住宅ローン分割融資とは?つなぎ融資との違いと対応銀行

公開日: 2025/11/6

住宅ローンの分割融資とは?注文住宅やリフォームで使う制度

注文住宅やリフォームを計画する際、「着工金や中間金はどうやって支払えばいいのか」と悩む方は少なくありません。建物が完成する前に支払いが必要になるため、通常の住宅ローンとは異なる資金調達の仕組みが求められます。

この記事では、分割融資の仕組み、つなぎ融資との違い、対応銀行の探し方、メリット・デメリットを解説します。住宅金融支援機構や各金融機関の公式情報を元に、2025年時点の最新情報を提供します。

注文住宅やリフォームを検討している方が、自分に合った資金調達方法を選べるようになります。

この記事のポイント

  • 分割融資は1つの住宅ローン契約で、着工時・上棟時・完成時など複数回に分けて融資を実行する制度
  • つなぎ融資とは異なり、住宅ローン金利が適用され、住宅ローン控除の対象になる
  • 対応銀行が限られるため、事前確認が必須(メガバンク・ネット銀行・フラット35取扱機関等)
  • 融資実行ごとに手数料・登記費用が発生するため、総費用を事前に把握することが重要

分割融資の基本的な仕組み

分割融資とは、1つの住宅ローン契約で、建物の完成前に複数回に分けて融資を実行する方式です。注文住宅では工事の進捗に応じて、着工時・上棟時・完成時などのタイミングで融資金が支払われます。

通常の住宅ローンは建物完成後に一括で融資が実行されますが、注文住宅では完成前に着工金(総費用の10-30%)や中間金(同30-40%)の支払いが必要です。分割融資を利用することで、これらの支払いタイミングに合わせて資金を受け取ることができます。

分割融資は住宅ローンの一部であるため、金利は住宅ローン金利(2025年時点で年0.5-1.5%程度)が適用されます。また、抵当権を土地・建物に設定する必要があり、融資実行のたびに登記手続きが発生します。

分割融資とつなぎ融資の違い

分割融資とよく比較されるのが「つなぎ融資」です。両者は似ているようで、契約形態・金利・担保の有無など、重要な違いがあります。

契約形態の違い(1つの住宅ローン vs 別融資)

分割融資は1つの住宅ローン契約の中で、複数回に分けて融資を実行する方式です。住宅ローン本体の一部として扱われます。

つなぎ融資は住宅ローン契約とは別の短期融資です。建物完成前の支払いを一時的に立て替え、建物完成後に住宅ローンの融資金で一括返済します。

金利の違い(住宅ローン金利 vs 2-4%)

金利面では分割融資が有利です。

項目 分割融資 つなぎ融資
金利 住宅ローン金利(年0.5-1.5%程度) 年2-4%程度
金利負担 低い 高い
適用期間 借入期間全体 建物完成までの数ヶ月〜1年

(2025年時点の一般的な水準)

つなぎ融資の金利は住宅ローンよりも割高に設定されているため、利用期間が長引くほど金利負担が増えます。

担保・抵当権の有無

分割融資は抵当権の設定が必須です。土地・建物の両方に抵当権を設定し、融資実行のたびに登記手続きが発生します。登記費用は数万〜10万円程度(融資実行回数による)が目安です。

つなぎ融資は無担保で利用できます。抵当権設定が不要なため、登記費用は発生しません。ただし、金利が高い分、総費用では分割融資の方が有利になる場合が多いです。

住宅ローン控除の適用可否

分割融資は住宅ローン控除の対象になります。借入期間10年以上の場合、年末ローン残高の0.7%を所得税から控除できます(最長13年)。

つなぎ融資は住宅ローン控除の対象外です。つなぎ融資は短期融資として扱われるため、税制上の優遇措置は受けられません。

この違いは大きく、長期的な負担に影響するため、選択時には必ず考慮すべきポイントです。

分割融資が必要なケース

分割融資は主に以下の2つのケースで利用されます。

注文住宅の着工金・中間金支払い

注文住宅では、工事代金を着工時・上棟時・完成時に分割で支払う契約が一般的です。

支払いタイミングと金額の目安

タイミング 支払額の目安 融資実行
着工時 総費用の10-30% 1回目
上棟時 総費用の30-40% 2回目
完成時 残額 3回目

(工務店・ハウスメーカーとの契約による)

例えば、総費用3,000万円の注文住宅を建てる場合、着工時に300-900万円、上棟時に900-1,200万円の支払いが必要になります。これらを自己資金で賄うのは難しいため、分割融資が有効です。

大規模リフォームの段階的支払い

大規模なリフォーム(増築・全面改装等)でも、工事の進捗に応じて段階的な支払いが求められる場合があります。

リフォーム費用が数百万円以上になる場合、着工時・中間時・完成時に分けて支払う契約が一般的です。分割融資を利用することで、リフォーム期間中の資金繰りをスムーズにできます。

分割融資ができる銀行の探し方

分割融資は全ての金融機関で利用できるわけではありません。対応銀行が限られるため、事前に確認することが必須です。

2025年版対応銀行リスト

2025年時点で分割融資に対応している主な金融機関は以下の通りです。

メガバンク

  • みずほ銀行(追加手数料なしと明記)
  • 三菱UFJ銀行
  • 三井住友銀行

ネット銀行

  • 住信SBIネット銀行
  • SBI新生銀行
  • イオン銀行

(2025年時点の情報。詳細は各金融機関に確認してください)

みずほ銀行は、分割融資を利用しても追加の手数料が発生しないと公式サイトで明記しています。ただし、他の金融機関では融資実行ごとに手数料(借入額の2.2%等)が発生する場合があるため、事前に見積もりを取得することが重要です。

フラット35取扱機関

住宅金融支援機構のフラット35を取り扱う金融機関の多くは、分割融資に対応しています。

フラット35は公的住宅ローンであり、注文住宅向けの分割融資制度が整備されています。金利は全期間固定で、審査基準も明確です。フラット35取扱機関は全国に300以上あるため、地方在住の方でも利用しやすいのが特徴です。

地方銀行・信用金庫

地方銀行や信用金庫も、地域によっては分割融資に対応しています。

地域密着型の金融機関は、地元の工務店・ハウスメーカーとの連携があり、柔軟な対応が期待できる場合があります。ただし、対応可否は金融機関によって異なるため、事前に複数の金融機関に相談して条件を比較することをおすすめします。

分割融資のメリット・デメリット

分割融資には明確なメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。

メリット(金利が低い、住宅ローン控除適用)

メリット1: 金利が住宅ローン金利で低い

分割融資の金利は住宅ローン金利(年0.5-1.5%程度)が適用されるため、つなぎ融資(年2-4%)と比較して金利負担を大幅に抑えられます。

例:借入額3,000万円、着工から完成まで6ヶ月の場合

  • 分割融資(金利1.0%):利息約15万円
  • つなぎ融資(金利3.0%):利息約45万円

金利負担だけで30万円の差が生じます。

メリット2: 住宅ローン控除の対象になる

分割融資は住宅ローンの一部として扱われるため、住宅ローン控除(借入期間10年以上で年末ローン残高の0.7%を所得税から控除、最長13年)の対象になります。

つなぎ融資は対象外のため、税制面でも分割融資が有利です。

デメリット(手数料・登記費用が複数回、対応銀行が限られる)

デメリット1: 融資実行ごとに手数料・登記費用が発生

分割融資では、融資実行のたびに以下の費用が発生します。

  • 融資実行手数料(金融機関による)
  • 登記費用(抵当権設定登記):数万〜10万円程度/回

融資実行が3回なら、登記費用だけで数十万円になる可能性があります。事前に総費用を見積もり、つなぎ融資との比較を行うことが重要です。

デメリット2: 対応金融機関が限られる

分割融資に対応している金融機関は限られます。全てのネット銀行・地方銀行で利用できるわけではないため、希望の金融機関で利用できない場合、他の選択肢を検討する必要があります。

複数の金融機関に相談して、金利・手数料・融資実行タイミングを総合的に比較することをおすすめします。

まとめ:分割融資は事前確認と比較検討が重要

分割融資は、注文住宅やリフォームで着工金・中間金の支払いに対応するための有効な制度です。つなぎ融資と比較して金利が低く、住宅ローン控除の対象になるため、長期的な負担を抑えられます。

ただし、対応銀行が限られることや、融資実行ごとに手数料・登記費用が発生することに注意が必要です。

次のアクションとして、複数の金融機関(メガバンク・ネット銀行・地方銀行・フラット35取扱機関)に相談し、金利・手数料・融資実行タイミングを比較検討してください。

ハウスメーカーや工務店にも相談し、工事代金の支払いスケジュールと融資実行タイミングをすり合わせることで、スムーズな資金調達が可能になります。

よくある質問

Q1分割融資とつなぎ融資はどちらが有利ですか?

A1金利面では分割融資が有利です。分割融資は住宅ローン金利(年0.5-1.5%程度)が適用されるため、つなぎ融資(年2-4%)よりも金利負担を抑えられます。また、分割融資は住宅ローン控除の対象になりますが、つなぎ融資は対象外です。ただし、分割融資は対応銀行が限られるため、利用可能かどうかを事前に確認する必要があります。

Q2分割融資の手数料はいくらかかりますか?

A2融資実行ごとに手数料(借入額の2.2%等、金融機関による)と登記費用(数万〜10万円程度)が発生します。みずほ銀行など一部の金融機関は追加手数料なしと明記していますが、金融機関によって異なります。融資実行が3回なら、登記費用だけで数十万円になる可能性があるため、事前に見積もりを取得して総費用を確認することが重要です。

Q3分割融資は住宅ローン控除の対象になりますか?

A3対象になります。借入期間10年以上の場合、年末ローン残高の0.7%を所得税から控除できます(最長13年)。分割融資は住宅ローンの一部として扱われるため、税制上の優遇措置を受けられます。一方、つなぎ融資は短期融資として扱われ、住宅ローン控除の対象外です。税制面でも分割融資が有利と言えます。

Q4全ての銀行で分割融資を利用できますか?

A4利用できません。対応銀行が限られるため、事前確認が必須です。2025年時点では、みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行などのメガバンク、住信SBIネット銀行・SBI新生銀行・イオン銀行などの一部ネット銀行、フラット35取扱機関、一部の地方銀行・信用金庫が主な選択肢です。複数の金融機関に相談して条件を比較検討することをおすすめします。