親子リレー住宅ローンとは?メリット・デメリットと注意点

公開日: 2025/11/6

親子リレー住宅ローンとは

住宅購入を検討している30-60代の方で、「親の年齢が高く単独での借入期間が短い」「子の収入だけでは希望額を借りられない」と悩む方は少なくありません。

この記事では、親子リレー住宅ローンの仕組み、メリット・デメリット、ペアローンとの違い、利用条件、注意点を、金融機関の公式情報や専門家の解説を元に説明します。

初めて親子リレーローンを検討する方でも、制度の全体像を把握し、自分に合った選択ができるようになります。

この記事のポイント

  • 親子リレーローンは親が先に返済し、親が返済できなくなった時点で子が引き継ぐ住宅ローン
  • 親の年齢が高くても子の年齢で借入期間を最長35年に設定できる、親子の収入を合算して借入額を増やせる
  • ペアローンと異なり契約は1本、親が主債務者で子が連帯債務者、団信は親のみ加入が一般的
  • 利用条件は親子が同居または同居予定、子が連帯債務者として収入要件を満たすこと、親子それぞれが一定の年齢範囲内
  • デメリットは子が将来別の住宅ローンを組めない可能性、親が亡くなっても債務が残る(団信は親のみ)、相続時のトラブルリスク等

親子リレーローンの仕組みと特徴

親子リレーローンは、親が先に返済を開始し、親が返済できなくなった時点(退職・死亡等)で子が引き継ぐ住宅ローンです。

基本的な仕組み

親子リレーローンの基本的な仕組みは以下の通りです。

  • 契約は1本:親が主債務者、子が連帯債務者として1つのローン契約を結ぶ
  • 親が先に返済:親が働いている間は親が返済を行う
  • 子が引き継ぐ:親が退職・死亡等で返済できなくなった時点で子が引き継ぐ

借入期間の設定

親の年齢が高くても、子の年齢で借入期間を最長35年に設定できます。これにより、親単独では借入期間が短くなる(月々の返済額が高くなる)問題を解決できます。

:

  • 親(60歳)単独の場合:借入期間は最長20年(完済時年齢80歳が上限の場合)
  • 親子リレーローン(子30歳)の場合:借入期間は最長35年(子の年齢で計算)

収入合算のメリット

親子の収入を合算して審査を受けるため、単独では借りられない金額を借入できます。

:

  • 親の年収:400万円
  • 子の年収:300万円
  • 合算年収:700万円 → 借入可能額が増加

親子リレーローンとペアローンの違い

親子リレーローンとペアローンは、どちらも親子で住宅ローンを組む方法ですが、契約形態が異なります。

項目 親子リレーローン ペアローン
契約本数 1本 2本
主債務者 親・子それぞれ
連帯債務者 なし(連帯保証人の場合もある)
団信加入 親のみ 親・子それぞれ
住宅ローン控除 親のみ 親・子それぞれ
返済方法 親が先、子が引き継ぐ 親・子それぞれが並行して返済

契約本数と債務者の違い

親子リレーローンは契約が1本で、親が主債務者、子が連帯債務者です。一方、ペアローンは契約が2本で、親・子それぞれが主債務者となります。

団信加入と住宅ローン控除の違い

親子リレーローンでは、団信(団体信用生命保険)に加入するのは親のみが一般的です。住宅ローン控除も親のみが適用されます。一方、ペアローンでは親・子それぞれが団信に加入でき、住宅ローン控除も両方が適用されます。

返済方法の違い

親子リレーローンでは、親が先に返済し、親が返済できなくなった時点で子が引き継ぎます。一方、ペアローンでは、親・子それぞれが並行して返済します。

親子リレーローンの利用条件

親子リレーローンを利用するには、金融機関が定める条件を満たす必要があります。

親子の同居要件

多くの金融機関では、親子が同居または同居予定であることが条件です。別居の場合は利用できない場合が多いです。

子の収入要件

子が連帯債務者として一定の収入要件を満たす必要があります。金融機関により異なりますが、年収200万円以上等の基準があります。

年齢要件

親子それぞれが一定の年齢範囲内である必要があります。

  • 親の年齢:申込時に一定の年齢以下(金融機関により異なる)
  • 子の年齢:借入時に20歳以上、完済時に80歳以下等

その他の条件

金融機関により、以下の条件が設定される場合があります。

  • 親子が同一世帯:住民票で同一世帯であること
  • 子が後継者:子が親の後継者(事業承継等)であること
  • 物件の共有:物件を親子で共有すること

親子リレーローンのメリット

親子リレーローンには以下のメリットがあります。

長期の借入期間を設定できる

親の年齢が高くても、子の年齢で借入期間を最長35年に設定できます。これにより、月々の返済額を抑えられます。

借入額を増やせる

親子の収入を合算して審査を受けるため、単独では借りられない金額を借入できます。高額な物件を購入したい場合に有効です。

ペアローンより諸費用が安い

契約が1本のため、契約書の印紙税、登記費用、手数料等の諸費用がペアローン(2本)より安くなります。

親子リレーローンのデメリットと注意点

親子リレーローンにはデメリットもあるため、慎重な検討が必要です。

子が将来別の住宅ローンを組めない可能性

子が連帯債務者となるため、将来別の住宅ローンを組む際に審査に影響する可能性があります。子が独立して別の住宅を購入したい場合、親子リレーローンの残債が審査でマイナス要因となります。

親が亡くなっても債務が残る

親子リレーローンでは、団信に加入するのは親のみが一般的です。親が亡くなった場合、団信により親の債務は完済されますが、子の連帯債務は残ります。ただし、金融機関により団信の適用範囲が異なる場合があるため、契約前に確認が必要です。

相続時のトラブルリスク

親が亡くなった場合、物件の相続をめぐって親族間でトラブルが発生する可能性があります。子が複数いる場合、住宅ローンを引き継ぐ子とそうでない子との間で不公平感が生じる場合があります。事前に相続について親族で話し合い、遺言書を作成することが推奨されます。

親子関係の悪化リスク

返済を引き継ぐタイミングや返済額について、親子間で意見が食い違う場合があります。事前に返済計画を明確にし、親子で十分に話し合うことが重要です。

同居の制約

多くの金融機関では同居が条件のため、子が転勤・結婚等で別居する場合、契約違反となる可能性があります。将来のライフプランを考慮して利用を検討すべきです。

まとめ:親子リレーローンは慎重に検討しよう

親子リレーローンは、親の年齢が高くても長期の借入期間を設定でき、親子の収入を合算して借入額を増やせる制度です。ペアローンと異なり契約は1本で、親が主債務者、子が連帯債務者となります。

メリットがある一方、子が将来別の住宅ローンを組めない可能性、親が亡くなっても債務が残る(団信は親のみ)、相続時のトラブルリスク等のデメリットもあります。

利用を検討する際は、金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーに相談し、家族全員で返済計画・相続について十分に話し合うことが重要です。将来のライフプランを考慮して、自分に合った住宅ローンを選びましょう。

よくある質問

Q1親子リレーローンとペアローンはどちらが得ですか?

A1一概には言えません。親子リレーローンは契約が1本のため諸費用が安く、親が主債務者で子が連帯債務者となります。ペアローンは契約が2本で、親・子それぞれが団信に加入でき、住宅ローン控除も両方が適用されます。親子の年齢、収入、将来のライフプラン等により最適な選択が異なるため、金融機関やファイナンシャルプランナーに相談してください。

Q2親が亡くなったら住宅ローンはどうなりますか?

A2親子リレーローンでは、団信に加入するのは親のみが一般的です。親が亡くなった場合、団信により親の債務は完済されますが、子の連帯債務は残る場合があります。金融機関により団信の適用範囲が異なるため、契約前に確認が必要です。一部金融機関では、親・子両方が団信に加入できる商品もあります。

Q3子が将来別の住宅を購入したい場合、どうなりますか?

A3子が連帯債務者となるため、将来別の住宅ローンを組む際に審査に影響する可能性があります。親子リレーローンの残債が審査でマイナス要因となり、希望額を借りられない場合があります。子が独立して別の住宅を購入する可能性がある場合、親子リレーローンの利用は慎重に検討すべきです。

Q4親子で別居している場合も利用できますか?

A4多くの金融機関では、親子が同居または同居予定であることが条件です。別居の場合は利用できない場合が多いです。ただし、一部金融機関では、将来同居予定であれば利用できる場合もあります。金融機関により条件が異なるため、事前に確認してください。

Q5相続でトラブルにならないためには?

A5事前に相続について親族で話し合い、遺言書を作成することが推奨されます。子が複数いる場合、住宅ローンを引き継ぐ子とそうでない子との間で不公平感が生じる可能性があります。物件の相続方法、他の資産の分配方法等を明確にし、全員が納得する形で準備することが重要です。弁護士や税理士に相談することも有効です。