住宅ローンが組めない人の特徴とは?審査に落ちる理由と対処法を解説

公開日: 2025/11/11

住宅ローンが組めない人の特徴とは

住宅購入を検討する際、「自分は住宅ローンの審査に通るのだろうか」と不安を感じる方は少なくありません。過去の信用情報、健康状態、雇用形態など、審査に影響する要素は多岐にわたります。

この記事では、住宅ローンが組めない理由を体系的に整理し、それぞれの対処法を国土交通省や金融庁の公式情報を元に解説します。

自分の状況を正確に把握し、適切な対策を講じることで、審査通過の可能性を高めることができます。

この記事のポイント

  • 住宅ローンが組めない主な理由は、信用情報・健康状態・雇用形態・年収・返済比率の5つに分類される
  • 信用情報の延滞記録は5年間、自己破産記録は10年間保存され、この期間が経過すれば記録は削除される
  • 健康上の問題がある場合、ワイド団信やフラット35(団信なし)を活用できる可能性がある
  • 個人事業主は3期連続黒字が目安となり、民間金融機関よりフラット35の方が審査基準が柔軟
  • 一度審査に落ちても金融機関によって基準が異なるため、複数社に相談することが重要

住宅ローンが組めない主な理由

住宅ローンの審査で落ちる理由は、大きく分けて以下の5つのカテゴリーに分類できます。

カテゴリー 具体的な理由 影響度
信用情報 クレジットカード・ローンの延滞、債務整理、自己破産 非常に高い
健康状態 団体信用生命保険(団信)に加入できない持病・既往歴 高い
雇用形態 非正規雇用、派遣社員、個人事業主、勤続年数1年未満 中〜高
年収・返済比率 年収が低い、返済負担率が高い(手取り年収の25%超) 高い
担保物件 物件の評価額が低い、違法建築、再建築不可

(参考: 国土交通省 令和6年度 民間住宅ローンの実態に関する調査

国土交通省の調査によると、金融機関が審査で最も重視する項目は「完済時年齢」(99.1%)、「健康状態」(98.2%)、「担保評価」(97.7%)となっています。次いで「借入時年齢」「年収」「勤続年数」「連帯保証」「返済負担率」が続きます。

信用情報の問題で審査に落ちるケース

住宅ローン審査で最も重視されるのが信用情報です。金融機関は必ずCIC、JICC、KSCの3つの信用情報機関に照会し、過去の借入履歴や返済状況を確認します。

延滞・滞納の記録が残っている

CICによると、クレジットカードやローンの支払いが61日以上(または3ヶ月以上)遅れると、延滞情報が信用情報機関に記録されます。この記録は、延滞を解消してから5年間保存されます。

延滞記録がある間は、ほとんどの金融機関で住宅ローンの審査に通ることは難しいとされています。数日程度の遅延であれば記録に残らない場合もありますが、継続的な遅延は大きなマイナス要因となります。

債務整理・自己破産の履歴がある

債務整理や自己破産の記録は、信用情報機関に長期間保存されます。

債務整理の種類 保存期間(CIC/JICC) 保存期間(KSC)
任意整理 5年間 5年間
個人再生 5年間 10年間
自己破産 5年間 10年間

(参考: CIC全国銀行協会(KSC)

自己破産の場合、全国銀行協会(KSC)では10年間記録が残るため、この期間は銀行の住宅ローン審査に通ることはほぼ不可能です。ただし、保存期間が経過すれば記録は自動的に削除されるため、それ以降は審査に影響しなくなります。

信用情報の開示方法と回復期間

自分の信用情報は、各信用情報機関に開示請求することで確認できます。

  • CIC: インターネット・郵送・窓口で開示可能(手数料500〜1,000円)
  • JICC: スマートフォン・郵送・窓口で開示可能(手数料500〜1,000円)
  • KSC: インターネット・郵送で開示可能(手数料1,000円)

記録が削除されるまでの期間は、延滞なら5年間、自己破産なら10年間です。この期間が経過すれば、過去の記録は完全に消去され、住宅ローン審査に影響しなくなります。

健康上の問題で審査に落ちるケース

民間金融機関では、団体信用生命保険(団信)への加入が住宅ローン契約の必須条件となることが一般的です。

団体信用生命保険(団信)に入れない理由

団信は、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった際、保険金でローン残債を完済する保険です。加入には健康状態の告知が必要で、以下のような持病・既往歴があると加入できない場合があります。

  • 高血圧、糖尿病、心疾患、脳血管疾患
  • がん、肝疾患、腎疾患
  • うつ病などの精神疾患
  • 過去3年以内の入院・手術歴

団信に加入できないと、民間金融機関の多くで住宅ローンの審査に通らないため、健康状態は審査において非常に重要な要素となります。

ワイド団信とは何か

ワイド団信は、通常の団信では加入できない持病・既往歴がある人でも加入できる、引受範囲を広げた団信です。

特徴:

  • 高血圧、糖尿病などの持病があっても加入できる可能性がある
  • 金利に年0.3%程度上乗せされる
  • 取り扱い金融機関は限定的

(参考: モゲチェック - 団体信用生命保険に入れない人が住宅ローンを組む方法

ワイド団信を利用すれば、通常の団信では断られた場合でも住宅ローンを組める可能性があります。ただし、すべての持病が対象となるわけではなく、審査基準は各金融機関によって異なります。

団信なしで借りる方法

フラット35は、住宅金融支援機構が提供する長期固定金利住宅ローンで、団信加入が任意となっています。

フラット35の特徴:

  • 団信に加入しなくても借りられる
  • 勤続年数の条件が緩やか
  • 固定金利のため、金利変動のリスクがない

団信に加入しない場合、契約者が死亡してもローンは残るため、配偶者や相続人が返済を引き継ぐか、生命保険で備える必要があります。また、配偶者名義で借りる、親子リレーローンを利用するなどの代替手段も検討できます。

雇用形態・収入面の問題で審査に落ちるケース

雇用形態や収入の安定性も、住宅ローン審査で重視される要素です。

非正規雇用・派遣社員の審査

非正規雇用や派遣社員の場合、収入の安定性が低いと判断され、審査に通りにくいケースがあります。ただし、以下のような条件を満たせば審査に通る可能性があります。

  • 同一企業での勤続年数が3年以上
  • 年収が安定している(直近3年間で大きな変動がない)
  • 頭金を多めに用意する(物件価格の20%以上)

一部の金融機関では、派遣社員でも審査対象としているため、複数社に相談することが重要です。

個人事業主・フリーランスの審査基準

個人事業主やフリーランスの場合、民間金融機関では審査が厳しくなる傾向にあります。

一般的な審査基準:

  • 3期連続黒字が目安
  • 確定申告書(3期分)の提出が必須
  • 事業の継続性・安定性を示す資料(取引先、契約書等)

(参考: 三井住友銀行 - 個人事業主が住宅ローンを借りるためのポイント

フラット35は、個人事業主に対しても比較的柔軟な審査基準を設けているため、民間金融機関で断られた場合の選択肢として検討できます。

勤続年数が短い場合

国土交通省の調査によると、多くの金融機関では、勤続年数が最低1年以上であることを条件としています。転職直後や入社1年未満の場合、審査に通りにくいため、勤続年数が1年を超えるまで待つことが推奨されます。

ただし、医師、弁護士、公務員などの安定した職種では、勤続年数が短くても審査に通る場合があります。

審査に落ちた場合の具体的な対処法

一度審査に落ちても、以下の対処法を講じることで審査通過の可能性を高めることができます。

フラット35の活用

フラット35は、民間金融機関よりも審査基準が柔軟なため、以下のような場合に有効です。

  • 団信に加入できない
  • 個人事業主・フリーランス
  • 勤続年数が短い
  • 非正規雇用

フラット35は団信加入が任意であり、勤続年数の条件も緩やかです。固定金利のため、将来の金利変動リスクを回避できる点もメリットです。

頭金を増やして借入額を減らす

頭金を多めに用意することで、借入額を減らし、返済負担率を下げることができます。返済負担率が手取り年収の25%以内に収まれば、審査に通りやすくなります。

:

  • 物件価格: 4,000万円
  • 頭金なし: 借入額4,000万円 → 返済負担率35%(年収500万円の場合)
  • 頭金800万円: 借入額3,200万円 → 返済負担率28%

頭金を増やすことで、金融機関からの評価も高まります。

連帯債務・連帯保証人をつける

配偶者や親族と連帯債務契約を結ぶことで、世帯年収を合算して審査を受けることができます。これにより、返済負担率が下がり、審査に通りやすくなります。

連帯債務と連帯保証の違い:

  • 連帯債務: 夫婦がそれぞれ債務者となり、両方の年収を合算できる
  • 連帯保証: 主債務者が返済できない場合に保証人が返済義務を負う

連帯債務の場合、住宅ローン控除を夫婦それぞれで受けられるメリットもあります。

審査が通りやすい金融機関を選ぶ

金融機関によって審査基準は異なるため、一度落ちても他の金融機関で通る可能性があります。

  • メガバンク: 審査が厳しい傾向
  • 地方銀行・信用金庫: 地域密着型で柔軟な審査
  • ネット銀行: 比較的柔軟な審査基準
  • フラット35: 最も柔軟な審査基準

ただし、CICなどの信用情報機関によると、短期間に複数の金融機関に申込むと、信用情報機関に記録が残るため、半年程度の間隔を空けるのが望ましいとされています。

まとめ

住宅ローンが組めない理由は、信用情報・健康状態・雇用形態・年収・返済比率など多岐にわたりますが、それぞれに対処法があります。

信用情報の延滞記録は5年間、自己破産記録は10年間保存されるため、この期間が経過すれば記録は削除されます。健康上の問題がある場合は、ワイド団信やフラット35を活用する選択肢があります。個人事業主や非正規雇用の場合も、フラット35なら比較的柔軟な審査基準で借りられる可能性があります。

一度審査に落ちても、頭金を増やす、連帯債務をつける、複数の金融機関に相談するなど、適切な対策を講じることで審査通過の可能性を高めることができます。

自分の状況を正確に把握し、信用情報の開示や複数金融機関への相談など、具体的な次のアクションを起こしましょう。必要に応じて、ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーへの相談も検討してください。

よくある質問

Q1ブラックリストに載っている期間はどのくらいですか?

A1延滞情報は5年間、自己破産は10年間(KSC)、個人再生・任意整理は5年間記録が残ります。この期間が経過すれば記録は自動的に削除され、住宅ローン審査に影響しなくなります。自己破産の場合、全国銀行協会(KSC)では10年間保存されるため、この期間は銀行の住宅ローン審査に通ることはほぼ不可能です。ただし、保存期間が経過すれば、過去の記録は完全に消去されます。

Q2病気があっても住宅ローンは組めますか?

A2持病・既往歴がある場合でも、ワイド団信(金利+0.3%程度)を利用すれば住宅ローンを組める可能性があります。また、フラット35は団信加入が任意のため、団信なしで借りることもできます。ただし、団信に加入しない場合、契約者が死亡してもローンは残るため、配偶者や相続人が返済を引き継ぐか、別途生命保険で備える必要があります。配偶者名義で借りる選択肢も検討できます。

Q3個人事業主ですが審査は厳しいですか?

A3個人事業主の場合、3期連続黒字が一般的な審査基準となり、確定申告書(3期分)の提出が必須です。民間金融機関では審査が厳しめですが、フラット35は比較的柔軟な審査基準を設けています。事業の安定性と返済能力を示す資料(取引先、契約書等)を用意することで、審査通過の可能性を高めることができます。複数の金融機関に相談することも重要です。

Q4審査に一度落ちたら他の銀行でも借りられませんか?

A4金融機関によって審査基準が異なるため、一度落ちても他の金融機関で通る可能性はあります。メガバンクは審査が厳しい傾向にありますが、地方銀行・信用金庫は地域密着型で柔軟な審査を行うことがあります。ただし、短期間に複数申込むと信用情報機関に記録が残るため、半年程度の間隔を空けるのが望ましいとされています。

Q5返済負担率はどのくらいが適正ですか?

A5一般的に手取り年収の25%以内、額面年収の35%以内が審査の目安とされています。ただし、生活費や将来の教育費、老後資金なども考慮し、無理のない返済計画を立てることが重要です。返済負担率が高いと審査に通りにくくなるため、頭金を増やして借入額を減らす、配偶者との連帯債務で世帯年収を合算するなどの対策が有効です。