,000万円の不動産 → 3,000万円×0.4%=12万円

固定資産評価額は、市区町村から送付される固定資産税課税明細書で確認できます。

書類取得費用(数千円)

相続登記に必要な書類(戸籍謄本、住民票、固定資産評価証明書等)の取得費用です。

書類名 取得費用 取得先
戸籍謄本 450円/通 本籍地の市区町村役場
除籍謄本 750円/通 本籍地の市区町村役場
住民票 300〜400円/通 住所地の市区町村役場
固定資産評価証明書 300〜400円/通 不動産所在地の市区町村役場
印鑑証明書 300〜400円/通 住所地の市区町村役場

相続人が多い場合、戸籍謄本等の取得費用が数千円〜1万円程度かかります。

司法書士の相続登記費用の相場

司法書士の相続登記費用の総額は、以下のケース別に異なります。

ケース別の費用相場

ケース1:単独相続(相続人1人、不動産1件)

  • 司法書士報酬: 5〜7万円
  • 登録免許税: 8万円(固定資産評価額2,000万円の場合)
  • 書類取得費用: 3,000円
  • 総額: 13.3〜15.3万円

ケース2:遺産分割協議(相続人3人、不動産1件)

  • 司法書士報酬: 7〜10万円(遺産分割協議書作成含む)
  • 登録免許税: 8万円(固定資産評価額2,000万円の場合)
  • 書類取得費用: 5,000円
  • 総額: 15.5〜18.5万円

ケース3:複数不動産(相続人1人、不動産3件)

  • 司法書士報酬: 9〜12万円(不動産1件増えるごとに2万円加算)
  • 登録免許税: 24万円(固定資産評価額6,000万円の場合)
  • 書類取得費用: 3,000円
  • 総額: 33.3〜36.3万円

費用が高くなる要因

以下の要因により、費用が相場より高くなる場合があります。

  • 不動産の数が多い(3件以上)
  • 相続人が多い(5人以上)
  • 戸籍謄本が遠方にある(郵送取得の手間)
  • 遺産分割協議がまとまっていない(協議のサポートが必要)
  • 相続放棄をする相続人がいる(別途手続きが必要)

自分で相続登記をする場合との費用比較

自分で相続登記をする場合、司法書士報酬(5〜10万円)を節約できます。

自分で手続きする場合の費用

  • 登録免許税: 8万円(固定資産評価額2,000万円の場合)
  • 書類取得費用: 3,000円
  • 総額: 8.3万円

司法書士に依頼する場合(13.3〜15.3万円)と比較すると、5〜7万円の節約になります。

自分で手続きするメリット・デメリット

メリット:

  • 司法書士報酬(5〜10万円)を節約できる

デメリット:

  • 手間と時間がかかる(戸籍謄本の収集、遺産分割協議書の作成、登記申請書の作成等)
  • 書類の不備があると、法務局から補正指示を受けて再提出が必要
  • 遺産分割協議書の作成ミスがあると、登記できない・後でトラブルになる可能性

推奨ケース:

  • 単独相続(相続人1人)で不動産1件の場合 → 自分で手続き可能
  • 遺産分割協議が必要な場合(相続人2人以上) → 司法書士に依頼を推奨

司法書士の選び方と依頼時の注意点

司法書士を選ぶ際のポイントと、依頼時の注意点を説明します。

複数の司法書士に見積もりを依頼

司法書士の報酬は自由価格のため、司法書士により異なります。複数の司法書士に見積もりを依頼し、費用・サービス内容を比較することを推奨します。

見積もり依頼時に、以下の情報を伝えると正確な見積もりを得られます。

  • 不動産の数・所在地
  • 相続人の数
  • 遺産分割協議の有無
  • 戸籍謄本等の書類を自分で取得するか、司法書士に依頼するか

報酬の内訳を確認

見積もりを受け取ったら、報酬の内訳を確認してください。以下の項目が明記されているか確認しましょう。

  • 相続登記の報酬
  • 遺産分割協議書作成費用(別途の場合)
  • 戸籍謄本等の収集代行費用(別途の場合)
  • 登録免許税・書類取得費用(実費)

「総額〇〇万円」という表示だけでなく、内訳が明記されている見積もりを選ぶことを推奨します。

相続登記に詳しい司法書士を選ぶ

司法書士の専門分野は多岐にわたります。相続登記に詳しい司法書士を選ぶことで、スムーズに手続きが進みます。

日本司法書士会連合会の公式サイトで、相続登記に詳しい司法書士を検索できます。

説明が丁寧な司法書士を選ぶ

初回相談時に、手続きの流れ・費用・必要書類等を丁寧に説明してくれる司法書士を選ぶことを推奨します。

説明が不十分な司法書士は、後でトラブルになる可能性があります。初回相談は無料の司法書士も多いため、複数の司法書士に相談して比較してください。

相続登記の義務化について

2024年4月から相続登記が義務化されました。

3年以内に登記しないと過料10万円

法務省によると、相続を知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

また、登記しないと不動産を売却できず、固定資産税の支払い義務も続きます。早期の手続きが重要です。

義務化の背景

相続登記が義務化された背景には、相続登記がされずに所有者不明土地が増加している問題があります。所有者不明土地は公共事業の妨げになるため、政府が相続登記を義務化しました。

義務化後の対応

相続を知ったら、速やかに相続登記の手続きを進めることが重要です。自分で手続きが難しい場合、司法書士に依頼することを推奨します。

まとめ:司法書士の相続登記費用を理解しよう

司法書士の相続登記費用は、総額10〜15万円が相場です。費用内訳は「報酬(5〜10万円)」「登録免許税(固定資産評価額の0.4%)」「書類取得費用(数千円)」です。

2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内に登記しないと過料10万円が科される可能性があります。早期の手続きが重要です。

複数の司法書士に見積もりを依頼し、費用・サービス内容を比較することを推奨します。単独相続で不動産1件の場合は自分で手続き可能ですが、遺産分割協議が必要な場合は司法書士に依頼することを推奨します。

よくある質問

Q1司法書士の報酬は値引き交渉できますか?

A1交渉可能です。司法書士の報酬は自由価格のため、複数の司法書士に見積もりを依頼し、比較することで値引き交渉の余地があります。ただし、報酬が極端に安い場合、サービス内容が不十分な可能性があるため注意してください。報酬だけでなく、サービス内容・説明の丁寧さ等を総合的に比較して選ぶことを推奨します。

Q2登録免許税は司法書士に支払うのですか?

A2司法書士が代わりに法務局に支払います。登録免許税は法務局に支払う税金ですが、司法書士に依頼する場合、司法書士が登記申請時に代わりに支払います。そのため、依頼者は司法書士に登録免許税を預ける形になります。領収書は登記完了後に司法書士から受け取れます。

Q3相続登記の手続き期間はどれくらいですか?

A3司法書士に依頼する場合、1〜2ヶ月程度が目安です。書類収集(戸籍謄本等)に1〜2週間、遺産分割協議書の作成に1〜2週間、登記申請後に法務局の審査に1〜2週間かかります。相続人が多い場合や書類が遠方にある場合、さらに時間がかかる可能性があります。自分で手続きする場合、書類の不備があると補正指示を受けて再提出が必要になり、さらに時間がかかります。

Q4相続放棄をした場合、相続登記は必要ですか?

A4相続放棄をした場合、その相続人は相続登記の義務がありません。相続放棄は家庭裁判所に申述し、受理されると初めから相続人でなかったことになります。ただし、他の相続人が相続登記をする必要があります。相続放棄をした相続人は、相続放棄申述受理証明書を取得し、他の相続人に渡すことで、相続登記がスムーズに進みます。

Q5遺産分割協議書は自分で作成できますか?

A5作成できますが、法的要件を満たす必要があります。遺産分割協議書は相続人全員の合意内容を記載し、全員が実印を押印、印鑑証明書を添付する必要があります。書式はインターネットで入手可能ですが、記載漏れ・記載ミスがあると登記できない・後でトラブルになる可能性があります。単独相続の場合は協議書不要ですが、遺産分割協議が必要な場合(相続人2人以上)は司法書士に作成を依頼することを推奨します。