住宅ローンのオーバーローンとは?なぜ問題なのか
住宅ローンの申込を検討している方の中には、「オーバーローン」という言葉を耳にして不安を感じている方もいるかもしれません。
オーバーローンとは、物件価格を超える融資を受ける行為を指します。例えば、2000万円の物件に対して2100万円の融資を受け、諸費用100万円を上乗せするケースです。金融機関の許可なくこうした行為を行うと、契約違反となり、法的リスク(契約解除、一括返済請求、刑事責任等)が発生します。
この記事では、オーバーローンが発覚する原因、発覚時の影響、対処法、予防策を、国土交通省や金融庁の公式情報、弁護士の見解を元に解説します。
この記事のポイント
- オーバーローンが金融機関にバレると、一括返済請求や契約解除のリスクがある
- 発覚原因は、金融機関の定期査定、住民票の住所不一致、返済滞納等
- 詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性があり、実際に逮捕事例も存在する
- 発覚時は弁護士に相談し、金融機関と誠実に交渉することが重要
- 予防策として、正確な資金計画と金融機関への誠実な申告が不可欠
オーバーローンがバレる原因
オーバーローンは、以下のような原因で発覚します。
金融機関の定期査定・物件評価
金融機関は、融資先の物件評価を定期的に実施し、担保価値を確認しています。物件価格と融資額の乖離が大きい場合、オーバーローンが発覚する可能性があります。
住民票の住所不一致
住宅ローン控除の申請や金融機関への届出で、住民票の住所が物件と一致しない場合、居住実態の調査が入り、オーバーローンが明らかになることがあります。
返済滞納による調査
返済が滞ると、金融機関は契約内容や資金使途を詳細に調査します。この過程で、契約時の不正(物件価格の水増し等)が発覚するケースがあります。
二重契約の発覚
不動産会社が物件価格を水増しした契約書を別途作成する「二重契約」は、税務署や金融機関の調査で発覚するリスクが高い手口です。文書偽造罪・詐欺罪に該当するため、絶対に応じないでください。
オーバーローンがバレた場合の影響
オーバーローンが発覚すると、以下のような重大な影響が生じます。
期限の利益喪失による一括返済請求
住宅ローン契約違反により、分割返済の権利(期限の利益)を失い、残債全額の一括返済を請求されます。返済不能の場合、抵当権が実行され、自宅を差し押さえられます。
契約解除と金利優遇措置の取り消し
住宅ローン契約が解除され、適用されていた金利優遇措置が取り消される可能性があります。この場合、高金利での返済を求められることになります。
信用情報機関への記録
一括返済請求や返済滞納が発生すると、信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に「異動情報」として記録されます。この記録は5-10年間残り、その間は他の金融機関からの借入が困難になります。
刑事責任の可能性(詐欺罪)
虚偽の契約書を提出し、金融機関を欺いて融資を受けた場合、詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性があります。フラット35では実際に逮捕事例があり、有罪となれば懲役刑が科されることもあります。
| 影響 | 内容 |
|---|---|
| 一括返済請求 | 残債全額の即時返済を求められる |
| 契約解除 | 金利優遇措置の取り消し、高金利での返済 |
| 信用情報記録 | 5-10年間、他の金融機関からの借入が困難 |
| 刑事責任 | 詐欺罪による逮捕・起訴の可能性 |
オーバーローンが発覚した時の対処法
オーバーローンが発覚した場合、以下の対処法を検討してください。
専門家(弁護士・FP)に相談する
まずは弁護士やファイナンシャルプランナー(FP)に相談し、法的リスクと対応策を正確に把握することが重要です。専門家のサポートを受けることで、最悪の事態(競売・刑事訴追)を回避できる可能性があります。
金融機関と誠実に交渉する
金融機関に対して隠さず事情を説明し、返済計画の見直しや分割返済の交渉を行います。誠実な対応により、一括返済請求を回避できる場合もあります。
返済計画の見直しと債務整理の検討
一括返済が困難な場合、以下の選択肢を検討します。
- 任意売却: 競売よりも高値で売却できる可能性があり、残債を減らせます
- 個人再生: 住宅を維持しながら債務を圧縮できる制度です
- 自己破産: 返済不能の場合の最終手段です
放置すると競売にかけられ、より不利な結果になるため、早めの相談が重要です。
オーバーローンを防ぐための対策
オーバーローンを未然に防ぐには、以下の対策が有効です。
正確な資金計画を立てる
物件価格、諸費用、自己資金を正確に把握し、無理のない借入額を設定します。LTV比率(物件価格に対する融資額の比率)を80-90%程度に抑えることが推奨されます。
金融機関に正直に申告する
諸費用の融資が必要な場合は、金融機関に正式に相談します。多くの金融機関は「諸費用ローン」を提供しており、正規のルートで対応可能です。虚偽申告は契約違反であり、発覚すれば重大なペナルティを受けます。
不動産会社の提案を鵜呑みにしない
不動産会社が「二重契約で諸費用も融資を受けられる」等の提案をしても、契約違反・詐欺罪のリスクがあるため、絶対に応じないでください。金融機関の審査は厳格で、見積書・契約書を細かくチェックされるため、ごまかしは通用しません。
まとめ:オーバーローンは契約違反、発覚前に専門家に相談を
オーバーローンは重大な契約違反であり、発覚すれば一括返済請求や刑事責任のリスクがあります。しかし、パニックにならず冷静に対処することが重要です。
専門家(弁護士・FP)に早期に相談し、金融機関と誠実に交渉することで、最悪の事態を回避できる可能性があります。
今後住宅ローンを組む場合は、正確な資金計画と正直な申告を徹底し、オーバーローンのリスクを回避しましょう。
