住宅ローンは手取りの何割が適正?返済目安を解説

公開日: 2025/11/11

住宅ローンは手取りの何割が適正?無理なく返済できる目安

住宅購入を検討する際、「手取り収入に対してどの程度の返済額が無理のない範囲なのか」は誰もが抱く疑問です。金融機関が提示する借入可能額は、必ずしも無理なく返済できる金額とは限りません。

この記事では、手取り収入に対する適正な返済額の割合、金融機関の審査基準との違い、手取り別の具体的なシミュレーションを、住宅金融支援機構やメガバンクの公式情報を元に詳しく解説します。

将来の支出増加やリスクを考慮した保守的な判断基準を理解し、無理のない住宅ローン計画を立てることができます。

この記事のポイント

  • 無理なく返済できる目安は手取り収入の20-25%以内
  • 金融機関の審査基準(返済負担率30-35%)と実際の返済可能額は異なる
  • 住宅ローン以外の費用(固定資産税・管理費等、手取りの5-10%)も考慮する必要がある
  • 将来の支出増加(教育費・老後資金)、金利上昇リスク、収入減少リスクを考慮した保守的な判断が重要
  • 完済年齢は65歳(定年時)までに設定し、ボーナス返済は極力避ける

「借りられる金額」と「返せる金額」の違いを理解する

住宅ローンを検討する際、最も重要なのは「借りられる金額」と「返せる金額」の違いを理解することです。

金融機関の審査基準(返済負担率30-35%)

金融機関は、年収に占める年間返済額の割合である「返済負担率(返済比率)」を基準に審査を行います。

住宅金融支援機構のフラット35では、以下の基準が設定されています。

年収 返済負担率の上限
400万円未満 30%以下
400万円以上 35%以下

(出典: 住宅金融支援機構 - 返済負担率の基準と計算方法

この基準は、金融機関が「貸せる上限額」を示すものであり、実際に無理なく返済できる金額とは異なります。

実際に無理なく返済できる目安(手取りの20-25%)

金融機関の審査基準は年収ベースですが、実際の返済は手取り収入から行います。

三菱UFJ銀行は、理想的な返済比率は手取り収入の20-25%以内と説明しています。

なぜ手取りベースで計算するのか?

額面年収から税金・社会保険料(約20%)を引いた額が手取り年収です。例えば、額面年収500万円の場合、手取り年収は約400万円となります。

返済負担率30%を額面年収で計算すると年間150万円(月12.5万円)になりますが、これは手取り年収の37.5%に相当し、家計を大きく圧迫します。

額面年収と手取り年収の違い

額面年収と手取り年収の違いを理解しないと、返済可能額を過大評価してしまいます。

項目 額面年収500万円の場合
額面年収 500万円
税金・社会保険料(約20%) 100万円
手取り年収 400万円
手取り月収 約33.3万円

住宅ローンの返済可能額は、手取り年収をベースに計算する必要があります。

手取りの20-25%が無理のない返済目安である理由

手取りの20%が推奨される根拠は、住宅ローン以外の費用や将来の支出増加を考慮した保守的な判断にあります。

住宅ローン以外の住宅関連費用も考慮する

住宅ローンの返済額以外に、以下の費用が発生します。

費用項目 年間目安額(例:マンション3,000万円)
固定資産税・都市計画税 10~15万円
火災保険料 2~3万円
管理費・修繕積立金(マンション) 24~36万円(月2~3万円)
合計 36~54万円

(出典: SBIアルヒ - 住宅ローンは手取りの何割を目安に?

これらの費用は手取りの5-10%程度に相当します。住宅ローン返済額(手取りの20-25%)と合わせると、住宅費用全体は手取りの30%前後となり、家計の許容範囲内に収まります。

将来の支出増加(教育費・老後資金・急な出費)への備え

手取りの20%以内で返済額を設定すれば、将来の支出増加にも対応しやすくなります。

子どもの教育費

  • 私立高校:年間約100万円
  • 私立大学(文系):年間約120万円
  • 私立大学(理系):年間約160万円

子どもが複数いる場合や、私立への進学を希望する場合、教育費は家計の大きな負担となります。

老後資金

総務省の家計調査によると、高齢夫婦無職世帯の月平均支出は約26万円です。年金だけでは不足するため、住宅ローン返済中から老後資金を積み立てる必要があります。

急な出費

  • 車の買替え(数百万円)
  • 家電の故障・買替え(数十万円)
  • 親の介護費用(月数万円~数十万円)

これらの支出に備えるためにも、返済比率を手取りの20%以内に抑えることが推奨されます。

金利上昇リスクと収入減少リスク

変動金利で借入をする場合、金利上昇リスクを考慮する必要があります。

金利が1%上昇した場合の影響

借入額3,000万円、返済期間35年の場合:

金利 月々の返済額
0.5% 約7.8万円
1.5% 約9.2万円
差額 約1.4万円

現在の金利で返済比率が手取りの25%だと、金利上昇時に30%を超えて家計を圧迫する可能性があります。金利が1%上昇しても返済可能な余裕を持つことが重要です。

収入減少リスク

  • 転職・退職による収入減少
  • 病気・ケガによる休職
  • 配偶者の退職(共働き世帯)

これらのリスクに備えるためにも、返済比率を低めに設定することが安全です。

手取り別の返済額シミュレーション

手取り月収別の具体的な返済額と借入可能額の目安を提示します。

手取り月収25万円の場合

返済比率 月々の返済額 年間返済額 借入可能額(金利1%、35年) 住宅ローン以外の費用(月) 総住宅費
20% 5.0万円 60万円 約1,960万円 約1.5万円 6.5万円
25% 6.3万円 75万円 約2,450万円 約1.5万円 7.8万円

(出典: SBIアルヒ - 住宅ローンは手取りの何割を目安に?

手取り月収25万円の場合、無理のない返済額は月5~6万円程度です。

手取り月収30万円の場合

返済比率 月々の返済額 年間返済額 借入可能額(金利1%、35年) 住宅ローン以外の費用(月) 総住宅費
20% 6.0万円 72万円 約2,350万円 約2.0万円 8.0万円
25% 7.5万円 90万円 約2,940万円 約2.0万円 9.5万円

手取り月収30万円の場合、無理のない返済額は月6~7.5万円程度です。

手取り月収40万円の場合

返済比率 月々の返済額 年間返済額 借入可能額(金利1%、35年) 住宅ローン以外の費用(月) 総住宅費
20% 8.0万円 96万円 約3,130万円 約3.0万円 11.0万円
25% 10.0万円 120万円 約3,920万円 約3.0万円 13.0万円

手取り月収40万円の場合、無理のない返済額は月8~10万円程度です。

返済可能額を決める際の注意点

返済可能額を決める際には、以下の点に注意が必要です。

完済年齢は65歳(定年時)までが目安

完済年齢を65歳までに設定することで、定年後も多額の返済が残り老後資金を圧迫するリスクを回避できます。

例:

  • 30歳で借入:返済期間35年まで設定可能(完済年齢65歳)
  • 40歳で借入:返済期間25年までに設定すべき(完済年齢65歳)
  • 50歳で借入:返済期間15年までに設定すべき(完済年齢65歳)

ゼロリノベは、完済年齢を65歳までに設定することを推奨しています。

借入時の年齢と家族構成を考慮する

借入時の年齢や家族構成により、適正な返済額は変動します。

年齢による違い

  • 30代前半:長期返済が可能で、月々の返済額を抑えやすい
  • 40代以降:返済期間が短くなるため、月々の返済額が増える。借入額を抑えるか、頭金を多めに用意する必要がある

家族構成による違い

  • 子どもが小さい:将来の教育費増加を見込んで、返済比率を低めに設定
  • 子どもが独立済み:教育費負担がないため、返済比率を高めに設定可能

ボーナス返済は極力避ける

ボーナス返済は業績悪化で支給されないリスクがあるため、極力避けるべきです。

リスク

  • 業績悪化でボーナスが減額・不支給となる
  • 転職によりボーナスの水準が変わる

ボーナスは貯蓄や繰上返済に充て、月々の給与のみで無理なく返済できる金額を基準にすることを推奨します。

まとめ:返済可能額は手取りの20-25%を目安に慎重に判断

住宅ローンの返済額は、手取り収入の20-25%以内が無理のない目安です。金融機関が貸してくれる上限額(年収の30-35%)ではなく、実際に返済できる金額(手取りの20-25%)を基準にすべきです。

住宅ローン以外の費用(固定資産税・管理費等、手取りの5-10%)も考慮すると、住宅費用全体は手取りの30%以内に収まります。将来の支出増加(教育費・老後資金)、金利上昇リスク、収入減少リスクを考慮した保守的な判断が重要です。

完済年齢は65歳までに設定し、借入時の年齢や家族構成を考慮した現実的な計画を立てましょう。ボーナス返済は極力避け、月々の給与のみで返済できる金額を基準にしてください。

不明点がある場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)や金融機関に相談し、無理のない住宅ローン計画を立てることをおすすめします。

よくある質問

Q1ボーナス返済は返済額に含めて計算すべきですか?

A1ボーナス返済は極力避けるべきです。業績悪化でボーナスが減額・不支給となるリスクがあり、返済が困難になる可能性があります。また転職によりボーナスの水準が変わることもあります。ボーナスは貯蓄や繰上返済に充て、月々の給与のみで無理なく返済できる金額を基準にすることを推奨します。月々の返済額を手取りの20-25%以内に抑えることで、ボーナスに頼らない安定した返済計画を立てることができます。

Q2子どもの教育費が増えたら返済が厳しくなりませんか?

A2手取りの20%以内で返済額を設定すれば、教育費増加にも対応しやすくなります。私立高校で年間約100万円、私立大学(文系)で年間約120万円、私立大学(理系)で年間約160万円の支出が見込まれます。子どもが複数いる場合や私立への進学を希望する場合、教育費は家計の大きな負担となるため、借入時から将来の教育費を考慮した保守的な計画が重要です。返済比率を低めに設定することで、教育費増加時にも家計を圧迫せずに対応できます。

Q3繰上返済はすべきですか?

A3余裕資金がある場合、期間短縮型の繰上返済は総返済額を減らす効果があります。ただし、住宅ローン控除(年末残高の0.7%)の適用期間中は、控除額と利息軽減効果を比較して判断すべきです。例えば、金利0.5%で借入している場合、控除率0.7%の方が有利なため、控除期間中は繰上返済せずに貯蓄する方が得策です。また、手元資金を全て繰上返済に充てると急な出費(車の故障、家電の買替え、医療費等)に対応できないリスクがあるため、生活費の6ヶ月分程度の貯蓄を残した上で繰上返済を検討してください。

Q4共働きの場合、返済比率はどう計算すればよいですか?

A4夫婦合算の手取り収入に対して20-25%以内で計算できますが、産休・育休・退職等で一方の収入が減少するリスクを考慮し、主たる収入者の手取りのみで返済できる金額にすることが安全です。例えば、夫の手取り月収30万円、妻の手取り月収25万円の場合、合算すると月55万円となり、返済額は11~13.8万円となりますが、妻の退職リスクを考えると夫の収入のみで返済できる6~7.5万円を目安にする方が保守的です。共働き前提の借入は、収入減少時に返済が困難になるリスクが高いため注意が必要です。

Q5変動金利の場合、金利上昇リスクにどう備えるべきですか?

A5変動金利は金利上昇リスクがあるため、現在の金利で返済比率が手取りの20%程度に抑えることが重要です。金利が1%上昇した場合、借入額3,000万円・返済期間35年では月々の返済額が約1.4万円増加します。現在の金利で返済比率が25%だと、金利上昇時に30%を超えて家計を圧迫する可能性があります。金利が1%上昇しても返済可能な余裕を持つことで、金利上昇時の家計圧迫を防げます。固定金利と変動金利のメリット・デメリットを比較し、ご自身のリスク許容度に応じて選択してください。