勤続年数1年未満でも住宅ローンは組めるのか?
転職直後や就職して間もない時期に住宅購入を検討する際、「勤続年数が短いと住宅ローン審査に通らないのでは」と不安に感じる方は少なくありません。実際、多くの金融機関は勤続年数2-3年以上を審査基準としていますが、勤続年数1年未満でも審査を通過できるケースは存在します。
この記事では、勤続年数1年未満でも住宅ローンを組む方法、対応可能な金融機関の特徴、審査通過のコツを解説します。国土交通省の民間住宅ローンの実態に関する調査などの公式データを元に、具体的な対策を提示します。
この記事のポイント
- 一般的な金融機関は勤続年数2-3年以上を基準とするが、フラット35は明確な基準なし
- 勤続年数1年未満でも、年収が高い、頭金が多い、転職で年収アップした場合は審査通過の可能性あり
- フラット35取扱機関、一部のネット銀行、信用金庫が対応可能な金融機関の候補
- 審査通過のコツは、勤続年数以外の審査項目(年収、信用情報、物件評価等)を強化すること
- 転職理由を明確に説明し、源泉徴収票・給与明細を準備することが重要
一般的な勤続年数の基準
住宅ローン審査で勤続年数がどれくらい重視されているのかを見ていきましょう。
金融機関の95.3%が勤続年数を重視
国土交通省の民間住宅ローンの実態に関する調査(令和2年度、最新の公表データ)によると、金融機関の95.3%が勤続年数を審査項目として考慮しています。これは、勤続年数が収入の安定性を測る重要な指標とされているためです。
過半数の金融機関が「1年以上」を基準としていますが、メガバンクや地方銀行の多くは「2-3年以上」を目安としています。勤続年数が短いと、「収入が不安定」「転職リスクが高い」と判断され、審査で不利になる可能性があります。
メガバンク・地銀は2-3年以上が目安
一般的な金融機関の勤続年数基準は以下の通りです:
| 金融機関タイプ | 勤続年数基準 | 備考 |
|---|---|---|
| メガバンク | 2-3年以上 | 審査基準が厳しめ |
| 地方銀行 | 2-3年以上 | 地域により異なる |
| ネット銀行 | 1年以上(一部は1年未満でも可) | 柔軟な審査が特徴 |
| フラット35 | 明確な基準なし | 勤続年数1年未満でも申込可能 |
| 信用金庫・信用組合 | 1-2年以上 | 地域密着型で柔軟 |
勤続年数が2-3年未満の場合、選択肢が限られるため、対応可能な金融機関を重点的に検討する必要があります。
勤続年数1年未満でも審査通過できるケース
勤続年数が1年未満でも、以下の条件を満たせば審査通過の可能性が高まります。
フラット35を利用
住宅金融支援機構のフラット35は、勤続年数の明確な基準がありません。そのため、勤続年数1年未満でも申込可能です。ただし、勤続年数が短い場合、直近数ヶ月の給与明細から年収を推定する「割り戻し」計算が行われ、実際の年収より低く算出される可能性があります。
2025年時点で、フラット35は全期間固定金利のため、変動金利より金利が高めですが、金利上昇リスクがなく、返済額が確定する点がメリットです。
年収が高い
年収が高いと、勤続年数が短くても返済能力が認められやすくなります。一般的に、返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)が25%以内であれば、審査に有利です。
例えば、年収600万円で月返済額10万円(年間120万円)の場合、返済負担率は20%となり、無理のない水準と判断されます。
頭金が多い
頭金を物件価格の20%以上(一般的な目安)入れると、借入額が減るため、金融機関のリスクが下がります。LTV(Loan To Value:物件の担保評価額に対する融資額の割合)が低くなり、審査で有利になります。
頭金を多く入れることで、「返済意欲が高い」「資金管理能力がある」と評価され、勤続年数の短さを補える場合があります。
転職で年収アップ
キャリアアップ転職で年収が上がった場合、「収入が増加傾向にある」と評価され、審査で有利になることがあります。転職前後の源泉徴収票を提出し、年収アップを証明することが重要です。
同業種への転職
同じ業種・職種への転職であれば、「専門性が高く、安定した収入が見込める」と判断されやすくなります。異業種への転職の場合、収入の不安定性を懸念される可能性があるため、転職理由を明確に説明することが重要です。
勤続年数1年未満でも対応可能な金融機関
勤続年数1年未満でも審査を受け付けている金融機関の特徴を見ていきましょう。
フラット35取扱機関
フラット35は、住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利の住宅ローンです。勤続年数の明確な基準がないため、1年未満でも申込可能です。全国の銀行・信用金庫・モーゲージバンク等で取り扱っています。
ネット銀行の一部
一部のネット銀行(auじぶん銀行、住信SBIネット銀行等、2025年時点)は、勤続年数1年未満でも審査を受け付けています。ただし、審査基準は変更される場合があるため、各銀行の公式サイトで最新情報を確認してください。また、年収・信用情報等の他の審査項目が厳しくなる傾向があります。
各銀行の公式サイトで審査基準を確認し、事前審査を申し込むことをおすすめします。
信用金庫・信用組合
地域密着型の信用金庫・信用組合は、柔軟な審査を行う場合があります(ただし、地域や機関により審査基準は異なります)。勤続年数が短くても、地元での長期居住実績や取引実績があれば、審査で考慮される可能性があります。
審査通過のコツ
勤続年数1年未満で住宅ローン審査を通過するための具体的なコツを紹介します。
勤続年数以外の審査項目を強化
住宅ローン審査では、勤続年数以外にも以下の項目が重視されます:
- 年収: 返済負担率25%以内を目安に
- 信用情報: クレジットカードやローンの滞納がないこと
- 物件評価: 担保価値が高い物件を選ぶ
- 頭金: 物件価格の20%以上を目安に
- 他の借入: 車ローンやカードローンを完済または減額
これらの項目を強化することで、勤続年数の短さを補えます。
転職理由を明確に説明
金融機関は「なぜ転職したのか」を重視します。以下のような理由は評価されやすい傾向があります:
- キャリアアップ・年収アップのため
- 専門性を活かすため
- ライフプランの変化(結婚、出産等)に対応するため
一方、「人間関係のトラブル」「会社都合の退職」等のネガティブな理由は、審査で不利になる可能性があります。転職理由を前向きに説明できるよう準備しましょう。
源泉徴収票・給与明細の準備
勤続年数1年未満の場合、以下の書類の提出を求められます:
- 直近3-6ヶ月分の給与明細: 月々の収入を証明
- 転職前の源泉徴収票: 前職の年収を証明
- 雇用契約書: 現職の雇用条件を証明
これらの書類を事前に準備し、年収の安定性をアピールすることが重要です。
共同名義・ペアローンの検討
配偶者と共同名義でローンを組む、またはペアローンを活用することで、世帯年収が増え、審査に有利になります。ただし、片方が退職すると返済が厳しくなるリスクがあるため、将来のライフプランを考慮してください。
まとめ:勤続年数1年未満でも諦めない
勤続年数1年未満でも、フラット35や一部のネット銀行、信用金庫などで住宅ローンを組める可能性があります。一般的な金融機関は2-3年以上を基準としますが、年収が高い、頭金が多い、転職で年収アップした場合は審査通過の可能性が高まります。
審査通過のコツは、勤続年数以外の審査項目(年収、信用情報、物件評価等)を強化し、転職理由を明確に説明することです。源泉徴収票・給与明細を準備し、複数の金融機関に事前審査を申し込むことをおすすめします。
次のアクションとして、フラット35取扱機関や対応可能なネット銀行の公式サイトで審査基準を確認し、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談して最適な金融機関を選びましょう。諦めずに準備を進めれば、住宅購入の夢を実現できます。
