住宅ローンがあるけど引っ越したい!選択肢と手続きを完全解説

公開日: 2025/11/1

住宅ローン返済中でも引っ越しは可能|必ず金融機関へ連絡を

住宅ローンを返済中でも、転勤や家族構成の変化で引っ越しを検討するケースは少なくありません。「ローンがあるのに引っ越せるのか」と不安に感じる方も多いでしょう。

この記事では、住宅ローン返済中の引っ越し方法を3つのパターン(売却、賃貸、住み替えローン)に分けて、手続き・費用・注意点を国土交通省国税庁の公式情報を元に解説します。

金融機関への連絡義務や住宅ローン控除への影響など、知らないと損をするポイントも明確にお伝えします。

この記事のポイント

  • 住宅ローン返済中でも引っ越しは可能だが、金融機関への事前連絡が必須
  • 選択肢は①売却して新居購入、②賃貸に出す、③住み替えローン利用の3パターン
  • 無断転居は契約違反となり、残債の一括返済を求められるリスクがある
  • アンダーローン(売却価格>残債)なら売却がスムーズ、オーバーローンなら追加対策が必要
  • 住宅ローン控除の居住要件を満たさなくなると控除が受けられなくなる

事前準備|住宅ローン残債と売却相場を確認

まず、住宅ローンの残債と不動産の売却相場を確認しましょう。この2つの金額関係で、選べる選択肢が変わります。

住宅ローン残債の確認方法

住宅ローン残債は、以下の方法で確認できます。

  • 返済予定表: 金融機関から年1回送られてくる書類に記載されています
  • 金融機関のWebサイト: インターネットバンキングで即座に確認可能
  • 金融機関の窓口: 電話または来店で問い合わせ

不動産の売却相場を調べる

不動産の売却相場は、以下のサービスで調べられます。

  • 不動産一括査定: 複数の不動産会社に無料で査定依頼
  • AI査定: 物件情報を入力すると即座に概算価格を表示
  • 不動産取引価格情報: 国土交通省が提供する実際の取引価格データ

アンダーローン・オーバーローンの判定

売却価格と住宅ローン残債の関係で、以下の2つに分類されます。

状態 意味 対処法
アンダーローン 売却価格 > 住宅ローン残債 売却代金でローンを完済できる
オーバーローン 売却価格 < 住宅ローン残債 自己資金追加または住み替えローンが必要

アンダーローンなら売却がスムーズに進みますが、オーバーローンの場合は追加対策が必要です。

選択肢①|売却して新居を購入する方法

住宅ローンが残っている不動産を売却し、新居を購入する方法です。アンダーローンなら最もスムーズな選択肢です。

売却の流れ|査定→媒介契約→売却→抵当権抹消

売却の基本的な流れは以下の通りです。

  1. 査定: 複数の不動産会社に査定依頼
  2. 媒介契約: 信頼できる不動産会社と媒介契約を締結
  3. 売却活動: 内覧対応・価格交渉
  4. 売買契約: 買主と売買契約を締結
  5. 決済: 売却代金で住宅ローンを一括返済
  6. 抵当権抹消: 金融機関が抵当権を抹消(法務局で登記)

所要期間は1-3ヶ月程度です。

アンダーローンの場合|売却代金でローン完済

アンダーローン(売却価格 > 住宅ローン残債)の場合、売却代金で住宅ローンを完済できます。

: 売却価格3,000万円、住宅ローン残債2,500万円の場合

  • 売却代金3,000万円で残債2,500万円を完済
  • 手元に500万円が残る(仲介手数料等の諸費用を差し引いた金額)

オーバーローンの場合|自己資金追加または住み替えローン

オーバーローン(売却価格 < 住宅ローン残債)の場合、以下の対処法があります。

  • ①自己資金で差額を補填: 売却代金で不足する分を自己資金で用意
  • ②住み替えローンを利用: 既存ローン残債と新居購入資金を一本化して借り入れ(詳細は後述)

: 売却価格2,000万円、住宅ローン残債2,500万円の場合

  • 差額500万円を自己資金で補填、または住み替えローンで対応

税制優遇措置|譲渡損失の繰越控除

オーバーローンで売却し、譲渡損失が出た場合、国土交通省の譲渡損失の繰越控除を利用できます。

  • 譲渡損失を他の所得と相殺(損益通算)
  • 控除しきれない分は翌年以降最大3年間繰り越し可能
  • 確定申告が必須

選択肢②|賃貸に出す方法(リロケーション)

転勤等で一時的に住めなくなった場合、賃貸に出す方法があります。ただし、住宅ローンは「本人居住」が前提のため、金融機関の承認が必須です。

賃貸に出す場合の金融機関の承認

住宅ローン契約には「居住義務条項」があり、契約者本人または家族が住むことが条件です。無断で賃貸に出すと契約違反となり、残債の一括返済を求められる可能性があります。

金融機関への連絡時に必要な書類:

  • 転勤辞令のコピー(転勤の場合)
  • 賃貸契約書のコピー(賃貸に出す場合)
  • 一時的な転居である旨を説明する書類

住宅金融支援機構(フラット35)の場合、転居届の提出が必要です。

リロケーションの仕組みと費用

リロケーションとは、転勤等で一時的に住めなくなった住宅を、期間限定で賃貸に出すサービスです。

  • 管理手数料: 賃料の5-10%程度
  • 契約期間: 2-3年の定期借家契約が一般的
  • メリット: 家賃収入でローン返済を継続できる
  • デメリット: 空室リスク、原状回復費用

住宅ローン控除への影響

賃貸に出すと、国税庁の住宅ローン控除の居住要件を満たさなくなるため、控除が適用停止されます。

ただし、転勤の特例措置があり、やむを得ない事情での転居なら、再居住時に控除を再開できます(残存期間のみ)。税務署への届出が必要です。

選択肢③|住み替えローンを利用する方法

オーバーローンの場合、住み替えローンを利用することで、既存ローン残債と新居購入資金を一本化して借り入れることができます。

住み替えローンの仕組み

住み替えローンは、以下の2つを合算して借り入れます。

  • 既存住宅ローンの残債(売却代金で完済できない分)
  • 新居の購入資金

: 売却価格2,000万円、住宅ローン残債2,500万円、新居購入価格3,500万円の場合

  • 差額500万円(2,500万円 - 2,000万円)
  • 新居購入資金3,500万円
  • 合計4,000万円を住み替えローンで借り入れ

審査基準と必要書類

住み替えローンは担保価値以上の借入となるため、通常の住宅ローンより審査が厳しくなります。

審査基準:

  • 年収: 400万円以上が目安
  • 勤続年数: 3年以上が目安
  • 返済負担率: 35%以内(年収に占める年間返済額の割合)

必要書類:

  • 既存ローンの返済予定表
  • 新居の売買契約書
  • 収入証明書(源泉徴収票等)
  • 本人確認書類

月々の返済負担の増加に注意

住み替えローンは借入額が大きくなるため、月々の返済負担が増加します。返済計画を慎重に検討し、無理のない範囲で借り入れることが重要です。

金融機関への連絡方法と必要書類

住宅ローン返済中に引っ越す場合、金融機関への連絡は最優先事項です。

連絡のタイミング|引っ越し決定後すぐに

金融機関への連絡は、引っ越しが決定したらすぐに行いましょう。遅くとも1ヶ月前には連絡が必要です。

必要書類|転勤辞令・賃貸契約書等

金融機関への連絡時に必要な書類は、以下の通りです。

  • 転勤の場合: 転勤辞令のコピー
  • 賃貸に出す場合: 賃貸契約書のコピー
  • その他: 本人確認書類、住宅ローン契約書

フラット35の場合の手続き

住宅金融支援機構(フラット35)の場合、Webサイトから「転居届」をダウンロードして提出します。

無断転居は契約違反となり、残債の一括返済を求められる可能性があるため、必ず連絡してください。

まとめ|金融機関への連絡が最優先、自分の状況に合った選択肢を

住宅ローン返済中の引っ越しは可能ですが、金融機関への事前連絡が最重要です。アンダーローンなら売却がスムーズですが、オーバーローンの場合は自己資金追加または住み替えローンの検討が必要です。

賃貸に出す場合は金融機関の承認が必須で、無断で賃貸に出すと契約違反となります。

次のアクションは、住宅ローン残債と売却相場の確認、そして金融機関への相談です。信頼できる不動産会社や金融機関と相談しながら、無理のない計画を立てましょう。

よくある質問

Q1金融機関に無断で引っ越すとどうなりますか?

A1契約違反となり、住宅ローン残債の一括返済を求められる可能性があります。住宅ローンは「本人居住」が前提のため、無断転居は居住義務条項違反です。転勤や家族構成の変化等、やむを得ない事情がある場合でも、必ず事前に金融機関へ連絡してください。

Q2住宅ローン控除は引っ越したら受けられなくなりますか?

A2居住しなくなると控除適用が停止されます。ただし転勤の特例措置があり、やむを得ない事情での転居なら、再居住時に控除を再開できます(残存期間のみ)。再開には税務署への届出が必要です。詳細は国税庁の公式サイトをご確認ください。

Q3オーバーローンの場合は引っ越しできませんか?

A3可能ですが対処が必要です。①自己資金で差額を補填する、②住み替えローンを利用する、③賃貸に出して家賃収入でローン返済を継続する、の3つの選択肢があります。住み替えローンは審査が厳しいため、金融機関に事前相談することをおすすめします。

Q4転勤で一時的に転居する場合、賃貸に出しても大丈夫ですか?

A4金融機関の事前承認があれば可能です。転勤辞令を提出し、一時的な転居である旨を説明してください。承認後にリロケーション(期間限定の賃貸)サービスを利用するのが一般的です。無断で賃貸に出すと契約違反となるため、必ず連絡が必要です。

Q5住み替えローンの審査は通常の住宅ローンより厳しいですか?

A5厳しくなります。担保価値以上の借入となるため、年収・勤続年数・返済負担率を厳格に審査されます。返済負担率は35%以内が目安です。審査に落ちた場合は、自己資金を追加するか、売却を先行する必要があります。