住宅ローン返済中でも引っ越しは可能|必ず金融機関へ連絡を
住宅ローンを返済中でも、転勤や家族構成の変化で引っ越しを検討するケースは少なくありません。「ローンがあるのに引っ越せるのか」と不安に感じる方も多いでしょう。
この記事では、住宅ローン返済中の引っ越し方法を3つのパターン(売却、賃貸、住み替えローン)に分けて、手続き・費用・注意点を国土交通省や国税庁の公式情報を元に解説します。
金融機関への連絡義務や住宅ローン控除への影響など、知らないと損をするポイントも明確にお伝えします。
この記事のポイント
- 住宅ローン返済中でも引っ越しは可能だが、金融機関への事前連絡が必須
- 選択肢は①売却して新居購入、②賃貸に出す、③住み替えローン利用の3パターン
- 無断転居は契約違反となり、残債の一括返済を求められるリスクがある
- アンダーローン(売却価格>残債)なら売却がスムーズ、オーバーローンなら追加対策が必要
- 住宅ローン控除の居住要件を満たさなくなると控除が受けられなくなる
事前準備|住宅ローン残債と売却相場を確認
まず、住宅ローンの残債と不動産の売却相場を確認しましょう。この2つの金額関係で、選べる選択肢が変わります。
住宅ローン残債の確認方法
住宅ローン残債は、以下の方法で確認できます。
- 返済予定表: 金融機関から年1回送られてくる書類に記載されています
- 金融機関のWebサイト: インターネットバンキングで即座に確認可能
- 金融機関の窓口: 電話または来店で問い合わせ
不動産の売却相場を調べる
不動産の売却相場は、以下のサービスで調べられます。
- 不動産一括査定: 複数の不動産会社に無料で査定依頼
- AI査定: 物件情報を入力すると即座に概算価格を表示
- 不動産取引価格情報: 国土交通省が提供する実際の取引価格データ
アンダーローン・オーバーローンの判定
売却価格と住宅ローン残債の関係で、以下の2つに分類されます。
| 状態 | 意味 | 対処法 |
|---|---|---|
| アンダーローン | 売却価格 > 住宅ローン残債 | 売却代金でローンを完済できる |
| オーバーローン | 売却価格 < 住宅ローン残債 | 自己資金追加または住み替えローンが必要 |
アンダーローンなら売却がスムーズに進みますが、オーバーローンの場合は追加対策が必要です。
選択肢①|売却して新居を購入する方法
住宅ローンが残っている不動産を売却し、新居を購入する方法です。アンダーローンなら最もスムーズな選択肢です。
売却の流れ|査定→媒介契約→売却→抵当権抹消
売却の基本的な流れは以下の通りです。
- 査定: 複数の不動産会社に査定依頼
- 媒介契約: 信頼できる不動産会社と媒介契約を締結
- 売却活動: 内覧対応・価格交渉
- 売買契約: 買主と売買契約を締結
- 決済: 売却代金で住宅ローンを一括返済
- 抵当権抹消: 金融機関が抵当権を抹消(法務局で登記)
所要期間は1-3ヶ月程度です。
アンダーローンの場合|売却代金でローン完済
アンダーローン(売却価格 > 住宅ローン残債)の場合、売却代金で住宅ローンを完済できます。
例: 売却価格3,000万円、住宅ローン残債2,500万円の場合
- 売却代金3,000万円で残債2,500万円を完済
- 手元に500万円が残る(仲介手数料等の諸費用を差し引いた金額)
オーバーローンの場合|自己資金追加または住み替えローン
オーバーローン(売却価格 < 住宅ローン残債)の場合、以下の対処法があります。
- ①自己資金で差額を補填: 売却代金で不足する分を自己資金で用意
- ②住み替えローンを利用: 既存ローン残債と新居購入資金を一本化して借り入れ(詳細は後述)
例: 売却価格2,000万円、住宅ローン残債2,500万円の場合
- 差額500万円を自己資金で補填、または住み替えローンで対応
税制優遇措置|譲渡損失の繰越控除
オーバーローンで売却し、譲渡損失が出た場合、国土交通省の譲渡損失の繰越控除を利用できます。
- 譲渡損失を他の所得と相殺(損益通算)
- 控除しきれない分は翌年以降最大3年間繰り越し可能
- 確定申告が必須
選択肢②|賃貸に出す方法(リロケーション)
転勤等で一時的に住めなくなった場合、賃貸に出す方法があります。ただし、住宅ローンは「本人居住」が前提のため、金融機関の承認が必須です。
賃貸に出す場合の金融機関の承認
住宅ローン契約には「居住義務条項」があり、契約者本人または家族が住むことが条件です。無断で賃貸に出すと契約違反となり、残債の一括返済を求められる可能性があります。
金融機関への連絡時に必要な書類:
- 転勤辞令のコピー(転勤の場合)
- 賃貸契約書のコピー(賃貸に出す場合)
- 一時的な転居である旨を説明する書類
住宅金融支援機構(フラット35)の場合、転居届の提出が必要です。
リロケーションの仕組みと費用
リロケーションとは、転勤等で一時的に住めなくなった住宅を、期間限定で賃貸に出すサービスです。
- 管理手数料: 賃料の5-10%程度
- 契約期間: 2-3年の定期借家契約が一般的
- メリット: 家賃収入でローン返済を継続できる
- デメリット: 空室リスク、原状回復費用
住宅ローン控除への影響
賃貸に出すと、国税庁の住宅ローン控除の居住要件を満たさなくなるため、控除が適用停止されます。
ただし、転勤の特例措置があり、やむを得ない事情での転居なら、再居住時に控除を再開できます(残存期間のみ)。税務署への届出が必要です。
選択肢③|住み替えローンを利用する方法
オーバーローンの場合、住み替えローンを利用することで、既存ローン残債と新居購入資金を一本化して借り入れることができます。
住み替えローンの仕組み
住み替えローンは、以下の2つを合算して借り入れます。
- 既存住宅ローンの残債(売却代金で完済できない分)
- 新居の購入資金
例: 売却価格2,000万円、住宅ローン残債2,500万円、新居購入価格3,500万円の場合
- 差額500万円(2,500万円 - 2,000万円)
- 新居購入資金3,500万円
- 合計4,000万円を住み替えローンで借り入れ
審査基準と必要書類
住み替えローンは担保価値以上の借入となるため、通常の住宅ローンより審査が厳しくなります。
審査基準:
- 年収: 400万円以上が目安
- 勤続年数: 3年以上が目安
- 返済負担率: 35%以内(年収に占める年間返済額の割合)
必要書類:
- 既存ローンの返済予定表
- 新居の売買契約書
- 収入証明書(源泉徴収票等)
- 本人確認書類
月々の返済負担の増加に注意
住み替えローンは借入額が大きくなるため、月々の返済負担が増加します。返済計画を慎重に検討し、無理のない範囲で借り入れることが重要です。
金融機関への連絡方法と必要書類
住宅ローン返済中に引っ越す場合、金融機関への連絡は最優先事項です。
連絡のタイミング|引っ越し決定後すぐに
金融機関への連絡は、引っ越しが決定したらすぐに行いましょう。遅くとも1ヶ月前には連絡が必要です。
必要書類|転勤辞令・賃貸契約書等
金融機関への連絡時に必要な書類は、以下の通りです。
- 転勤の場合: 転勤辞令のコピー
- 賃貸に出す場合: 賃貸契約書のコピー
- その他: 本人確認書類、住宅ローン契約書
フラット35の場合の手続き
住宅金融支援機構(フラット35)の場合、Webサイトから「転居届」をダウンロードして提出します。
無断転居は契約違反となり、残債の一括返済を求められる可能性があるため、必ず連絡してください。
まとめ|金融機関への連絡が最優先、自分の状況に合った選択肢を
住宅ローン返済中の引っ越しは可能ですが、金融機関への事前連絡が最重要です。アンダーローンなら売却がスムーズですが、オーバーローンの場合は自己資金追加または住み替えローンの検討が必要です。
賃貸に出す場合は金融機関の承認が必須で、無断で賃貸に出すと契約違反となります。
次のアクションは、住宅ローン残債と売却相場の確認、そして金融機関への相談です。信頼できる不動産会社や金融機関と相談しながら、無理のない計画を立てましょう。
