住宅ローンは死亡時に自動的に免除される?
住宅ローンを組む際、「万が一のときは借金が免除される」と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。しかし、住宅ローンが死亡時に自動的に免除されるわけではありません。団体信用生命保険(団信)に加入していることが前提であり、団信に加入していない場合は遺族が返済義務を負うことになります。
この記事では、団信の仕組み、保障内容、加入条件、加入できない場合の対策を、住宅金融支援機構(フラット35)・金融庁等の公式情報を元に解説します。この記事は2025年10月時点の情報に基づいており、制度は改正される可能性があるため、最新情報は各機関の公式サイトをご確認ください。
住宅ローンを検討中の方、既に契約済みの方も、団信の正しい知識を身につけて家族を守る準備ができるようになります。
この記事のポイント
- 住宅ローンは団信に加入していれば死亡時に免除されるが、加入していない場合は遺族が返済義務を負う
- 団信は生命保険の一種で、健康告知が必要。持病がある場合は審査で否決される可能性がある
- 告知義務違反(持病を隠して加入)は保険契約解除の対象となり、死亡時でも保険金が支払われない
- 団信に加入できない場合は、フラット35(団信任意)・ワイド団信・民間生命保険での代替等の選択肢がある
- ペアローンや連帯債務では、夫婦それぞれが団信に加入する必要があり、片方だけが死亡した場合はその人の債務のみ免除される
団信の仕組みと保障内容
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローン契約者が死亡または高度障害状態になった際、保険会社が残債を金融機関に支払う生命保険です。金融機関が保険契約者、住宅ローン借主が被保険者となる団体保険の形態をとります。
団信の契約形態(金融機関が保険契約者、借主が被保険者)
団信は通常の生命保険とは異なり、金融機関が保険契約者、住宅ローン借主が被保険者となります。死亡時には保険会社が残債を金融機関に直接支払うため、遺族が受け取る保険金はありません。この仕組みにより、遺族が住宅ローンの返済義務を負わずに済みます。
基本保障:死亡・高度障害状態
団信の基本保障は「死亡」と「高度障害状態」の2つです。高度障害状態とは、以下のような重度の障害を指します。
- 両眼の視力を永久に失った
- 言語またはそしゃくの機能を永久に失った
- 両上肢・両下肢の用を永久に失った
- 中枢神経系・精神・胸腹部臓器の機能に著しい障害が残り、終身常に介護を要する状態
これらの状態に該当すると、死亡時と同様に住宅ローン残債が免除されます。
保険料は金利に含まれる(追加負担なし)
多くの金融機関では、団信の保険料が住宅ローン金利に含まれています。借主が直接保険料を支払う必要はなく、追加の費用負担はありません。ただし、フラット35では団信に加入する場合、別途保険料(年払い)を支払う必要があります。
三菱UFJ銀行によると、団信の保険料が金利に含まれるため、借主にとって分かりやすい仕組みとなっています。
団信の種類と保障範囲
団信には、基本保障(死亡・高度障害)のみをカバーする一般団信と、がんや3大疾病等の保障を追加した特約付き団信があります。
一般団信(死亡・高度障害のみ)
一般団信は、死亡または高度障害状態になった場合に住宅ローン残債が免除される基本的な保障です。多くの金融機関で標準提供されており、保険料は住宅ローン金利に含まれています。
がん団信(がん診断確定で免除)
がん団信は、がんと診断確定された際に住宅ローン残債が免除される特約です。ただし、金融機関により保障条件が異なり、診断確定のみで免除される商品もあれば、就業不能状態が一定期間(60日・12ヶ月等)続く必要がある商品もあります。金融機関により、無料で付帯できるものや、金利に年0.1-0.2%程度が上乗せされるものがあります。以下の点に注意が必要です。
- 上皮内がん(初期がん)は保障対象外の場合が多い
- 保障範囲は約款を確認することが重要
3大疾病・8大疾病保障
3大疾病保障は、がん・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態(診断確定・入院・就業不能等、商品により異なる)になった場合に住宅ローンが免除される特約です。金利に年0.2-0.3%程度が上乗せされます。
8大疾病保障は、3大疾病に加えて、高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎の5つの疾病をカバーします。保障範囲が広い分、金利上乗せも大きくなる傾向にあります。
三井住友銀行では、団信の種類と保障内容を詳しく解説しています。
団信の加入条件
団信は生命保険の一種であるため、加入には年齢制限と健康告知が必要です。
年齢制限(満15歳以上〜満70歳未満等)
団信の加入には年齢制限があります。多くの金融機関では、満15歳以上〜満70歳未満を対象としています。ただし、金融機関や保険商品により異なるため、個別に確認が必要です。
健康告知の具体的内容
団信に加入する際は、健康状態を保険会社に申告する必要があります。告知内容は以下の通りです。
| 告知項目 | 具体的内容 |
|---|---|
| 直近3ヶ月の治療歴 | 医師の診察・投薬・手術等を受けた病気・ケガ |
| 過去3年の手術・入院歴 | 継続7日以上の入院、または手術を受けた病気・ケガ |
| 身体障害の有無 | 手・足・眼・耳等の障害 |
持病や既往歴(糖尿病・高血圧・うつ病・がん等)がある場合、審査で否決される可能性があります。
PayPay銀行では、告知書の具体的な記入方法を解説しています。
告知義務違反のリスク
団信加入時に持病を隠して健康告知を行った場合、告知義務違反となります。発覚時には以下のリスクがあります。
- 保険契約が解除される
- 死亡時でも保険金が支払われない
- 遺族が住宅ローンの返済義務を負う
告知は正確に行い、不明点があれば金融機関や保険会社に確認することが重要です。
団信に加入できない場合の対策
健康状態により団信に加入できない場合でも、以下の選択肢があります。
フラット35(団信加入が任意)
住宅金融支援機構(フラット35)では、団信加入が任意となっています。団信に加入しなくても住宅ローンを組むことができます。ただし、団信に加入しない場合は死亡時に遺族が返済義務を負うため、民間の生命保険(収入保障保険・定期保険等)で代替する必要があります。
フラット35で団信に加入する場合、保険料は別途年払いで支払います。加入しない場合は保険料分だけ総返済額が減りますが、万が一のリスクは自己負担となります。
ワイド団信(引受基準緩和型)
ワイド団信は、健康状態の審査基準を緩和した団信です。持病や既往歴がある人も加入しやすいよう設計されています。ただし、金利に年0.2-0.3%程度が上乗せされます。
モゲチェックでは、ワイド団信を提供する金融機関を比較しています。
民間生命保険での代替
団信に加入できない場合、民間の収入保障保険や定期保険で住宅ローン返済をカバーする方法があります。保険料は別途支払う必要がありますが、ライフプランに応じた柔軟な保障設計が可能です。
民間生命保険で代替する場合、死亡保険金は相続税の課税対象となります(非課税枠500万円×法定相続人数あり)。一方、団信の保険金は金融機関に直接支払われるため、相続税の課税対象にはなりません。
まとめ:団信の正しい理解で家族を守る
住宅ローンは団信に加入していれば死亡時に免除されますが、加入していない場合は遺族が返済義務を負います。団信は生命保険の一種であり、健康告知が必要です。持病がある場合はワイド団信やフラット35等の選択肢を検討し、告知は正確に行いましょう。
ペアローンや連帯債務では、夫婦それぞれが団信に加入する必要があります。片方だけが死亡した場合、その人の債務のみが免除され、もう片方の債務は残ります。
住宅ローンを申し込む前に、自身の健康状態を確認し、適切な保障内容を選ぶことが家族を守るための第一歩です。信頼できる金融機関や保険会社に相談しながら、無理のない資金計画を立てましょう。
