住宅ローンで借金一本化できる?銀行の対応と注意点

公開日: 2025/11/11

住宅ローンで借金を一本化できる?結論と基本知識

複数の借金を抱えている方にとって、「住宅ローンで借金を一本化できないか」という疑問は切実です。返済管理が複雑で、毎月の返済負担が重く感じられる状況では、一本化による解決を期待するのは自然なことです。

結論から言えば、住宅ローン本体に他の借金を直接含めることは原則として不可です。ただし、①住宅ローン借り換え時に既存ローンを組み込む銀行商品、②諸費用ローンで他の債務を返済する方法、③おまとめローンの活用、という限定的な選択肢があります。

本記事では、金融庁や各銀行の公式情報を元に、住宅ローンで借金を一本化する実態と注意点を解説します。

この記事のポイント

  • 住宅ローン本体に他の借金を含めることは原則不可だが、限定的な選択肢がある
  • 借り換え時の既存ローン組み込み、諸費用ローン活用、おまとめローンという3つの方法が存在
  • 金利が下がっても返済期間延長で総返済額が増える可能性に注意
  • 返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)が25-35%を超えると審査に通らないリスク
  • 多重債務の根本的解決は債務整理(任意整理・個人再生)という選択肢もある

住宅ローンで借金一本化の3つの方法

住宅ローンで借金を一本化する方法は、以下の3つに分類されます。それぞれ対応する金融機関や条件が異なるため、正確に理解する必要があります。

借り換え時に既存ローンを組み込む方法

一部の銀行では、住宅ローンの借り換え時に、カードローンや自動車ローン等の既存借入を組み込める商品を提供しています。これは新たな住宅ローンで現在のローンと他の借金をまとめて借り換え、既存の債務を一括返済する仕組みです。

ただし、全ての銀行が対応しているわけではなく、公式に公開されていない審査基準があるため、事前に複数の金融機関に確認することが重要です。また、借入総額が増えることで返済負担率が悪化し、審査に通らない可能性もあります。

諸費用ローンで他の債務を返済する方法

住宅ローンとは別に「諸費用ローン」を組み、そこから他の債務を一括返済する方法もあります。諸費用ローンは本来、登記費用や仲介手数料などの購入諸費用に充てるものですが、一部金融機関では資金使途の範囲が広く設定されています。

この方法のリスクは、金融機関の一般的な諸費用ローン金利は年2-4%程度(各金融機関公式サイトより)で、住宅ローンより高いことです。カードローン(年15%程度)よりは低いですが、住宅ローン(年0.5-1.5%程度)と比べると負担が大きくなります。

おまとめローンとの違い

「おまとめローン」は、複数の借金を一本化する専用ローン商品で、銀行・労働金庫・消費者金融が提供しています。住宅ローンとの主な違いは以下の通りです。

項目 住宅ローン おまとめローン
金利 0.5-1.5% 1.5-15%
資金使途 住宅購入・借り換え 借金一本化専用
審査基準 厳しい 比較的緩やか
担保 不動産 無担保が多い

(出典: 東京スター銀行

おまとめローンは借金一本化専用のため、審査基準が住宅ローンより緩やかな場合がありますが、金利が高い点に注意が必要です。

一本化のメリットと期待できる効果

借金を一本化することで得られるメリットは、主に以下の3つです。

金利差による総返済額削減

カードローン(年15%程度)を住宅ローン(年1%程度)に統合できれば、利息負担が大幅に減少します。例えば、300万円の借入を金利15%で5年返済する場合と、金利1%で5年返済する場合を比較すると、総利息額は約130万円 vs 約7.5万円となり、大きな差が生まれます。

ただし、金利が下がっても返済期間が延びれば総返済額が増えるという数学的な事実があります。例えば、300万円を金利1%で返済期間を10年に延ばすと、総利息額は約15万円に増加します。金利差だけでなく、返済期間と総返済額を総合的に判断する必要があります。

月々の返済負担軽減

複数の借金をまとめることで、月々の返済額が減少する場合があります。例えば、以下のような状況を想定します。

現状(複数借入):

  • カードローン: 月5万円
  • 自動車ローン: 月3万円
  • 合計: 月8万円

一本化後:

  • 住宅ローンに組み込み: 月5万円(返済期間延長により)

※計算例は仮定に基づくシミュレーションです。

このように、月々の返済額が減ることで家計の負担が軽くなります。ただし、返済期間が延びるため、総返済額が増える可能性がある点に注意してください。

返済管理の簡素化

複数の借金があると、返済日や返済額がバラバラで管理が複雑になります。一本化することで、返済日が1つになり、返済計画が立てやすくなるというメリットがあります。

一本化のデメリットとリスク

借金一本化には重大なデメリットとリスクがあり、安易に推奨できない理由がここにあります。

返済期間延長で総返済額が増える可能性

金利が下がっても、返済期間が延びれば総返済額は増えるという数学的事実を理解する必要があります。以下の比較表をご覧ください。

ケース 借入額 金利 返済期間 月返済額 総返済額
A: カードローン 300万円 15% 5年 約7.1万円 約427万円
B: 一本化(短期) 300万円 1% 5年 約5.2万円 約308万円
C: 一本化(長期) 300万円 1% 15年 約1.9万円 約340万円

※元利均等返済、ボーナス払いなしの場合の試算例

月々の返済額を抑えるために返済期間を延ばすと(ケースC)、金利が下がってもケースBより総返済額が増えます。「まとめれば必ず得をする」という誤解を避け、シミュレーションで確認することが重要です。

返済負担率悪化で審査に通らないリスク

返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合です。三井住友銀行によると、住宅ローン審査では返済負担率25-35%以下が目安とされています。

重要なのは、他の借金も含めて計算されるという点です。例えば、年収400万円の方が住宅ローン年間返済額100万円(返済負担率25%)を申し込む場合、既に他の借金で年間60万円返済していると、合計返済負担率は40%となり、審査基準を超えてしまいます。

借金を一本化しようとして住宅ローンを申し込んでも、返済負担率が悪化していると審査に通らない可能性が高いのです。

借入額増加による将来的な返済負担

住宅ローンに他の借金を組み込むと、総借入額が増加します。これにより、将来的な収入減少(転職・リストラ等)や支出増加(子どもの教育費等)に対応しにくくなるリスクがあります。

返済期間が長くなるほど、将来の不確実性が高まります。現在の家計状況だけでなく、将来のライフプランも考慮して判断する必要があります。

審査に通るための条件と金融機関の対応

住宅ローンで借金を一本化する際、審査に通るための条件を理解しておくことが重要です。

返済負担率と審査基準

金融機関の審査では、返済負担率が重要な指標となります。一般的な基準は以下の通りです。

  • 年収400万円未満: 返済負担率30%以下
  • 年収400万円以上: 返済負担率35%以下

ただし、他の借金も含めて計算されるため、既に借金がある状態で住宅ローンを組もうとすると、返済負担率が基準を超えやすくなります。

総量規制と住宅ローンの関係

総量規制は、貸金業法により年収の3分の1を超える借入を制限する規制です。しかし、住宅ローンは総量規制の対象外です。これは、住宅ローンが銀行法に基づく融資であり、貸金業法の規制を受けないためです。

ただし、総量規制対象外だからといって無制限に借りられるわけではありません。審査では返済能力が重視され、返済負担率が基準内であることが求められます。

金融機関により対応が異なる実態

借り換え時に既存ローンを組み込める銀行商品は、全ての金融機関で提供されているわけではありません。また、公式サイトに明記されていない場合も多く、問い合わせて初めて判明することがあります。

複数の金融機関(メガバンク、地方銀行、ネット銀行、労働金庫等)に事前相談し、対応可能か確認することが重要です。

多重債務の根本的解決:債務整理という選択肢

住宅ローンでの借金一本化が難しい場合、または根本的な解決を目指す場合は、債務整理という選択肢があります。

任意整理・個人再生・自己破産の概要

債務整理には主に3つの方法があります。

方法 内容 住宅への影響
任意整理 債権者と交渉して利息カット・分割払い 影響なし
個人再生 裁判所を通じて債務を大幅減額(最大1/5) 住宅ローン特則で維持可能
自己破産 裁判所を通じて債務を免除 原則として手放す

多重債務の根本的解決は債務整理であり、住宅ローンでの一本化はあくまで選択肢の一つです。

住宅ローン特則(個人再生)の仕組み

個人再生の「住宅ローン特則」を利用すれば、住宅を残しながら他の借金を整理できます。これは、住宅ローンはそのまま返済を続け、他の債務(カードローン・消費者金融等)を大幅に減額する制度です。

例えば、住宅ローン2,000万円・他の借金500万円がある場合、個人再生により他の借金を100万円に減額し、住宅ローンはそのまま返済を続けることが可能です。

**ただし、個別具体的な債務整理のアドバイスは弁護士・司法書士の専門領域です。**自分の状況に適した方法を知りたい場合は、日本司法書士会連合会日本弁護士連合会に相談することを推奨します。

まとめ:住宅ローンで借金一本化の判断基準

住宅ローンで借金を一本化することは、原則として不可ですが、限定的な選択肢があるというのが実態です。借り換え時の既存ローン組み込み、諸費用ローンの活用、おまとめローンという3つの方法がありますが、それぞれに条件やリスクがあります。

判断基準は以下の通りです:

  • 金利差だけでなく、返済期間と総返済額を総合的に比較する
  • 返済負担率が25-35%以内に収まるか確認する
  • 審査に通るかは金融機関に事前相談する
  • 根本的解決が必要な場合は債務整理も検討する

次のアクションとして、①複数の金融機関に相談して対応可能か確認する、②返済シミュレーションで総返済額を比較する、③多重債務で困っている場合は弁護士・司法書士に相談する、ことを推奨します。

安易な一本化は将来的な返済負担を増やす可能性があります。正確な情報をもとに、慎重に判断しましょう。

よくある質問

Q1住宅ローンで借金一本化すると必ず返済が楽になりますか?

A1必ずしもそうとは限りません。金利が下がっても返済期間が延びれば総返済額が増える場合があります。例えば、300万円を金利1%で5年返済すると総返済額約308万円ですが、15年返済に延ばすと約340万円になります。金利差・返済期間・総返済額を総合的に比較し、返済負担率が25-35%以下に収まるか確認する必要があります。

Q2総量規制(年収の3分の1制限)は住宅ローンに適用されますか?

A2総量規制は貸金業法による規制で、住宅ローンは対象外です。住宅ローンは銀行法に基づく融資であり、貸金業法の規制を受けません。ただし、審査では返済能力が重視され、返済負担率(年収に対する年間返済額の割合)が25-35%以下であることが目安です。他の借金も含めて計算されるため、既に借金がある場合は審査が厳しくなります。

Q3どの銀行でも住宅ローンで借金一本化できますか?

A3金融機関により対応が大きく異なり、公式に公開されていない審査基準があります。借り換え時に既存ローンを組み込める一部銀行の商品はありますが、全ての銀行で対応しているわけではありません。メガバンク、地方銀行、ネット銀行、労働金庫等、複数の金融機関に事前相談して対応可能か確認することが重要です。

Q4住宅ローンで一本化できない場合はどうすればいいですか?

A4おまとめローン(専用商品、金利1.5-15%)の活用、または債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)という選択肢があります。多重債務の根本的解決は債務整理であり、個人再生の住宅ローン特則を使えば住宅を残しながら他の借金を整理できます。個別具体的なアドバイスは弁護士・司法書士の専門領域のため、日本司法書士会連合会や日本弁護士連合会への相談を推奨します。