派遣社員でも住宅ローンは組める?審査のポイントと対策

公開日: 2025/11/11

派遣社員でも住宅ローンは組める?

派遣社員として働く方にとって、「派遣社員では住宅ローンが組めない」という思い込みは根強いものです。正社員と比べて雇用が不安定であるため、住宅購入を諦めている方も少なくありません。

結論から言えば、派遣社員でも住宅ローンは組めます。ただし、正社員より審査基準が厳しく、勤続年数(3年以上推奨)、収入の安定性、返済負担率(20%以下推奨)が重視されます。

本記事では、住宅金融支援機構金融庁の公式情報、国土交通省の調査データを元に、派遣社員が住宅ローンを組むための条件と対策を解説します。

この記事のポイント

  • 派遣社員でも住宅ローンは組める(全金融機関の約60%が受入)
  • 正社員より審査は厳しく、勤続年数3年以上・年収300万円以上・返済負担率20%以下が目安
  • フラット35は雇用形態を問わず審査対象となり、派遣社員が利用しやすい
  • 対策として、頭金を物件価格の20%以上用意、収入合算の活用が有効
  • 派遣の3年ルール(同一職場で3年まで)があるため、派遣元企業での勤続年数が重要

派遣社員でも住宅ローンは組める?金融機関の受入状況

金融機関の約60%が派遣社員を受入

リクルート金融情報サイトが国土交通省調査を引用したデータによると、全金融機関の約60%が派遣社員を住宅ローン審査の対象としています。「派遣社員では絶対に組めない」という思い込みは誤りで、実際には多くの金融機関が受け入れています。

特に、住宅金融支援機構が提供するフラット35は、雇用形態を問わず、勤続2年以上・継続雇用の実績があれば審査対象となります。正社員と同じ条件で審査を受けられるため、派遣社員にとって利用しやすい選択肢です。

正社員より審査は厳しい

ただし、審査基準は正社員より厳しいというのが実態です。金融機関は「返済能力の継続性」を重視するため、雇用形態が不安定な派遣社員には、より厳格な基準を適用します。

金融庁の2025年1月最新データでは、住宅ローン市場で金利上昇傾向が見られ、変動金利を選択する借入者が増加しています。このような市場環境では、審査がさらに慎重になる可能性があります。

派遣社員の住宅ローン審査のポイント

派遣社員が住宅ローン審査で重視される項目は、主に以下の3つです。

勤続年数(3年以上推奨)

国土交通省の住宅市場動向調査によると、金融機関の95.3%が勤続年数を審査項目として重視しており、大半が1年以上を要件としています。しかし、派遣社員の場合は3年以上の勤続年数が審査通過の目安となります。

これには、労働者派遣法の「3年ルール」が関係しています。派遣社員は原則として同一組織・部署で3年を超えて働けないため、勤続年数が短くなりがちです。ただし、派遣元企業での勤続年数が評価されるため、派遣元を変えずに就業先を変えることで、勤続年数を維持できます。

例えば、A社(派遣元)に登録して、X社→Y社→Z社と就業先を変えても、A社での勤続年数は通算されます。これにより、3年以上の勤続実績を積むことが可能です。

収入の安定性と年収要件

年収要件は、最低300万円が目安です。一部金融機関では200万円以上でも審査対象となりますが、200万円台では借入可能額が少なく、希望する物件が購入できない可能性があります。

派遣社員の場合、月給制か時給制かによっても評価が異なります。月給制の方が安定していると評価されやすく、時給制の場合は過去1-2年の収入実績(源泉徴収票)で安定性を証明する必要があります。

返済負担率(20%以下推奨)

返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合です。フラット35の基準では、年収400万円未満で30%、400万円以上で35%が上限ですが、派遣社員は20%以下が推奨されます。

正社員の場合、返済負担率30-35%でも審査に通る可能性がありますが、派遣社員は雇用の不安定性を考慮して、より低い返済負担率が求められます。

例: 年収300万円の派遣社員の場合

返済負担率 年間返済額 月返済額 借入可能額(35年・2025年1月時点の金利1.5%を仮定)
20% 60万円 5万円 約1,800万円
30% 90万円 7.5万円 約2,700万円

正社員なら返済負担率30%で約2,700万円借りられる可能性がありますが、派遣社員は20%の約1,800万円が現実的な目安となります。

審査に通るための対策

派遣社員が住宅ローン審査に通るためには、以下の3つの対策が有効です。

頭金を増やす(物件価格の20%以上推奨)

頭金を多く入れることで、借入額を減らし、審査通過率を上げられます。物件価格の20%以上を頭金として用意することが推奨されます。

例えば、3,000万円の物件を購入する場合:

  • 頭金10%(300万円): 借入額2,700万円
  • 頭金20%(600万円): 借入額2,400万円

頭金が多いほど、借入額が減り、返済負担率が下がります。金融機関にとって貸し倒れリスクが低くなるため、審査で有利になります。

収入合算の活用

夫婦・親子等の収入を合算して借入額を増やす方法です。派遣社員単独では借入額が少ない場合に有効ですが、両者が債務者・連帯保証人となるため、返済義務を共有する点に注意が必要です。

例えば、夫が派遣社員で年収300万円、妻が正社員で年収400万円の場合、合算年収700万円として審査を受けられます。ただし、妻も連帯保証人となり、夫が返済できなくなった場合は妻に返済義務が発生します。

フラット35の活用

フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携した全期間固定金利の住宅ローンです。雇用形態を問わず、勤続2年以上・継続雇用の実績があれば審査対象となります。

フラット35のメリット:

  • 雇用形態を問わず審査対象
  • 全期間固定金利で将来の返済計画が立てやすい
  • 団体信用生命保険(団信)が任意加入(未加入でも借入可能)

注意点:

  • 団信未加入の場合、債務者が死亡・高度障害時に残債が残る
  • 別途生命保険の加入を検討する必要がある
  • 金利は変動金利より高め(2025年1月時点で1.5-2.0%程度)

正社員登用前提の派遣でも、「登用予定」では審査に不利です。金融機関は現時点の雇用形態を重視するため、実際に正社員登用された後に申込む方が審査通過率が高く、有利な金利条件を得られる可能性があります。

派遣社員が利用しやすい金融機関

派遣社員が利用可能な具体的金融機関を比較します。

フラット35(最も利用しやすい)

特徴:

  • 雇用形態を問わず、勤続2年以上で審査対象
  • 全期間固定金利(住宅金融支援機構の公式サイトによると、2025年1月時点で1.5-2.0%程度)
  • 団信が任意加入

向いている人:

  • 派遣社員として3年以上勤続している
  • 将来の金利上昇リスクを避けたい
  • 団信に加入できない健康上の理由がある

その他の金融機関(ソニー銀行、auじぶん銀行等)

ソニー銀行:

  • 派遣社員も審査対象だが、勤続年数や年収要件が厳しい場合あり
  • 変動金利が低め(各銀行公式サイトによると、2025年1月時点で0.4-0.6%程度)

auじぶん銀行:

  • ネット銀行で審査基準が比較的緩やか
  • 変動金利が低め(各銀行公式サイトによると、2025年1月時点で0.3-0.5%程度)

地方銀行・信用金庫:

  • 地域密着型で柔軟な審査をする場合あり
  • 対面相談で個別事情を考慮してもらえる可能性

重要: 複数の金融機関に相談し、条件を比較することが重要です。特定の金融機関を一方的に推奨するのではなく、読者が自分の状況に合った選択肢を見つけられるよう、公平に比較してください。

まとめ

派遣社員でも住宅ローンは組めますが、正社員より審査基準が厳しいというのが実態です。審査のポイントは、①勤続年数3年以上、②年収300万円以上、③返済負担率20%以下です。

審査に通るための対策:

  • 頭金を物件価格の20%以上用意する
  • 収入合算を活用して借入可能額を増やす
  • フラット35等の派遣社員が利用しやすい金融機関を選択する

次のアクションとして、以下をおすすめします:

  1. 自分の状況を確認: 勤続年数・年収・用意できる頭金を整理する
  2. 複数金融機関に相談: フラット35、メガバンク、ネット銀行等に事前相談する
  3. 事前審査を受ける: 借入可能額を正確に把握する

「派遣社員では絶対に組めない」という思い込みを捨て、適切な準備と対策で住宅購入の夢を実現しましょう。勤続年数を積み、頭金を用意し、複数の金融機関に相談することで、審査通過の可能性は十分にあります。

よくある質問

Q1派遣の3年ルールはローン審査に影響する?

A1労働者派遣法の3年ルール(同一職場で3年まで)により、勤続年数が短くなりがちでローン審査に不利になる可能性があります。ただし、派遣元企業での勤続年数が評価されるため、派遣元を変えずに就業先を変えることで勤続年数を維持できます。例えば、A社(派遣元)に登録してX社→Y社と就業先を変えても、A社での勤続年数は通算されます。3年以上の勤続があれば審査通過の可能性が高まります。

Q2正社員登用前提の派遣でも審査に通る?

A2「正社員登用予定」では審査に不利です。金融機関は現時点の雇用形態を重視するため、登用予定では派遣社員として扱われます。実際に正社員登用された後に申込む方が審査通過率が高く、有利な金利条件を得られる可能性があります。登用が確定してから住宅ローンを申し込むことをおすすめします。

Q3フラット35と民間銀行ローンの違いは?

A3フラット35は住宅金融支援機構が提供する全期間固定金利のローンで、雇用形態を問わず審査対象となるため派遣社員が利用しやすい。団信が任意加入で、未加入でも借入可能(ただし別途生命保険の検討が必要)。金利は2025年1月時点で1.5-2.0%程度。民間銀行ローンは変動金利が多く金利が低い(0.3-0.6%程度)が、審査基準が厳しく派遣社員は不利になる場合がある。団信加入が必須のことが多い。

Q4派遣社員の借入可能額はどのくらい?

A4年収×返済負担率で計算します。派遣社員は返済負担率20%以下が推奨されるため、年収300万円の場合、年間返済額60万円(月5万円)が目安。35年ローン・金利1.5%と仮定すると、借入可能額は約1,800万円程度です。正社員(返済負担率30-35%)の場合は約2,700万円借りられる可能性がありますが、派遣社員はより少なくなるため、頭金を多く用意する必要があります。