育休中に住宅ローン控除が「もったいない」と言われる理由
育休を取得中または取得予定の方が住宅購入を検討する際、「育休中は住宅ローン控除がもったいない」と聞いて不安を感じることがあります。
この記事では、育休中に住宅ローン控除の恩恵を十分に受けられない理由、実際の損失額の試算、そして柔軟な対策方法を国税庁や厚生労働省の公式情報を元に解説します。
育休取得とライフプランを両立させながら、冷静に判断できる材料を提供します。
この記事のポイント
- 育休中は育児休業給付金が非課税のため所得税がゼロとなり、住宅ローン控除の恩恵を受けられない
- 1年分の控除額は数万~30万円程度だが、控除期間は最長13年間あり影響は限定的
- 所得税で控除しきれない場合は翌年度の住民税から控除可能(上限97,500円)
- 夫婦の借入比率を見直す、購入時期を数カ月ずらすなどの対策で損失を最小化できる
- 育休取得を優先しながら、柔軟にライフプランを設計することが重要
住宅ローン控除の基本と育休中の税制
住宅ローン控除の仕組み(2022年以降)
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを取得した場合、年末のローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。2022年以降、最長13年間(新築の場合)適用されます。
控除の仕組み:
- 控除率: 年末ローン残高の0.7%
- 控除期間: 最長13年(新築)、10年(中古)
- 所得制限: 年間所得2000万円以下
- 控除方法: 所得税額控除(税額から直接差し引く)
(出典: 国税庁 No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合)
育児休業給付金は非課税=所得税ゼロ
育休中は育児休業給付金(賃金の67%→50%)が雇用保険から支給されますが、この給付金は非課税です(出典: 国税庁 育児休業基本給付金の支給を受けている配偶者)。
そのため、育休中は給与収入がほぼゼロ、給付金も非課税であることから、所得税が発生しません。
住宅ローン控除は所得税額控除のため、所得税がゼロなら控除も受けられないという仕組みになります。
「もったいない」は本当か?損失額を試算
1年分の損失額シミュレーション
年収500万円、住宅ローン残高3000万円の場合、通常なら年間約21万円(3000万円×0.7%)の控除が受けられます。
しかし、育休中は所得税がゼロのため、この控除を受けられません。1年間育休を取得すると、約21万円の控除が使えないことになります。
試算例(年収500万円、ローン残高3000万円):
- 通常の控除額: 約21万円/年
- 育休1年: 約21万円が控除不可
- 育休2年: 約42万円が控除不可
(参考: HouseDo 育休中でも住宅ローン控除は使える?損しないための注意点と対策)
13年間で見れば影響は限定的
重要なのは、住宅ローン控除の期間が最長13年間あることです。
育休が1-2年であれば、残り11-12年で十分に控除を受けられます。控除期間全体で見れば、「もったいない」は限定的な影響に過ぎません。
控除期間全体の視点:
- 控除期間13年間
- 育休2年 = 2年分が控除不可
- 残り11年 = 十分に控除可能
1-2年分の控除が使えないことは確かに損失ですが、過度な不安を持つ必要はありません。
育休中でも住宅ローン控除を活用する対策
住民税からの控除(上限97,500円)
所得税で控除しきれなかった住宅ローン控除額は、翌年度の住民税から控除することが可能です(上限97,500円)。
育休中でも住民税が課税される場合があり、この制度を活用することで一部の控除を受けられる可能性があります。
(出典: 総務省 所得税から住宅ローン控除額を引ききれなかった方)
夫婦の借入比率を見直す
ペアローン(夫婦が別々に住宅ローンを組む形態)の場合、育休取得者の借入比率を減らすことで、控除が使えない期間の影響を最小化できます。
借入比率の例:
- 育休取得予定者(妻): 20%
- 配偶者(夫): 80%
このように配偶者の借入比率を高めることで、配偶者の控除枠を活用し、育休中の影響を抑えることができます。
(参考: 書庫のある家。産休・育休中に住宅ローン控除で還付できる?)
購入タイミングを数カ月ずらす
育休取得のタイミングと住宅購入のタイミングを調整できる場合、復職後に住宅を購入することで初年度から控除の恩恵を受けられます。
タイミング調整の例:
- 育休明け(4月復職)→ 5-6月に購入
- 初年度確定申告(翌年2-3月)で控除申請
- 復職後の所得税から控除可能
購入を急ぐ必要がない場合は、このようなタイミング調整も検討できます。
まとめ:育休中の住宅購入は慎重に検討しよう
育休中は住宅ローン控除の恩恵を十分に受けられませんが、控除期間は最長13年間あり、1-2年が育休と重なるだけであれば影響は限定的です。
購入を急ぐ必要がない場合はタイミングを調整し、ペアローンの場合は借入比率を見直すことで損失を最小化できます。住民税からの控除(上限97,500円)も活用できる可能性があります。
育休取得はライフプランの重要な選択です。「もったいない」という感情に左右されず、長期的な視点で柔軟に判断することをおすすめします。税理士やファイナンシャルプランナーに相談しながら、無理のない計画を立てましょう。
