相続登記費用の司法書士報酬はいくら?費用相場と自分でやる場合との比較

公開日: 2025/10/27

相続登記の司法書士費用とは何か

相続が発生し、不動産の名義変更が必要になった際、「司法書士に依頼するといくらかかるのか」「自分でやった方が安いのか」と悩まれる方は多くいらっしゃいます。

この記事では、相続登記を司法書士に依頼する場合の費用相場、費用の内訳、自分で申請する場合との比較を、法務省日本司法書士会連合会の公式情報を元に解説します。

相続登記の費用全体像を理解し、自分に合った選択ができるようになります。

この記事のポイント

  • 相続登記の費用は「司法書士報酬」と「登録免許税等の実費」に大別される
  • 司法書士報酬の相場は6-15万円程度で、不動産数・評価額・相続人数により変動
  • 登録免許税は固定資産税評価額の0.4%(相続の場合)
  • 自分で申請すれば司法書士報酬を節約できるが、複雑なケースではリスクがある
  • 2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内の申請が必要(過料10万円)

司法書士報酬の相場と内訳

司法書士に相続登記を依頼する場合、報酬は事務所により異なりますが、一定の相場があります。

標準的な報酬相場(6-15万円)

日本司法書士会連合会の調査によると、相続登記の司法書士報酬は標準的なケースで6-15万円程度です。

報酬額は以下の要因により変動します。

要因 影響
不動産の数 1物件目は基本報酬、2物件目以降は1-3万円/件の加算
不動産の評価額 高額物件は報酬が上がる傾向(評価額1億円超等)
相続人の数 相続人が多いと戸籍収集・書類作成の手間が増える
遺産分割協議の有無 遺産分割協議書の作成が必要な場合は3-5万円追加
管轄法務局の数 複数の法務局に申請する場合は追加費用

最もシンプルなケース(不動産1件、相続人2-3名、法定相続分での登記)であれば、6-10万円程度が相場です。

報酬に含まれる業務内容

司法書士報酬には、以下の業務が含まれるのが一般的です。

  • 相続関係の調査: 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍の収集(出生から死亡まで)
  • 書類作成: 登記申請書・遺産分割協議書・相続関係説明図の作成
  • 登記申請: 法務局への申請書類の提出、登記完了後の権利証の受領
  • 相談対応: 相続登記の手続き全般に関する相談

戸籍謄本等の取得実費(1通450-750円)や登録免許税は、報酬とは別に実費として請求されます。

報酬が変動する要因

以下のようなケースでは、報酬が相場より高くなる可能性があります。

  • 不動産が複数ある: 2物件目以降は1-3万円/件の加算が一般的
  • 相続人が多数: 5名以上の場合、戸籍収集や書類作成の手間が増える
  • 遺産分割協議が必要: 遺産分割協議書の作成で3-5万円追加
  • 数次相続: 相続人が既に死亡し、さらに相続が発生している場合(追加調査が必要)
  • 管轄法務局が複数: 東京と大阪に不動産がある等、複数の法務局に申請する場合

報酬の見積もりを取る際は、不動産の数・評価額・相続人の数を正確に伝えることが重要です。

登録免許税の計算方法

相続登記には、司法書士報酬とは別に、国に納める登録免許税がかかります。

登録免許税の税率(0.4%)

相続登記の登録免許税は、固定資産税評価額の0.4%です。法定相続人以外への遺贈の場合は2.0%となります。

計算式:

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%

:

  • 評価額1000万円の土地: 1000万円 × 0.4% = 4万円
  • 評価額3000万円の土地・建物: 3000万円 × 0.4% = 12万円

登録免許税は100円未満切り捨てとなります。

固定資産税評価額の確認方法

固定資産税評価額は、以下の方法で確認できます。

  1. 固定資産税納税通知書: 毎年4-6月に市区町村から送付される通知書に記載
  2. 固定資産税評価証明書: 市区町村役場の固定資産課税台帳で取得(手数料300円程度)
  3. 名寄帳: 被相続人が所有する不動産の一覧(市区町村で取得可能)

相続登記では、申請する年度の評価額を使用します。評価額は3年ごとに見直されるため、相続発生時と登記申請時で金額が異なる場合があります。

免税措置と軽減制度

一部のケースでは、登録免許税が免除される特例があります。

  • 相続登記の免税措置(2025年3月31日まで延長):
    • 評価額100万円以下の土地の相続登記
    • 相続人が相続登記をする前に死亡した場合の登記(数次相続)

免税措置の適用を受けるには、登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第1項(または第2項)により非課税」と記載する必要があります。

詳細は法務省の公式サイトでご確認ください。

自分で申請する場合との費用比較

相続登記は自分で申請することも可能です。司法書士に依頼する場合と比較して、費用とリスクを理解しましょう。

自分で申請した場合の費用

自分で相続登記を申請する場合、司法書士報酬がかからないため、費用は実費のみです。

項目 金額
登録免許税 固定資産税評価額 × 0.4%
戸籍謄本等の取得費 1通450-750円 × 必要枚数(5-10通程度)
固定資産税評価証明書 300円程度
郵送費・交通費 数千円
合計 登録免許税 + 5,000-10,000円程度

司法書士に依頼する場合と比較して、6-15万円程度を節約できます。

司法書士に依頼するメリット

司法書士に依頼することで、以下のメリットがあります。

  • 手続きの確実性: 書類不備や記載ミスを防げる
  • 時間の節約: 戸籍収集・書類作成・法務局への出頭を代行してもらえる
  • 複雑なケースへの対応: 遺産分割協議・数次相続等の複雑なケースも適切に処理
  • 法的リスクの回避: 登記内容の誤りによる後のトラブルを防げる

特に、以下のようなケースでは司法書士への依頼が推奨されます。

  • 不動産が複数ある
  • 相続人が多数(5名以上)
  • 遺産分割協議が必要
  • 数次相続(相続人が既に死亡)
  • 相続人の中に未成年者・認知症の方がいる

自分でやる場合のリスク

自分で相続登記を申請する場合、以下のリスクがあります。

  • 書類不備: 戸籍謄本の取得漏れ、登記申請書の記載ミス等で補正が必要
  • 時間と手間: 戸籍収集(本籍地が遠方の場合は郵送)、法務局への出頭(平日のみ)が必要
  • 登記内容の誤り: 登記後に誤りが発覚した場合、更正登記が必要(追加費用)

単純なケース(不動産1件、相続人2-3名、法定相続分での登記)であれば、自分で申請することも十分に可能です。ただし、複雑なケースでは専門家への依頼が安全です。

費用を抑えるポイント

司法書士に依頼する場合でも、費用を抑える方法があります。

複数の司法書士事務所で見積もりを取る

司法書士報酬は2003年に報酬規定が撤廃され、各事務所が自由に設定しています。そのため、同じ内容でも事務所により報酬が大きく異なることがあります。

以下の観点で3社以上の見積もりを取り、比較することをおすすめします。

  • 基本報酬: 不動産1件あたりの基本報酬
  • 追加費用: 2件目以降の追加費用、遺産分割協議書作成費用
  • 書類取得費用: 戸籍謄本等の取得を依頼する場合の費用
  • 支払条件: 着手金・成功報酬の有無

見積もりを取る際は、不動産の数・評価額・相続人の数を正確に伝えることが重要です。

書類を事前に揃える

戸籍謄本・住民票等の書類を自分で取得すれば、司法書士の書類取得代行費用を節約できます。

  • 戸籍謄本: 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍
  • 相続人の戸籍謄本: 相続人全員の現在戸籍
  • 住民票: 被相続人の除票、相続人全員の住民票
  • 固定資産税評価証明書: 市区町村役場で取得

ただし、戸籍の取得漏れがあると登記ができないため、不安な場合は司法書士に依頼する方が確実です。

法定相続情報一覧図を活用する

法定相続情報一覧図は、法務局が認証する相続関係を一覧にした書類です。一度作成すれば、相続登記以外の手続き(銀行口座の解約・証券口座の名義変更等)でも使い回せるため、効率的です。

法定相続情報一覧図の作成は、法務局に無料で申請できます。司法書士に依頼する場合は、3-5万円程度の費用がかかります。

自分で作成すれば費用を節約できますが、戸籍謄本の収集や一覧図の作成には専門知識が必要です。

相続登記義務化の重要ポイント

2024年4月から相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内の申請が必要になりました。

3年以内の申請義務

法務省の発表によると、2024年4月1日以降、相続登記は以下の期限内に申請することが義務化されました。

  • 期限: 相続を知った日から3年以内
  • 対象: 2024年4月1日以前の相続も対象(施行日から3年、つまり2027年3月31日までに申請)

期限内に申請しないと、過料(罰金)が科される可能性があります。

過料10万円のペナルティ

正当な理由なく相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科されます。

正当な理由として認められる可能性があるケース:

  • 相続人が多数で戸籍収集に時間がかかる
  • 遺産分割協議が難航している
  • 相続人の中に所在不明者がいる

ただし、正当な理由があっても、できるだけ早く申請することが推奨されます。

相続人申告登記による暫定対応

遺産分割協議が3年以内に完了しない場合、「相続人申告登記」という簡易な手続きで義務を履行できます。

相続人申告登記は、「自分が相続人である」ことを法務局に申告する手続きです。遺産分割協議が完了した後、改めて正式な相続登記を行います。

相続人申告登記の申請は無料で、必要書類も最小限(被相続人の死亡を証明する戸籍謄本、申告人の戸籍謄本)です。

まとめ:司法書士に依頼すべきケースとは

相続登記の司法書士費用は、報酬6-15万円と登録免許税(評価額の0.4%)を合わせて、総額10-20万円程度が目安です。

単純なケース(不動産1件、相続人2-3名、法定相続分での登記)であれば、自分で申請することも可能です。ただし、複雑なケース(不動産が複数、相続人が多数、遺産分割協議が必要)では、司法書士への依頼が安全です。

2024年4月から相続登記が義務化され、3年以内の申請が必要になりました。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科されるため、早めの対応が重要です。

複数の司法書士事務所で見積もりを取り、自分に合った事務所を選びましょう。信頼できる専門家に相談しながら、適切に相続登記を進めてください。

よくある質問

Q1司法書士報酬に消費税はかかりますか?

A1司法書士報酬には消費税(10%)がかかります。例えば、報酬6万円の場合、消費税6,000円が加算され、総額6万6,000円となります。見積もりを取る際は、税込・税抜のどちらで表示されているかを必ず確認しましょう。登録免許税や書類取得費用(戸籍謄本等)には消費税はかかりません。

Q2相続登記を放置していた場合の過料はいつから適用されますか?

A22024年4月1日以前の相続も過料の対象となります。ただし、2024年4月1日以前の相続については、施行日から3年以内(2027年3月31日まで)に申請すれば過料は科されません。それ以降は、正当な理由なく申請しない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。早めの対応をおすすめします。

Q3不動産が複数ある場合、報酬はどれくらい増えますか?

A31物件目は基本報酬6-10万円、2物件目以降は1物件あたり1-3万円の加算が一般的です。ただし、管轄法務局が異なる場合(例:東京と大阪に不動産がある)、各法務局への申請が必要となるため、追加費用が高くなる傾向があります。不動産が3件以上ある場合は、見積もり時に正確な件数を伝えることが重要です。

Q4遺産分割協議書の作成も司法書士に依頼できますか?

A4遺産分割協議書の作成も司法書士に依頼できます。相続登記とセットで依頼する場合、追加費用は3-5万円程度が相場です。単独で依頼するより割安になるケースが多いため、相続登記と同時に依頼することをおすすめします。遺産分割協議書は相続人全員の署名・押印(実印)と印鑑証明書が必要です。